ガンダーセン:インタビュー(4)汚染と除染
2011-06-12
ガンダーセン:インタビュー(3)からの続き
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マーテンソン:除染というのは、表面的なものであればこすって洗い落とせばよさそうですが、土壌のレベルまで汚染されてしまったらチェルノブイリと同じようにするしかないのではありませんか? 土の上層部を何インチか削り取って手押し車で運び、どこかに積み上げる。ほかにやりようがあるでしょうか。
ガンダーセン:いえ、ほかにはありません。基本的にはどこかに捨てることになります。誰かの近所に行くわけです。
ですがセシウムは非常に水に溶けやすいので、時間とともに土の奥深くに染み込んでいきます。ゼオライトを使った研究によると、ゼオライトを土の上に敷き詰めれば、染み込んだセシウムを再び吸い出すことが出来る可能性がありそうです。
ただ、数百平方メートルという範囲が対象になるわけですから、[学校の]理科の実験の域は超えていますね。
マ:先ほど東京から車のエアフィルターが送られてきたという話をされていましたが、私はまだ少しショックを受けています。そういうものが受け取れるということに。
ある程度の放射能汚染とともにやって来たわけですよね。これは私がここしばらく注目している問題でもあるんですが、今回の事故が日本以外の国の実質経済にどれくらい影響を与えるかを考えてみたいんです。
日本は非常に重要な製造、産業の拠点であり、サプライチェーンの重要な部分を担っています。もっと時間がたてば悪影響を軽減する手立てが見つかるかもしれませんが、今のところは必須の機能が日本にたくさん集まっているのが現実です。
この先、こういった放射能汚染の証拠が次々に見つかるようなことになれば、日本の輸出入バランスがどうなるかが気がかりです。
あ、汚泥から出た。エアフィルターから見つかった、という具合に。どこから出てきてもおかしくないわけです。どうお考えですか?
現時点でサプライチェーンにどんな支障が生じる可能性があるのか、すべてについて放射能汚染の検査をしなくてはならない状況で輸出入プロセスをどう管理するのか。今現在、どんな問題に直面しているのか。
ガ:そうですね、私が少し驚いたのは、ヒラリー・クリントンが日本側に、日本産の食料や野菜の輸入を奨励すると約束したことです。
食物連鎖については先ほどお話しした通りです。大型の工業製品、たとえば自動車、トランジスター、コンピューターといったものについては問題ないと私は思っています。
ただ、そういった製品が入ってくる箱については少し心配です。
とはいえ、船積み会社もその辺は十分に目を光らせるだろうと思います。入っている箱のせいでテレビが汚染された、などという目には絶対に遭いたくないでしょうから。大手企業は三菱やソニーや日立の製品については警戒して、監視を怠らないと思います。
中規模・小規模の企業の場合、たとえば日本から輸入した陶器の壺といったようなものについても、政府が何らかの監視の目を光らせてくれるといいのですが。さもないと安心して買い物ができなくなります。
マ:わかりました。最後にまとめとして、日本やアメリカ西海岸、あるいはどの地域でもいいのですが、そこに住むリスナーのためにお聞きしたいことがあります。
もしも余震が来て4号機が倒れたら、どうすればいいですか。すでに日本の皆さんへのアドバイスはお伺いしました。
できれば飛行機に乗ってすぐそこを離れる、できるだけ遠くへ行く、風向きを見て風上の方向へ逃げる、など。では、アメリカにいてそういう事態が起きたのを知ったら、どうしたらいいでしょうか。
ガ:私は西海岸で空中線量をモニタリングしている研究者数名と連絡を取り合っています。たとえば4月、シアトルの平均的な市民が吸い込んだ高放射能粒子の数は1日当たり10個です。
マ:なんですって? 知りませんでした。
ガ:報告がきちんとした科学論文にまとめられるまでには時間がかかりますからね。普通の人間は、1日に10立方メートルの空気を吸います。シアトルで10立方メートルの空気を調べたところ、それだけの高放射能粒子が検出されたというわけです。
それは4月のことで、今は5月末ですから、状況は良くなっていますが。それでも、4号機に新たな事故が起きなくてもシアトルのエアフィルターには高放射能粒子が10個引っかかっているわけです。誰もが南半球に逃げてリオデジャネイロの別荘で暮らせるわけではありません。
