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もうすぐ北風が強くなる

国債の日銀引受け、流動性供給で税収は増加する

 金融政策とりわけ通貨政策論としては極めて明解な、高橋洋一氏である。
 高橋氏は野田との比較で前原氏のリップサービスを評価しているが、他の候補が出ていない段階である。
 また、最も米国かいらいの前原では、そんな政策は取れるわけも無い。

 関連ページ「通貨戦争(37)財務省・日銀の窮乏化政策」。

与謝野大臣が「俗論」と決めつけた
物価上昇による財政改善は本当に「俗論」か?
    8/25 高橋洋一 ダイヤモンド・オンライン

 民主党代表選は、前原誠司前外相が23日正式に出馬声明を行い、一躍有力候補に躍り出た。前原氏は「円高、節電で企業が大変な時に増税すべきでない」といい、その点で野田佳彦財務相と意見が合わず、復興増税を主張する野田氏では代表戦を勝てないということで、自らが出馬したようだ。

 復興財源については、政府株売却等を充てる考えだ。また、金融政策については、今年6月9日のブルームバーグ・ニュースとのインタビューでは「もう少し日銀のバランスシートを拡大してもいいのではないか、どういう形であれ国債の引き受けを行うようなことをもう少しやってもいいのではないか」と語っている。 日銀引受についても、前原氏は日銀の独立性を理解した上で、野田氏が言下に否定するのに対して、それを否定せずむしろ前向きだ。

 一方、2010年代半ばまでに消費税率を10%に引き上げるとした菅内閣の社会保障と税の一体改革案については、支持する姿勢を示している。

  依然「よいデフレ」論をぶつ
  与謝野経済財政担当大臣

 もっとも、金融政策を活用して復興増税を回避すると、消費税増税も回避できる可能性が高いと私はみるが、そのような考え方は「俗論」と主張する報告書が内閣府からだされた(ようだ)。

 (ようだ)というのは、23日、与謝野馨経済財政担当相は、インフレによる財政健全化策に対し俗論であるといったのであるが、肝心要の報告書が本稿の執筆締め切りである24日の午前中までに、内閣府のホームページにアップされていないのだ(記者レク用と思われる概要1枚紙はアップされているが、報道そのもの〈記者はその丸写し?〉で、その内容は分析とはいえない)。

 本コラムのタイトルを連想させるように、わざわざ現役大臣が「俗論」とおっしゃったわけだが、早く報告書をアップしてもらいたいものだ。もっとも、私は、この件について与謝野氏とは長年にわたって議論してきたので、内容は簡単に想像がつく。

 まず、与謝野氏は、インフレは悪魔という表現で、デフレを容認する。そもそも、デフレの定義が決まっていないという。記者に追求されてあたふたとしている今年7月5日の大臣記者会見を引用しよう。

(問)大臣、前回の記者会見の中で1%ぐらいのマイナス、物価下落は何でもないと、プラス要素だということを仰いましたけれども、今政府はデフレの脱却を重要政策として掲げているわけですけれども、この政策を見直すおつもりはあるのですか。

(答)勿論、私は見直したのです。私が前回経済財政担当大臣のときにデフレという言葉を政府の言葉から削除いたしました。定義のない言葉を使ってはいけないと。それを私が申し上げたいと思っています。

(問)今の政権でも同じことをやるのですか。あとデフレの定義は、政府はそれなりにきちんとやっていると思うのですけれども。

(答)デフレは、政府の定義は物価下落が数年続く世界をデフレと言っているのですけれども、1%程度の物価下落で驚いて自己暗示にかかるようなことをやってはいけないと、今でもそう思っております。


 また、デフレにメリットがあるという「よいデフレ論」を述べている。これも今年7月1日の大臣記者会見をそのまま引用しよう。

問)あともう一点、話は変わるのですけれども、今日発表されたCPIで、コアだけではなくてコアコアの部分も2年7カ月ぶりにプラスに転じているのですけれども、これは何か節目というふうにとらえていらっしゃるのか、見方をお願いいたします。

