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もうすぐ北風が強くなる

小出裕章:視聴者の9つの質問に解説

  小出裕章氏が視聴者からの9つの質問に解説したもの。

   11/6  「ざまあみやがれい」氏の書き起こしから

2011年11月5日(土)、小出裕章氏がニコニコ生放送に出演し、寄せられた質問に答えました。

※小出氏入室

アナ「よろしくお願いします」

小出「よろしくお願いします。座っていいですか(笑)」

男性「あのー、じゃああのー、えっとー、今日のインタビューよろしくお願いします」

小出「はい。よろしくお願いします」

男性「あのー、ちょっとこの部屋なんですけれども。長野県の上田市にある、ま、信学会という予備校の一室で。先程はじつはあの、まあ高校生向けに原子力の話をですね。されていたわけですけれども」

小出「はい」

男性「えっと、ちょっとその感想というか。若い人からも質問あったとおもいますけれども。いかがだったでしょうか」

小出「いいですね。若い人って(笑)。まあこれから‥‥、彼らが‥‥、まあ生きて行く。そしてこの、日本っていう国‥‥をつくっていってもらわなければいけない。私としてはこんな放射能で汚れた国を彼らに残すということ、大変申し訳ないし気も重いけれども。もう、どうしようもない。それしかない、わけだし。やはり若い人達がしっかりと自分の頭で考えてくれると、いうことだけが希望ですので。えー一人ひとりの若い人がちゃんと考えようとしてくれると、いうことをみると、やはりちょっと、希望というか、嬉しく思います」

男性「なるほど。分かりました。じゃああの今日はですね、えーっと、まあニコ生ユーザーの質問をですね、どんどんぶつけてこうお答えいただくと」

小出「はい」

男性「いうことなんですけれども。まあ大きく3つに分けてですね。まあ30分ぐらい、ちょっとお話伺いたいなと。1つ目は、えーと、まあ現在の福島原発のですね、まあ状況についての質問が幾つかありますので、それについてお答えいただきたいと。それから、まあいろんなところに放射性物質が拡散してしまってですね、まあ色んな生活への影響が及んでいるわけですが。それに関していろんな不安があってまあ情報知りたいということで、それに関しての質問もあります。でもう1つはそれ以外の、小出先生自身のことも含めてですね、あの、質問来てますので」

小出「(笑)」

男性「まあ大きく、3つの構成で伺いたいなと思います」

小出「はい」
………………...
男性「えーとではですね、まず早速ですけれども。福島原発に関してですね。えーっと、これはですね。長野県の44歳の男性から来てる質問です。えー先日、えー福島、え原発の2号機で放射性キセノンが検出されましたが、東京電力は臨界は起きていないと言っています。これについての小出先生のえーご見解をお願いいたします」

小出「はい。えー。初めに私が、疑ったことがまずあって。えー東京電力がキセノンを検出したと発表した、その発表自身がひょっとすると間違いかもしれないと疑ったのです。それはこれまでにも東京電力はクロル(※塩素)38という放射性物質を検出した、あるいはヨウ素134という放射性物質を検出したと、いう発表をしたことがありました。それで、もしそういう放射性物質が検出されたということであれば、臨界を疑う以外にないと私は発言をした、のですが。

え‥‥私自身は実は原子炉の中で臨界、まあ再臨界というのですけれども、再臨界が起きる可能性は限り無く低いと、思って、きた人間で。多分ないはずだと思っていたのですが、クロル38、あるいはヨウ素134を検出したというなら、もう再臨界を疑う以外にないという発言をしました。えーところが、発言をしてしばらくすると東京電力が自分の測定が間違いでしたと、いうことで撤回してしまうと、いうことできたのですね。

