動乱の2012年(3)通貨と国債、デ・レバレッジ:吉田
2012-01-13
動乱の2012年(2)からの続き
ーーーーーーーーーーーーーーー
■5.米ドルより、ユーロが下がっている理由:そして円
円を基準として見たとき、2011年での米ドルは、11年4月の高値85
円付近から12年1月3日の75.6円まで、11%の下落です。
他方でユーロは11年4月の120円付近から、1月5日は98.6円です。
18%の下落です。米ドルよりユーロが下がった理由は、米ドルには
まだ日本、中国、新興国からの買いがあるためです。
たとえば日本政府は、円高対策として、11年11月に(効果がなかっ
た)4.5兆円の、緊急のドル買いをしています。中国も、ユーロ債
を売って、ドル債に振り替えています。元高は、中国の輸出にとっ
て困るからです。
円債は、ユーロ債、ドル債の代わりに、買われています。前稿で取
り上げましたが(<回顧と展望:570号:111228>)、2011年6月か
ら11月の半年で、円国債(主は3ヶ月内満期の短期債)が、合計で
72.2兆円もが、外国人から買い越されています。
▼日本の長短公社債の、売買金額:投資家別概算(再掲)
(注)プラスは買い超、マイナスは売り超
2011年6月 7月 8月 9月 10月 11月 半年計
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
銀行等 17.5 13.1 12.1 18.2 8.0 15.8 84.7兆円
投信等 3.7 3.2 2.7 2.4 2.8 3.3 18.1兆円
外国人 8.1 11.3 17.4 9.7 11.0 14.3 72.2兆円
政府等 -24.5 -27.1 -34.6 -26.3 -23.1 -28.7 -163.9兆円
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(注1)主要な主体のみの概算合計のため、売買の総計はゼロにな
っていない。
(注2)銀行等は、日本の都銀・地銀、信託銀、農林系、第二地銀、
信用金庫、生損保の合計売買額を示す
(注3)投信等は、日本の投資信託、官公庁の共済組合、事業法人
の合計。個人の売買額は、無視できるくらい小さい。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LWH73V1A74GR01.html
2011年の異常な金額に思える外人による円債買いが、日本の国債金
利を下げ、円高をもたらした原因です。
外人の日本国債買いは国内の金融機関のような「長期保有」ではな
い。短期債の短期売買です。たとえば3ヶ月債は、発行の3ヶ月後に
は、日本政府が、円で償還せねばならない。
外人投資家(主体は、ヘッジ・ファンドと新興国の中央銀行)の買
いは、市場で売らずとも、買って3ヶ月間保有すれば、円での償還
があるため、外為市場で円が売られたのと同じことになるのです。
2012年は、いつまで、この外人の円国債の買い超が続くか?
6ヶ月で買い超してきた72兆円の短期国債を、
・そのままにしておくか(円が償還される)、
・あるいは売り超に転じれば、どうなるか?
72兆円分の、外人から売られる短期国債を、国内の金融機関が増加
買いすることは不可能です。財政の赤字で新規に発行される国債の
引き受けが、ほぼ50兆円はあるからです。日銀の、緊急買い受けに
なるでしょう。
円高は、経済界(経団連)の願望通り、そのとき終了します。
◎ところが、円高が終わった時は、今度は、ちょうど今のユーロの
ように、円国債の価格に下落が起こります。円高の終了は、円が海
外流出することだからです。(注)「円債売り→ドル債買い」にな
るでしょう。
日本の政府財政は、2011年中にほぼ100兆円分も買い越された円国
債が外人から売られれば、期待金利がわずか2%上がっただけで、
既発国債(約1000兆円)が10%は下がります。
低金利の国債は、国債価格の過剰評価、つまり、国債の価格バブル
を生むのです。バブルは、金利が正常化(3%になること)すれば、
崩壊します。
このとき、100兆円の不良債券が、国内金融機関に発生してしまう
のです。国内の金融機関も、損を怖れて売りに転じることになる。
◎金融市場は、まだこの、外人による国債債売りの、可能性の認識
をしていないように思えます。
なぜ、日本の増発され続ける国債の金利が、短期債で0.15%、長
期債で1.03%と、(異常に)低いままなのか。原因を調べていて、
2011年の外人買いのデータに遭遇したのです。
どう考えても、2012年も外人が円国債を買い越すとは思えません。
ポートフォリオ(分散投資)での円債の、保有ポジションが、100
兆円は大きくなっているからです。どうお考えでしょうか?
