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もうすぐ北風が強くなる

大勘違いは大間違いの元

 貧困と格差については何処の国もマスコミ、政府、御用評論家などが実態を「隠そう隠そう」としているものだから、国民は意外と勘違いしている。
 そこに政治が絡みつくので、実際はかなり大きな勘違いをしている。

 小さな政府論なども、その支持者達自身がかなりの勘違いをしているようだ。
 勘違いは言うまでもなく「間違い」で、この間違いが政治などに利用されると「間違った政治」が行われる。
 大きな勘違いは大間違いの元になる。

 まあ、あたりまえのことですが、このことについて面白い記事がありましたので、紹介します。

貧困大国アメリカをめぐる「勘違い」  8/21 李啓充氏のコラムから引用です。

行動経済学の大家として知られるデューク大学心理学部教授ダン・アリエリが、米国における富の不均衡を巡って、非常におもしろい実験をしていたので紹介しよう(Perspectives On Psychological Science 6: 9-12, 2011)。

3つの国について、資産所有額を上から下まで20%毎に区切った上で、それぞれの区分における富の所有率を被験者に見せ、「あなたはどの国に住みたいですか?」と、問うたのである。
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国1が「仮想の国」における富の分配であることはいうまでもないだろう。全国民が等しく富を分け合っている「おとぎの国」にあっては、「究極の平等」が成り立っているので、それぞれの区分が、等しく20%ずつの富をわかちあっている。

国2では、資産所有額最高の区分に属する20%の国民が、36%と比較的大きい富を所有しているものの、最低区分の11%と比べると、その違いは3倍強に過ぎない。
「おとぎの国」と比べて、さして富の分配に不均衡がないこの国はどこかというと、スウェーデン。高負担・高福祉で国家を運営している「代表」ともいうべき国である。

国3は、富の分布が著しく偏り、最上層の20%が国全体の富の84%を所有しているのに対し、最下層40%の国民が所有にあずかっている富の割合はわずか0.3%にしかすぎない。
実は、国3は米国であるが、米国における貧富の格差がべらぼうに大きいことは、「ルポ貧困大国アメリカ」(堤未果著、岩波新書)がベストセラーになったこともあるし、読者はとっくにご存知だったろう。

さて、アリエリの実験結果であるが、米国民のうち、「国3(つまり米国)に住みたい」と答えた人は10%にしか過ぎず、9割の人が「国1あるいは国2に住みたい」と答えた。
さらに、国2と国3に比較を限定したとき、国3を選んだ被験者はわずかに8%。92%の回答者が、そうとは知らずに「米国よりもスウェーデンに住みたい」という選択をしたのである。

次ぎに、被験者に米国における富の分配率を「推測」させたところ、その回答(平均)は、資産額が多い区分から順に「58%-20%-13%-6%-3%」というものであった(「84%-11%-4%-0.2%-0.1%」という非常に苛酷な不均衡があるとは夢にも思わずに、現実はもっと甘い状況にあると「勘違い」しているのである)。

最後に、「理想」とする富の分配を答えさせたところ、その答えは、「32%-22%-21%-14%-11%」となり、スウェーデンの分配率に極めて近い数字となった。
それだけでなく、この数字は、共和党・民主党の支持政党や所得額等の違いで大きく変わらず、「こと富の分配に関する限り、スウェーデン型の社会が理想」ということで、米国民のほとんどが(そうとは知らずに)意見を一致させているのである。

これまで何度も論じてきたように、米国の保守派は、「富の再分配」という言葉に対して非常に強い拒絶反応を示す体質を持っている。
彼らのほとんどは、「(旧ソ連型の社会主義はもとより)西欧・北欧の社会民主主義も米国にはそぐわない」と思い込み、「高負担・高福祉の『大きな政府』などもっての他」と言ってはばからない。
就任後一貫して高額所得者に対する課税強化を主張してきたオバマに対しても、「米国は政府を今以上に小さくしなければいけないのだから、増税なぞまかりならん」と頑なに拒否してきた。
ところが、「大きな政府」が大嫌いな保守の人々に、「理想の富の分配率」を数字で答えさせると、「(大きな政府で国家を運営している)スウェーデンの数字が理想」という答えが返ってくるのだから、驚くとともに呆れざるを得ないのである。

実は、「富の再分配」を推進するためには「沢山持っている人・企業から税や社会保険料をたくさん払っていただいて、社会全体に分配する」という「大きな政府」を運営することが必須であり、その反対に、これまで本コラムで何度も論じてきたように、「小さな政府路線を推し進めて自然の流れ(=市場)にまかせていると必ず富の不均衡が拡大する」ことに例外はない。

ここまでを要約すると、貧困大国アメリカの国民は、富の分配を巡る現状と理想に関して、自国についてもスウェーデン型の社会についても大きな「勘違い」をしていると言わなければならないのである。
それだけでなく、所得階層間の階段を上る機会は限りなくゼロに近い(たとえば、一度ホームレスになってしまった人が大富豪になるということは、ほぼありえない)という現実があるのに、「自分にはいつか金持ちになるチャンスがある」という「非常に大きな勘違い」(別名「アメリカン・ドリーム」)を抱いている人が少なからず存在するために、「富の再分配」を強化する政策がいつまでたっても実施されないようなのである。

以上、今回は、富の不均衡に関する米国民の勘違いについて論じたが、最後に、日本における富の不均衡について、ショッキングなデータを示そう。
図は、日米英3カ国の「ジニ係数」(ジニ係数は所得の不均衡の指標。「0」はすべての国民が等しい所得を分かつ「究極の平等」、「1」はただ1人の国民がすべての所得を占有する「究極の不公平」。数字が大きいほど、不均衡の度合いが強い。)
2.png

(図は等価当初所得での比較)の推移を示したものだが、90年代以降、米国をはるかに上回る勢いでジニ係数を増大させてきた(つまり、所得の不均衡を増大させてきた)日本が、2008年に、ついに、米国を追い抜いたことがおわかりいただけるだろうか?

