英国の歳出削減
2010-10-21
デフレと経済政策の関係については、何度か書きました。
「民間給与5.5%減」 「世界で日本のみデフレ」
社会的な考えとか、政治的な考えとかは異なっていても、経済関係では考えが一致する、あるいは極めて近い人は結構いらっしゃるのですが、三橋貴明氏もその一人です。なお私とは政治、社会については考えが大いに違うようです。
彼は「相対化」と言う言葉を使っていますが、経済事象として把握する場合に相対化することは基本であるにもかかわらず、お座なりな売文アナリスト、経済学者の多いこと。
先程、発表されたイギリス政府の財政削減策に、正しく反論しており、かつ、それこそ相対化さえしないで、肯定するマスコミ「世論」迎合評論家を批判しているので紹介します。
さて、最近ブログやインタビューで触れることが多くなった「相対化」ですが、格好の事例が出てまいりました。
『英、4年で公務員49万人削減へ…全体の8% http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20101021-OYT1T00063.htm 英国のオズボーン財務相は20日、一般歳出を2011~14年度に計810億ポンド(約10・3兆円)を削減し、公務員を約49万人(全体の約8%相当)減らすことを盛り込んだ財政に関する報告書「歳出再評価」を議会で発表した。 6月に公表した財政再建策のうち、歳出削減の詳細を明らかにしたもので、戦後最大規模の歳出カットとなる。 再建策は無駄な支出見直しを柱に据えた。公務員給与の引き上げを2年間凍結し、人員削減も含め、中央省庁の行政経費を4年間で約3分の1、計59億ポンド(約7600億円)を減らす。福祉関連では、13年1月から高額所得者向けの子ども手当を廃止し、年25億ポンドを浮かせる。発表に先立ち、19日にはキャメロン首相が、国防費を14年度までに8%減らすことも表明した。』
バブル崩壊中のイギリスで緊縮財政を強行すると、どうなるか。先日のエントリー「既視感 」 をご覧下さい。
本日のテーマとしたいのは、この種の報道に対する日本人の反応です。
「ほら見ろ! イギリスが公務員を削減する! イギリスは素晴らしい! 日本の無駄飯食いの公務員も半分にしろ!」 とか何とか思ったとしたら、その人は全く相対化ができておらず、自らの絶対的価値観で語っているということになります。日教組の「日本が悪いことしたんだ!」と全く同じです。
上記の「 」の中には、相対化がゼロであるのに対し、絶対的価値観が三つほど含まれています。お分かりになります?
「日本の公務員は多すぎる」 「イギリスはいい国で、日本はとにかくダメな国」 「環境変化に関係なく、公務員削減はいいこと」
最後の「環境に関係なく、公務員削減はいいこと」は、別に解説不要ですね。インフレ時に公務員削減などの政府支出削減をするのは、正しいソリューションです。しかし、デフレ期にやってしまうと、失業率上昇とデフレスパイルを呼び込むだけです。 二番目の「イギリスはいい国で・・・」は、「いい国」の定義が良く分からないので、省略します。
問題は最初の「日本の公務員は多すぎる」です。 本ブログの読者の皆様も、↑これがあたかも事実であるかのごとく、認識している人が多いでしょう。しかし、多すぎる云々は相対化してみなければ、実際のところは分かりません。
ちなみに、最近の日本が公務員数の削減をしていることは、さすがに皆様ご認識されているようです。すなわち、過去と比べると公務員数は少ないということになります。 となると、絶対的価値観で話す人は以下の言い方をしてきます。 「そりゃあ、少しは減らしたかもしれないが、外国に比べればまだまだ多い!」 と、「外国に比べれば」などというフレーズを使う人が、実際に「外国と比べる」を実行に移すことはないわけです。なぜならば、外国と比べると、日本の公務員数がいかに「少ないか」が分かってしまうため、そもそもこの手のフレーズを使えるはずがないのです。
【人口千人当たりの公的部門における職員数の国際比較】 http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_31.html#Komuin