日本経済(政府と金融機関)にとっては、PIIGS債の償還が増える
2012年の1月から3月までに、ユーロ危機が深刻になって、ヘッジ・
ファンドからユーロ債が更に売られ、その資金で円債の買い超が続
き、円高($1=70円;1ユーロ=80円等)になることが望ましい。
円高は輸出の製造業(輸出額で1ヶ月6兆円:年間72兆円)にとって
は、円での売上が減って、困る事態です。しかし、国債を売る政府
財政にとっては好ましいのです。通貨は、「多角度から」みなけれ
ばならない。
世界で、毎日の経済ニュースのトップとして、通貨変動が報じられ
るのは、1日で500兆円もの世界の外為市場で、通貨価値が日々変動
していて、それが経済に大きな影響を及ぼすからです。
■6.10年スパンでの、デ・レバレッジの時代に向かう
銀行の不良債券が巨額化し、事実上では自己資本が消えた時期に、
世界の中央銀行の中央銀行であるBIS(国際決済銀行)は、世界の
銀行に対し、自己資本比率を上げることを要求しています。
(注)米国の銀行に対しては、BISの傘下であるFRBが、第一段階と
して、リスク資産に対する中核的自己資本の下限を5%超にし、
2019年までに、その下限を、7.0%~9.5%に上げることを決めて
います。
同時に、現在は「安全資産」として、時価評価を逃れている国債に
対しても、AAA格から落ちたものを、BISはリスク資産にするという
ことも、言っています。世界でAAA格は、英、スイス、ドイツ、フ
ランス、カナダ、オーストラリア債です。米国債は昨年8月から下
がってAA+ 日本債、中国債はAAマイナスです(S&P:2011年)。
近々、フランス債と英国債も下がるでしょう。
格付け機関の「いいかげんさ」は、サブプライム・ローンを含んで
証券化したデリバティブ(MSB、RMSB、ABC)のシニア債をAAA格と
したときから露呈しています。
しかし実際には、年金基金等が買うときは、安全なAAA格の証券に
限定されます。格付けが下がると、保有する国債を売らねばならな
い。会計監査ではねられるからです。
米欧の年金基金(Penshion Fund)は、巨大な機関投資家であり、
国債や、米国で多い州債(地方債)の買い手です。国債も、買い手
が少なくなれば、下落し、金利が上がります。格付けの下落は、市
場での国債の買い手にとって、大きな問題なのです。
デ・レバレッジは、金融機関の自己資本に損害が生じ、銀行システ
ムの信用創造力が減少したとき生じる「信用恐慌」です。具体的に
は、銀行が貸付金を減らすことを迫られて、同時に、価格変動があ
る証券(株や社債)とAAA格以外の国債を売ることになる。
結果は民間のマネー・ストックが減少です。マネー・ストックが
10%も減れば、実体経済の投資と購買も急減し、100%の確率で恐
慌になります。信用恐慌といわれるものがこれです。
【銀行の損失とマネー・ストックの急減】
リスク資産(貸付金と証券)を100兆円もち、自己資本が8%(8兆
円)あった金融機関に、仮に3兆円(3%)の損が生じたとします。
この銀行は、いくらのリスク資産を減らさねばならないか?
自己資本が5兆円に減って、8%の自己資本比率にしなければならな
い。5兆円÷8%=62.5兆円です。
結果は[100兆円-62.5兆円=37.5兆円]の貸付金回収と、国債、
社債、株の売りです。マネーストックが37.5兆円(37.5%)も減
ることと同じです。
3兆円の損害で、12.5倍の37.5兆円の信用収縮です。デ・レバレ
ッジによる信用恐慌になります。1000兆円の不良債券に対し、デ・
レバレッジが起これば、もうそれはマネーの消滅です。デフレ型恐
慌どころの騒ぎではない。
日本のバブル崩壊期(1990年~)にも、BISは国際業務を行う日本
の銀行(都銀)に対して、8%の自己資本を要求しています。これ
が、銀行が企業と持ち合っていた株の(継続的な)売りを生み、貸
付金の回収も生んだのです。
ただし当時は国債は安全資産とされていました。このため日本の銀
行は株を売り、同時に貸付金を回収で入ってきたマネーで、国債を
1年に40兆円も増加買いしていたのです。国債が増えた原因は、超
低金利債が安全資産とされて銀行、保険会社、郵貯・簡保に売れて
いたからです。本来は、国債金利が3%くらいに上がって、政府財
政の拡張に歯止めが必要だったのです。
(注)BISによる「AAA格を落ちた国債をリスク資産にする」という
発令は、、まだ出されていません。予告の段階です。
BISの自己資本規制を守ることができない銀行は、国際業務(海外
銀行との貸し借りや外為業務)ができなくなるため、事実上の破産
状態になります。
◎BISやFRBが、なぜ100年サイクルでの、1929年を超えることが想
定される世界の金融危機の時期に、銀行の自己資本を高める規制を
強化するのか、理解不能です。世界を、意図的に、信用恐慌に陥れ
る策としか思えません。
現在の、不良債券を巨額に抱えてしまった世界の銀行に、自己資本
比率を高めることを要求すれば、信用恐慌を生んで、マネー・スト
ック(世界ではGDPの3年分;1京5000兆円)を急減させることは、
100%わかりきったことだからです。実行しないことを言う、リッ
プ・サービスなのか?
