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食卓にあがった.放射能(欧州の経験)

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 100%安全な食品を調達することが、日々困難さを増している国内です。
 チェリノビリの放射能に汚染された当時のヨーロッパで、どんな食品がどのくらい汚染されたのか、そしてどのように加工され、偽装されて食卓に上がってしまったのか。

 食べるものも、食べ方も違いがあるとは言え、貴重な経験は大いに参考となる。 
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今、改めて食品汚染を考える(その1)/『食卓にあがった放射能』高木仁三郎   「フランスねこ」氏から

このところ毎日のように、日本のあちこちで放射能による汚染食品(主に牛肉)の報道がなされています。朝刊の地方版ページで、近所のスーパーやデパートで汚染牛肉が販売されていたことを知った方も多いのではないでしょうか。
また、福島での原発事故発生直後の汚染食品への緊急警戒体制から、日常的に汚染を避ける体制へとシフトしていらっしゃる方も多いことでしょう。

それでも、全ての食品について放射線量が表示されている訳ではない現状、時に一部の食品については産地までが偽装される現状では、「この食品は大丈夫?」と迷う場面に遭遇されることもあることと思います(ところで東京大学アイソトープ総合センター長の児玉教授は先日国会で食品の放射能汚染に関する検査を最新の機器を用いてどんどん実施すべき、と提言していたはずですが、除染への対応はともかく、汚染食品への対策は忘れ去られてしまったのでしょうか)。

そんな時、せめて過去の具体的な事例やデータに照らして考え判断することができれば、より安心だと思います。「知識は力なり」です。間違った情報にも惑わされずにすみます。

既にお読みになった方も多いことと思いますが、名著『食卓にあがった放射能』(高木仁三郎&渡辺美記子著、七つ森書館、1400円+税)http://pen.co.jp/index.php?id=596 
は、チェルノブイリ原発事故の際に起きた食品汚染の状況を具体的なデータを示しつつ分かりやすく解説した良書です。
もちろん、チェルノブイリと福島での状況には異なる部分も多々あり、全てをそのまま日本の状況に当てはめることはできません。
しかし、どのようなメカニズムでどんな食品にどのような形で汚染が発生したのか、注意すべき点は何か、など参考になる点は多くあります。

という訳で、ここで本書の要点を一部簡単に御紹介したいと思います。ただし、きちんと全体を理解するために、御自分で本を買って(もしくは図書館で借りて)じっくり読まれることを強くお勧めします。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
1. 原発事故の後の1年間で食品から平均6.4mSvの内部被曝

日本で原発事故が起きた際にそれまでと同様の食生活を継続した場合、食品からのセシウム摂取量は年42万ベクレル、想定される被曝量の平均は1年間に6.4ミリシーベルトにまでのぼると推定される。
この数値は一般人の年間の線量限度の6倍以上に相当し、日本全体でも10万人に近い癌患者をもたらす可能性がある。
しかしこの計算は、事故後の10日間は汚染食品をいっさい遠ざけることができると仮定し、特に汚染の強いものについては政府の規制により出回らない、という仮定をした上での計算である(詳しくはp.126-129)。
汚染の強い食品が市場に出回っている場合には、数値は更に高くなると予想される。

ちなみに、ここで述べられている6.4mSvという数字には外部被曝は含まれていない。
食品による内部被曝は被曝量全体の80%程なので、これに更に20%相当の外部被曝分が追加されることになる。

2. 汚染食品に気をつけた人、気をつけなかった人の体内に現れる汚染度の差

汚染食品に気をつける人と気をつけない人では、体内への放射性物質の蓄積量、ひいては内部被曝の度合いに差が出る。
西ドイツのハンブルクで1987年に報告されたデータによると、チェルノブイリ原発事故の後で汚染された食品に気をつけた人と気をつけなかった人では、事故発生後1年以上にわたって体内に蓄積されたセシウム(134+137)の量に常に250ベクレル以上の違いが見られた(p.47、図2-6)。

住んでいる場所によって、やはりセシウムの蓄積量には差が出てくる。
チェルノブイリ事故から約8ヶ月(250日)後、ウィーンに住む人の体内には3000ベクレル近いセシウム137が蓄積されていたが、イタリアのボローニャでは2000を下回り、ベルリンでは1000を下回った(p.60)。

3. 牛肉汚染:時間の経過ではなく、飼料の質で汚染が決まる

西ベルリン市における測定では、チェルノブイリでの事故の後も牛肉の汚染は数年にわたって続き、汚染度の低い餌が不足した1987年の冬(事故の約半年後)には一旦減っていた汚染度が増加している。
時間の経過ではなく、牛の飼料によって大きく左右されているのがわかる(p.55)。