上記の通り、日本の公的部門における職員数は、人口千人当たりでアメリカ、イギリス、フランスの半分以下。ドイツの六割程度になっています。 このようなデータを突きつけられると、絶対的価値観で話す人は、 「公務員は少ないかも知れないが、行政法人などの職員を含めると、日本が一番多い!」 などと言い出します。資料の注釈に「日本の「政府企業職員」には、独立行政法人(特定及び非特定)、国立大学法人、大学共同利用機関法人、特殊法人及び国有林野事業の職員を計上。」と書いてあるのですが、その部分は目に入らないわけですね。
ちなみに、公務員が少ない日本及びドイツは、経常収支黒字国です。すなわち、民間の力が強く、国内の生産力が高く(高すぎ)、国内のみならず外国の需要までをも満たしているわけですね。公務員の多いアメリカ、イギリス、フランスは経常収支赤字国です。 そして、わたくしが調べた限り最も「国民一人当たりの経常収支赤字」が多かったギリシャは、労働人口の四分の一が公務員です。 経常収支黒字国⇒公務員が少ない。経常収支赤字国⇒公務員が多い。の「かも」知れませんね。お時間がある方は、ぜひとも「相対化」してみてください。
財政、公共投資、デフレ対策、輸出依存、対中依存などなど、相対化しない人々が間違った情報を垂れ流し、間違った認識を社会に共有させようとしています。公務員問題一つとっても、この有様ですから、これでまともな対策など立てようがありません。
何度も書いていますが、間違った問題把握をする人が、正しい対策を構築することは決してできません。そして、正しい問題把握をするためのメソッド(手法)の一つが、相対化なのです。
特に、政治家の皆様には、そろそろ物事を絶対的価値観で判断する(と言うか、思考停止する)ことをやめ、相対化して鳥瞰的に物事を把握した上で、政治活動に従事していただきたいと切に願います。
(引用終り)
「民間給与5.5%減」 「世界で日本のみデフレ」
社会的な考えとか、政治的な考えとかは異なっていても、経済関係では考えが一致する、あるいは極めて近い人は結構いらっしゃるのですが、三橋貴明氏もその一人です。なお私とは政治、社会については考えが大いに違うようです。
彼は「相対化」と言う言葉を使っていますが、経済事象として把握する場合に相対化することは基本であるにもかかわらず、お座なりな売文アナリスト、経済学者の多いこと。
先程、発表されたイギリス政府の財政削減策に、正しく反論しており、かつ、それこそ相対化さえしないで、肯定するマスコミ「世論」迎合評論家を批判しているので紹介します。
さて、最近ブログやインタビューで触れることが多くなった「相対化」ですが、格好の事例が出てまいりました。
『英、4年で公務員49万人削減へ…全体の8% http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20101021-OYT1T00063.htm 英国のオズボーン財務相は20日、一般歳出を2011~14年度に計810億ポンド(約10・3兆円)を削減し、公務員を約49万人(全体の約8%相当)減らすことを盛り込んだ財政に関する報告書「歳出再評価」を議会で発表した。 6月に公表した財政再建策のうち、歳出削減の詳細を明らかにしたもので、戦後最大規模の歳出カットとなる。 再建策は無駄な支出見直しを柱に据えた。公務員給与の引き上げを2年間凍結し、人員削減も含め、中央省庁の行政経費を4年間で約3分の1、計59億ポンド(約7600億円)を減らす。福祉関連では、13年1月から高額所得者向けの子ども手当を廃止し、年25億ポンドを浮かせる。発表に先立ち、19日にはキャメロン首相が、国防費を14年度までに8%減らすことも表明した。』
バブル崩壊中のイギリスで緊縮財政を強行すると、どうなるか。先日のエントリー「既視感 」 をご覧下さい。
本日のテーマとしたいのは、この種の報道に対する日本人の反応です。
「ほら見ろ! イギリスが公務員を削減する! イギリスは素晴らしい! 日本の無駄飯食いの公務員も半分にしろ!」 とか何とか思ったとしたら、その人は全く相対化ができておらず、自らの絶対的価値観で語っているということになります。日教組の「日本が悪いことしたんだ!」と全く同じです。
上記の「 」の中には、相対化がゼロであるのに対し、絶対的価値観が三つほど含まれています。お分かりになります?
