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シリア軍事侵略は挫折か

アサド
2011年10月 ダマスカス アサド支持デモ

 米英仏とサウジ、湾岸連合によるシリアへ軍事侵略は、挫折し始めたようだ。
 ROCKWAY EXPRESS氏による、シリア・アサド政権と反政府武装勢力の実態。
 そして、田中宇氏のシリアの動向による、今後の国際関係への影響分析です。
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  シリア:ホムスの治安を回復したアサド大統領  3/28  ROCKWAY EXPRESSから

 シリア政府と反政府武装勢力に対する国連とアラブ連盟合同のアナン特使の提案する停戦と対話の呼びかけに対して、シリアのアサド政権は、それを受け入れると表明したが、武装勢力側は、応じようとしていない。
 
 ロイターの記事では、「弾圧死者は9000人超」などと、見出しにつけているが、まず9000人は大げさだということ。誰が数えたのか、示してほしいものである。それから死んだのは政府側の「弾圧」で死んだと言うより、武装勢力側の無差別テロ行為によるものが大半である。こういうのが、いわゆる主流メディアといわれるユダヤ系メディアの欺瞞性の現れた箇所である。

 いずれにしても、チュニジアやエジプトでの、大衆デモによる政権交代とは違い、シリアでの騒動は、1年経過してもシリア政府の基盤は、このROCKWAY EXPRESSが指摘してきたように、ほぼ磐石なままである。その理由はずっとこのブログで言ってきたように、アサド政権は、大半のシリア国民から、支持されてきているからである。それがまた、シリアでは、1年たっても、反政府デモなどの大衆運動が広まらない理由である。

 ババアムルで大統領は、学校、病院、発電所の復旧をまずしなければならない、と言っているが、こういう建物や施設を、政府側がわざわざ破壊するはずはない。このような被害の責任と原因は、武装勢力側である。彼らはそのほかにも橋や、石油パイプライン、政府関連ビルなども破壊している

 アサド大統領は、本来は医者だった人物で、父親の後継者だった兄が事故で死んだ為、急遽留学先のヨーロッパからシリアに帰って後継者となったのである。彼には、政治的な野心はなく、ただ、父親たちが作ってきた近代シリアを、アラブの大義を維持しながら発展させようとしている、極めて穏健で常識的な政治を行ってきている人間である。ただし、親の代からの軍人や、治安関係部署の者たちはまた彼とは違う観点や考え方をするものもいるから、そういう勢力との調整にも気を使っていることは確かだ。

 産経新聞では、「調停案受け入れ表明後も戦闘続く」とあるが、政府に楯突く側が武器を捨てない限り、政府側が撤退できるわけがない。それでは、国家の主権を維持し、国土と国民を保護し、防衛する責任と義務を放棄することになり、政府ではなくなる。なんで、シリア問題となると、こういう基本が無視されるのか、ということになる。

 シリアで、欧米の中東に対する企図は、挫折したと、見ていいかもしれない。ターニングポイントである。 
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●シリア:ホムスの治安を回復したアサド大統領
http://www.sana.sy/eng/337/2012/03/27/408709.htm
【3月27日 SANA】

 アサド大統領は27日、ホムス県のババ・アムル地区を視察した。アサド大統領は地区の住民らに会って、政府の国民を保護する義務と責任を遂行するにおいて、揺るぎない決意であることを確約した。

 「国家は正しい道を外れてしまった者たちに、武器を捨て帰順する機会を与えてきている;しかしながら、彼らはこういう機会を拒絶し更なるテロ行為に走った。それならば、なすべきをなし、治安と法秩序をを回復しなくてはならない」と大統領は語った。市民は、大統領を取り囲み、武装テロリストらの犯した凶悪な犯罪行為を訴えた。

 大統領は武装テロリストによって破壊された場所を視察し、力を結集し、とりわけ学校、病院、発電所の復旧に努めるよう呼びかけた。

 警察および軍関係者らとの会合で大統領は、国家の防衛と治安・安寧に尽力する面でなされた彼らの犠牲と努力を慰労した。

 ババアムル地区の住民らは、アサド大統領に対し忠誠と親愛のスローガンを叫び、武装テロリスト達の行為によって、住民の国家に対するコミットメントが逆に増大したことを強調し、この地域の治安を回復したシリア・アラブ軍を高く賞賛した。
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  露中主導になるシリア問題の解決  3/31  田中宇

 シリアの内戦は、アサド政権の優勢が確定しつつある。アサドの政府軍と、イスラム主義の反政府勢力のゲリラ軍の間で激戦が続いていたホムスのババアムール地区では、政府軍が攻撃を続けた結果、反政府軍が撤退を余儀なくされた。
 反政府軍がホムスからの「戦略的撤退」を発表した後、アサド大統領が国営テレビのクルーを連れてババアムール地区を訪れて凱旋的に歩き回り、ホムスでのアサド政権の勝利をテレビで放映した。 (Threat to Assad remains despite claims of victory)

