ギリシャは民主主義を守るためにデフォルトを!
2012-02-21
ギリシャでは債務削減と引換の超緊縮財政に、抗議する国民の闘いが激しさを増している。
一方ではEU首脳により、「ギリシャが脱退しても大きな影響はない。」、「ギリシャは4月の選挙を延期すべきだ。」などと、ギリシャ締め付け発言がエスカレートしている。
曲がりなりにも民主主義である、国民国家の主権が奪われようとしている。
自国通貨発行益が無いために、超緊縮財政によって、国民生活の窮乏化は経済不況と財政の更なる悪化の循環スパイラルを作り出し、債務は無限に増加してゆく。このことはEU官僚も首脳も解っているはず。
だが、各「優等国」政治は国内政治基盤を失わないためには、ギリシャを締め付ける以外の方策を持たない。
ギリシャ国民は生活窮乏化に抗議すると同時に、救国の闘いをも強いられている。
アイルランドも、ポルトガルも、スペインも、国民はみなギリシャの事態を明日の我が事として見ている。
「優等国」達と国際金融資本が、「劣等国」の主権を奪い、資産を奪い、奴隷化するヨーロッパになるのか。
そんなことは、耐えられないだろう。
つまり、ユーロ内の不信と対立は、憎しみに発展しかねないだろう。
これは、EUの解体的な危機だ。
ユーロの危機と闘うギリシャについては「通貨戦争(48)分裂に向かうユーロ」、「IMF、EU、メルケルと闘うギリシャ」、「ギリシャ、抗議の暴動」、「資産も主権も国際資本に奪われるギリシャ」をご覧下さい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ギリシャは民主主義のためにデフォルトしろ 2/20 英フィナンシャル・タイムズ紙 2/21 JBPressから
ドイツのヴォルフガング・ショイブレ財務相が追加支援の条件として、ギリシャは4月の選挙を延期すべきだと提案した時、筆者には、このゲームがもうすぐ終わることが分かった。我々は、支援の成功と民主主義がもう両立しないところに来てしまったのだ。
ギリシャはユーロ圏の植民地?
ショイブレ財務相は、「誤った」民主的選択を回避したいと考えている。また、選挙は予定通り実施するが、選挙結果にかかわらず大連立内閣を組んでもらうという類似の案もある。
つまり、ユーロ圏は、自分たちが選んだ政権をギリシャに押しつけたいと思っている。ギリシャはユーロ圏にとって初めての植民地になるわけだ。
ショイブレ財務相のジレンマは理解できる。彼は連邦議会に受託者責任を負っている一方で、自分自身がうまくいかないと思っているプログラムの承認を求められているのだ。
確かに選挙の前に資金を手渡すのはリスキーだ。ギリシャの新政権と新たに選ばれた議会が合意内容を一方的に変更することを阻止するものがあるだろうか?
ギリシャはこれまで、合意した政策をきちんと実行してこなかった。不信感を持たれるのも無理はない。だが、それを乗り越えるためにユーロ圏は、信じられないほど極端な保証を求めている。
エスカレートする挑発
ギリシャに対する挑発はしばらく前からエスカレートしてきた。その第1弾は、ある政策文書に記された刺激的な提案だった。ギリシャの経済政策上の判断に対する拒否権を持つ財政の「Kommissar(委員)」をアテネに送り込もうというアイデアだ。
これが退けられた後、当局者らはエスクロー勘定の利用を提案した。ユーロ圏がいつでも、デフォルト(債務不履行)の引き金を引くことなく、ギリシャへの援助の支払いを差し止められるようにするための措置だ。
だが、最も極端なのはやはり、予定されている選挙を延期させ、実務家のルーカス・パパデモス首相が率いる現政権をしばらく続投させるという提案だろう。
債権国が援助先の国の政策運営に介入することと、選挙を延期したり、民主的な手続きの結果から政府を隔離する政策を導入したりするよう援助先の国に命じることとは、全く別の話だ。
倫理にもとるドイツの要求
こうした要求は、イマヌエル・カントの「定言命法」にそぐわない。何しろドイツは、一連の要求があまねく採用されることを望んでいない。また、ドイツで採用することもできない。憲法違反になるからだ。
ドイツの憲法裁判所はつい最近、議会の主権は絶対であり、議会は外部機関に恒久的に主権を移転してはならず、どんな議会も決して後継の議会の自由を制限してはならないとの判決を下したばかりだ。ドイツの提案は、ドイツ自身の憲法の原則に違反している。要するに、一連の提案は倫理にもとるということだ。
あるドイツ政府高官は筆者に向かって、自分としてはギリシャを即刻デフォルトさせることを望むと語った。そうであれば筆者としては、ギリシャは選挙を延期すべきだというショイブレ財務相の提案は、ギリシャ政府から過激な反応を引き出すことを目的とした挑発だと理解するしかない。
それが目的だとすれば、狙い通りになっているようだ。ギリシャのカロロス・パプリアス大統領は、ショイブレ財務相の「侮辱」に反撃した。エバンゲロス・ベニゼロス財務相は、特定の勢力がギリシャをユーロ圏から追い出そうとしていると述べた。