「日本の公務員は多すぎる」 「イギリスはいい国で、日本はとにかくダメな国」 「環境変化に関係なく、公務員削減はいいこと」
最後の「環境に関係なく、公務員削減はいいこと」は、別に解説不要ですね。インフレ時に公務員削減などの政府支出削減をするのは、正しいソリューションです。しかし、デフレ期にやってしまうと、失業率上昇とデフレスパイルを呼び込むだけです。 二番目の「イギリスはいい国で・・・」は、「いい国」の定義が良く分からないので、省略します。
問題は最初の「日本の公務員は多すぎる」です。 本ブログの読者の皆様も、↑これがあたかも事実であるかのごとく、認識している人が多いでしょう。しかし、多すぎる云々は相対化してみなければ、実際のところは分かりません。
ちなみに、最近の日本が公務員数の削減をしていることは、さすがに皆様ご認識されているようです。すなわち、過去と比べると公務員数は少ないということになります。 となると、絶対的価値観で話す人は以下の言い方をしてきます。 「そりゃあ、少しは減らしたかもしれないが、外国に比べればまだまだ多い!」 と、「外国に比べれば」などというフレーズを使う人が、実際に「外国と比べる」を実行に移すことはないわけです。なぜならば、外国と比べると、日本の公務員数がいかに「少ないか」が分かってしまうため、そもそもこの手のフレーズを使えるはずがないのです。
【人口千人当たりの公的部門における職員数の国際比較】 http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_31.html#Komuin
上記の通り、日本の公的部門における職員数は、人口千人当たりでアメリカ、イギリス、フランスの半分以下。ドイツの六割程度になっています。 このようなデータを突きつけられると、絶対的価値観で話す人は、 「公務員は少ないかも知れないが、行政法人などの職員を含めると、日本が一番多い!」 などと言い出します。資料の注釈に「日本の「政府企業職員」には、独立行政法人(特定及び非特定)、国立大学法人、大学共同利用機関法人、特殊法人及び国有林野事業の職員を計上。」と書いてあるのですが、その部分は目に入らないわけですね。
ちなみに、公務員が少ない日本及びドイツは、経常収支黒字国です。すなわち、民間の力が強く、国内の生産力が高く(高すぎ)、国内のみならず外国の需要までをも満たしているわけですね。公務員の多いアメリカ、イギリス、フランスは経常収支赤字国です。 そして、わたくしが調べた限り最も「国民一人当たりの経常収支赤字」が多かったギリシャは、労働人口の四分の一が公務員です。 経常収支黒字国⇒公務員が少ない。経常収支赤字国⇒公務員が多い。の「かも」知れませんね。お時間がある方は、ぜひとも「相対化」してみてください。
財政、公共投資、デフレ対策、輸出依存、対中依存などなど、相対化しない人々が間違った情報を垂れ流し、間違った認識を社会に共有させようとしています。公務員問題一つとっても、この有様ですから、これでまともな対策など立てようがありません。
何度も書いていますが、間違った問題把握をする人が、正しい対策を構築することは決してできません。そして、正しい問題把握をするためのメソッド(手法)の一つが、相対化なのです。
特に、政治家の皆様には、そろそろ物事を絶対的価値観で判断する(と言うか、思考停止する)ことをやめ、相対化して鳥瞰的に物事を把握した上で、政治活動に従事していただきたいと切に願います。
(引用終り)
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