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もうすぐ北風が強くなる

通貨戦争(39)下落してもドルは延命する

 ドルは一貫して下落を続けるが、基軸通貨の地位は変わりようがない。
 逆に基軸通貨であるが故に、下落は急落に直結しない。ドル自体が世界の金融流通を保証しているからである。
 関連としては「莫大な金融緩和によって金融資本家だけが焼け太り」、「実体経済を破壊して焼け太りを狙う国際金融資本」、「流動性の罠にかかった欧米、そして日本」を御覧ください。
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それでもドルは延命する  ユーロ、人民元は身動きとれず   8/14  田村秀男

 1971年8月15日、ニクソン米大統領(当時)はドルと金(きん)の交換を停止すると宣言した。ただの紙切れになった基軸通貨ドルは凋落(ちょうらく)どころか、米国は幾多の試練をくぐり抜け、世界の金融覇権国として増長に増長を重ねてきた。

 2008年9月15日にはリーマン・ショックに見舞われたが、米連邦準備制度理事会(FRB)がドルを危機前の3倍まで刷り、屑(くず)になりかけた金融商品を買い支えた。株価は1年前から上昇に転じたが、今回のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の米国債格下げをきっかけに株価とドル相場の急落が続く。

  国際金融市場を支配

 そこで、多くの読者は問うだろう。ドルは今度こそ基軸通貨の座から滑り落ちるのか、欧州共通通貨ユーロか中国人民元がドルにとって代わるのか、と。筆者の見方は、「ノー」である。なぜか。

 訳知り顔で言えば、米国は世界唯一の覇権国という、軍事や政治的要因があげられる。だがそれでは通貨をめぐる国際的な力学を見過ごしてしまう。

 最大の要因は、世界の通貨がことごとく紙切れにすぎない中でドル建ての金融商品は他通貨の金融商品を圧倒し国際金融市場を支配している点である。
 ドルは他通貨に対して下落しても、世界の投資家はドル建ての金融資産を見限るわけにいかない。例えば、金が高騰しているが、国際市場価格はドル建てである。ドルというマネーが株式から逃避しても、金、米国債など他のドル建ての金融資産に移動するだけで、ドル離れが起きているわけでは必ずしもない。

 ドルは日本円にも向かうのだが、円もまた金と同じくドル建ての国際商品として投資家に扱われている。日本株もウォール街の投資ファンドからはドル建てで換算されて売り買いされ、円高になれば売られる。逆に言うと、ドルなくして円も日本株も価値が決まらない。ドルは「腐っても鯛(たい)」なのだ。

 では、FRBがドル札をいくら刷っても大丈夫なのか。ドル安でもよいのだろうか。

  結局できるのはQE3

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 グラフは1960年代以降のFRBによるドル資金発行量の推移である。よくみると、FRBは金との結びつきを断ち切ったあとも、従来とほぼ同じペースを守ってきたのだが、「リーマン後」に清水の舞台から飛び降りた。
 米国史上前例のない勢いでお札を刷り増し、量的緩和第1弾(QE1)では紙屑になりかけた住宅ローン担保証券を、第2弾(QE2)では大量発行された米国債を買い上げた。
 ドル資金を手にしたニューヨーク・ウォール街の投資家たちは一部を株式インデックス投信に、残りは原油や円などの投機に向けた。FRBは株価押し上げ効果を自賛した。日本の一部は「基軸通貨危うし」と騒ぐが、オバマ政権は輸出増につながると評価してやまない。

 米国債格下げ後はどうか。財政面では、債務削減は即座には不可能で、結局できるのは、お札の増刷による金融資産買い取りしかない。量的緩和第3弾(QE3)である。だがドル安が急激に進めば、市場で出回っている米国債の約5割を保有する海外投資家が突如パニック売りに転じる恐れが出てくる。
 そのときが真の「ドル暴落」なのだが、ここでからんでくるのは欧州の財政・金融不安である。

 ユーロ加盟南欧諸国の政府債務問題がギリシャからスペイン、イタリアへと広がり、これら諸国の国債を保有する欧州の金融機関を揺さぶっている。そこでユーロを発行する欧州中央銀行はスペインとイタリアの国債を買い上げることにした。
 すると、ユーロ札発行は増えに増えるので、対ユーロ安によるドル全面安の恐れはない。FRBはドルをもっと刷れるだろう。

 米国債最大の保有国、中国はどう出るか。「米国債大量売却」となれば、ドル暴落の引き金を引くが、200兆円相当近くのドル資産の多くが失われ、胡錦濤指導部の責任問題になる。
 ドルに合わせて人民元相場を切り下げると損失は避けられるが、インフレが高進し、出稼ぎ農民や都市の中間層以下の不満を爆発させる。中国は米国債を売るわけにいかないのだ。

 以上、ドル凋落のシナリオはありそうで、そうならない。米欧に比べ、円を刷らない日本だけが、円の独歩高を止められず、デフレをさらにこじらせ、大震災からの復興をどこまでも遅らせる。

 40年前に世界通貨は紙切れの時代になってしまったのに、日本だけが発想転換できないで、おカネを刷らない。その結果、消費者も企業も財政も貧しくなるばかりだ。
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 下は、上記記事の補足。通貨と通貨、通貨と物価の関係。
 この関連は、「通貨戦争(37)財務省・日銀の窮乏化政策」、「通貨戦争(38)10年で価値が半分になった米ドル」を参照してください。 
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よみがえるフィッシャーの呪い   8/17 田村秀男