暴力に発展しかねないドイツ対ギリシャの対立
陰謀論は山のようにある。ギリシャのメディアでは、アンゲラ・メルケル首相とショイブレ財務相にナチの制服を着せた漫画が載らない日はほとんどない。ドイツの議員らは、ギリシャの怒りに対して怒りを露にした。ドイツの大衆紙ビルトは、ギリシャをユーロ圏から「放り出す」ことを求めている。
ギリシャにいるドイツ人やドイツにいるギリシャ人に対して暴力が振るわれる事態を考えると、ぞっとする。これは容易にエスカレートし得る類の対立だ。
こうした状況は、現在のユーロ圏の救済戦略の政治的な脆さを浮き彫りにしている。ここではひとまず経済的な議論を脇に置いて、政治について考えてみよう。救済策の規模を拡大すべきだと訴える人は、政府間の連帯意識が尽きかけていることを思い出すべきだ。救済金が国境を越える前に、連帯感がほぼ消滅してしまったのだ。
これは財政同盟の構築を支持する最も強力な議論でもある。何千億ユーロもの資金を域内で動かしたいのであれば、ドイツとオランダとフィンランドがギリシャとポルトガルとアイルランドのためにカネを出すというような政府間ベースでやるわけにはいかない。それだけの資金を動かすには、連邦制度が必要だ。
連邦制度が必要なのは、経済効率の理由からではなく、ドイツ対ギリシャというような対立を防ぐためだ。もし財政同盟が政治的に受け入れられないということになれば、我々はもう、財政移転による保険制度は実現し得ないし、実現しないということを認めるしかない。
ドイツの戦略は無責任な「自殺幇助」
現行制度が崩壊しつつある理由は、相互の信頼が失われたためだ。この事実は、危機解決に向けた政治的な選択肢を狭める。不信こそが、ギリシャ救済策が最後の最後まで遅れた理由であり、最新の提案がこれほど多くの毒薬条項(緊縮措置などの実行の期限、エスクロー勘定、債権者と国際通貨基金=IMF=の恒久的な代表権)を含んでいる理由だ。
遠からず、さらなる緊縮策が実施されるだろう。いずれどこかの段階で、誰かがプツンと切れるはずだ。
ドイツの戦略は、生活を耐え難いものにして、ギリシャ人自身がユーロ圏から出ていきたくなるように仕向けることのようだ。メルケル首相としては絶対に、ギリシャを撃った銃を手にしている姿を見られたくない。ドイツの戦略は自殺幇助戦略であり、極めて危険で無責任なものだ。
By Wolfgang Münchau
一方ではEU首脳により、「ギリシャが脱退しても大きな影響はない。」、「ギリシャは4月の選挙を延期すべきだ。」などと、ギリシャ締め付け発言がエスカレートしている。
曲がりなりにも民主主義である、国民国家の主権が奪われようとしている。
自国通貨発行益が無いために、超緊縮財政によって、国民生活の窮乏化は経済不況と財政の更なる悪化の循環スパイラルを作り出し、債務は無限に増加してゆく。このことはEU官僚も首脳も解っているはず。
だが、各「優等国」政治は国内政治基盤を失わないためには、ギリシャを締め付ける以外の方策を持たない。
ギリシャ国民は生活窮乏化に抗議すると同時に、救国の闘いをも強いられている。
アイルランドも、ポルトガルも、スペインも、国民はみなギリシャの事態を明日の我が事として見ている。
「優等国」達と国際金融資本が、「劣等国」の主権を奪い、資産を奪い、奴隷化するヨーロッパになるのか。
そんなことは、耐えられないだろう。
つまり、ユーロ内の不信と対立は、憎しみに発展しかねないだろう。
これは、EUの解体的な危機だ。
ユーロの危機と闘うギリシャについては「通貨戦争(48)分裂に向かうユーロ」、「IMF、EU、メルケルと闘うギリシャ」、「ギリシャ、抗議の暴動」、「資産も主権も国際資本に奪われるギリシャ」をご覧下さい。
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ギリシャは民主主義のためにデフォルトしろ 2/20 英フィナンシャル・タイムズ紙 2/21 JBPressから
ドイツのヴォルフガング・ショイブレ財務相が追加支援の条件として、ギリシャは4月の選挙を延期すべきだと提案した時、筆者には、このゲームがもうすぐ終わることが分かった。我々は、支援の成功と民主主義がもう両立しないところに来てしまったのだ。
ギリシャはユーロ圏の植民地?
ショイブレ財務相は、「誤った」民主的選択を回避したいと考えている。また、選挙は予定通り実施するが、選挙結果にかかわらず大連立内閣を組んでもらうという類似の案もある。
つまり、ユーロ圏は、自分たちが選んだ政権をギリシャに押しつけたいと思っている。ギリシャはユーロ圏にとって初めての植民地になるわけだ。
ショイブレ財務相のジレンマは理解できる。彼は連邦議会に受託者責任を負っている一方で、自分自身がうまくいかないと思っているプログラムの承認を求められているのだ。
確かに選挙の前に資金を手渡すのはリスキーだ。ギリシャの新政権と新たに選ばれた議会が合意内容を一方的に変更することを阻止するものがあるだろうか?