BISが、世界の中央銀行が売ってきたゴールドを買い占めた金融一
派(デル・バンコ)に支配されているとすれば、暴落した世界の銀
行株と国債を、底値で買い、その後の世界の金融を、支配するため
と思えます。恐慌は、株と国債の底値での買い手にとっては、未曾
有のチャンスになる。
(注)東京が、米軍の空襲に襲われ、燃えさかっている最中に、二
束三文で、宮家の土地を買い漁ったのは、西武グループ(提康次郎
氏)でした。戦後の、物価・資産が300倍に上がったハイパー・イ
ンフレで巨大資産になっています。東日本大震災のあとにも、小規
模ですが、仙台等でこれが見られます。
銀行の国有化と言っても資金源は国債です。暴落しているギリシア
債を更に下げ、底値で買えば、その後のギリシアの金融を、国債を
買ったところが支配できます。国債に価格がつくのは、売り手と買
い手が、同量あるからです。買い手は、誰になるか・・・です。
米国発の1929年からの世界大恐慌でも、ある銀行による株、不動産、
国債の底値買いがあり、10年後の回復期には巨大資産になったので
す。恐慌の時期は、5年や10年後を長期で見る必要があります。
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■5.米ドルより、ユーロが下がっている理由:そして円
円を基準として見たとき、2011年での米ドルは、11年4月の高値85
円付近から12年1月3日の75.6円まで、11%の下落です。
他方でユーロは11年4月の120円付近から、1月5日は98.6円です。
18%の下落です。米ドルよりユーロが下がった理由は、米ドルには
まだ日本、中国、新興国からの買いがあるためです。
たとえば日本政府は、円高対策として、11年11月に(効果がなかっ
た)4.5兆円の、緊急のドル買いをしています。中国も、ユーロ債
を売って、ドル債に振り替えています。元高は、中国の輸出にとっ
て困るからです。
円債は、ユーロ債、ドル債の代わりに、買われています。前稿で取
り上げましたが(<回顧と展望:570号:111228>)、2011年6月か
ら11月の半年で、円国債(主は3ヶ月内満期の短期債)が、合計で
72.2兆円もが、外国人から買い越されています。
▼日本の長短公社債の、売買金額:投資家別概算(再掲)
(注)プラスは買い超、マイナスは売り超
2011年6月 7月 8月 9月 10月 11月 半年計
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
銀行等 17.5 13.1 12.1 18.2 8.0 15.8 84.7兆円
投信等 3.7 3.2 2.7 2.4 2.8 3.3 18.1兆円
外国人 8.1 11.3 17.4 9.7 11.0 14.3 72.2兆円
政府等 -24.5 -27.1 -34.6 -26.3 -23.1 -28.7 -163.9兆円
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(注1)主要な主体のみの概算合計のため、売買の総計はゼロにな
っていない。
(注2)銀行等は、日本の都銀・地銀、信託銀、農林系、第二地銀、
信用金庫、生損保の合計売買額を示す
(注3)投信等は、日本の投資信託、官公庁の共済組合、事業法人
の合計。個人の売買額は、無視できるくらい小さい。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LWH73V1A74GR01.html
2011年の異常な金額に思える外人による円債買いが、日本の国債金
利を下げ、円高をもたらした原因です。
外人の日本国債買いは国内の金融機関のような「長期保有」ではな
い。短期債の短期売買です。たとえば3ヶ月債は、発行の3ヶ月後に
は、日本政府が、円で償還せねばならない。
外人投資家(主体は、ヘッジ・ファンドと新興国の中央銀行)の買
いは、市場で売らずとも、買って3ヶ月間保有すれば、円での償還
があるため、外為市場で円が売られたのと同じことになるのです。
2012年は、いつまで、この外人の円国債の買い超が続くか?