放射能は北半球に留まるので、リアジェット[小型ジェット機]を持っている人は逃げ出せるでしょうが、ですから、もしそういう事態になったら、まずは窓を閉めておくことです。
私なら、外に出る場合はかならず何らかの呼吸用フィルターを装着しますね。放射能の雲が消えたと確信できるまでは、走ることも運動もやめます。
今そうしろと言っているのではありません。最悪の事態が起きたら、の話です。
もし4号機が倒れたら私は窓を閉め、エアコンをつけ、エアコンのフィルターを頻繁に交換し、モップで水拭き掃除をし、HEPAフィルター付きの空気清浄機を置き、高放射能粒子をなるべく吸い込まないようにします。ガイガーカウンターで計測できるような放射能の雲に包まれるわけではありません。西海岸で注意すべきは高放射能粒子です。対策はHEPAフィルターと、粒子を吸い込まないことです。
医療の問題も出てくる可能性があります。今、マギー[フェアウィンズ代表でアーニーの妻]と私は数名の医師と協力して、高放射能粒子を吸い込んだ場合に体外への排出を促す方法を研究しています。
ですが、まだちょっと時期尚早なので、今は深く立ち入らないようにしたいと思います。
マ:わかりました。今のお話はすべて最悪の事態が起きた場合であって、現時点で私たちがすべきは福島から目を離さないこと、というわけですね。
重要なのは、事態がまだ終わっていないということです。
これからもずっと注目し続けなければなりません。ですが、それは簡単ではありません。メディアはこの手の問題を息長く追うのが苦手ですから。
あなたのお考えでは、福島の状況は現在進行形であり、これからもまだ思わぬ事態が起こりうる。3号機で水蒸気爆発が起きるかもしれないし、4号機が倒れるかもしれない。
この2つは、私たちがとくに警戒を続けなければならないリスクである。ほかに付け加えたいことはおありになりますか?
ガ:いいえ。長く険しい道のりになります。
マ:そうですね。どうもありがとうございました、アーニー。素晴らしいお話を伺うことができました。あなたの活動に興味を持ってもっと詳しく知りたい場合は、どこに行けばいいのでしょう。
ガ:フェアウィンズのwww.fairewinds.comが私たちのウェブサイトです。fairの後に「e」が入りますのでお忘れなく。
マギーと私は無償で活動しています。ボランティア活動ですね。うちのコンピューターの達人が作業を続けられるように寄付のボタンもついていますが、非営利事業です。
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マーテンソン:除染というのは、表面的なものであればこすって洗い落とせばよさそうですが、土壌のレベルまで汚染されてしまったらチェルノブイリと同じようにするしかないのではありませんか? 土の上層部を何インチか削り取って手押し車で運び、どこかに積み上げる。ほかにやりようがあるでしょうか。
ガンダーセン:いえ、ほかにはありません。基本的にはどこかに捨てることになります。誰かの近所に行くわけです。
ですがセシウムは非常に水に溶けやすいので、時間とともに土の奥深くに染み込んでいきます。ゼオライトを使った研究によると、ゼオライトを土の上に敷き詰めれば、染み込んだセシウムを再び吸い出すことが出来る可能性がありそうです。
ただ、数百平方メートルという範囲が対象になるわけですから、[学校の]理科の実験の域は超えていますね。
マ:先ほど東京から車のエアフィルターが送られてきたという話をされていましたが、私はまだ少しショックを受けています。そういうものが受け取れるということに。
ある程度の放射能汚染とともにやって来たわけですよね。これは私がここしばらく注目している問題でもあるんですが、今回の事故が日本以外の国の実質経済にどれくらい影響を与えるかを考えてみたいんです。
日本は非常に重要な製造、産業の拠点であり、サプライチェーンの重要な部分を担っています。もっと時間がたてば悪影響を軽減する手立てが見つかるかもしれませんが、今のところは必須の機能が日本にたくさん集まっているのが現実です。
この先、こういった放射能汚染の証拠が次々に見つかるようなことになれば、日本の輸出入バランスがどうなるかが気がかりです。
あ、汚泥から出た。エアフィルターから見つかった、という具合に。どこから出てきてもおかしくないわけです。どうお考えですか?