今回もキセノン133,135を見つけたと言ったわけですが。また彼ら間違えてる発表をしたかなと、いうふうに思いました。ただし、えー‥‥、すでに事故から7ヶ月以上たっていて、彼らとしてもそれなりの、まあ間違った発表をしてきたという経験もしているわけですから。自分が今度のことに関しては間違わないようにデータを見なおしてから発表したんだろうなあと思いました。そうであるとすると、可能性は2つだと思いました」

男性「そのキセノン‥‥」

小出「はい。キセノンが本当に検出したということであれば、それを説明する可能性は2つ。

1つが自発核分裂という、現象でキセノンが出来てきてるという。えーもう1つは前から言われていたような再臨界というのが起きていると。2つしか可能性がないと思いました。

ただし、私自身は、今聞いていただいたように再臨界の可能性というのは多分ない、と思ってきた人間ですので、自発核分裂で出てくるキセノンで今回東京電力が検出したという量が説明できるかどうか、それだけがネックだというふうに、あの‥‥マスコミの取材にも答えていました。

え‥‥そのあとで、東京電力の発表で、今回彼らが検出したキセノンは自発核分裂で出てきたものとして説明できると、いうことを彼らがいいましたので、私は多分それでいいだろうと思います。現在の状況は多分そうだろうと思います。」

男性「そうすると。まああのー、まあ整理すると、まあ東京電力のですね、あのー会見で、えー自発核分裂であって再臨界ではない、可能性が高いと。いうことを言ってますが小出先生もそれに同意されているということですね」

小出「はい、えーっと。再臨界の可能性が、絶対ないとは私は思わないし、えーひょっとすると今も再臨界がないとは言えないのですが。え、自発核分裂自身が、もうあの‥‥人間がコントロールできるということではなくて。必ず起きているわけだし、え‥‥そこからキセノンが出るということはあたり前のことなのであって。それで説明できるということであれば、今は再臨界を疑う必要は私はないと思います。」

男性「はい。あのーまあそのー、今再臨界の可能性ということについて、あの元々その小出先生はえーその可能性は低いというふうに考えてらっしゃったとおっしゃいましたが。それはなぜですか」

小出「えーまあ、世界には色々な原子炉が、ある。そして日本で使っている原子炉、福島第一原子力発電所もそうですけれども、いわゆる米国製なんですね。私たちが軽水炉という言葉で呼ぶ原子炉なんですが。その原子炉では、原子炉を設計するときに、燃料をこうこうこうやって配置をする、しようよと言って順番に設計してくわけなんですけれども。

原子炉の形がまともに保たれてる時に一番核分裂の連鎖反応が維持しやすいという、そういう形で設計するのです。えー、ですから形が少しでも崩れて、しまう‥‥燃料棒が壊れて崩れ落ちる、あるいは融けてしまうということになると、核分裂の連鎖反応はどんどんどんどん起きにくくなるという、そういう原子炉なんですね。」

男性「なるほど、はい」

小出「で、今回の場合には燃料がボロボロに壊れてしまって、すでに融けてしまったと言ってるわけですから。核分裂の連鎖反応が起きるという条件からは、どんどんどんどん離れていく方向にいっていると。だから、再度また核分裂の連鎖反応が起きるという可能性は‥‥どんどん少なくなっていっているはずだし、ごくごく特殊な条件が生み出されない限りはないと私は思っている

男性「なるほど、なるほど。そうすると、まあ、いわゆるその自発的‥‥単発的な核分裂というものは、まあ散発的に起きていたとしても、いわゆるその核分裂が連鎖的に起きていく、まあ臨界という状態には達しているというふうには考えにくいということなんですね」

小出「多分今は起きていないのだろうと、私は思います。もちろん可能性を全部否定してるわけではありませんけれども。もちろん注意はしなければいけないけれども。今回東京電力がキセノンを検出したということに関する限りは、自発核分裂だということで、言っていいだろうと思います」

