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三橋:税金の「元」は何なのか?

 経済成長しないデフレ循環の中で増税などしたら、増税した分の可処分所得が減少し、需要が減って経済はその分縮小する。
 増税した分野以外の税収は撃滅するので、総税収は減少する。
 同時に失業と窮乏が急増する。

 1997年の消費増税の例を引くまでもない。
 これが当然だ。
 テレビも大新聞も、御用学者、御用評論家の騙し記事が多い中で、この当然のことを解りやすく書いている。
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 税金の「元」は何なのか?    8/23  三橋貴明

 政府の税金の元となっているものは何だろうか?

 無論、消費税であれば企業の売上であり、法人税は企業の税引き前利益に課税される。また、所得税とはもちろん、家計の所得に課されるものだ。さらに、家計の所得からは健康保険料など、社会保険の負担分も差引かれ、残りが可処分所得になる。

 いずれにせよ、政府が毎年、徴収する税や社会保険料は、国民の労働の成果たる所得が原資になっているわけだ。これをマクロ的に表現するならば、
政府の歳入とは、国民の所得の総計たるGDPから政府に分配された所得である
 と、表現することができる。

 要するに、政府の歳入の原資はGDPなのだ。

 GDPとは、国民経済の支出(=需要)の総計であり、生産(=付加価値)の総計であり、同時に分配(=所得)の総計でもある。すなわち、
「支出面のGDP=生産面のGDP=分配面のGDP」
 となるのである。これをGDPの「三面等価の原則」と呼ぶ。

 本連載では、主にGDPの需要面(支出面のGDP)しか取り上げていないが、分配面のGDPをブレイクダウン(細分化)すると、以下の式で表現される。

◆分配面のGDP=
   雇用者報酬+営業余剰+固定資本減耗+生産・輸入品に課される税-補助金


 分配面のGDPとは、企業などの従業員の所得(雇用者報酬)、企業の利潤(営業余剰)、過去の投資の減価償却費の総計(固定資本減耗)、そして生産・輸入時点で政府が徴税した金額から、民間に「返却」される補助金を差引いたものの合計として成り立っているわけだ。

 さらに、家計は雇用者報酬から税金や社会保険料を差引かれ、企業は利潤から法人税を支払う。結果的に家計や企業の手元に残されたお金が可処分所得となり、「次の消費」「次の投資」といった支出に回り、新たなGDPとなるわけだ。

 また、可処分所得から支出に回らなかった分は、貯蓄として銀行などの金融機関に貯められていく(厳密には、貯蓄とは借金返済も含む)。企業や家計などの民間は、「過去のGDPからの蓄積」である貯蓄を借り入れ(銀行融資など)、新たな消費活動や投資活動を行う。この場合も、民間が支出した金額は、新たなGDPとしてカウントされる。

 貯蓄からお金を借り入れるのは、何も民間には限らない。政府にしても「国債発行」などにより、過去のGDPの蓄積たる貯蓄を借り入れ、自らの支出に充当する。注意しなければならないのは、政府の支出には、GDPを直接拡大するものと、そうでないものの二種類があるという点だ。

 具体的には、政府が公共投資や医療費(政府負担分)の支払いにお金を使うと、GDPの公的固定資本形成や最終消費支出が増える。すなわち、新たなGDPになる。

 ところが、年金や生活保護、それに子ども手当てなど、
「政府が民間にお金を振り込む(=贈与する)」
 形でお金を使っても、直接的にはGDPは増えない。このタイプの政府の支出を「所得移転」と呼ぶ。

 無論、政府から所得の移転を受けた民間が、受け取ったお金を消費や投資に回せば、GDPは増える。とはいえ、移転された所得を「貯蓄」に回されてしまうと、GDPは一円も増えないわけだ。

 上記の国民経済におけるお金の流れをまとめたものが、図116-1になる。

【図116-1 全ての源泉はGDPである】
20110823_01.png
※政府の所得は、国民の社会保険料の支払いを含む

 図116-1を見ると、本稿のタイトルである『税金の「元」は何なのか?』の答えが容易に分かるだろう。もちろん、政府が徴収する税金の元になるのは、GDPだ。GDP以外に、政府の税収の原資はない。すなわち税収(及び社会保険料)とは、「政府に分配されたGDP」と表現することができるわけだ。

 ところで、増税とは果たして何だろうか。もちろん、
「GDPから政府に分配される分の所得を増やす」
 という話である。

 マクロ的に見る限り、増税とは単に政府の所得の取り分を増やすという話であるため、当たり前の話として民間の可処分所得が減少する。可処分所得が減ると、日本国民(企業含む)は「次の段階」において、支出(消費・投資)を減らすことになるだろう。

「自分の可処分所得が減った。だから、消費や投資を増やす」
 などと考える人は、極めて少数派だ(と言うか、皆無に近いだろう)。

 結果、増税により「新たなGDP」が減り、GDPから政府に配分される所得である税金も減ってしまうのだ。実際、97年に消費税アップ、社会保険料の引き上げ(及び公共投資削減)を橋本政権が強行した結果、翌年(98年)のGDPがマイナス成長に落ち込み、三大税(消費税、法人税、所得税)の合計は四兆円も減ってしまったのだ。

 当時の橋本政権は、増税や社会保険料引き上げにより、政府の歳入が9兆円は増えると豪語していた。ところが、増えたのは消費税のみ(税率をアップしたので、当然だ)で、残りの歳入はことごとく減少してしまったのである。増税や公共投資削減といった緊縮財政により、「税金の元」であるGDPが激減してしまった以上、当たり前だ。

 もちろん、国民経済上、政府が増税をするべき環境もある。名目GDPが健全な範囲を超えて成長している時期である。例えば、高インフレ率が発生している時期や、あるいは経済がバブル化している時期だ。