6ヶ月で買い超してきた72兆円の短期国債を、
・そのままにしておくか(円が償還される)、
・あるいは売り超に転じれば、どうなるか?
72兆円分の、外人から売られる短期国債を、国内の金融機関が増加
買いすることは不可能です。財政の赤字で新規に発行される国債の
引き受けが、ほぼ50兆円はあるからです。日銀の、緊急買い受けに
なるでしょう。
円高は、経済界(経団連)の願望通り、そのとき終了します。
◎ところが、円高が終わった時は、今度は、ちょうど今のユーロの
ように、円国債の価格に下落が起こります。円高の終了は、円が海
外流出することだからです。(注)「円債売り→ドル債買い」にな
るでしょう。
日本の政府財政は、2011年中にほぼ100兆円分も買い越された円国
債が外人から売られれば、期待金利がわずか2%上がっただけで、
既発国債(約1000兆円)が10%は下がります。
低金利の国債は、国債価格の過剰評価、つまり、国債の価格バブル
を生むのです。バブルは、金利が正常化(3%になること)すれば、
崩壊します。
このとき、100兆円の不良債券が、国内金融機関に発生してしまう
のです。国内の金融機関も、損を怖れて売りに転じることになる。
◎金融市場は、まだこの、外人による国債債売りの、可能性の認識
をしていないように思えます。
なぜ、日本の増発され続ける国債の金利が、短期債で0.15%、長
期債で1.03%と、(異常に)低いままなのか。原因を調べていて、
2011年の外人買いのデータに遭遇したのです。
どう考えても、2012年も外人が円国債を買い越すとは思えません。
ポートフォリオ(分散投資)での円債の、保有ポジションが、100
兆円は大きくなっているからです。どうお考えでしょうか?
日本経済(政府と金融機関)にとっては、PIIGS債の償還が増える
2012年の1月から3月までに、ユーロ危機が深刻になって、ヘッジ・
ファンドからユーロ債が更に売られ、その資金で円債の買い超が続
き、円高($1=70円;1ユーロ=80円等)になることが望ましい。
円高は輸出の製造業(輸出額で1ヶ月6兆円:年間72兆円)にとって
は、円での売上が減って、困る事態です。しかし、国債を売る政府
財政にとっては好ましいのです。通貨は、「多角度から」みなけれ
ばならない。
世界で、毎日の経済ニュースのトップとして、通貨変動が報じられ
るのは、1日で500兆円もの世界の外為市場で、通貨価値が日々変動
していて、それが経済に大きな影響を及ぼすからです。
■6.10年スパンでの、デ・レバレッジの時代に向かう
銀行の不良債券が巨額化し、事実上では自己資本が消えた時期に、
世界の中央銀行の中央銀行であるBIS(国際決済銀行)は、世界の
銀行に対し、自己資本比率を上げることを要求しています。
(注)米国の銀行に対しては、BISの傘下であるFRBが、第一段階と
して、リスク資産に対する中核的自己資本の下限を5%超にし、
2019年までに、その下限を、7.0%~9.5%に上げることを決めて
います。
同時に、現在は「安全資産」として、時価評価を逃れている国債に
対しても、AAA格から落ちたものを、BISはリスク資産にするという
ことも、言っています。世界でAAA格は、英、スイス、ドイツ、フ
ランス、カナダ、オーストラリア債です。米国債は昨年8月から下
がってAA+ 日本債、中国債はAAマイナスです(S&P:2011年)。
近々、フランス債と英国債も下がるでしょう。
格付け機関の「いいかげんさ」は、サブプライム・ローンを含んで
証券化したデリバティブ(MSB、RMSB、ABC)のシニア債をAAA格と
したときから露呈しています。
しかし実際には、年金基金等が買うときは、安全なAAA格の証券に
限定されます。格付けが下がると、保有する国債を売らねばならな
い。会計監査ではねられるからです。
米欧の年金基金(Penshion Fund)は、巨大な機関投資家であり、
国債や、米国で多い州債(地方債)の買い手です。国債も、買い手
が少なくなれば、下落し、金利が上がります。格付けの下落は、市
場での国債の買い手にとって、大きな問題なのです。
デ・レバレッジは、金融機関の自己資本に損害が生じ、銀行システ
ムの信用創造力が減少したとき生じる「信用恐慌」です。具体的に
は、銀行が貸付金を減らすことを迫られて、同時に、価格変動があ
る証券(株や社債)とAAA格以外の国債を売ることになる。
結果は民間のマネー・ストックが減少です。マネー・ストックが
10%も減れば、実体経済の投資と購買も急減し、100%の確率で恐
慌になります。信用恐慌といわれるものがこれです。
【銀行の損失とマネー・ストックの急減】
リスク資産(貸付金と証券)を100兆円もち、自己資本が8%(8兆
円)あった金融機関に、仮に3兆円(3%)の損が生じたとします。
この銀行は、いくらのリスク資産を減らさねばならないか?
