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貿易赤字で国債暴落の馬鹿話:マスコミと財務省

 野田某政権の消費増税と軌を一にして貿易赤字危機やら、国債暴落危機やらまるで子供だましのような珍説がマスコミで煽られている。

 固定した通貨収入のみの勤労家計では、赤字は借金につながり、将来負担となり、人によっては多重債務の可能性を開くので、損であり、悪であると言っても大きな間違いとまでは言えないだろう。
 ところが彼らは、等価交換である国民経済相互の収支を家計と混同させようとする。

 固定した通貨収入のみで支出はもっぱら消費と言う勤労家計の特徴は、典型的には生活保護家計のようなものであり、経済行為としては非常に特殊なものである。
 彼らは、この特殊な勤労家計の形態が国民の大多数であることから、何となく「赤字は損、赤字は悪いこと」の嘘がまかり通ると考えているのだろう。
 通貨発行権のある政府の国債を家計になぞらえて、国民の借金だとみなす「馬鹿話」と同様である。 

 元来、勤労家計的な赤字黒字などと言う言葉を使っているのが、誤解の元なのだが、いずれにせよ国民経済としては黒字が得でも無ければ赤字が損でもない。
 財でいえば出超は国外移転、入超は国内移転であって、損得は無関係である。

 損得は要した投入経費と交易価格で決まるだけである。当然損失となる輸出もあれば、利益となる輸入もある。
 サービス、所得の対外収支も同様であることは言うまでもない。
 ましてや、国債暴落なる珍説に至っては、一般投資家をカモネギにしたい金融資本までが加わっている

 と言うよりも、こんな基本的なことを声を上げて説明しなければならないことが異常なのである。
 消費増税に向けて洗脳したいマスコミと政府、御用学者たちの、あまりにも国民を愚弄する騙しと煽りである。
 
 関連するページ「国債の暴落はあるのか?と言えば「無い!」」、「国債暴落論?は消費増税への謀略デマ」をご覧下さい。
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日本の貿易収支が赤字転落で,本当に国債は暴落するのか    2/23   高橋洋一  ダイヤモンド・オンライン(太字は引用者)

 2011年の日本の貿易収支が31年ぶりの赤字に転落し、「輸出立国」の日本が揺らいでいるというニュースがあった。貿易収支は輸出62兆7234億円から輸入64兆3323億円を引いた数字で1兆6089億円の赤字だった。サービス収支も1兆6407億円の赤字。

 多くの人はこの数字を聞いて「お先真っ暗」と思っただろう。ただし、貿易収支は赤字だが、日本が海外から得た利子や配当などと、海外に支払った利子や配当などの差額である所得収支は、まだ14兆296億円の黒字であり、貿易収支、サービス収支、所得収支等を合計した経常収支は、まだ9兆6289億円の黒字であると慰められる。

 日本の貿易収支(または経常収支)が赤字になることは、日本にとってマイナスであると信じている人は多い

  重商主義の誤謬

 貿易収支(または経常収支)を「得」なこと、赤字を「損」なことと考えるのは経済学にとって初歩的な誤りで、それを「重商主義の誤謬」という。貿易収支の黒字は輸出のほうが輸入より多いことで、別に国にとって得でも損でもない
 カナダのように経常収支が100年以上もほとんどの年において赤字でも、立派に発展してきた国もある。アイルランド、オーストラリア、デンマークなどの経常収支は第2次世界大戦以降、だいたい赤字であるが、それらの国が「損」をしてきたわけでない。

 経済学の教科書をひもとくと、経常収支は貯蓄投資バランスに等しいとなっている。
 国民所得=消費+投資+経常収支と定義されるが、(国民所得-消費)-投資=経常収支、つまり貯蓄(=国民所得-消費)-投資=経常収支となるからだ。

 これを別の観点から見ると、経常収支(黒字)は対外債権を獲得することであり、言い換えれば対外投資になっているはずだ。であれば、国内貯蓄=国内投資+対外投資となるから、対外投資すなわち経常収支=国内貯蓄-国内投資とわかるだろう。
 ここまでわかると、今後高齢化社会になって国内貯蓄が少なくなっていくと、経常収支が減って赤字になっていくだろう、ということも理解できるはずだ。だからといって、それが特に問題になるわけでない

