あまりにひどい尖閣事件
2010-09-28

尖閣諸島の帰属は日中国交回復後に鄧小平の提案で「棚上げ」が決まり、日本側実効支配のままで、領海外の海域は両国漁民が操業してきた。中国側は摩擦を避けるため警備艇などを派遣せず、日本側も拿捕などはしなかった。
今回日本側は警備方針を変え、9月7日に衝突事件が発生すると、逮捕してしまった。その後の経過は報道されているとおりであり、ビデオなるものは公開されていない。
結局、内閣は責任を地検に押し付けて(地検が政治判断?)、処分保留で釈放する。これは法的には誤認逮捕と同じ意味である。
政治、法律運用、外交力など日本は極めて情けない事実を世界にさらしてしまった。
何故、逮捕したのか。そして何故釈放したのか。どこにも誰にも一貫性もなければ責任もない。
この「紛争」にさえもならなかった無能な事件の「効果」はこれから長く続くことだろう。
日本政府は今日現在も、「巡視船の修理費を請求する」などと公言している。世界中が「開いた口が塞がらない」ことだろう。何処の誰がこんな支離滅裂な政府をまともにお相手するだろうか。
気を取り直して、この事件に関わった日中米の、今の段階での中間総括として、各国の課題と成果を思いつくまま列挙してみる。
日本
o メリットは何もなかった。デメリットは最悪である。
o 最大の貿易相手である中国との関係悪化。
o 中国での反日感情の高揚による進出企業、観光が苦境に陥る。
o 国内では政治不信。
o 日米安保費用が増大するだろう。
o 尖閣海域への中国漁業監視船常駐の名目が立ったため、これからは海保との武装衝突のリスクを抱え込んでしまった。
o アメリカ、中国のみならず世界から日本の外交力政治力が完全に信用を失った。
o 中国、アメリカに、責任の所在など日本の政治構造、政治と海保、検察などの行動パターンが現実に把握されてしまった。米中にとっては貴重な実験であり、多方面に応用されるのは疑いない。
中国
o 中国外交の政治力と釣魚島の領有権問題を世界にアピールした。
o 国内で政府への信頼感が高まった。また台湾との絆が強化された。
o 北朝鮮情勢の緊張緩和をもたらし、東シナ海ガス田の掘削を開始できた。
o 日本が逮捕したので、日本主張領海に漁船が越境しないよう漁業監視船を常駐させる名目が立った。中印、南シナ海などの領有権問題の中で最も有利に進む可能性。
o アメリカ、東アジア諸国、他の各国共に日本よりでなく、どちらかと言えば中国よりの立場を保った。今後の外交可能性を大いに開いた。
o 責任の所在など日本の政治構造、政治と海保、検察などの行動パターンが現実に把握できたこと。貴重な実験であり、多方面に応用してゆくだろう。
o デメリットとしては日中関係の悪化があるが、中国経済に占める日本の比率は低いので、この程度なら影響はない。
アメリカ
o 反中、反日気運を大いに盛り上げることで、日中対立を作り出し、西太平洋における中国防衛線の拡張阻止。日本の経済的弱体化。
o 日米安保の維持強化に極めて好都合な政治関係。米軍への日本側負担増強の機会。
o 責任の所在など日本の政治構造、政治と海保、検察などの行動パターンが現実に把握できたこと。貴重な実験であり、多方面に応用してゆくだろう。
o 日中対立による東アジア南アジアにおけるアメリカの政治力向上。それともちろん、米中緊張緩和。
逮捕から釈放までの間に日本側は完全にアクション停止状態で、無能でした。とても能動的な意志的行動で逮捕したとは思えない。
最初の逮捕と、最後の釈放にアメリカの影を感じるのは私だけだろうか。

中国漁業監視船
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