換言すると、日本は、とっくに米国に匹敵する「貧困大国」になってしまっているのであり、「日本の貧富の格差は米国ほどひどくない」と勘違いしている場合ではないのである。
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コメント

市場経済の欠陥

市場経済には交換比率の不公正という根本的な欠陥がある。
だから市場に任せていればどんどん格差が広がり崩壊する。

コメントをありがとうございます

この経済体制は通貨、金利、信用創造によって成長運転を強制されているとも言えるわけで、放置すれば貧困の増加と格差の拡大、そして恐慌の循環が必至と考えます。
社会の保障と再分配が不可欠なので、小さな政府論などというものは新自由主義神話の夢想と思います。

交換比率の不公正

もうすぐ北風さん 始めまして

市場経済には力による富の不公正な分配というものが有ります。
資本力、市場支配力、政治力(法、規制など)情報力などにより富の公正な分配が歪められます。=交換比率の不公正。

信用創造と金利、これが問題なのも銀行がその優越的立場を利用して、信用創造の手数料以上の儲けを欲するからではないでしょうか。

電力会社がその資本力、独占的立場、政治力、情報力を利用して決めた電力料金と、市民の労働の対価であるお金の交換が公正な交換と言えるでしょうか。

同一労働で賃金格差がおきるのは、同じように労働法、労働組合に守られていないからです。
社会に生み出す富が同じなのに、分配に差が出るのは不公平というものです。

その他、力を利用した交換など掃いて捨てるほどあります。
デパートが納入業者に販売を強制的にやらせたり、グリーがソフト制作会社に、他社への販売を止めさせるとか。表面化し公正取引委員会の調査が入ったのは氷山の一角で、あまりにも悪質だから出てきただけでしょう。

一般的には減産が出来るとは市場支配が進んでいる証拠で、完全競争が行われておらず、儲けが保証されているということです。普通の中小零細事業者の商品は、ほとんどが完全競争に晒されています。
これらの完全競争商品と、不完全競争商品との交換は(マネーを媒介として行われる。)不公正ではないでしょうか。

これらの市場経済の欠陥を是正するために、ミクロ的には独占禁止法、労働法があった。
マクロ的には累進課税が有った。
それを市場原理主義というものが、どんどん壊して行き、その結果、格差が広がったのではないでしょうか。

しかし経済だけのグローバル化という環境の中、税や労働法、独占禁止法でこれらの欠陥を是正するのは難しくなりました。
別の方法を取らなければ成りません。

農牧の開始からの共同生産が一定規模を超えて、蓄積されるようになると共同組織が権力構造に発展し、蓄積された共同財は権力の富となります。
物的かつ精神的な不公正によって、市場経済そして通貨、金利と信用創造の三点セットで資本主義経済体制へと進んできたわけです。
帝国主義に至り、生産と軍事の労働力の必要性から義務教育と国民国家の観念が発生し、これが国民経済の考えと社会的国家への考えに発展してきたと考えます。
国際金融資本を否定はしないが規制する、階級闘争の存在を前提にした国家規制。
言ってみるなら社会国家と社会経済論と言う言葉になるでしょうが、北欧型社会主義の考え方です。

こんにちは

>北欧型社会主義の考え方です
-------

北欧型の社会主義市場経済、経済だけのグローバル化という環境の下では難しいと思います。

税による富の再分配が難しくなっているからです。
現在は税の安売り競争をせざるを得ない環境です。
アイルランドは法人税12%と安く、これにより企業誘致し経済を発展させましたが、これにより呷りを喰らったEU諸国は、アイルランド支援の条件として法人税の引き上げを迫っていますが、アイルランドは頑強に抵抗しています。
韓国も法人税が安いので、日本も法人税の引き下げが言われています。

所得に対する税も、米国では最上位の階層より、次の上位の階層の方が所得に対する税率が高いとか。
これが何を意味するか、投資収益に対する税率が低いからです。投資を欲しい国が投資収益に対する税を引き下げるから、どうしても投資収益に対する税の引き下げ競争が起きるのです。
またタックスへイブンというものが有り、高所得者への課税が難しくも成りました。

東京23区が別々の政府であり、消費税率がみんな違ったらどうなるでしょう。
みんな安い消費税率の区に買い物に行くので、たまりかねた消費税率の高い区の小売店は消費税率の引き下げを求めるでしょう。
結果的に消費税の引き下げ競争が起こります。

経済だけのグローバル化とは、世界的に見たら引き下げ競争の起こりやすい法人税、累進所得税の引き下げ圧力がかかるということです。

消費者は区単位なら簡単に「移動」出来るので、安い消費税率の区で買い物することを選択するでしょう。
企業、資本、高所得者は世界を「移動」出来るので、税、賃金の安い国を選択することに成ります。
結果的に企業、資本、高所得者への税の引き下げ競争が起きます。

つまりグローバル化させるのならば税のグローバル化をしなければ成らない。
労働組合のグローバル化もさせなければならないということですが、現実的には不可能なので別の対策を考えなければいけないと思います。

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