男性「なるほど、分かりました。じゃあえっとですね。じゃ、次の質問にちょっと行きたいと思いますが」

小出「はい」
 ………………..
男性「静岡県の46歳の男性からですけれども。えーっと、現在福島原発のメルトダウン、まあ炉心溶融は、どのくらいの深さまで到達しているのでしょうか、という質問です」

小出「わからない、のです。ええ。まあ、東京電力も国もすでに炉心がメルトダウンしたと、いうことは認めているのですね。それで炉心がメルトダウンをしてしまうと、原子炉圧力容器という鋼鉄製の圧力釜の底に落ちてしまいます。

それで、圧力容器そのものは厚さ16センチあるというまあ巨大な圧力釜、なのです。ただしそこに2800度を超えたウランの、まあ融けた塊が落ちていく、それが100トンもあるのですよね。

ですから……いくら16センチも厚みがあったとしても鋼鉄というのは1500度を超えたら融けてしまいますので。まあいずれは融けるというのが当たり前なのですが。

福島第一原子力発電所の原子炉というのは、え……先ほど軽水炉と私は呼びましたが、軽水炉の中でも沸騰水型という、形の原子炉なんですね。その沸騰水型という原子炉は、その、圧力釜の底にですね、何百もの穴が空いていて、そこに制御棒駆動機構というパイプが突き刺さっているのです。え…そのパイプはごくごく薄いパイプ、なのです。

そこにその融けたウランが落ちてくるわけですから、圧力容器その本体が融けるか融けないかにかかわらず、そのパイプは簡単に穴が空いてしまうというそういうもの、なんですね。

穴があいてしまえば融けた炉心がさらにその下に落ちてしまうということは当たり前のこと、なわけで。圧力容器はもうすでに底が抜けてしまっていて、水もためることができない。それで融けたものは圧力容器の底を貫いてさらに下に落ちているという状態なんですね。じゃあ一体どこに落ちているかというと、格納容器と私たちが呼んでいる、さらに大きな……」

男性「その周りにある……」

小出「はい。容器のあの……底に落ちている。ただその底、落ちたその場所というのは、え……、格納容器は厚さ3センチの鋼鉄製ですけれども、おち、融けたウランが落ちるその場所は、コンクリートの分厚い床がある、のですね。コンクリートの床の上に融けた塊が落ちる。そうするとコンクリートを今度は融かして破壊しながら、下に落ちて行くわけですね。それでいつかその格納容器の鋼鉄に接した段階で格納容器というものの底を抜く、わけです。

え…格納容器というのは放射能を閉じ込める最後の防壁、になってるわけで。その鋼鉄が破られてしまえば、あとはもう、なす手がない。まあ地下にめり込んでいくというそういう状態になるはずなんです。

え……でも東京電力自身は……今回の事故が起きてから約10日経て、あとに、電源を回復したんですね。発電所の中の。電源が回復したということは、ポンプが動くということですし水を流せるということになったわけで。それ以降なんとかその融けた原子炉を冷やそうと、努力を続けてきているわけで。えーその努力がそれなりにもし実を結んでいるんだとすれば、格納容器の底に落ちた、えー、融けたウランというものに、何がしかの水が届いてるはずだし。

その融けた塊がいったいどこまでコンクリートを壊し、格納容器の鋼鉄を壊してるかというのは、その……水をかけてどこまで冷やしていられるのかというのとのせめぎあいで決まってる、のですね。でもそのせめぎあいで、どこまでいってるかということがわからないと。近づいて見る事もできないわけですし。それを知ることができるような計測器もないということで。今はよくわからないのです」

男性「なるほど。結局それがある意味、推測するしかないという世界で」

小出「そうです。はい」

男性「でそれは、東京電力が知っていて発表してないというわけではなくて。東京電力自身がその、把握できないという状況になってると……」

小出「そうです。あのまあ、今回の事故で、正確な情報が、私がなかなか得られないという、状況がずうっと続いたのですが。その理由は2つあって。

1つは、え……今回の事故を起こした最大の責任は東京電力と日本の政府にある、と思うのですが。つまりまあ責任というか……うん……まあ犯罪を彼らが犯したと私は思っている、のですけれども。え……その彼らは情報を握ったまま自分の都合の悪い情報をなるべく出さないというそういう作戦に、出ているわけですね。ですからなかなか正確な情報が私に届かないということ、私あるいは皆さんに届かないということが1つあるし。

