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もうすぐ北風が強くなる

三橋:ショック・ドクトリン前編(2)

 (ショック・ドクトリン前編(1)からの続き

 ところで、95年の阪神・淡路大震災のような「ショッキング」な出来事が発生し、その後、むしろ積極的に国民に痛みを与える「構造改革」「緊縮財政」が推進されるケースは意外に多い。そもそも、構造改革や緊縮財政などの路線を世界に広めた、新自由主義経済学派の「本家」たるノーベル経済学者ミルトン・フリードマンが、
「真の変革は、危機状況によってのみ可能となる」
 と断言しているのである。

 戦争、大きな自然災害、あるいは大々的な国家経済の破綻など、国民がショックを受けた時期にこそ、大々的な変革が可能になるという発想だ。この種の発想は「ショック・ドクトリン」と呼ばれる。

 実際に、95年の阪神・淡路大震災以降の日本は、まさしくこのショック・ドクトリン路線そのままに、国民経済を痛めつける各種の改革を行った。

 あるいは、97年に民間銀行が対外負債のデフォルトに陥り、国家経済のモデルが「真逆」になるほどの、大々的な変革が行われた韓国である。97年のIMF管理下において、韓国経済は「日本型」から「アメリカ型」へ一気にモデルチェンジされてしまったわけだが、あれほど過激な変革は、IMF管理などの「ショック」がなければ、不可能であっただろう。

 そして、2011年。3月11日の東日本大震災発生を受け、日本において、またもや「ショック・ドクトリン」が始まろうとしている。具体的には、消費税の増税とTPPという「過激な構造改革」の強行だ。


 そもそも、民主党の菅直人内閣は、発足当初から消費税アップを主張していたわけだが、その「理由」が頻繁に変わる。2010年5月にギリシャが破綻(IMF及びEUに支援要請)したが、7月の参議員選挙に際して、民主党はギリシャ破綻を「利用」しようとしたわけだ。

「ギリシャは破綻しました。日本の財政状況は、ギリシャよりも悪い。だから消費税アップしかない!」
 などと、首相自ら無知丸出しな主張を繰り返し、参議員選挙に敗北したのである。日本は経常収支黒字国にして世界最大の対外純資産国、ギリシャは世界屈指の経常収支赤字国、対外純負債国。日本は過剰貯蓄、ギリシャは貯蓄不足。日本は長期金利が世界最低の1%台、ギリシャは10%超。日本は政府負債の債権者の9割以上が日本国民(銀行など)、ギリシャは七割超が外国人投資家。日本国債は100%日本円建て、ギリシャは自国では金利調整が不可能なユーロ建て。日本の消費税は5%だが、ギリシャはすでに21%などなど。

 日本とギリシャの違いは山ほどあるわけだが、この種の差異を無視して、
「ギリシャは破綻しました。日本の財政状況は、ギリシャよりも悪い」
 などと、首相自ら断言するわけだから、我が国の政治家のレベルがどの程度のものか、如実に理解できるというものだ。

 結局、菅直人政権は参議員選挙で敗北したが、そのせいか、今度は「税と社会保障の一体改革」などと言い出した。「ギリシャのような財政破綻を防ぐため」などと言うと、無知を嘲笑されてしまうため、国民が反対しにくい「社会保障のため」という路線に主張をシフトさせたわけだ。

 そもそも「ギリシャのような財政破綻を防ぐため増税」論が間違っていたというのであれば、それについて何らかの説明が必要なはずである。ところが、菅政権はその種の説明を一切せず、まさに「いつの間にか」というスタイルで「社会保障のための消費税アップ」という路線に舵を切ったわけである。何というか、無責任かつ不道徳としか言いようがない。

 そして、3月11日に東日本大震災が発生した。すると、今度は「復興増税」という名で、菅政権は消費税アップを推進しようとしている。


『2011年4月15日 読売新聞「復興連帯税を民主検討、消費税など一定期間増税」
民主党は15日、東日本大震災の復興財源として「復興連帯税」(仮称)の創設を検討する方針を固めた。

 消費税、所得税、法人税のいずれか、または複数について一定期間増税する方向で協議する。復興財源は政府の東日本大震災復興構想会議(議長・五百旗頭真防衛大学校長)も「震災復興税」を提起しており、政府・与党で復興に向け増税論議が本格化する。具体的な税目や税率については、今後、民主党の税制改正プロジェクトチーム(座長・小沢鋭仁前環境相)などで議論する。

 政府は復興対策を盛りこんで6月にも編成する2011年度第2次補正予算の財源として国債を発行する方針だ。玄葉国家戦略相(民主党政調会長)は15日の閣議後会見で、復興国債の発行を検討する考えを示した。民主党は、この復興債の償還の財源に、復興連帯税の税収を充てる考えだ。』


 復興連帯税とは、まさに「ショック・ドクトリン」的なネーミングだ。大震災でショックを受け、「復興のため」と言われると逆らいにくい雰囲気にある、国民を黙らせる意図が透けて見える。そういう意味で、1994年に細川護煕政権が打ち出した「国民福祉税構想」と同類である。

 世界最悪のデフレ環境下にあり、過剰貯蓄が極端な規模に増大し、長期金利が世界最低の国が、なぜ「国債償還のための増税」を実施しなければならないのだろうか。普通に国債を発行し、日銀が買いオペレーションで金利を調整すれば、日本政府は復興のための原資を充分に調達することが可能なのである。

 無論、現在の日本においてインフレが加速しているならば、本稿冒頭にも書いたように、筆者は増税路線に賛成する。しかし、現実は異なる。

 要するに、震災というショックを利用し、かねてから管政権が志向していた増税路線を実現したいという、ただ、それだけの話なのだ。何というか、非常に卑しい政治手法である

 今後の日本において展開が予想されるショック・ドクトリンは、何も増税には限らない。

 (ショック・ドクトリン中編(1)へ続く)
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