自己資本が5兆円に減って、8%の自己資本比率にしなければならな
い。5兆円÷8%=62.5兆円です。
結果は[100兆円-62.5兆円=37.5兆円]の貸付金回収と、国債、
社債、株の売りです。マネーストックが37.5兆円(37.5%)も減
ることと同じです。
3兆円の損害で、12.5倍の37.5兆円の信用収縮です。デ・レバレ
ッジによる信用恐慌になります。1000兆円の不良債券に対し、デ・
レバレッジが起これば、もうそれはマネーの消滅です。デフレ型恐
慌どころの騒ぎではない。
日本のバブル崩壊期(1990年~)にも、BISは国際業務を行う日本
の銀行(都銀)に対して、8%の自己資本を要求しています。これ
が、銀行が企業と持ち合っていた株の(継続的な)売りを生み、貸
付金の回収も生んだのです。
ただし当時は国債は安全資産とされていました。このため日本の銀
行は株を売り、同時に貸付金を回収で入ってきたマネーで、国債を
1年に40兆円も増加買いしていたのです。国債が増えた原因は、超
低金利債が安全資産とされて銀行、保険会社、郵貯・簡保に売れて
いたからです。本来は、国債金利が3%くらいに上がって、政府財
政の拡張に歯止めが必要だったのです。
(注)BISによる「AAA格を落ちた国債をリスク資産にする」という
発令は、、まだ出されていません。予告の段階です。
BISの自己資本規制を守ることができない銀行は、国際業務(海外
銀行との貸し借りや外為業務)ができなくなるため、事実上の破産
状態になります。
◎BISやFRBが、なぜ100年サイクルでの、1929年を超えることが想
定される世界の金融危機の時期に、銀行の自己資本を高める規制を
強化するのか、理解不能です。世界を、意図的に、信用恐慌に陥れ
る策としか思えません。
現在の、不良債券を巨額に抱えてしまった世界の銀行に、自己資本
比率を高めることを要求すれば、信用恐慌を生んで、マネー・スト
ック(世界ではGDPの3年分;1京5000兆円)を急減させることは、
100%わかりきったことだからです。実行しないことを言う、リッ
プ・サービスなのか?
BISが、世界の中央銀行が売ってきたゴールドを買い占めた金融一
派(デル・バンコ)に支配されているとすれば、暴落した世界の銀
行株と国債を、底値で買い、その後の世界の金融を、支配するため
と思えます。恐慌は、株と国債の底値での買い手にとっては、未曾
有のチャンスになる。
(注)東京が、米軍の空襲に襲われ、燃えさかっている最中に、二
束三文で、宮家の土地を買い漁ったのは、西武グループ(提康次郎
氏)でした。戦後の、物価・資産が300倍に上がったハイパー・イ
ンフレで巨大資産になっています。東日本大震災のあとにも、小規
模ですが、仙台等でこれが見られます。
銀行の国有化と言っても資金源は国債です。暴落しているギリシア
債を更に下げ、底値で買えば、その後のギリシアの金融を、国債を
買ったところが支配できます。国債に価格がつくのは、売り手と買
い手が、同量あるからです。買い手は、誰になるか・・・です。
米国発の1929年からの世界大恐慌でも、ある銀行による株、不動産、
国債の底値買いがあり、10年後の回復期には巨大資産になったので
す。恐慌の時期は、5年や10年後を長期で見る必要があります。
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