現時点でサプライチェーンにどんな支障が生じる可能性があるのか、すべてについて放射能汚染の検査をしなくてはならない状況で輸出入プロセスをどう管理するのか。今現在、どんな問題に直面しているのか。
ガ:そうですね、私が少し驚いたのは、ヒラリー・クリントンが日本側に、日本産の食料や野菜の輸入を奨励すると約束したことです。
食物連鎖については先ほどお話しした通りです。大型の工業製品、たとえば自動車、トランジスター、コンピューターといったものについては問題ないと私は思っています。
ただ、そういった製品が入ってくる箱については少し心配です。
とはいえ、船積み会社もその辺は十分に目を光らせるだろうと思います。入っている箱のせいでテレビが汚染された、などという目には絶対に遭いたくないでしょうから。大手企業は三菱やソニーや日立の製品については警戒して、監視を怠らないと思います。
中規模・小規模の企業の場合、たとえば日本から輸入した陶器の壺といったようなものについても、政府が何らかの監視の目を光らせてくれるといいのですが。さもないと安心して買い物ができなくなります。
マ:わかりました。最後にまとめとして、日本やアメリカ西海岸、あるいはどの地域でもいいのですが、そこに住むリスナーのためにお聞きしたいことがあります。
もしも余震が来て4号機が倒れたら、どうすればいいですか。すでに日本の皆さんへのアドバイスはお伺いしました。
できれば飛行機に乗ってすぐそこを離れる、できるだけ遠くへ行く、風向きを見て風上の方向へ逃げる、など。では、アメリカにいてそういう事態が起きたのを知ったら、どうしたらいいでしょうか。
ガ:私は西海岸で空中線量をモニタリングしている研究者数名と連絡を取り合っています。たとえば4月、シアトルの平均的な市民が吸い込んだ高放射能粒子の数は1日当たり10個です。
マ:なんですって? 知りませんでした。
ガ:報告がきちんとした科学論文にまとめられるまでには時間がかかりますからね。普通の人間は、1日に10立方メートルの空気を吸います。シアトルで10立方メートルの空気を調べたところ、それだけの高放射能粒子が検出されたというわけです。
それは4月のことで、今は5月末ですから、状況は良くなっていますが。それでも、4号機に新たな事故が起きなくてもシアトルのエアフィルターには高放射能粒子が10個引っかかっているわけです。誰もが南半球に逃げてリオデジャネイロの別荘で暮らせるわけではありません。
放射能は北半球に留まるので、リアジェット[小型ジェット機]を持っている人は逃げ出せるでしょうが、ですから、もしそういう事態になったら、まずは窓を閉めておくことです。
私なら、外に出る場合はかならず何らかの呼吸用フィルターを装着しますね。放射能の雲が消えたと確信できるまでは、走ることも運動もやめます。
今そうしろと言っているのではありません。最悪の事態が起きたら、の話です。
もし4号機が倒れたら私は窓を閉め、エアコンをつけ、エアコンのフィルターを頻繁に交換し、モップで水拭き掃除をし、HEPAフィルター付きの空気清浄機を置き、高放射能粒子をなるべく吸い込まないようにします。ガイガーカウンターで計測できるような放射能の雲に包まれるわけではありません。西海岸で注意すべきは高放射能粒子です。対策はHEPAフィルターと、粒子を吸い込まないことです。
医療の問題も出てくる可能性があります。今、マギー[フェアウィンズ代表でアーニーの妻]と私は数名の医師と協力して、高放射能粒子を吸い込んだ場合に体外への排出を促す方法を研究しています。
ですが、まだちょっと時期尚早なので、今は深く立ち入らないようにしたいと思います。
マ:わかりました。今のお話はすべて最悪の事態が起きた場合であって、現時点で私たちがすべきは福島から目を離さないこと、というわけですね。
重要なのは、事態がまだ終わっていないということです。
これからもずっと注目し続けなければなりません。ですが、それは簡単ではありません。メディアはこの手の問題を息長く追うのが苦手ですから。
あなたのお考えでは、福島の状況は現在進行形であり、これからもまだ思わぬ事態が起こりうる。3号機で水蒸気爆発が起きるかもしれないし、4号機が倒れるかもしれない。
この2つは、私たちがとくに警戒を続けなければならないリスクである。ほかに付け加えたいことはおありになりますか?
ガ:いいえ。長く険しい道のりになります。
マ:そうですね。どうもありがとうございました、アーニー。素晴らしいお話を伺うことができました。あなたの活動に興味を持ってもっと詳しく知りたい場合は、どこに行けばいいのでしょう。
ガ:フェアウィンズのwww.fairewinds.comが私たちのウェブサイトです。fairの後に「e」が入りますのでお忘れなく。
マギーと私は無償で活動しています。ボランティア活動ですね。うちのコンピューターの達人が作業を続けられるように寄付のボタンもついていますが、非営利事業です。
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