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もうすぐ北風が強くなる

広瀬隆インタビュー浜岡停止後の課題(2)

 (広瀬隆インタビュー(1)からの続き)

 加えて、政治家もマスメディアも知らないらしいので驚くのですが、日本で発電できる会社は、電力会社だけではないのです。電力が足りないと言うのなら、電力会社は、日本の全産業界にすぐに送電線を開放する義務があります。
 なぜかというと、IPP(Independent Power Producer=独立系卸電力事業者)がたくさん発電能力をもっているからです。鉄鋼、機械、化学などの業種がこの分野に参入しており、これをフルに活用すれば、たった今、日本全土のすべての原発をストップしても、停電など起こり得ないのです。

 日本で卸電力入札制度が始まった1997年の電気事業審議会の調査によれば、IPPの潜在供給力は、最低でも2135万kW、最大では5200万kWに達するという結果でした。では現在の数字を見てください。
 2011年現在の商業用原子炉は、名目上 54基 4911.2万kWですが、廃炉になる福島第一原発は469.6万kW。地震で破壊された柏崎刈羽原発2・3・4号機は再起不能の停止中で、330万kW。したがって現在の原子力発電所は、実際には4111.6万kWしか能力がありません。
 それに対して、総務省統計局のデータによるIPP、つまり自家発電の能力はすでに4000万kWもあるのだから、即刻、全原発の停止ができることを、日本人がまったく知らないのです。
 テレビと新聞が、見当違いの電力不足パニックを煽っていると批判したのは、このことなのです。

 ところが電力会社が送電線を独占し、高額の送電価格を設定しているため、これらのすぐれた事業者が電力市場から排除され、自由に電気を売れないわけです。日本の国家としては、即刻、送電と発電の事業を完全に分離して、電力の自由化を進め、国民のために送電線を開放させることが、国会と政府の急いで行うべき務めなのです。
 政治家とマスメディアは、電力会社に飼われた犬ではないでしょう? 産業界を含めた国民のためにあるはずだと、今こそ誰もがその疑問の声を上げるべき時です。

――これから発電設備を増強するとすれば、原子力発電に代わるエネルギーをどこに求めるべきだとお考えですか?

 電力会社としては、LNG(液化天然ガス)火力発電所を増やすことです。エネルギー・環境問題研究所代表の石井彰氏によれば、LNG火力は最短で数か月あれば設置できると言います(「ガスエネルギー新聞」2011年4月6日)。電力会社は停電を口にする前に、最もクリーンで、世界の発電のエースであるLNG火力を増設するべきです。

 LNG火力というのは、現在、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた「ガス・コンバインドサイクル」として完成しています。この発電設備は、火力のなかで最もエネルギー効率が高いのです。
 じつは原発のエネルギー効率は驚くほど低く、わずか30%です。電気にならなかった残りの70%は、温排水として海を加熱して、自然破壊を進めています。一方、従来型火力は45%まで、そしてガス・コンバインドの熱効率は実績で60%まで高まっています。

 しかも、この方式ではタービンでLNGを燃焼させた後に、何度も排熱を回収してエネルギーを発電機に送るため、熱効率は原発の2倍なのに、排熱量は2分の1に抑えられる。ほかにも、天然ガスはクリーンで地球環境に最もやさしい、小型なので設置に場所をとらない、電源を入れてから1時間で起動できるので消費量の変化に追随できる、という数々のメリットがあります。

 原発がなければ経済成長できないと考えるのは大きな誤りで、これがいま世界の趨勢なのです。

ガス

実際、日本の電力会社もこの設備の導入を進めており、2010年9月14日には、中部電力が西名古屋火力発電所の石油火力を刷新してコンバインドサイクルを導入する方針を打ち出しました。これによって、この発電所の出力は119万kWから220万kWへ100万kWほど高まることになります。
 このことからも、浜岡原発を延命させるよりもコンバインドを推進したほうがはるかに効率的であることがわかるでしょう。

 東京ガスと大阪ガス、中部電力、独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の4社がこの5月9日に、三菱商事が進めるカナダのシェールガス(シェール層から採取される天然ガス)事業に共同で参画すると発表したことは、その最先端の動きです。アメリカの天然ガスは、今後ほとんどシェールガスに依存する計画ですから。