 アサドがシリアの権力者として延命する可能性が高まる中、国連では、シリア問題を仲介する特使に任命されたアナン元事務総長が、新たな和解案を提出し、3月21日に安保理で全会一致で可決された。国連安保理では、今年1月にもシリア問題の解決案が出されたが、ロシアと中国の反対で否決されている。
 前回の和解案は、アサドに対する非難が込められていたが、今回のアナン案はアサドへの非難が弱められており、露中も賛成して可決された。 (Security Council backs Annan's Syria plan)

 米英では「アサドが負けているので、アサドを支持してきた露中は、和解案への反対を続けるわけにいかなくなり、しかたなく態度を転換し、和解案に賛成した」と報じられたが、これはおそらく意図的に解釈を間違えたプロパガンダだ。
 実際には、アサドの勝ちが確定しつつある。態度を転換したのは露中でなく、米国の方だ。(中国よりロシアの方が主役なので「中露」でなく「露中」とした) (Russia nudges Syria to move on)

 米政府はそれまで、サウジアラビアやカタールがシリア反政府派に武器や資金を支援して政権転覆する試みを支援し、政権転覆に反対する露中と対立していたが、アサドの勝利が確定しつつあるので、米国はサウジの策を見捨てざるを得なくなった
 米政界には、米軍がシリアに侵攻すべきとの主張もあるが、財政難でイラクやアフガニスタンから撤退している状況下で、米軍が新たにシリアに侵攻することはオバマ選択肢の中にない。
 結局、米政府は、露中と協調する態度に転じ、プーチンのロシアがシリア問題の解決を主導するのを容認した。 (Syria Cease-Fire Deal Is Flawed, but U.S. Should Back It)

 米国が目立たない形で態度を転換した結果、国連のシリア和解案はロシア主導でまとめられることになり、アナンはモスクワや北京を訪問して露中と打ち合わせつつ和解策を進めている
 アサド政権はアナン案を受諾し、アサドを支持するイランもアナン案を支持した。 (Annan due in China to discuss Syria)

 サウジやカタールはアナン案に反対しているが、サウジは、米国の後ろ盾を失ったため、シリア問題における国際影響力が低下している。サウジの影響力が低下するのと同期するかのように、イラク政府が、自国を通って武器を第3国からシリアに搬入することを禁じる措置を発表した。
 これは、イランがイラクを通ってシリア政府軍に武器を供給する経路を絶つ行為だと報じられているが、サウジがイラクを通ってシリア反政府勢力に武器を供給することも禁じられる。
 いま武器を必要としているのは、勝利したシリア政府軍でなく、負けてしまった反政府勢力だ。イラクの措置は事実上、サウジを不利にしている(イラクのマリキ政権はシーア派主導で親イランだ)。 (Iraq tells Iran no arms to Syria to cross its territory)

 中東では従来、米国が、サウジやカタールといった同盟国の提案を支持し、ロシアやイランといった敵対国の提案を拒否するのが常態だったが、それが大きく転換している。
 ロシアと協調してシリア問題を解決する態度の中国は、昨年末までシリアなど中東の問題に関与しておらず、1月に国連安保理に提出された前回のシリア和解案をロシアと一緒に拒否権発動したのが、中国の中東外交の表舞台に出てきた最初だった。 (◆中露トルコが中東問題を仕切る?)

 シリア問題の解決がロシア主導に転換するとともに、ロシアは、それまでのアサド支持の態度を引っ込め、中立を装っている。プーチンは当選前の3月2日に「誰がシリアを統治するかは、シリア人が決めることだ」と発言し、ラブロフ外相は3月20日にアサドを批判する発言をした。
 ロシア政府は「イエメン方式」でシリア問題を解決したいと言っている。これは、米政府がイエメンの混乱を収拾するために、強権的なサレハ大統領に圧力をかけて米国への亡命に追い込んだやり方を真似るという意味で、ロシアがアサドを追い出すかのような印象を持たせる言葉だ。 (Russia: Syria's Assad regime has made many mistakes)

 実際のところ、ロシアの「イエメン方式」への言及は、国際社会を煙に巻こうとするロシア流の下手な芝居であり、口だけだ。
 表向きの中立な姿勢と裏腹に、ロシア軍は、ゲリラと戦う特殊部隊をシリアに駐留したと、ロシアの通信社が報じている。(とはいえ、その報道はアラビア語のみで行われた上、ロシアの国防相が報道内容を否定した。報道は、シリアやサウジなどアラブ諸国に向けたプロパガンダだったのかもしれない) (Russian Anti-Terror Troops Deploy in Syria)

▼イラン核問題も露中主導に?

