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もうすぐ北風が強くなる

毒饅頭を食わされたギリシャ

 ギリシャはユーロと言う毒饅頭を食わされた。
 誰に、国際金融資本と独仏蘭にである。
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ギリシャだけが悪いのか 護送船団「ユーロ」の盲点   1/19 山田厚史 ダイヤモンド・オンライン

 それにしても底が見えないユーロ安だ。昨年末、EU首脳会議で「結束」を確認した欧州だが、今年の焦点は「分裂」である。回避するには「ドイツの決断」が問われる。「統一通貨ユーロはドイツの国益」という、あられもない話が表面化する年になるだろう。

  ギリシャはユーロという「毒饅頭」を食べた

「欧州一体化」の象徴であるユーロは「戦争のない安定した欧州の創設」という理想を背負っている。小国がひしめく欧州が多数の国家に分かれていることは、効率的ではない。経済合理性に照らせば、欧州統一は歴史の流れかもしれない。問題は統合で得をするのは誰かにある。国家という単位で損得を測れば、「圧倒的に有利なのはドイツ」である。

 ユーロへの加盟で、ギリシャやポルトガルなど周縁国は、つかの間の歓びを味わった。エーゲ海文明のころギリシャにはドラクマという通貨があった。トルコから独立した新生ギリシャは、通貨にドラクマを復活させることで自尊心を回復した。そのドラクマを手放してユーロの一員になった。ギリシャでは政府も国民も、自国の経済に自信がなかったからだ。世界に通用するのは観光とオリーブぐらい。最大の産業は公務員で、日本の地方都市のような国家である。経済は脆弱で、通貨は不安定。ドラクマでは海外の銀行も相手にしてくれない。

 ユーロになって世界の銀行がカネを貸してくれた。いざとなったら欧州の強国が支援する、という暗黙の了解があったからだ。

 その通りの展開になった。つかい放題つかって借金し、払えなくなって他国に支援を求める。「お金持ちのみなさん、なんとかして下さい」である。これだけ見れば、「ギリシャってひどい国だ」「自助努力せず他国に頼るなんて身勝手だ」という意見がでる。日本でもそんな論調が多い。

 だが見方を変えれば、当然の帰結としてギリシャは破綻に追い込まれた、といえるだろう。経済が弱いのは、今始まった話ではない。ユーロという「毒饅頭」を食べたのが原因である。

  どうして強者は弱者に恩恵を施すのか

 ドラクマのままだったら、どうだっただろう。モノが自由に動く統一市場になってドイツのクルマ、イタリアやフランスのファッションなどがどんどん流入した。貿易は赤字、おカネは流出。ドラクマの価値が下がり、ギリシャは貧しくなる(購買力が小さくなる)が、自国の製品やサービスの値段が安くなり、産業の国際競争力は高まる。ドラクマ安でギリシャ旅行は安くなり、おとずれる観光客は土産物などもどんどん買う。農産物の輸出も増える。貿易赤字は減って、ドラクマも値が上がる。そんなことが可能だった。

 売買の手段である通貨には、国際競争力を調節する機能もある。国際取引で通貨はゴルフの「ハンディ」のような役目を果たす。実力に差があっても「ハンディ」をつけることで、互角の戦いが出来る。それが通貨の役割。それぞれの国家が違う通貨を使うことで、国家間の取引は「持続可能」な関係になる。

 ユーロへの熱狂が、その大事な役割を忘れさせてしまった。ハンディなしのガチンコが始まったのである。

 同じメンバーで卓を囲んでいる麻雀仲間がいるとしよう。いつもニコニコ現金払い、なら問題ないが、勝負の結果を「付け払い」にしていれば、どういうことが起こるか。長く続けていれば、強い人が儲け、弱い人は借金が貯まる。やがて精算できない額になる。そんな時、どうする。

 払えるだけ払わせてメンバーから外す、というのが筋だろう。払えなければメンバーの資格はない。だが職場や学校の親しい仲間なら「半分だけ払って後は帳消し」など救済措置が取られることがよくある。

 仲間の絆を壊したくない、という配慮もあるだろう。だが、もう一つ大きな理由がある。弱いメンバーを外してしまうと、儲かるカモを失うことになる。強者にとって弱者に恩恵を施すことは、自分が儲かる構造を継続することにつながる。筋を通して取り立てれば金のタマゴを産むニワトリを失う

  思い出した日本金融界の「護送船団方式」

 私が新米の経済記者として大蔵省(現財務省)を回っていた頃、こんなことがあった。

 昭和50年代半ばに、大光相互銀行という地方の金融機関が乱脈経営で実質的に破綻した。大蔵省の肝いりで救済策が決まった。大手銀行が市場金利より安い巨額の融資をする。大行相互は、その資金で日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)などが発行する金融債を購入する。低利融資と金融債の利ざやは1%ほどあり、運用益で損失を埋めれば数年で再生できる。