  危機説を煽る人々の狙い

 ここまではいいが、ここから、財務省やそれをサポートする人による財政再建キャンペーン、つまり増税指向が入りこむと話がややこしくなる。

 あるエコノミストの勉強会で、今後日本の経常収支が赤字に転落して、赤字国債を国内貯蓄でまかなえなくなって、金利上昇が起こり国債が暴落するというシナリオが話題だった。

 前述の説明で分かるように、経常収支赤字は、国内貯蓄で国内投資が賄えない状態で、海外からの資金流入が必要になる。ここまでは正しいが、ここで財政赤字を海外にファイナンスしてもらうと、金利が上がったりして経済が大変になると、世の中のエコノミストたちは財政危機を煽ってくる。

 もちろんこの背景には、財務省が一般庶民に対して、消費税増税をやむを得ないと思うように世論誘導していることがある。こうした話を持ち出してくるのは、財務省からの天下りが幹部になっている金融機関系シンクタンクの人々だったりする。
 そういう人たちが中心になって、日本は経常収支が赤字になると、金利が高くなって国債が暴落するという。だから今のうちに消費税増税で財政再建しておくべきだという意見が、マスコミやテレビで氾濫して、一般人は洗脳されるわけだ。

 経常収支赤字になるとそんなに大変なのだろうか。世界の国のデータをみてみると、経常収支が赤字になっている国はそう珍しくない。むしろ数は赤字国のほうが多い。最近20年間の平均経常収支対GDP比をみると、G7のうち、日本、フランス、ドイツはそれぞれが2.8%、0.5%、1.6%程度の黒字国だが、アメリカ、イギリス、カナダ、イタリアはそれぞれ3.1%、1.9%、0.4%、0.4%程度の赤字国だ。先進国とされているオーストラリアやニュージーランドも4.3%、5.0%程度の赤字国だ。

 経常収支赤字になると、経済成長しなくなったり、金利が上昇するのだろうか。あれこれと考えるより、データをみたほうが早い。最近20年間における経常収支対GDP比と経済成長率の関係、経常収支対GDP比と金利の関係をそれぞれ世界各国で調べると、以下のグラフとおりである。

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 このグラフで分かるように、世界全体を見ても経常収支赤字国は多いが、それらの国で成長率が低かったり、金利が高かったりということはない。経常収支赤字国といっても、経済成長や金利は経常収支国黒字国とほとんど変わらない。要するに、経常収支が赤字になっても、まともな経済運営さえすれば問題ないわけだ。経常収支赤字になって日本経済が危ないという人には気をつけたほうがいい
  
  衝撃的でないことを衝撃と煽る

 それにしても、最近は国債暴落という話が多い。2月2日付けの朝日新聞で三菱東京UFJ銀行による「日本国債暴落シミュレーション」といわれるものがある。2016年にも10年物の長期国債の利回りが現在の1%から3.5%になって、国債の暴落が始まるというものだ。
 これが衝撃的なシミュレーションというが、かつて財務局理財部長や金融庁顧問をしていた私には、どこが衝撃的なのかさっぱりわからない。

 金融機関ならどこでも、この程度のリスク分析を行っており、金融庁もそうしたものを以前から求めている。これが、他の金融機関ではやっておらず、三菱東京UFJ銀行でも、あたかも初めてであるかのように報道するのはどうか。

 それに内容としても、三菱東京UFJ銀行は約200兆円の資産のうち2割程度を国債で保有しており、その平均的な償還年限は3年程度であることは公開資料からわかる。1%から3.5%への金利上昇であれば、国債の価格低下は8%程度であり、全体資産からみれば2%程度なので、潰れるようなことにはならない。

 たいした話でないことを大げさにいうので、財務省から財政危機を煽るためにリークされたのではないかといわれている。もっとも、財務省はこうした金融知識資産負債総合管理、ALM:=ASSET LIABILITY MANAGEMENT)がない。そのため、かつて私が財投システムのためにALMシステムを構築したものだ。金融知識がないからこそ、この程度の話で財政危機を煽れると思うわけだ。
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