他方、チェルノブイリ事故の後、ヨーロッパから日本に輸入された飼料用の脱脂粉乳に汚染が見られ、生産国に送り返されたものもあった(p.140)。
当時、汚染レベルの高い脱脂粉乳が廃棄されずに世界的に安売りされ、輸入されて家畜の飼料にまわったと考えられる。
汚染された飼料を食べた牛の肉は、当然ながら汚染されてしまう。

ちなみに、当時の西ドイツには商品の放射線量を表示して販売し、1キロ70ベクレルを超えた肉は産地に送り返すことで安全な肉だけを販売するペータ―・ヤコブさんと言う方の肉屋があったそうです。

4. 牛乳と乳製品に含まれる放射能

牛乳に含まれるストロンチウム、セシウム、ヨウ素をそれぞれ100とすると、ヨーグルトの上澄み液(酸性乳しょう、乳清、ホエーとも呼ばれる)にはストロンチウムが86.2%、セシウムが82.9%、ヨウ素が80%移行する(ヨーグルトを食べる時には、ホエーを水切りして取り除いてから頂いた方がよさそうです。p.56)。
乳製品でも、多くの放射性物質が移行するものとそうでないものがある(詳しくは本文参照)。

5. 最も放射能に汚染された「動物」、淡水魚

チェルノブイリ事故の後、スウェーデンにおいて最も汚染された植物はキノコ類だった。
では動物では?意外にも、湖の淡水魚である。
これは、湖が雨によって運ばれるセシウムの「吹きだまり」となり、激しい汚染が起きたため。チェルノブイリ事故が起きた年、スズキ科の淡水魚パーチからは、最高でも1キロあたり4800ベクレルのセシウムが検出されていた。2年後の1988年夏には、なんと最高8万2000ベクレルもの汚染が検出されている(p.57)。

(後半では、「手を変え品を変えて」流通する汚染食品について取り上げる予定です)。
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今、改めて食品汚染を考える(その2)「姿や場所を変える汚染食品」/『食卓にあがった放射能』高木仁三郎

福島原発から約250キロ離れた横浜市で、堆積物1キロ当たり195ベクレルのストロンチウム90が検出されました。「横浜でストロンチウム検出 100キロ圏外では初」(朝日新聞 10月12日)

私たちが思っていた以上に広い範囲で、ストロンチウムその他の放射性物質が降り注いだ可能性があります。

ストロンチウムはカルシウムに近い性質を持ち、骨に蓄積して放射線を出し続けることで白血病などの癌を引き起こします(半減期は29年、体内から排出されるまでの半減期は18年)。
あらかじめカルシウムを摂取しておくことで、ストロンチウムが体内に取り込まれるのを防ぐことができると言われています。
安全な食品から良質のカルシウムをとって、被曝を防ぎたいものです。

9月に名著『食卓にあがった放射能』(高木仁三郎&渡辺美記子著、七つ森書館)を御紹介して以来、随分時間が経ちました。
今回は「その2」として、チェルノブイリ事故の後に現れた輸入食品への異変を中心に、「手を変え品を変える汚染食品」をテーマに、もう一度身近な食品汚染について考えてみたいと思います。

尚、ブログでお伝えできる情報には限りがあります。
本書は科学者の著作ですが、チェルノブイリ原発事故の際に起きた食品汚染の状況を具体的なデータを示しつつ一般向けにとても分かりやすく解説した良書です。
このテーマに御興味のある方は、本を購入されるかもしくは図書館で借りられて、汚染のメカニズムを体系的に理解されることをお勧め致します。
<御参考>
『食卓にあがった放射能』(高木仁三郎&渡辺美記子著、七つ森書館、1400円+税)
http://pen.co.jp/index.php?id=596

(以下、高木・渡辺両氏の著作から要点をまとめました。)
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
1986年のチェルノブイリ原発事故の後、汚染度の高い乳製品、肉、野菜の多くは廃棄されず、薄められて他の食品に加工されたり、基準や検査の厳しくない国に輸出された。
この時期にヨーロッパから日本に輸出された食品からも、高いレベルの放射能が検出されている。

●汚染小麦がパスタに

イタリアやギリシャではパスタの原料となる小麦が汚染された。小麦としては放射能汚染の規制値を超えるために販売できないが、パスタ製品に加工すれば規制値を下回ることになっていた。