(答)デフレ、デフレと言うのですけれども、そういう人たちは名目成長率を上げろという議論をあわせて行うのですけれども、名目成長率が高いのは偽りの経済成長であって、やはり労働所得が向上して、実質の労働所得が向上して、働く人たちの賃金の購買力が増すということが一番望ましい姿の経済成長です。そういう意味では、1%ぐらいのマイナスなどというものは何でもないことで、むしろ働く人や年金生活者にとっては、プラス要素ですらあるというように考えております。

 したがいまして、今のデフレ論議の致命的な欠陥というのは、デフレというもの自体を定義していないということであると思っています。ちなみに、是非御一読いただきたいのは、ガルブレイスが書いた1929年の世界恐慌の話でして、この中の本当のデフレというのは、1933年には物価の下落は29年に比べて35%、失業率は33%、株価の下落率は90%、こういうものを本当の深刻なデフレというのであって、1%そこらの物価の下落というのは、物価上昇に比べて、むしろ望ましい姿であるかもしれないし、もしかしたら生産性が高まっている所以かもしれないというので、あまりデフレを強調し過ぎて、デフレだ、デフレだと言って自己暗示にかかる経済というのはあまり良くない議論だと私個人は思っています。


  名目成長率が高まると
  財政再建は容易になる

 もっとも、「良いデフレ論」は既に論破されている。だから政権交代があってもデフレ脱却が政策課題になっているのだ。一言でいえば、「よいデフレ論」は失業の存在を無視している。デフレ状態であれば、GDPギャップがあるわけで失業が余計に発生している。これは経済学のフィリップス曲線(インフレ率と失業率のトレードオフ)からも裏付けられる。このため、米国FRB(連邦準備制度理事会)は物価の安定とともに雇用の確保も義務つけられている。

 このようにデフレはいいという予防線を張った上で、もしデフレを脱却して名目成長率が高くなっても、財政再建できないという。そのためのロジックは簡単で、名目成長率が高くなっても税収は増えず、歳出は増えるというものだ。

 まず歳出からいえば、物価上昇するとそれに応じて歳出が半ば自動的に増えるというものだ。しかし、そうした歳出項目もあるが、そうでないものもかなりある。しばしば義務的経費には物価に応じて増えるものもあるが、それでも名目値で予算は決まっており、裁量の範囲内だ。みんな自動的に増えるのであれば、そもそも予算審議すら不要になる。

 歳入については、税収弾性値を低く見積もることで、税収増がないような計算をする。過去15年間のへ税収弾性値(名目GDP伸び率に対する税収伸び率)は、税制改正による増減税を無視すると、平均で4になっている。

 この数字に対して、この間の名目成長率の増加が少なかったので、税収弾性値が高めに出ていると政府は反論する。たしかに、税収弾性値を計算する際、分母の名目成長率伸び率が小さいと、上下に振れる傾向がある。しかし、過去15年間の成長率変化幅、税収弾性値をそれぞれ横軸と縦軸にとった図1を見ればわかるように、常に税収弾性値が高めにでるわけでない。

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 仮に、高めにでたものを異常値処置したとしても税収弾性値は3程度はある。その理由は簡単で、法人税収などでは、景気の善し悪しで税収ゼロから一気に納税となるからだ。

 実のところ、デフレと円高はコインの裏表の関係だ。本コラムの読者は知っているだろうが、デフレは、円の量とモノの量との比較で、モノが相対的に多く希少性がなくなっているために価値が下がる現象だ。円高は円の量とドルの量との比較で、ドルが相対的に多く希少性がなくなっていることで価値が下がる、ドル安つまり円高だ。この意味で、両方とも円の過小供給が引き起こすものだ。

 このため、デフレを解消すると円安になって、輸出企業の企業業績はよくなる。その結果、法人税収も伸びるのだ。

 いずれにしても、税収の弾性値が1を越えると、通常、名目成長率が高くなると財政再建が容易になる。それは、政府がいくら反論しようと、過去の実績が示している

 図2は、左軸に翌年の基礎的財政収支の実額を、右軸に当年の名目GDP成長率をそれぞれとって、関係を示したものだが、名目成長率は翌年の基礎的財政収支と強い相関があることがわかる。

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