もう1つはもっと深刻であって、彼ら自身が正確な情報を知りえないという、そういう状態にあるのです。ですから今融けた原子炉の炉心がどこにあるかということも正確にはわからない……。

でも私自身はすでに格納容器の底をすでに抜いている可能性もあるのだから、それに対処できるように地下に……バリアーをはらなければいけないと5月の中頃から言っているのですけれども。国も東京電力も今のところは動こうとしないというそういう状態が続いています」

男性「なるほど……。わかりました。まだちょっと色々、福島原発のこと、聞きたいこといっぱいあるのですけれども。ちょっと時間もあるので、ちょっと次の質問にですね、移らせていただこうと思います。じゃあお願いします」
……………….
女性「はい。それでは栃木県の39歳の女性の方から頂きました。2歳の7歳の娘を持つ母です。ガイガーカウンターを購入予定ですが、どの商品がよいのかわかりません。何かアドバイスを下さいというメールを頂きました。」

小出「はい。えーどれでもいいです。」

※会場笑い

小出「というのはどれでも駄目だということでもあります。

えー。皆さんが買えるような放射線測定器というのは、まあ多分何万円かはするかもしれない。高いものを買えば何十万円かはするかもしれませんが。いずれにしても簡易型の放射線測定器、です。それで放射線を測定するということは、まあ、私が言うと申し訳ないけれども。それなりに大変なことであって。それなりに専門知識がなければいけないし、その専門知識で使え……初めて使えるような、え……特殊な測定器がなければ、ちゃんとした測定ができないというそういうもの、です。(咳)。

ですから皆さんが、買えるような簡易型の測定器を、例えば、今10個ここに並べるというようなことをすると10個が10個全部違う値を、示します。で、そしてその10個をまた別の場所に持っていくと、またその場所でまた、てんでんばらばらな数値を示すという、そういうもの、なのです。ですから。

あの……買って、例えば1時間あたりここで1マイクロシーベルトという数字が出ちゃって大変だと、そういうようになんか皆さんは使いたがる、わけですけれども。そういう使い方はして欲しく、ない。と私は思います。

ただし、え、使い方によっては役に立つと。私は思っています。

どうやって使うかというと。例えば1つ買った。その1つ買った測定器を、例えばこのテーブルの上で測ってみる。そして、同じようなテーブルがある場所でまた、こういう大きさの部屋で、こういうテーブルの上、そして同じくらいの部屋で、同じようなテーブルの上。条件を揃えて測るのであればどっちが高い、どっちが低いという、そういう情報は得られる。と思います。

ですから、道路なら道路にいってこの道路の上で1メートルのところで測って、別の道路で1メートルのところではかる、いうような条件を同じにして測れば高い低いはわかるという、それは役に立つと思いますし。それぞれの家庭で、例えば庭の真ん中、庭の端っこ、あるいは雨樋の下と、いうような場所を変えながら測っていけばどこが汚染が強いというそういう目安にはなると、思います。」

男性「なるほど。」

女性「わかりました……」

男性「まあ今のはあの……、原発の話じゃなくて放射性物質のね、影響についてどうやって対処したらいいのかっていう質問だったんですけれども。もう1つそれに関するような質問もきています」
 ………………..
女性「えーとアメリカから女性の方です。チェルノブイリでは狼その他の動物が元気に生きているという番組を、あの、見たということなんですが。環境に適応しているということですが。だとしたら人間も今までより放射性物質の多い環境に適応していくということも考えられるのでしょうか、という質問ですが」

