破滅するユーロか、破滅する国家か
2011-11-20

共通通貨ユーロは国家の主権から、通貨発行権すなわち金融政策を奪った。
吸血こうもりたる国際金融資本は国家に貸付け、さらに貸付け、その損失を借りた国家と国家連合に補填させる。
借りた国家は通貨発行権を喪失しているために、インフレに逃れることさえできない。
財政の超緊縮によって窮乏化が進み税収は減り、ますます財政悪化がスパイラルする。
永遠の窮乏化が想定されてしまう。
「ギリシャを解体、山分けする国際金融資本」。
ユーロはギリシャ国民の国民投票の権利さえ抑えこんで、政権を転覆させた。
支援と称する金融資本への支援金と借りた国家への又貸し金は、国民がツケを払わされる以外にない。
してみると、このユーロなる制度は金融資本の焼け太りを、欧州国民の窮乏化で賄おうとする制度であることが明らかだ。
ユーロとヨーロッパの経済危機については「ヨーロッパの危機」、「ユーロの危機は労働階級を試練にさらす」「ギリシャの危機拡大はEUの危機!」を御覧ください。
また、共通通貨ユーロの最初からの基本的な欠陥については「世界通貨戦争(14)ユーロは夢の終わりか」、「通貨戦争(29)動けなくなったユーロ」、「通貨戦争(41)ユーロは凋落、デフレと円高は悪化へ」を御覧ください。
ギリシャはかつての通貨ドラクマの、印刷機を捨てていないことを祈る。
かつて、fxdondon氏がよく引用していたルービニ教授は、リーマン・ショックを正しくも予測したことで知られる。
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ユーロ危機、考えられない事態について考える 11/9 英フィナンシャル・タイムズ紙 11/11 JBpress
果たしてユーロ圏は存続できるだろうか? ギリシャの一件を受け、フランスとドイツの首脳はこう問いかけている。
もし政策立案者たちが20年前、現在彼らが知っていることを理解していたら、決して単一通貨など発足させなかっただろう。
ユーロ圏は今、崩壊がもたらす結果に対する恐怖のみでつなぎ止められている。問題は、それだけでユーロ圏を維持できるかどうかだ。筆者の考えるところ、その答えはノーだ。
これまでのところ、危機収拾の努力は失敗している。確かに、ユーロ圏の指導者たちは、民主的な正当性を求めたギリシャのヨルゴス・パパンドレウ首相の破壊的な願望は始末した。しかし、金融の逼迫はイタリアとスペインに定着している。
実質金利が約4.5%、経済成長率が1.5%(2000~07年の平均)のイタリアは、国内総生産(GDP)の4%に近いプライマリーバランス(利払い前の基礎的財政収支)の黒字を今後ずっと維持しなければならないのだ。
しかし、債務比率があまりに高すぎる。そのため、プライマリーバランスの黒字を大幅に増やすか、成長率を大幅に高めるか、金利を低くするしかない。シルビオ・ベルルスコーニ首相の下では、これら必要な変化のいずれも起きる見込みがない。では、首相が代われば解決するだろうか? 筆者はそれも疑問に思う。
理解されてこなかった危機の本質
全体を通じて言える根本的な問題は、危機の本質が理解されていないことだ。ニューヨーク大学スターン経営大学院のヌリエル・ルービニ氏は最近の論文*1で、本質を突く主張を展開している。
筆者が10月4日付の本紙(英フィナンシャル・タイムズ)のコラムで述べたように、ルービニ氏もストック(資産・負債)とフロー(収支)を区別する。重要なのはフローの方だ。対外競争力と経済成長を回復させることこそが絶対に必要なのである。
ドイツ銀行のトーマス・メイヤー氏が指摘している通り、「表面に見えているのはユーロ圏の公的債務危機と銀行危機だが、その下には域内の実質為替レートのミスアラインメント(適正水準から乖離した状態)が引き起こした国際収支の危機が隠れている」
弱い国が競争力を取り戻して初めて、この危機は終わる。現在、弱い国の構造的な対外赤字は、自発的な融資で賄うにはあまりに大きすぎる。
ストックとフローの課題に同時に取り組む方法として、ルービニ氏は4つの選択肢を挙げる。
ルービニ教授が挙げる4つの選択肢
1つ目は、積極的な金融緩和、ユーロ安、ユーロ中核国の景気刺激策により、経済成長と競争力を回復させる道だ。一方で周縁国は緊縮財政と改革に取り組まねばならない。2つ目は、周縁国のみが構造改革とともにデフレ調整を実行し、名目賃金を押し下げる道。
