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通貨戦争(41)ユーロは凋落、デフレと円高は悪化へ

 ドルとユーロの通貨安戦争はまだドルが3倍を超える増発で「勝っている?」状況だ。
 現在のドルの下落はFRBが流動性を過剰に供給しているためである。

 ユーロの下落はドルとはまったく異なる。
 共通通貨ユーロによって、各国がその国の経済状況に合わせた金融政策を実行できないために財政出動しか手立てがなく、その結果対外債務が膨れ上がり、財政破綻の追い込まれる国家が続出しそうなことによる。
 ソブリン・リスクである。

 共通通貨ユーロであるから、ギリシャなど各国の国債は当然基本的にユーロ建てであり、ユーロ圏内の各国金融資本の債権となるため、国内通貨による国内債務ではなく「対外債務」なので、繰延や解消の手段がないのである。
 財政破綻を回避するため支援をうけるが、その条件は財政緊縮策である。
 財政緊縮策を実行すれば経済不況は悪化し、国民は窮乏化する。

 最悪の場合は、暴動やクーデターの危険さえある。
 最悪の事態にはならなくても、経済需要が激滅するので、政府の税収が大幅に減少することは疑いない。
 そうなると少なくとも、再び財政危機の深刻化が襲う。
 循環する財政危機のスパイラルである。

 とりあえず、ユーロが円に対して上昇することは、短期、中期にあり得ない。
 つまり、ドルに対しても、ユーロに対しても、円安はあり得ないし、円高基調が少なくとも中期に続く。

 日本の金融政策と財政政策が正しく実行されて、賃金総額がわずかでも上昇するなら、デフレ脱却の芽がでるが、残念なことに、増税を進めているようでは、その可能性はほぼゼロだ。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 ユーロの凋落  9/29 三橋貴明  Klugから

 今から思い起こせば信じ難い話だが、08年頃までは日本国内で、
「ユーロは第二の基軸通貨になる」
 という主張が流行っていた。

 何しろ、日本円の対ユーロレートは、08年には1ユーロ=169円を一時的に上回ったのである。それが現在、一時的に1ユーロ102円を割ってしまったのだ。


『2011年9月26日 ブルームバーグ紙「ユーロ売り加速、約10年ぶりに102円割れ-欧州の債務・景気不安重し」
 東京外国為替市場では、ユーロ売りが加速。対円では一時1ユーロ=102円台を割り込み、2001年6月以来の安値を更新した。欧州の債務懸念が根強く残る中、域内景気の先行き不透明感を背景にユーロの下値を試す展開となった。

 ユーロ・円相場は午後の取引で一時101円94銭まで水準を切り下げ約10年ぶりの水準までユーロ安・円高が進行。また、ユーロ・ドル相場も早朝に1ユーロ=1.3583ドルと、2営業日ぶりの高値を付けていたが、徐々に売り圧力が戻り、午後の取引で一時1.3363ドルと、1月18日以来の安値を付けている。(中略)

 外為オンライン情報サービス室の佐藤正和顧問は、財政問題だけではなく、ユーロ圏全体の景気減速も避けられない見通しにあるなかで、ユーロ売りが加速する可能性が警戒されると指摘。その上で、ユーロ圏発のニュースにはこれまで以上に市場が反応するようになっている感があり、アジア株全面安に加え、金相場が一段安になるなど、「リスク回避の流れがかなり加速している」とし、円が買われやすいと説明している。』


 2008年から11年にかけ、ユーロは対日本円で四割近くも下落してしまったのである。
「ユーロは第二の基軸通貨国になる!」
などと煽っていた人々は、盛んにユーロへの投資を薦めていた。彼らの煽りに乗せられた日本国民が、どれほどの規模の為替差損を被ったのか。投資は自己責任とはいえ、ひどい話である。

 通貨の為替レートが変動する理由は複数あるが、日本の評論家が好む、
「為替レートは国力を反映している」
 などといった定性的な話はあり得ない。07年までの円安期、NHKまでもが、
「日本は少子化で国力が減退しているので、円安になるのです」
 といった解説をもったいぶって繰り返していたが、そもそも「国力」とは何を意味しているのか、意味不明である。

 あえて定義をするのであれば、その国の国民経済の強靭さ、すなわち、
「供給能力が、国民の需要をきちんと満たせるか、否か」
 が国力となるわけだが、上記の定義を用いた場合、デフレで供給過剰、需要不足に悩む日本の国力は「強い」「強まっている」という話になってしまう。そして、実のところ上記の定義は、ほとんど正解に近いのだ。