小出「(笑)。ないです(笑)。」

女性「ないですね」

小出「チェルノブイリでももちろんあの、動物はいっぱい生きていますよ。でも多分あの、その動物の中では癌で死んでいる動物も多分たくさんいると思います。

ただ、動物からみると最大の害悪は人間なんですよ。ですから人間がいなくなった場所は動物にとってのサンクチュアリになってる。だからチェルノブイリの周辺は動物のサンクチュアリ、ですよね。

でもサンクチュアリになったから動物は幸せに放射能に耐えられるように生きているかといえばもちろんそうではなくて、人間からはやられないで、彼らは幸せだけれども、放射能で被曝をすることであの動物だって多分病気になって死んでいっているんですよ。

ですから仮に人間がチェルノブイリの周辺あるいは福島の原発の周辺で生きるということにすれば、人間もまた放射能で被曝をして害悪が起きるということになるわけだし。で人間の場合には一番害悪を振りまく人間がそこにいて、上から押さえつけられることがない、わけで、病気だけがだから増えていくという、そういうことになると思います。」

男性「なるほど。分かりました。ではちょっともう1つ、放射性物質に対する対応っていうことでですね、ま、ある意味その周りにある放射性物質、まあ放射能がなくなればですね、ま僕ら安心出来るわけですけれども。えーっと千葉県の男性から来てる質問なんですが。
……………………..
え……放射性物質を中和したり消滅させたりするための研究はなされているのでしょうか。えー莫大な予算を何百年とかければ時間をかければそのような技術が開発される可能性というものはあるのでしょうか、という質問です。」

小出「はい。えー。人間が原子炉を作ったというのは1942年なんです。先の戦争中ですけれども。えー米国という国が原爆を作りたくて。原爆を作るための材料……プルトニウムというものを作るために原子炉を作ったのが初めてなんですね。

それからすでに70年経っているのですが。その原子炉を作った時から学者はみんな知っていた。つまり原子炉を作ってしまえば核分裂生成物という放射能を作ってしまうと。それを無毒化できなければ大変なことになるってことは知っていた。だから研究は始まっているのです。えー、なんとか無毒化したいという研究が始まって70年きたのですが、できないのです。」

男性「研究はされてるけどまだできてない」

小出「そうです。原理的にはできるということが分かっているのです。

え……例えば中世という時代があって、いわゆる科学の場では中世というのは錬金術の時代だった、のですね。亜鉛を金に変えられないかとか、錫が銀にならないかとか、いうようなことをさんざん研究しました。酸で溶かしてみたり、アルカリで溶かしてみたり、沈殿を作ってみたり、合金を作ってみたり、もうあ……こんなことまでやるかというようにもういろんなことをやった。そのいろんなことをやった結果が、現在の化け学、化学、ケミストリーというのの、まあすべての基礎を作ったというほど立派な仕事をした、その中世の錬金術は。

しかし、錬金術は敗退したんですね。亜鉛は亜鉛で金にはならない。錫は錫で銀にはならない。結局元素の変換はできないということで敗退したんですけれども。

実は錬金術は出来た、のです。なぜかといえばウランという、元素を核分裂させてしまえばもう様々な何百種類もの元素が、まあ、核種、放射性物質が出来る

え……量が少なくていいなら金だってできるし、白金だって出来るしって。錬金術できた、んですよね。

ですから、ある元素、ある原子核を別の原子核に変える、別の元素に変えるということは、原理的にはもう出来るということがわかった、のです。

ただしそれをやろうとすると、膨大なエネルギーが必要な、まあ産み出してしまった放射能を無毒化する、別のえ……無害ということではないけどまあ害の少ない放射……核種に変換するという核変換ということが原理的にはできるということが分かっているけれども。それをやろうとすると膨大なエネルギーがまず必要になってしまう。