ギリシャはこれまで、合意した政策をきちんと実行してこなかった。不信感を持たれるのも無理はない。だが、それを乗り越えるためにユーロ圏は、信じられないほど極端な保証を求めている。
エスカレートする挑発
ギリシャに対する挑発はしばらく前からエスカレートしてきた。その第1弾は、ある政策文書に記された刺激的な提案だった。ギリシャの経済政策上の判断に対する拒否権を持つ財政の「Kommissar(委員)」をアテネに送り込もうというアイデアだ。
これが退けられた後、当局者らはエスクロー勘定の利用を提案した。ユーロ圏がいつでも、デフォルト(債務不履行)の引き金を引くことなく、ギリシャへの援助の支払いを差し止められるようにするための措置だ。
だが、最も極端なのはやはり、予定されている選挙を延期させ、実務家のルーカス・パパデモス首相が率いる現政権をしばらく続投させるという提案だろう。
債権国が援助先の国の政策運営に介入することと、選挙を延期したり、民主的な手続きの結果から政府を隔離する政策を導入したりするよう援助先の国に命じることとは、全く別の話だ。
倫理にもとるドイツの要求
こうした要求は、イマヌエル・カントの「定言命法」にそぐわない。何しろドイツは、一連の要求があまねく採用されることを望んでいない。また、ドイツで採用することもできない。憲法違反になるからだ。
ドイツの憲法裁判所はつい最近、議会の主権は絶対であり、議会は外部機関に恒久的に主権を移転してはならず、どんな議会も決して後継の議会の自由を制限してはならないとの判決を下したばかりだ。ドイツの提案は、ドイツ自身の憲法の原則に違反している。要するに、一連の提案は倫理にもとるということだ。
あるドイツ政府高官は筆者に向かって、自分としてはギリシャを即刻デフォルトさせることを望むと語った。そうであれば筆者としては、ギリシャは選挙を延期すべきだというショイブレ財務相の提案は、ギリシャ政府から過激な反応を引き出すことを目的とした挑発だと理解するしかない。
それが目的だとすれば、狙い通りになっているようだ。ギリシャのカロロス・パプリアス大統領は、ショイブレ財務相の「侮辱」に反撃した。エバンゲロス・ベニゼロス財務相は、特定の勢力がギリシャをユーロ圏から追い出そうとしていると述べた。
暴力に発展しかねないドイツ対ギリシャの対立
陰謀論は山のようにある。ギリシャのメディアでは、アンゲラ・メルケル首相とショイブレ財務相にナチの制服を着せた漫画が載らない日はほとんどない。ドイツの議員らは、ギリシャの怒りに対して怒りを露にした。ドイツの大衆紙ビルトは、ギリシャをユーロ圏から「放り出す」ことを求めている。
ギリシャにいるドイツ人やドイツにいるギリシャ人に対して暴力が振るわれる事態を考えると、ぞっとする。これは容易にエスカレートし得る類の対立だ。
こうした状況は、現在のユーロ圏の救済戦略の政治的な脆さを浮き彫りにしている。ここではひとまず経済的な議論を脇に置いて、政治について考えてみよう。救済策の規模を拡大すべきだと訴える人は、政府間の連帯意識が尽きかけていることを思い出すべきだ。救済金が国境を越える前に、連帯感がほぼ消滅してしまったのだ。
これは財政同盟の構築を支持する最も強力な議論でもある。何千億ユーロもの資金を域内で動かしたいのであれば、ドイツとオランダとフィンランドがギリシャとポルトガルとアイルランドのためにカネを出すというような政府間ベースでやるわけにはいかない。それだけの資金を動かすには、連邦制度が必要だ。
連邦制度が必要なのは、経済効率の理由からではなく、ドイツ対ギリシャというような対立を防ぐためだ。もし財政同盟が政治的に受け入れられないということになれば、我々はもう、財政移転による保険制度は実現し得ないし、実現しないということを認めるしかない。
ドイツの戦略は無責任な「自殺幇助」
現行制度が崩壊しつつある理由は、相互の信頼が失われたためだ。この事実は、危機解決に向けた政治的な選択肢を狭める。不信こそが、ギリシャ救済策が最後の最後まで遅れた理由であり、最新の提案がこれほど多くの毒薬条項(緊縮措置などの実行の期限、エスクロー勘定、債権者と国際通貨基金=IMF=の恒久的な代表権)を含んでいる理由だ。
遠からず、さらなる緊縮策が実施されるだろう。いずれどこかの段階で、誰かがプツンと切れるはずだ。
ドイツの戦略は、生活を耐え難いものにして、ギリシャ人自身がユーロ圏から出ていきたくなるように仕向けることのようだ。メルケル首相としては絶対に、ギリシャを撃った銃を手にしている姿を見られたくない。ドイツの戦略は自殺幇助戦略であり、極めて危険で無責任なものだ。
By Wolfgang Münchau
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