 今のシリア問題の本質は、米軍撤退後のイラクがイランの傘下に入ってシーア派の牙城になったことに危機感をつのらせたサウジが、シリアのアサド政権を転覆してその後にスンニ派のイスラム主義政権を作り、シリアを拠点にして隣国イラクのスンニ派勢力をテコ入れし、イラクをスンニ対シーアの内戦に逆戻りさせ、イランの優位を奪おうとする策略だ。
 シリア内戦は、中東におけるイランの台頭に対する反動として起きている。 (シリアの内戦

 国際社会におけるシリア問題の主導役が、米国に支援されたサウジやアラブ連盟といった反イラン勢力から、ロシアや中国という親イラン勢力に移ったことで、イランの立場が強化されている。
 この事態は、イラン核問題の進展に影響を与えると予測される。イラン核問題をめぐっては、4月13日にトルコのイスタンブールで「国際社会(国連安保理常任理事国5カ国+ドイツ。P5+1)」とイランとの交渉会議が予定されている。 (Tehran Nuclear Talks Set for April in Istanbul)

 この会議で何らかの進展があるとは限らないが、シリア問題で安保理の主導権が米国から露中に移ったことは、イラン問題でも安保理の主導権が露中に移るのを、米国が黙認することが予測される。
 すでに米国、欧州、イスラエルの当局間で「イランが核兵器を持っておらず、核兵器開発もしておらず、これから開始する予定もなく、もしイランが明日に核兵器開発を決断したとしても、完成するのは数年後になるので脅威でない」とする分析結果での合意がなされている。 (US, Europe, Israel Agree On Solid Intel: Iran Nuke Threat Far Off)

 IAEAは09年に事務総長がエジプト人のエルバラダイから、日本外務省の天野之弥に代わった後、天野が米政府のタカ派の言いなりになり、IAEAがイランに核兵器開発の濡れ衣をかける傾向が再び強まった。
 天野が米タカ派の傀儡であることは最近まで表だって問題にされなかったが、ここにきてIAEAの元幹部らが、天野の傀儡性を問題視する傾向を急に強めている。最近、イラン核問題が濡れ衣であることが暴露される流れが加速している。 (Nuclear watchdog chief accused of pro-western bias over Iran)

 イラン核問題の今の焦点は、イランがパルチン軍事基地で秘密の核兵器開発をしているのでないかという疑いだ。
 イラン政府が再度IAEAにパルチンを査察させ、それで「国際社会」がイランの無罪を認めて問題が解決するか、もしくは土壇場で米イスラエルの右派が軍内でクーデター的に動いてイランとの戦争を開始するかという、問題の総決算が近づいている観がある。 (◆中露トルコが中東問題を仕切る?)

 米国主導で、イランからの原油輸入を停止する国際的な制裁が行われており、イランの原油輸出量が減少しているとの報道が出ている。
 だが中国やインド、発展途上諸国は、米国の怒りを避けるため、先進国の機関であるIEA(国際エネルギー機関)などの統計に載らないかたちでイランからの原油輸入を続けている可能性がある。
 日韓も、米国から許されて、これ以上イランからの原油輸入を減らさなくて良いことになった。
 損をしているのは欧州諸国だけだ。イランが核兵器開発していないことが公式な話になれば、欧州がイランからの原油輸入を止めている必要もなくなり、制裁体制は崩壊していく。 (Iranian oil exports drop in March) (`Iran oil exports increase in January despite sanctions')

 世界の他の地域でも、米国が覇権的な主導権を露中に手渡していく流れが加速している。北朝鮮問題では、2月末の米朝合意の後、北朝鮮が長距離ロケット技術を使った人工衛星の打ち上げを4月に行うと発表し、米政府は怒ったものの、中国に頼んで北朝鮮を思いとどまらせる対策しか行えず、北朝鮮問題の解決の主導権が中国に与えられている状況が確定している。 (◆転換前夜の東アジア)

 米国(NATO)はアフガニスタンで自滅的な苦戦を強めているが、ここでもNATO撤退後のアフガンを安定化させる主導権が上海協力機構などの枠組みを通じて露中に与えられる流れになりそうだ。 (◆敗走に向かうアフガニスタンの米欧軍)

 話をシリアに戻す。シリア問題でアサド政権を支持したイランが勝ち、反政府勢力を支持したサウジアラビアが負けていることはすでに書いた。
 これを受けて、ペルシャ湾の南岸地域にシーア派の宗教ネットワークを通じて影響力を拡大したいイランが、サウジ東部やバーレーンでのシーア派による反政府運動への隠然としたテコ入れを強め、サウジ東部やバーレーンの不安定さがひどくなるかもしれない。イランの報道機関は連日、サウジ東部やバーレーンでシーア派が反政府デモを続けていると報じている。 (Fresh anti-Al Saud demo held in Qatif)

 これらは、昨年来の「アラブの春」の連鎖的な政治運動の一部だ。
 シリアやイランが安定すると、バーレーンやサウジが不安定になるシーソー状態だ。
 サウジの大油田はシーア派が多い東部に集中している。
 ホルムズ海峡が封鎖されなくても、サウジ東部の不安定さが増すと、サウジの原油輸出の不安要因となり、原油価格の高騰につながる
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 このブログ内のシリア関連ページ

・ シリアへの帝国主義軍事侵略が始まっている
・ 帝国主義によるシリアの内戦
・ 石油価格と通貨防衛のため内戦を仕掛ける欧米
・ WikiLeaks:米国主導のNATO軍がシリアに入っている
・ 暴かれるシリア偽造報道とフランスの豹変
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