元々原子力発電ってのはエネルギーが欲しいということでやっているのですけれども、原子力発電で出てきたエネルギーを全て投入しても、作ったものが消えないというんだったら意味が無いと、いうことになってしまうわけだし。

え……もう1つの問題は無毒化しようとして、えー作業をすると逆に新たな放射性物質が生み出されてしまうというそういう副次的な反応がどうしても避けられないということがあって。

え……実際上できないという壁を超えられないまま、こんにちまで来ているんです。その壁は、とってもその高い……高くて厚い壁なので、え……これから超えられるというふうに私は、断言できないのですね。でも超えたいと思うし、なんとかそういう……核変換、というような技術を手に入れて私たちの世代で作ってしまった毒物を少しでも……後世の人々に負担にならないようにしたいと思いますけれども。なかなか難しそうだと思います。」

男性「なるほど……、はい。わかりました。じゃあえっとですね。えーと……じゃあちょっとですね、瓦礫処理についてですね。

今、非常にあの大きなニュースになっているんですけれども。あのーそれに関してあの、先ほど和歌山県の33歳の主婦という方から質問がきています。
…………………...
えー国は汚染瓦礫を全国に拡散して焼却または埋め立てしようとしています。このように拡散させても人体への影響は大丈夫なのでしょうか。えーまた拡散以外に処理方法はないのでしょうか、という質問です」

小出「はい。えーとまず人体に大丈夫なんでしょうかっていうご質問でしたけれども。放射能に関する限り大丈夫という言葉を決して使ってはいけません。大丈夫とか安全とかいう言葉はけして使ってはいけない。どんなに微量な被曝でも危険はかならずあると、いうことであって。どこまでなら自分として我慢できるかというそれだけのことでしか、ありません。

そして今質問してくださったように、日本の国は放射能の瓦礫を全国にばらまいて、えーそこから出てくる焼却灰等を全国で埋め捨てにしてしまおうということをしている、のですね。それは全く正しくないやり方です

で……元々その瓦礫がなんで問題になるかというと、放射能で汚れてるからというんですね。じゃあその放射能というのは何だったのかと言えば、東京電力福島第一原子力発電所の原子炉の中にあったものなん……あるべきものだったんです。東京電力の所有物なんです。それを彼らが勝手にばらまいた、んです。でも、元々東京電力の所有物なわけですから、本来であれば東京電力にお返しするというそういう筋のものなんですね。ですから全て東京電力に返すのが私はいいと思いますし。全国にばらまいて埋め捨てにするなんてことは到底やってはいけないことなの、です。

ただし、ですけれども。私が願っていることは人々の被曝を少なくするということです。そして特に子供たちの被曝を少なくするという、ことです。えー……今現在福島周辺に膨大な汚染の瓦礫があって、それをこのまま放置をしてしまえば、福島の子どもを含めて福島県の人たちが被曝をやはりしてしまうということになりますので、私はなんとかその事態は避けたいと思っています。ただし残念ながら福島だけで引き受けることができる量ではありません。瓦礫が。ですから、え……汚染の強いものは出来る限り福島県内、で、避難、いや処理すべきだと思うけれども。ある程度のものはやはり全国で引き受けてやるしかないだろうと私は思います。

ただし、今現在ある焼却施設でそれを燃やしてしまうと、空気中に放射能をばらまくことになりますので、もし瓦礫を全国の自治体で引き受けて燃やすというのであれば、その焼却施設に放射能を撒き散らさないようなフィルター、端的にいうとフィルターなんですけれども。排気施設を作らなければいけない。それを作った上で初めて引き受けるということをやるべきだと思います。