 為替レートが上昇する原因の一つが、経常収支の黒字である。経常収支黒字国は、黒字額分だけ外国に対外純資産を持つことになる。

 例えば、企業A社がアメリカに100億円の製品を輸出し、経常収支黒字に貢献したとしよう。この場合、A社が輸出品の対価として受け取るのは「ドル」であり、日本円ではない(当たり前だ)。

 A社はアメリカに100億円相当のドル資産を持つことになるわけだが、自社の従業員に支払う給与は日本円建てだ。また、日本国内で投資をする場合であっても、日本円が必要になる。

 A社が給与支払いや国内投資のために、対外資産であるドルを日本円に両替しようとすると、円への需要が増える。すなわち、円高ドル安になる。

 中国などは、上記の経常収支黒字を通貨当局(中国人民銀行)がせっせと買い取り、人民元高を防いでいる。それに対し、基本的に変動相場制の日本は為替介入をしないため、経常収支黒字拡大で日本円の需要が増え、円高(外貨安)になっているわけだ。

 経常収支黒字の中身は、主に貿易・サービス収支の黒字であり、過去の直接投資(工場建設など)から得る収益(所得収支の黒字)だ。その国の国民経済の供給能力が強大で、自国民の需要を満たすのみならず、外国への輸出が増え、かつ海外直接投資からの収益が大きくなればなるほど、経常収支の黒字は膨らみ、通貨高になりやすい。

 日本の経常収支の黒字は、バブル崩壊後のデフレ期に、逆に拡大していった。デフレで国内需要が冷え込み、国内の供給能力を外国に振り向けざるを得なかったことが主因であるが、いずれにせよ日本について「国民経済は強靭か、否か?」を考えた場合、答えは「他国と比べると相対的に強靭」という話になる。

 すなわち、現在の日本はユーロ圏と比べて相対的に強靭な経済を維持しており、円高ユーロ安になっているわけだ。

 また、為替レートの変動をもたらす要因の一つに、実質金利がある。実質金利とは「=名目金利-期待インフレ率」で計算される。

 現在の日欧の実質金利を試算してみよう。期待インフレ率は、仮に現在のインフレ率として置いてみる。

 日本の政策金利は0%で、インフレ率(消費者物価指数の対前年比変動率)は0.2%(11年6月時点、以下同)であるため、実質金利は-0.2%になる。それに対し、ユーロ圏の政策金利は1.5%、インフレ率は2.7%。すなわち、ユーロ圏の実質金利は-1.2%だ。実は、実質金利で見ると、日本の方がユーロ圏よりも金利は高くなっているのである。

 結果、ユーロに比べて実質金利が高い日本円が買われるという話だ。

 上記のポイントは日本の「インフレ率が低い」という部分だ。バブル崩壊後に消費者物価指数が急低下したとはいえ、さすがにユーロ圏全体のインフレ率は、日本ほどには低くはない。また、政策金利の引き上げも、ユーロ圏の景気深刻化を受け、1.5%で「打ち止め」になっている。

 それに対し、日本は相変わらずデフレ基調を続けており、インフレ率はほぼゼロだ。デフレの一つの要因は、先にも書いた通り、国民経済が供給過剰、需要不足になっているためである。日本は国内の供給能力が需要と比べて大きすぎ、デフレで実質金利がユーロと比べて相対的に高くなってしまうため、円高ユーロ安が続くというわけである。

 円高、外貨安に関する解説をする評論家の中には、中央銀行のマネタリーベースのみで説明する人が少なくない。無論、マネタリーベースの変動も為替レートに影響を与える。だが、マネタリーベースの変動のみでは、現在の極端な円高・ユーロ安の説明は難しい。

【図121-1 日米欧のマネタリーベースの推移(07年=1)】
20110928_01.png
 出典:日本銀行、FRB、ECB

 図121-1の通り、ECBのマネタリーベースは確かに日本よりは大きくなってはいるが、さすがにアメリカほどではない。07年基準で比較すると、日本のマネタリーベースが1.26倍、FRBが3.3倍、そしてECBが1.4倍である。

 PIGS諸国などの国債買取の印象が強すぎ、ユーロ危機勃発以降のECBはマネタリーベースをひたすら拡大しているように思えるが、実際にはFRBほどではないのだ。そもそも、ECBの母体が「インフレ恐怖症」のブンデスバンク(ドイツ連邦銀行)であるため、それほどラディカルなインフレ促進策(デフレ対策)は取れないのである。

 マネタリーベース「のみ」で為替レートが決定するのでは、さすがに07年以降の円急騰、ユーロ暴落の説明はできない。何しろ、07年、08年以降、ユーロは対日本円で四割も価値を下げたのである。