 興銀も低利融資に加わっていた。安い金利で融資し、そのカネで金融債を買ってもらえば、興銀自身は逆ザヤになってしまう。損する取引ではないか。経営者は特別背任にならないのか。株主代表訴訟に耐えられるのか。夜回りで興銀の幹部に、そんな質問をぶつけた。

「山田さん、まだ金融界が分かっていないね」と笑われた。こんな話だった。

 日本の金融界は、大蔵省を頂点に「護送船団方式」という、皆が支え合う仕組みになっている。銀行によって強いところも、弱いところもある。それが、競争してつぶし合ったらどうなるのか。経済は混乱し、融資先や預金者に迷惑をかける。だから、弱い銀行でも生きていけるようにする。1行たりともつぶれない、だから安心して預金しましょう、という「銀行神話」が日本には必要だ。

 効率の悪い金融機関でも生きていけるという構造は、興銀のように強い銀行は「超過利潤」を取ることができる。だから大光相互のような破綻が起きたら、蓄えの一部を提供しこの仕組みを存続させる。これは「損失」ではなく、将来の利益のために必要なことなのだ――。

 ギリシャの救済でこの話を思い出した。ギリシャが生き続けることはドイツの利益になる。蓄えの一部を吐き出すことは、この仕組みを維持するうえで、当たり前のことなのだ。ドイツは、少なくともドイツの為政者はそのことを知っているはずだ。

  あけすけに真実を語れないドイツはどうする?

「国際競争力の調整」という機能を取り外したユーロ体制は、逃げ場がないガチンコ勝負である。さながら鉄条網でリングを囲ったデスマッチ。貿易規制なし、関税ゼロ。完全な自由貿易で勝つのは強い企業をたくさん抱えている国家だ。フォルクスワーゲン、ベンツなど自動車産業、ジーメンスなど電気・機械産業、ドイツ銀行など金融。どれをとってもドイツの優位は不動だ。

 通貨がマルクのままだったら輸出で大儲けすればマルク高になり、競争力が落ちるユーロになってその心配はない。ユーロランドの国から大儲けして、蓄えた資金で中国など域外に投資する。欧州を制し、グローバル市場に打って出る。中国、インドなどアジア地域で一番活発に事業を展開しているのは、ドイツを筆頭とするユーロの勝ち組である。

 武力による欧州統一に挫折したドイツは、経済統合で三度目の正直を果たそうとしている。二つの大戦で欧州を戦場にした敗戦国は、先頭には立てない。野心満々のフランスを押し立て、財政・金融という縁の下の力持ちに徹し、貿易と金融で欧州を統一した。

 だが、強国が弱小国を収奪しまくる仕組みは「持続的」ではない。相手がダウンしてしまうとゲームは終わってしまう。安全装置として「欧州金融安定化基金(EFSF)」が強化されようとしているが、今の規模では十分でない。拠出を求められた小国やユーロに入っていない英国が反対している。今の仕組みがドイツを中心とする「勝ち組国家」の利益につながると分かっているからだ。

 ドイツが本気で身を乗り出さなければ支援体制はまとまらない。市場に不安が広がり、問題国の金利が跳ね上がる。ギリシャ危機が表面化して2年余りが経つのに、解決の糸口さえも見いだしていない。懸案になっている資金支援は「多重債務者への追い貸し」のようなもので、ユーロ体制の持続的発展を担保するものではない。債務切り捨てや、富める国から貧しい国へと財政支援など、荒療治はまだ始まっていない。

 解決を難しくしているのは、経済統合や統一通貨について「本音と建て前」がごちゃごちゃになっていることだ。建前は「全ての国が一緒に豊かになるために」とされているので、ドイツ国民は「自分たちだけが多く負担するのは理屈に合わない」「自助努力の足りない国に私たちの税金を使うな」と主張する。

 メルケル首相は「実はユーロは我が国に都合のいいルールで」とは口が裂けても言えない。冷徹な打算で救いの手を差し伸べようとしても「外交的敗北」と有権者は納得しないだろう。だから一歩を踏み出せない。民主主義の弱点だ。市場原理にそった政策の内実は「建前」ほど美しくはないのだ。

 夜回りで私に教えてくれた興銀の幹部も、世間に対してそんな説明はしなかった。「金融秩序の安定のため」と抽象的な表現だった。あけすけに言えば、身も蓋もない話なのだ。大蔵省の指導で全てが決まった時代なら、そんな芸当も可能だった。

 ドイツが得をする「共通通貨という仕組み」が、説明責任という時代の要請に揺れているのが今の風景だ。正直な情報が公開されなければ民主主義も機能しない。

 決断できなければ、市場は待ってくれないだろう。選択肢は、ユーロ分裂か、ドイツが決断するか。しくじれば津波は世界に及ぶ。
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