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二極化する世界(後編):三橋

 二極化する世界(前編)からの続き。
 身動きがとれないユーロ。
 統合か、分裂か、解体か。その前に世界デフレ恐慌か。
 ーーーーーーーーーーーーーーーーー
 二極化する世界(後編)    1/12  三橋貴明   Klugから

 ユーロスタットは先日、欧州各国の11年12月時点の失業率を発表したが、これまた「二極化」の進行が著しく、驚いてしまった。

『2012年1月6日 共同通信社「ユーロ圏の失業率10・3% 昨年11月、最悪水準続く」

 欧州連合(EU)の統計機関ユーロスタット9 件は6日、ユーロ圏(17カ国)の昨年11月の失業率9 件(季節調整済み)は10月と変わらず10・3%だったと発表した。EU全体(27カ国)も前月と同じ9・8%だった。

 財政危機の影響で欧州経済が停滞する中で各国は雇用対策を打ち出せず、失業率は1999年のユーロ導入以来の最悪水準が長期化している。

 昨年11月の失業率9 件は、スペインが22・9%、アイルランドが14・6%、ポルトガルが13・2%、イタリアが8・6%と財政難の国々で高止まり。ギリシャの最新データは9月時点で18・8%。』

 共同通信の記事だけでは、欧州の雇用環境が今一つ分からないので、日米両国を含めた主要国の失業率をグラフ化してみよう。

【図136-1 2012年末時点 欧州主要国及び日米両国の失業率(単位:%)】
20120110_01.png
出典:ユーロスタット

 現在の主要国の問題は(日本を含め)、負債拡大に依存した国民経済の成長モデルの崩壊である。すなわち、一言で書けばバブル崩壊だ。不動産バブルが発生しなかった日本やドイツにしても、07年まではアメリカの家計の負債(住宅ローン)拡大に依存した成長を遂げていたわけである。

 現在はアメリカを皮切りに、各国で不動産バブル(他のバブルもあるが)が崩壊した。もしくは、崩壊しつつある。ところが、次なる成長モデルをどの国も作れず、具体的には失業率の悪化という形で問題が顕在化しているわけだ。

 ユーロ圏の失業率を見ると、一部の国々がほとんど世界大恐慌(1929年-)並に雇用環境が悪化していることが分かる。ところが、逆に一部の国々の失業率は改善しており、見事なまでの「二極化」が発生しているのだ。

 欧州で最も雇用環境が悪いスペインの失業率が22.9%、ギリシャが18.8%、アイルランドが14.6%、ポルトガルが10%、ユーロ圏全体で10.3%と、失業率が高めに張り付いている中、ドイツは5.5%と、ユーロ安を利用した輸出増で雇用環境を着実に改善していっている。ちなみに、ギリシャの18.8%は昨年の9月末時点であり、現時点ではさらに悪化している可能性が濃厚だ。

 また、ユーロ圏全体の失業率10.3%は、ユーロ導入(1999年)以来、最悪の水準である。とはいえ、全体の雇用環境が悪化する中においても、ドイツ他、ユーロ圏北部の国々では失業率は改善していっており、明らかな二極化が進んでいることが分かる。

 特に、PIIGS諸国では若年層の失業率の悪化が著しい。何と、スペインの若年層失業率は49.6%、ギリシャが46.6%と、ほぼ50%に達しているのだ。若者の半分が就職できない社会とは、一体、いかなるものか。日本人には想像もつかないだろう。(ユーロ圏17カ国の若年層失業率は21.7%である)

 ユーロ圏では「長期金利」そして「失業率」の二つの面で二極化が発生しているわけだが、その原因はまことに構造的である。すなわち、小手先の「改革」では全く対処のしようがないほど根深い問題なのだ。

 ユーロの問題が「構造的」だと考えるのは、南欧諸国の財政問題などでユーロの為替レートが下落すると、一部の輸出国(ドイツなど)の失業率は改善してしまうなど、「ユーロ全体での繁栄・衰退」が成り立たない構造になっていることだ。同じ共通通貨を使っているにも関わらず、雇用環境という重要指標が「真逆」の方向を目指してしまうのでは、ユーロ圏全体で方向性を決めるのは不可能である。

 金利政策も同様だ。ドイツなどのインフレ率上昇を受け、ECBが利上げをすると、南欧諸国の危機に火に油を注ぐ形になってしまう。だからといって、インフレ率上昇を回避するため、ECBが南欧諸国の国債買取を停止すると、今度はギリシャなどの長期金利が急騰し、デフォルトへ一歩近づくことになってしまう(すでにギリシャの長期金利は凄まじい水準に高騰してしまっているが)。

 そもそも現在のユーロの混乱は、01年のITバブル崩壊後に「ドイツ」の不況に対処するため、ECBが金利を引き下げたことに端を発している。ECBが断続的に政策金利を引き下げた結果、別に不況でも何でもなかったアイルランド、スペインなどで住宅バブルが膨らんでしまったのである。

 とはいえ、明らかな不動産バブルが発生していたアイルランドなどの政府が、中央銀行に金融引き締めを命じたとしても、実行には移せない。何しろ、ユーロ加盟国は金融政策をECBに委譲しており、独自の政策はとれない仕組みになっているのだ。