 経済のバブル化が進行し、インフレ率が高いのであれば、政府は「GDPを抑制する」ことを目的に増税すべきである。何しろ、上記の説明の通り、増税をすればGDP(需要)が抑制され、インフレ率を押し下げることができる。増税で需要の急拡大を防げば、膨張しつつあるバブルを沈静化させることもできるかも知れない。

 要するに、政府にとって増税とは、民主党(自民党やその他の党も例外ではないが)の多くの政治家が理解しているように、家計の家計簿や企業の売上のごとく、
「収入が足りないから、増やそう」
 といった概念で捉えてはならないものなのだ。

 ところが、8月末に代表戦を控えた民主党の要人たちは、未だに「復興増税」に関する発言をやめようとしない。

『2011年8月21日 NHK「岡田・谷垣両氏 大連立で発言」

 NHKの「日曜討論」で、民主党の岡田幹事長は、自民党などとのいわゆる大連立について、「すぐに実現するのは困難だ」としながらも、与野党が協力できる体制の構築が必要だという考えを示したのに対し、自民党の谷垣総裁は「大連立は普通はあり得ない」としたうえで、震災復興には協力するものの、そのほかの政策課題には是々非々で対応する考えを示しました。

 この中で、民主党の岡田幹事長は、代表選挙の日程について、菅総理大臣が成立を退陣の条件としている再生可能エネルギー買い取り法案が今月26日に成立した場合、30日に国会で新しい総理大臣の指名選挙を行うことができるよう、29日を投票日としたいという考えを示しました。そのうえで岡田氏は、いわゆる大連立について「将来の方向としてはあるが、現状を見ると、すぐに実現するのは困難だ。ただ、ねじれ国会で物事が動かないことは許されず、必要な協力は行う体制を目指すことは必須だ」と述べました。また、岡田氏は、復興財源を確保するための臨時増税について「経済の現状を見なければならないが、あまり先送りすることは許されない。多くの人が痛みを分かち合おうという気持ちを持っているので、きちんと説得して、次の世代に負担を残さない姿勢が必要だ」と述べました。(後略) ※下線部は三橋』

 上記、岡田幹事長の、
「(復興増税について)多くの人が痛みを分かち合おうという気持ちを持っているので、きちんと説得して、次の世代に負担を残さない姿勢が必要」
 という発言は、三重の意味で問題である。


 一つ目は、上記の解説の通り、名目GDPが成長していない状況で増税を強行すると、国民経済(=GDP)が縮小し、翌年の税収が減少してしまうためだ。税収が減ると、当たり前だが復興のための財源は先細りになってしまう。東日本大震災の復興は、少なくとも数年間は続くのだ。

 さらに、二つ目の問題として、東日本大震災のような「数十年に一度」あるいは「数百年に一度」の震災復興の負担を、現在に生きる日本国民のみに押し付けようとしている点があげられる。例えば、東日本大震災が百年に一度の大規模自然災害だというのであれば、復興の負担は今後の百年間で「薄く、広く」負担すればいいのである

 しかも、復興需要を切っ掛けに名目GDPが成長していけば、税収が増える。日本国民は別に増税を我慢することもなく、長期に渡り復興費用を負担していくことが可能になるのだ。さらに、日本の国民経済(=GDP)が健全に成長していけば、「実質的な復興負担 対 GDP比率」も、年々小さくなっていく。

 例えば、復興の原資を六十年償還の建設国債に求めたとしよう。その場合、日本国民は六十年間かけて「薄く広く」復興資金を負担することになる。

 日本の名目GDPが、今後六十年間平均で3%ずつ成長していったとする。その場合、六十年後の日本のGDPは、何と2860兆円に拡大していることになる。そうなれば、現時点で何十兆円を(国債を発行し)復興のための資金として充当しようとも、最終的な年間の実質的な負担額は「誤差」の範囲で済んでしまうのである。

 名目GDPの3%成長など、日本政府及び日本銀行がきちんと仕事をすれば、たやすく達成できる数値である。むしろ日本経済の潜在力を考えると、3%成長は「低すぎる」想定と断言できる。

 さらに言えば、現時点の日本の国債金利は、未だに世界最低だ。金利が低い時点で国債を発行すれば、高金利の時期と比べて国民の負担は小さくなる。

 まさに「今」、「長期の国債」を発行し、東北復興と国民経済の成長を実現すべきなのだ。それにも関わらず、民主党政権は「短期」かつ世代間不公平を招く増税に、復興の原資を委ねようとしている。ここまで的外れなソリューション(解決策)を、筆者は他に思いつくことができない。

 岡田幹事長の発言の三つ目の問題だが、日本国民の健全なナショナリズムを、増税のために「活用」しようとしている点だ。

 他国に比べてナショナリズムが強い日本国民が、震災の負担を分かち合いたいと思う気持ちは崇高であり、尊いことである。とはいえ、民主党及び財務省は、将来(早ければ来年)の日本経済に大ダメージを与える増税を実現するために、国民の崇高な気持ちを利用しようとしているわけだ。許される話ではない。

 どうも民主党政権の復興財源に関する考え方は、
「日本経済は、これ以上成長することができない」
といった、何というか極めて自虐的な思想に基づいているように思える。

 だからこそ、
「収入が足りないから、増税で増やそう」
 といった、国民経済のお金の流れや「経済成長」を根底から無視した議論が進められてしまうのではないだろうか。本来、政府が税収を増やしたいのであれば、適切なデフレ対策を打ち、名目GDPを成長させれば済む話なのだ。

 ところが、上記の「当たり前の話」が、政権中枢部からは一向に聞こえてこない。
日本の情報の歪みは、「実に根深い」としか言いようがない。
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