 そもそも、インフレ率を最終的に決定するのはマネーストックであり、マネタリーベースではない。マネーストックは、中央銀行がどれだけマネタリーベースを拡大しても、お金が民間に貸し出され、信用創造の機能が働かなければ増えない。

 FRBはリーマンショック以降、約9000億ドルのマネタリーベースを、2011年7月には2兆6815億ドルにまで拡大した。約三倍にベースマネーを増やしたわけだ。とはいえ、マネーストックの方は08年9月が8兆3112億ドルであるのに対し、11年7月は9兆3137億ドルである。二度の量的緩和を実施したとはいえ、わずかに1.1倍にしか、アメリカのマネーストックは拡大しなかったわけだ。現在のアメリカは(日本同様に)信用創造の機能が低下し、マネタリーベースがマネーストックを生み出す力が弱っているのである。


 ユーロに話を戻すが、昨今のPIGS諸国をはじめとする財政危機により、ユーロ圏内の金融リスクは高まっている。財政危機に瀕した国々は、「対外負債の返済のために、対外負債を増やす」状況に至っており、長期金利は上昇中だ。

 短期的には、先の解説の通り、実質金利は日本の方が上回っており、ユーロから円への両替が増える。長期投資(一年物以上)についても、
「とてもこんなリスクが高い国々に、投資などできない」
 というわけで、やはりユーロから円への両替が増えるという話である。何しろ、現在のギリシャの一年債の利回りは、135%(書き間違いではない)を上回っているのだ。ギリシャは別格としても、世界の投資家が、
「ユーロで長期投資するなら、ドイツ。できれば、ユーロ以外の国に」
という投資コンセプトになって当たり前だ。ユーロの財政危機について、解決の道筋が見えない以上、いずれにしても今後も円高ユーロ安は続く。

 今や世界屈指のハイリスク地域と化したユーロ圏からは、まずは隣国スイスへと資金が流出し、ユーロからスイス・フランへの両替が急増した。あまりのスイス・フラン高に耐えかね、スイス国立銀行が、
「為替レートがその水準を上回る場合は、無制限に外貨を購入する準備がある」
 と宣言したのは、前々回(第119回 四天王)で解説した通りだ。

 ユーロの現在の問題は、それぞれの加盟国の状況があまりに違いすぎ、一貫した金融政策が取れない点に尽きる。例えば、インフレ率一つとっても、ドイツが2.5%、フランスが2.4%、スペインが2.7%、イタリアが2.3%、ポルトガルが2.8%、アイルランドが1.0%、そしてギリシャが1.4%である(全て2011年8月時点)。

 恐ろしいことに、典型的な貿易赤字国、高インフレ国であったギリシャのCPI上昇率が、対前年比で1.4%に下がってしまっているのだ。すなわち、ギリシャのデフレ化という、尋常でない事態が目前に迫っているのである。ギリシャは長年、貿易赤字を続け、インフレ率は10%を上回ることが普通だった。それほどまでに供給能力が小さいギリシャの消費者物価指数がゼロに近づいているということは、国内の需要が極端に縮小しているとしか考えられない。

 また、アイルランドのCPI上昇率も対前年比で1%と極めて低いが、同国の09年、10年はデフレになっていた。すなわち、CPI上昇率がマイナスで推移していたわけだ。

 ようやくデフレから抜け出しかけたアイルランド、およびデフレ化目前のギリシャの両国は、財政危機を解決するために緊縮財政を強いられている。とはいえ、ここまで需要が縮小している環境下における緊縮財政は、単に両国の税収を減らし、更なる財政悪化を呼び込むだけの結果に終わるだろう。

 そうなると、またもやユーロ圏の財政危機がクローズアップされ、長期金利は上昇し、お金がドイツおよび日米スの四天王(国債金利が超低迷している四カ国)に逃げていく。

 結局のところ、今年から2012年にかけた円の対ユーロレートは、上昇することはあっても、下落することはまず考えられない。唯一、日本が財政政策と金融政策のパッケージという「正しいデフレ対策」を実施し、インフレ率が上向けば、実質金利低下により円高は抑制されるだろう。とはいえ、現実の日本の政権は「正しいデフレ対策」には見向きもせず、増税路線を邁進している。

 こうなると、日本円の対ユーロレートは早々に1ユーロ=100円を切ることになるだろう。とはいえ、07年や08年に「ユーロこそ、次なる基軸通貨である」などと無責任に煽った日本の評論家たちは、別に責任を取るわけではないという話である。
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