3つ目は、中核国が競争力のない周縁国に恒久的に融資し続ける道。そして4つ目は、広範に債務再編を実施し、ユーロ圏を部分的に解体する道だ。
最初の方法ならば、大したデフォルト(債務不履行)もなく、調整を実現できるかもしれない。2番目の方法では、フローの調整が間に合わず、結局4番目の道筋に移行する可能性が高い。3番目の方法では、周縁国でストックとフローの調整を回避できる代わり、中核国が支払い不能に陥る恐れがある。4番目の道は単純に終わりを意味する。
残念ながら、すべての選択肢に大きな障害がある。
第1の方法は、経済的にはうまくいく可能性が最も高いが、ドイツにとって受け入れ難い。2番目の方法は、政治的にはドイツに受け入れられる(ただし、経済に悪影響を及ぼす)が、最終的に周縁国が受け入れないだろう。
3番目は、ドイツにとっては政治的に受け入れ難く、結局周縁国でも受け入れられない可能性が高い。4番目は、たとえ今だけにせよ、すべての関係国にとって受け入れ難い。
現在起きているのは、2つ目と3つ目の不幸な混合、つまり、一方的な緊縮政策と不本意な資金援助が混じり合っている状態だ。
この状況は、1つ目の道に転化する可能性があるとメイヤー氏は論じる。同氏によると、欧州中央銀行制度(ESCB)は最後の貸し手の役割を担うことで、市場で資金を調達できない銀行を助けて国際収支の赤字分を埋めていくことになるという。
その結果、黒字国の中央銀行は欧州中央銀行(ECB)に対して貸付残高を増やし、赤字国の債務はその分膨らんでいく。
これは財政移転同盟だ。メイヤー氏によれば、国際収支の赤字を金融によって埋めていくと、長期的にはインフレを誘発し、結果的にルービニ氏が挙げた1つ目の選択肢に至るという。実際にインフレの危険があるかどうか、筆者には分からない。しかし、ドイツは間違いなくインフレを懸念している。
調整か崩壊か
長期的には、ルービニ氏の言う1つ目と4つ目の可能性が最も高いように見える。つまり、ユーロ圏全体が調整を行うか、ユーロ圏が崩壊するかだ。
ドイツは前者の道を行くリスクを受け入れなければならない。ドイツの悪夢が1923年のハイパーインフレだということは分かる。しかし、アドルフ・ヒトラーが権力を握ることになったのは、1930~32年の厳しい緊縮財政の結果だった。
問題は、ユーロ圏からの離脱が、世界を吹き飛ばすことなく実行可能かどうかだ。まず、ギリシャのような競争力に乏しい国では、離脱は協調的に実施できるという判断を起点にして考えてみよう。ギリシャは通貨「新ドラクマ」を導入する。ギリシャの法律下で結ばれた新規契約や、ギリシャ国内での納税や支払いにはこの通貨を使う。既存の契約には引き続きユーロを使う。
銀行は既存のユーロ建ての口座と新ドラクマの口座を両方持つことになる。新通貨の対ユーロ相場は市場で決める。新通貨は急激に価値を下げるだろうが、それこそ本当に必要とされていることだ。
ギリシャ政府は、改定された国際プログラムの条件に従って行動する。新通貨は急激に実質価値を下げる可能性が高く、政府はそれに助けられ、引き続き財政均衡化に努めることになる。
ギリシャの中央銀行は新通貨を独自に管理する。新通貨での物価水準は急騰するだろうが、余剰生産力があることを考えると、外部からの支援がいくらかあればハイパーインフレは回避できる。
ユーロ建て債務のデフォルトは、公的部門でも民間部門でも、かなりの規模になるだろう。しかし、もし新通貨に移行せず、対外競争力を取り戻すために国内のデフレを長引かせると、やはりユーロ建て債務の実質価値は急上昇する。この対策は事態の進行を加速させるだけなのだ。離脱すれば、ギリシャはECBでの投票権を失うことになるが、取り戻す可能性は残る。
このように新通貨の導入に協調的に取り組むことが、最も代償が小さくて済む方法だろう。しかしこのやり方は、間違いなく他国への波及を招く。
ユーロ圏の決断
ユーロ圏がその脅威を回避すると決めたのなら、ルービニ氏が示した1つ目の選択肢に戻らざるを得ない。潜在的に支払い能力がある国に資金を融通し、ユーロ圏全体は成長することで危機を脱するのである。
一方的なデフレ調整を基盤としたユーロ圏は頓挫する。恐らく、これは間違いないだろう。ユーロ圏の首脳たちがそのような方針を主張するのなら、その結果も受け入れなければならない。
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