 物価とおカネの量を関連づけた貨幣数量説の祖、アーヴィング・フィッシャー教授(1867~1947)は「兌換(だかん)されない紙幣は、それを用いた国家を常に呪ってきた」と喝破した。

 1971年8月15日、ニクソン米大統領がドルと金(きん)の交換停止を宣言するや、世界の貨幣はことごとく不換紙幣と化した。
 以後、米連邦準備制度理事会(FRB)をはじめ主要国の中央銀行にとって、インフレの封じ込めが最大の懸案になった。フィッシャー教授の理論を継承したミルトン・フリードマン教授(1912~2006)は、金融政策が「海図なき航海」に乗り出したと論評し、インフレ抑制のために貨幣供給量を制限する政策を世界に広めた。インフレは抑え込まれた。
 92年以降、現在に至るまで米国の消費者物価の年間平均上昇率は高くても3%台におさまっている。

 だが、08年9月に「リーマン・ショック」が起きた。FRBのバーナンキ議長はインフレとは逆のデフレに陥るのを警戒し、ドル札をショック前の3倍まで増刷した。不換紙幣をいくら刷っても、インフレにはならなかった。
 が、実体景気はよくならないし、失業率も高止まりしたままだ。中央銀行は、インフレの恐怖という「フィッシャーの呪い」から解放されたのか。それとも、インフレにはならずとも景気もよくならないという新たな「呪い」をかけられたのか。

 不換紙幣とは紙切れの現金なのだが、預金、証券や証券化商品、いやありとあらゆる金融商品は現金化できるのだから、紙幣と同類のマネーである。「ニクソン声明」は紙幣を金融商品と同等のマネーに格下げしたのである。

 ならば、なんの気兼ねもしなくてよい。米金融業界は71年8月以降、証券化商品や金融派生商品(デリバティブ)など金融商品の多様化をワシントンに働きかける。
 90年代後半からは情報技術(IT)革命とグローバルな金融自由化の波に乗って、金融商品は爆発的に膨張したあげく、バブルとなって崩壊した。
 不換紙幣を金融商品と言い換えると、リーマン・ショックは呪われた結果と思える。

 どうすればよいか。不換紙幣をじゃんじゃん刷るのが、今のところ関の山であり、米国を筆頭に日本を除く主要国がそうしてきた。
 米国はドル暴落不安、中国は高インフレ懸念、欧州は財政危機に見舞われている。
 対照的に、お札を刷らない日本だけが超円高とデフレ・スパイラルに陥っている。

 各国は自らの実情に合った政策をとるしかないのだが、日本の場合、日銀が「インフレ」を気にし、財務官僚はデフレ容認・増税一点張りだ。
 だが、古典的な「呪い」はすでに姿を変え、古典的な対処法では間に合わなくなっている。マネー・パラダイム転換に目覚め、円高阻止と脱デフレに向けた政策に思い切って踏み出すときだ。
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コメント

65歳以上の人口7%の「高齢化社会」、10年前から倍増、31地区のうち26地区に―中国―【私の論評】超高齢化大国中国に明日はない!!

ブログ名:「Funny Restaurant 犬とレストランとイタリア料理」
http://goo.gl/VjmB1
こんにちは。私も、ドルの基軸通貨の地位は、そうそう簡単には、崩れないと思います。人口動態からみて、アメリカ2050年になってからさえ、人口が増え続けますが、中国は、高齢化社会に入ってから久しく、今は、高齢社会に入る寸前です。この高齢化問題、他の先進国から比較すると、近い将来中国にとって、脅威となることは二つの背景からはっきりしています。まずは、個人ベースでの資産が他国と比較すれは、極端に少ないことから、高齢化は中国に深刻な打撃を与えることでしょう。二つ目は、中国の高齢者は、知識労働に対応していないため、高齢者になってからも働き続けて、富を創造することはできません。これら二つの背景から、あと20年もたてば、中国が完璧な後進国に逆戻りする確率はかなり高いと思います。詳細は、是非私のブログを御覧になってください。

コメントをありがとうございます

国際基軸通貨はかなり長期にわたって、ドルのまま続くのではないかと思われます。
ペーパーマネーと基軸通貨の位置から、さらにドルの減価は続きましょうが、そのことは国際基軸通貨としての機能に支障が無いからです。
世界が不換紙幣で減価するので、価値保存性としては急落しなければ良いからです。
無論、ドルの下落進行は途上国の荒廃と米国勤労者の窮乏を招きますが、これも基軸通貨の機能に支障ありません。
人民元は国内・圏域通貨としては価値保存性において歴史的に実績がありますが、基軸通貨とは大きな隔たりがあります、
地方政府の腐敗は目に余るほどですが、彼らは資本主義とは考えていない。
スターリン社会主義の市場経済に伴う、一定の必然的な現象と考えているふしを感じる。
例えば、北欧なども資本主義とは考えていない。
共産主義と別れた、正統の社会主義(社民主義)の市場経済と考えている。
中国は共産党と解放軍、人民元、漢字で統合された領域であり、内部的にはユーロ圏内の国家矛盾に近い地域間矛盾を抱え、かつ矛盾が増大している。
この矛盾が破裂すると世界が混乱に巻き込まれる。
欧米も近年は、うかつな民主化策動は仕掛けなくなった。

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