そして焼却灰が出て来るのですけれども。その焼却灰を埋めるなんてことはもちろんしてはいけなくて

それはさっき聞いていただいたように、東京電力の所有物なわけですから、東京電力にお返しするのがいいと思います。どういう形で返すかというと、元々焼却施設の焼却灰はコンクリートの母材にした、んです。んで……これから福島第一原子力発電所は放射能を撒き散らすことを防ぐために巨大な石棺という、えーコンクリート構造物を作って閉じ込め作業をしなければいけませんし。地下には融け落ちた炉心がめり込んでいってるかもしれないので、地下に膨大なバリアーをはらなければいけない。そのためには膨大なコンクリートが要りますので、そのための材料に焼却灰を使う。つまり福島第一原子力発電所に返すというやり方がいいだろうと私は思います」

男性「なるほど……。はい、わかりました。」

女性「続いては」

男性「じゃあ3つ目というか、あの、最後小出先生ちょっと自身にですね、関する質問もたくさんきてますのでそれをちょっといくつか、お願いします」
……………………...
女性「それでは圧力についてなんですが。埼玉県の57歳の男性です。3月12日の午後、FMラジオで先生が話されたことに衝撃を受けました。しかしそれが事実であったことが次第に判明し、いつも本当のことを話されている姿勢に感銘を受けています。でも政府や東電などにとっては都合の悪いことも多いので何か圧力がかかったり嫌がらせをされたりするのではないかと、心配しています。実際そのような事はありませんかと」

小出「何もありません

女性「何も……?」

小出「はい」

女性「怖い思いとかをなさったこととかも」

小出「はい。」

女性「(小声)意外ですね……」

男性「(笑)」

女性「意外ですねって言っていいのか」

男性「不都合なことはないですか? 圧力まで行かなくても」

小出「何もありません」

男性「何も無いですか。なるほど。わかりました。あのーじゃあちょっとですね。これ、似たような質問かどうかちょっとあれですけど。逆に、その、一般の国民の方の反応ということなんですけれども。えーっとですね……ちょっと質問が来てたんですが。
………………….
えーっとー、その、この半年間いろんなところで講演とかされていて、えーっとそのー、一般の国民の人たちの意識の変化は感じられたでしょうか?、ということです」

小出「まあ私は……1970年から原子力発電を止めたいと思った、のですね。で私がそう思ったときには日本には3基しか原子力発電所がなかった」

男性「あーその時にですか」

小出「東海第一原子力発電所と、敦賀、美浜という3基しかなかった……。それからなんとか止めたいと思ってきた、のですが。日本人の多くの人は無関心……でしたし。国や電力会社は原子力発電所だけは絶対安全ですという宣伝を流し続けてきて。マスコミも全てがそれに乗ってきたわけで。殆どの人は気がつかないまま来てしまった、のですね。まあやむをえないことだった、のかもしれないけれども、私としては大変残念だったし、今回の事故を防げなかったのを言葉に尽くせず無念に思います。

ここまで来てしまったんだから、なんとか気がついて欲しいと、普通の人にもですね、思いますし。ん……(ため息)、まあ……少しずつでも気がついて来てくれてるのかなあと、思います。まあ今日だってこうやってニコニコ動画が私のことを流してくれて、それをどれだけの方が見てくれるのか知らないけれども。まあ何がしかの情報が今までは私が伝えきれなかったような広さで、広がりで広がっているわけですから。是非皆さんに気がついて欲しいと願います。」

男性「わかりました。さっきコメントでもですね。えっと自分も無関心だったというようなですね、コメントもありました。たしかにもう殆どの人達はですね、そうだったんだろうと思うんですよね。……分かりました。

じゃあですね、あの、ちょっとまた1つ質問がきています。えーっと東京都の38歳の女性からですが。
…………………...
先程の講義、拝聴させていただきました。これから原発を減らしていくためにも、原子炉を--今動いている原子炉を安定させ廃炉にしていく必要があるのではないかと。で、まあ、今後ですね、えーっと、まあ小出先生自身として、危険性を訴えるだけではなく、小出先生自身がその廃炉に向けた何か取組みをされるえーっと必要があるんじゃないでしょうか、まあ専門知識がある以上、専門家の責任ではないかと思うのですが、いかがでしょうかと。」

