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もうすぐ北風が強くなる

三橋:ショック・ドクトリン中編(1)

 「経済記事にはもう騙されない」三橋貴明氏から  「ショック・ドクトリン前編」からの続きです。
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 いわゆる「日本財政破綻論」は、実に歴史が長い。1982年の赤字国債十年償還の撤回以来、延々と三十年近くも継続している。

 例えば、上記82年に首相を務めていた故・鈴木善幸氏は、自著において以下のように述べている。

「放漫財政を憂える 国、地方を問わず、自治体の財政が破綻するのではないかとの不安が広がっている。このままでは私たちの孫子の世代に天文学的な負債、借金を背負わせることになる。未来に責任を持つ意味でこの問題を放置してはならない。(「等しからざるを憂える。元首相鈴木善幸回顧録」岩手日報社 P25)」

 鈴木善幸氏の、
「このままでは私たちの孫子の世代に天文学的な負債、借金を背負わせることになる。」
 という言葉ほど、日本の財政問題に関する混乱を象徴しているものはない。何しろ、筆者が本連載で当初から繰り返し指摘してきた「政府の負債の種類」について、根本から理解していないのである。

 現在の日本政府の負債の多くを占める日本国債は、95%以上が日本国内の金融機関、あるいは家計により保有されている。すなわち、日本政府は「日本国民」からお金を借りているというわけだ。

【図99-1 2010年末時点 日本国債保有者別内訳(総額は約727兆円)】
99_01.png
出典:日本銀行「資金循環統計」

 図99-1の通り、国債保有に外国人(海外)が占める割合は、4.83%に過ぎない。すなわち、将来のある時点で政府が国債を償還(借金返済)したとき、「返済してもらう」のが「私たちの孫子」になるわけだ。
「このままでは私たちの孫子の世代に天文学的な負債、借金を背負わせることになる。」
 のではない。我々の孫子が背負わされるのは、負債、借金ではなく資産、債権である。

 無論、筆者は別に日本政府の負債について、無限に膨らませても構わないなどと、極論を言いたいわけではない。とはいえ、政府の負債については「減らすべき時期」というものがあるのだ。

 政府は、別にお金を懐に入れるために国債を発行するわけではない。借りたお金を「支出」するために発行する。支出とは、時には公共投資であろうし、時には社会保障費の支払いであろう。あるいは、子ども手当てなどの所得移転系の支出かもしれない。

 いずれにせよ、政府が支出すると、GDP上の需要は増える。公共投資や社会保障費は、それぞれ「公的固定資本形成」「政府最終消費支出」という、GDP上の需要項目である。また、子ども手当てなどの所得移転は、直接的にはGDPを拡大しないが、お金が振り込まれた家計が消費を拡大すれば、GDP上の「民間最終消費支出」という需要項目が増える。

 すなわち、額の大小はあれども、政府が国債を発行すれば、GDP上の需要は必ず増えるのだ。無論、政府が国債を発行し、銀行預金のままバランスシートの資産側で眠らせておけば、GDPは増えない。とはいえ、そんな意味のないことは、さすがの日本政府といえどもしない。

 国内経済がインフレの環境下において、政府が国債を発行し、支出を拡大してしまってはどうなるだろうか。先にも書いたように、政府の支出とはGDP上の需要である。供給が足りない状況で、需要が増えるわけだから、当然の結果としてインフレはますます進行してしまう。

 すなわち、政府はインフレ下では国債を発行するべきではないのである。むしろ、税収を国債の償還(借金返済)に充て、国内で余計な需要を発生させないことこそがソリューション(解決策)になる。

 また、政府が国債を償還すると、国家全体のバランスシート上で、政府の資産と負債が「同額」消滅する。筆者は頻繁に「お金は使っても消えない(誰かのところに移るだけ)」と書くが、借金返済をすることで「お金を消す」ことは可能なのだ。

【図99-2 2010年末時点 日本国家のバランスシート(単位:兆円)】
99_02.png

出典:日本銀行「資金循環統計」
※上記は金融資産・負債のみで、土地や設備等の非金融資産は含まれていない。


 図99-2は、2010年末時点における、日本国家の全ての経済主体のバランスシートを合算したものだ。この状況から、政府が10兆円の負債(国債)を返済した場合、どうなるだろうか。

 まずは、政府の負債1049.7兆円が、1039.7兆円に減少する。さらに、政府の資産471.4兆円が、461.4兆円に減る。借金返済とは「手元の現預金(資産)を債権者に渡す」行為であるため、負債のみならず資産も減るのである。

 同時に、銀行(金融機関)の資産側で、国債10兆円分が現預金10兆円に姿を変える。読者が知人からの借金を返済してもらった場合、「貸付金」という資産は消えるが、代わりに同額の現預金が手元に残るのと同じである。

 上記の通り、政府が10兆円分の国債を償還すると、負債サイドで国債10兆円が消滅し、資産サイドで政府の資産(現預金)が同額減る。国家全体のバランスシートを見ると、借方、貸方が共に10兆円減ることで、左右が「バランスする」というわけである。

(ショック・ドクトリン中編(2)へ続く)
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