 さらに、今後の将来的なエネルギー政策を考えた場合には、エネファーム(家庭用燃料電池)が主力になることに期待しています。何しろ最大エネルギー効率はコンバインドより高い80%で、天災などで大打撃を受ける集中型の設備ではなく、家庭ごとに設置する分散型の理想的な姿になるからです。これが2020年には累計250万台に達するという市場予測が出ています。
 そうなれば、20世帯に1台の割合で普及するわけですから、家庭での成功によって製造部品のコストが大幅に下がって、現在のパソコンと同じように量産による低コスト化が実現され、工場をはじめとした産業界に広まってゆきます。つまり、最大の電力消費者が、エネルギーの有効利用を達成できるわけです。


――菅首相が強調していた自然エネルギーについてはどうですか?

 原発に代わって自然エネルギーを普及せよと言われますが、これで一番喜んでいるのはじつは原子力産業なんです。自然エネルギーは20年経っても、原発の電力分を100%賄うことはできませんから、原発を推進するための格好の口実になってしまうわけです。

 日本の電力消費は、家庭用が3割弱で、残りの7割以上を産業用と業務用が占めています。しかも、日中は家庭にあまり人がいませんから、ピーク電力の問題はほとんどが産業用・業務用の問題です。

 電力の大半を消費している産業界が、その日の天気や風の気まぐれに頼る自然エネルギーでは夏のピーク需要を賄えないことを一番よく知っています。産業界の協力がどうしても必要なので、いま議論が必要なのは、自然エネルギーではなくコンバインドサイクルのような安定供給できる設備です。

 太陽光発電は優れていますが、原子炉1基分の100万kWの電力をつくろうとすると、山手線の内側と同じくらいの面積にソーラーパネルを敷き詰める必要があります。原発50基分では、その50倍ですよ。そうなると自然破壊をもたらすため、設置場所が建物の屋根などに限られてきます。だから、それらは長期的なペースで徐々に進めればよいのです。

――浜岡原発が立地する御前崎市では、雇用や消費などの面で大きな影響が出るのではないかと波紋が広がっています。

 浜岡原発を本当に止めるために、最も考慮しなくてはならないのが、この問題です。御前崎市の予算の42%(原発交付金と固定資産税の合計)が原発に依存しているわけで、これを解決する方法はお金しかありません。これまで御前崎市の人たちには、大都会の人が原発の危険性を負わせてきたのだから、これは国家の責任として原発交付金に代わる資金を政府が手当てするべきです。

 というのは、かつて国策で石炭から石油へ移行する時代に、政府は炭鉱を閉鎖する企業に対して「閉山交付金」を支給しました。それでも石炭産業の人たちは大変だったのですが、今回は金額がはっきりしているのだから、そっくり補填しなければいけません。

 その財源は4330億円にのぼる原子力関連予算から手当てすれば簡単です。御前崎市の財源などすぐつくれます。事業仕分けで何ら削減されなかったこの予算が、莫大なムダを出し続けているわけですから。
 たとえば、高速増殖炉「もんじゅ」と六ヶ所村の再処理工場を合わせると、建設費だけで5兆円以上の資金が注ぎ込まれています。
 しかも、どちらも信じられないような人為的なミスによって、まったく機能していない、無用の長物なのです。今後も絶対に、まともな運転はあり得ません。
 加えて、将来の放射性廃棄物の処理に30兆円を要する原子力産業など、あってはならないでしょう。

 原発に依存した生活を続けるのは、現地住民にとっても、すべての国民にとっても良くないことです。原発から自立することは、新しい希望の生活を意味します。
 古いものが消えれば、必ず新しいものを生み出すのが、人間です。否定的に考えてはいけません。

 私が自信をもってそれを言うのは沖縄を見ているからです。米軍基地に経済が依存してきた沖縄では、「米軍基地の跡地」の地域が県内で最も経済発展しているからです。
 いま沖縄県が全土をあげて米軍基地に反対できるのは、その経済的な実績があるからです。

 それと同じ輝ける未来図が描けることを、御前崎市の人たちに知っていただきたいです。
 そしてそこに行き着くまでの期間は、責任をもって政府が手厚く支援する必要があります。


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