小出「はい。あの。もちろんですね。えー私は京都大学原子炉実験所というところで働いている、まあ一人の教員ですけれども。。……大学の教員というのは本来は学生を教育するのが仕事なんですね。でも京都大学原子炉実験所という私の職場は学生がいない、のです。工学部とか理学部、医学部、文学部とかいうそういう組織とは違って、学生はいない、のです」

男性「研究だけってことですね」

小出「はい。研究と、もう1つが、学生をお守りするかわりに原子炉のお守りをしろという、そういう仕事がある、のですね。ただ原子炉のお守りにもいろいろな仕事があって、運転をする人もいるし、えーその周辺の実験装置のお守りをする人もいるし、えー放射線管理をする人もいるし。

私は、あの、実は放射性廃物の管理の責任をする、負うというそういう部署で今仕事をしています。ですから実験所で毎日そういう仕事をしていますし、これからもし廃炉ということがまあ、「もし」じゃないな、必ず必要になるわけですけれども。私のやっている仕事は直接的にそれに関わっていますし、必ずやらなければいけないと思っています。

男性「わかりました。はい。じゃ、最後に、質問、というかちょっと要望なんですけれども」

小出「はい」

男性「えっといま、ニコニコ動画を見てるですね。えーっとたくさんの人が先生のお話を、Q&Aを聞いてたわけですけども。このカメラに向かってですね、えーっと見てる人たちに、対して何かメッセージ等がありましたらお願いします」

小出「はい。いつも皆さんにお願いしていること、ですけれども。私は、一介の原子力の場にいる人間、です。ま原子力の場にいるというのはかなり特殊な人間ですので。私に出来ることは私がやります。ただし私は、原子力以外のことは殆ど何も知らないし、何もできません。歌も歌えないし絵もかけない、し、詩も書けないし、大工さんじゃないから家も建てられないし、ほとんどなにもできないという人間、です。え……でも……全ての……原子力の問題というのは原子力だけではなくて、私たちがどうやって生きていく、どういう世の中を作りたいかというそのことですので、皆さん一人ひとりが必ずできることがある、有効にできることがあると思いますので。皆さん一人ひとりの個性を……発揮して、自分ができることを、やる、ということをしていただければ多分原子力は簡単になくなります。ぜひそうして欲しいと思います

男性「はい。今ちょっとコメントが、ここに、流れてるんですけど…」

女性「(読んで)かっこいいです。分かりました。」

小出「うふふ(笑)はい」

男性「この「8」が今でてるのは、パチパチパチって拍手の意味なんですけど」

小出「あーそうなんですか(笑)」

男性「今ちょっとこうやって出たりしてますけれども。……はい。ありがとうございます。じゃあちょっともう時間があっという間に30分ばかり過ぎちゃってですね。えーっとあの、質問が少なすぎたっていうコメントがさっきあったりしてですね。まあちょっとあの質問がたくさん来てたんですけれども。読めなかった人にちょっと申し訳ないと思うんですが。」

小出「はい」

男性「また機会ありましたらですね、ぜひ、あのこういうことをできたらいいかなあと思います」

小出「はい。ありがとうございました」

男性「じゃあ今日は本当ありがとうございます」

小出「ありがとうございました」

女性「ありがとうございましたー」

小出「ありがとうございました」
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Re: タイトルなし

原発が大事故を起こしたら、元に戻るのは最低でも百年はかかる。
その事実、現実を隠したいがために、「移住」をタブーとして、「除染」をキャンペーンしているのでしょう。
あたかも除染したら、戻れるかもような騙しのパフォーマンス。
都市部の除染さえ極めて困難。農山村は不可能なことが徐々にバレてきていますが。

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いろんな旅を続けています。
ゆきさきを決めてないなら、しばらく一緒に歩きましょうか。

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