これを受けて、事故から2年半以上たった後に日本国内で市販された輸入食品からも、高い汚染が検出されている(セシウム134と137の合計値。1987年2~3月に計測。「バリラ」のみ1988年10月の計測値。p.84、表4-3;p.98、表4-10)。

     スパゲティ
        「リカルディ」  123.7 Bq/kg
        「バリラ」  55 Bq/kg 
         http://www.barilla.co.jp/pasta.html

     マカロニ(「ブィトーニ」) 54.8 Bq/kg

「バリラ」のパスタを一度に150グラム、週1回食べるとすると、1年間のセシウム摂取量は396 Bqになる。

ここで注意しなければならないのは、各食品の汚染濃度だけではなく食品の摂取量だ。
主食となる食品(米、パン、パスタなど)やまとまった量を頻繁に摂取する食品(牛乳など)については、少ない量の汚染であっても年間の放射性物質摂取量で見れば大きな数字になる。

●汚染牛乳が脱脂粉乳、そしてチョコレートやアイスクリームに

イタリアでは、チェルノブイリ事故の後、ある乳業メーカーが汚染牛乳を長期保存用のパック詰め(「ロングライフミルク」)にし、製造年月日をチェルノブイリ事故前の日付に偽って売っていたことが暴露された。
その他、1987年10月にイタリアから輸入されたアイスクリーム・ペーストで417 Bq/kgの汚染が見つかり、日本の港から送り返されている(p.93、表4-8)。

脱脂粉乳はアイスクリームやヨーグルトなどの乳製品、チョコレート、パン、クッキーなどの加工食品に広く使われているため、ヨーロッパを中心にこれらの食品にも汚染が広がった。
日本に輸入され市販されたものからも、汚染が検出されている。

     チョコレート菓子「フェレロロシェ」(イタリア産) 83 Bq/kg
http://www.amazon.co.jp/フェレロ-ロシェ-16粒-T16-並行輸入品/dp/B00471P9EA 
     
     チョコレート菓子(非特定) 50.4 Bq/kg
     ウエハース菓子      40.7 Bq/kg
     ナチュラルチーズ      46.3 Bq/kg

(セシウム134と137の合計値。1987年2~3月に計測。フェレロロシェのみ1988年10月の計測値。p.84、表4-3;p.98、表4-10)

●家畜用飼料に広がる汚染

汚染された脱脂粉乳は廃棄されず、直接私たちの口に入る食品だけではなく牛や豚の飼料にもまわされた。

1988年、ポーランド・イギリス・西ドイツ等の国から輸入された飼料用の脱脂粉乳からは、最大で1,060 Bq/kgの汚染が検出され、基準を上回るものについては日本の港から原産国に送り返された(p.140、表6-3。当時の日本の輸入基準は370 Bq/kg)。

日本国内で使用された家畜用脱脂粉乳からは、その後も高い汚染が検出されている(セシウム134と137の合計値。
最大値のみ記載。1988年~1989年製造。p.139、表6-2)。汚染された飼料で生育された家畜の肉や乳への影響が懸念される。

     子牛用 260 Bq/kg
     豚用   215 Bq/kg
     酪農用 110 Bq/kg

●漂流する汚染食品

事故から約3年半後の1989年8月の時点でも、モスクワ等で売られているソーセージ類にはチェルノブイリの汚染肉が多く混入していた。
これは、保健省による汚染肉の廃棄処分命令にも関わらず肉が廃棄されず、汚染が比較的低い肉と混ぜてソーセージに加工された結果である。
当時、「目新しくない」と現地の新聞では記事として報道すらなされない状況だった。

汚染牛は形を変え、海をこえていった。
1989年9月には、アイルランド産の汚染牛肉数百トン以上がオランダで冷凍加工された後に西アフリカへ輸出され、現地の住民にパニックが広がったことが報道されている(p.142)。

また、1988年のはじめ、インド政府はアイルランドより低価格のバター200トンを輸入しミルクに加工して市場に出そうとしたが、「いかなるレベルの汚染物も安全ではない」としてノーベル賞受賞者や労働組合を巻き込んだ反対運動が起きた。

●まとめ

以上のように、汚染された生産物が廃棄されず、国内や他国で加工品に使われたり家畜飼料として使用され、知らないうちに身の回りに出回ることも考えられる。
著者は、市民が行政に対し基準値と検査体制の厳格化を求めるとともに、行政・市民の両方が食品の汚染を計測する体制を整える動きが広がりつつあることを記している。


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