 すなわち、現在の混乱はもちろんのこと、ユーロは当初から「金融政策のみを統合」という仕組みが、経済の歪みを拡大する構造になっていたのである。さらに、現在は財政破綻目前国の影響でユーロが下落し、一部の国(ドイツなど)のみが失業率低下という恩恵を受けているわけであるから、これでユーロ圏の各国民が「ユーロとしての一体感」を感じろと言われても無理というものだ。

 結局のところ、ユーロは92年以降の「グローバリズム」、あるいはそれ以前の「地球市民的」な発想により国境線を薄めた結果、行き詰ってしまったわけだ。しかも、国境線は薄くしたはいいが、各国のナショナリズム(注:国民意識)を取り去ることはできなかった。結果、現在のユーロ圏の各国民は、経済ナショナリズムに基づき「国民のための政策」を政府に求めているのである。

 本来であれば、ユーロ加盟国は国境線を薄めると同時に、財政を中心とした政治統合を実現し、「ユーロ国民としての経済ナショナリズム」を醸成しなければならなかった。無論、方向性としてはそちらの方向を目指しており、現在も一応、そちらの方向に持って行こうとしているが、もはや手遅れだろう。

【図136-2 ユーロ紙幣と硬貨】
20120111_02.png

 図136-2の通り、100ユーロ紙幣の表には門が、裏面には橋が書かれている。門にしても橋にしても、もちろん架空のものであり、何か(例:フランス凱旋門)をモデルにしているわけではない。

 門と橋の意味は、明々白々である。 

「誰でも入ってきてください。門は開いていますよ」
「みんなを繋ぐ架け橋ですよ」
 という話なのだろうが、紙幣に描かれた図柄を見るだけで、ユーロというのはまことに「グローバリズム」的であることが分かる。あるいは、「地球市民」的と言い換えても構わない。

 何というか、共通通貨ユーロの根本を流れる思想は、性善説に基づいているように感じられてならないのである。門を開き、橋を架け、川の向こう側からやってくるものは「常に良い人」という発想になっているとしか思えないわけだ。


 現実には、ユーロ紙幣の裏に書かれた「橋」は良い人のみならず、「悪い人」も通してしまう。ギリシャの財政問題は、「橋」である共通通貨ユーロを通じ、全ユーロ加盟国に波及、伝播していく。しかも、ユーロのシステム上、この「橋」の通行を止めることはできない。

 もっとも、現状のユーロの状況を見ていると、2012年には橋の一部を通行止めにし、門を閉ざす方向に踏み出さざるを得ないだろう。とはいえ、紙幣に書かれている象徴である「門と橋」を閉じる方向に進んだ場合、ユーロの基本理念が崩壊するという話になる。

 そう考えたとき、そもそもユーロは「理念的」にも長期では維持できない「思想」だったことが理解できるわけだ。

 現実の世界は、共通通貨ユーロの「門と橋」を考案した人々が信じるほど、性善説では成り立っていない。率直に書いてしまえば、「まともな国」もあれば「そうではない国」もあるのだ。地平線の彼方から異民族の大軍が押し寄せてきたときは、橋を落とし、門を閉じなければならない。さもなければ、自国の国民の安全を守れなくなってしまう。

 さらに、各国の国民はどれだけグローバル化が進展したとしても、他国のために喜んで犠牲を払えるほど「地球市民」的ではないのだ。ドイツ国民はドイツ国民であり、ユーロ国民ではない。ドイツ国民は「自国民」のために政府が金を使うのは認めるが、他国民を支援することには素直に納得しない。
 すなわち、ユーロ導入という極めて実験的な「国境線廃止」が行われたにも関わらず、各国の国民は未だに経済ナショナリズムを維持しているのだ。各国の国民が「国民意識」を保っている限り、経済ナショナリズムに逆らう政治家は選挙で落選することになる。

 ユーロの事例が極めて典型だが、2012年は各国の境である国境線が次第に「濃く」なっていく一年になるだろう。理由は極めて簡単で、各国でバブルが崩壊し、揃ってデフレに陥ろうとしている場合、国境線を濃くし、保護主義の色を強めた方が、「世界経済」の回復が早まるためだ。

 保護主義とは言っても、別に鎖国をしろと言っているわけではない。単に、これまで以上に政府が貿易を管理し、自国の雇用を拡大させるために内需拡大に乗り出した方が、世界全体の経済回復が早いという話だ。現在のように各国でバブル経済が崩壊した後は、各国は関税を引き上げ、自国の雇用維持に努めた方がいい。
 世界の主要国が揃ってデフレに陥ろうとしている状況で自由貿易を推進すると、結局のところ「通貨安競争」が発生し、互いに窮乏化を押し付け合う泥沼に突入してしまう。(だからこそ、筆者は現時点におけるTPPに反対せざるを得ない)

 とはいえ、現実の世界主要国の動きを見ていると、財政出動、国債発行、通貨発行のパッケージという、バブル崩壊後の国が実施すべき「正しいデフレ対策」を行っている国は一つもない。特に、二極化の片翼に位置する日本、アメリカ、ドイツは、長期金利が超低迷しており、正に「正しいデフレ対策」を実施すべき時期なのだ。ところが、各国政府はまさに真逆の政策に踏み切ろうとしている。

 そういう意味で、2012年の世界経済の展望は厳しいと断ぜざるを得ないのだ。
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 関連するページリンク。
 「公平な分配で経済成長を続けるアルゼンチン」、「破滅するユーロか、破滅する国家か」、「アイスランドの教訓、ギリシャはドラクマに戻せ」。
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