沖縄知事選はかいらい利権政治への最初の勝利:白井
2015-05-15

2015年4.28の那覇。
露骨に米国のかいらいを追求するゴロツキ政権が、再び戦争国家への道を作ろうとしている。
傀儡としてに利権と権力、私利私欲のためには憲法も国会も無視して既成事実をでっち上げてきた。
冷戦構造に日本の敗戦を利用する米国と、国体護持の戦争責任者たちはA級戦犯の処刑という手打ち式で敗戦とその戦争責任を問わず、その結果は今でも戦争が「自然現象」であったかのような妄想が蔓延している。
そのために、戦後絶え間なく繰り返すかいらい保守による、アジアとの対立と再軍備強化は、その頂点にさしかかったようである。
沖縄の「意思」を明らかにした「オール沖縄」は、この腐れ切ったかいらい買弁権力に対する最初の勝利だったのだ。
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沖縄県知事選――永続敗戦レジームに対する最初の勝利 2014/12/13 白井聡
※本稿は12月3日「琉球新報」文化面に寄せた文章です。
開票開始早々の翁長雄志氏当確の報に接しつつ、私は喜びを噛みしめていた。
周知のように、本土では「戦後レジームからの脱却」を絶叫するネトウヨ宰相が、そのスローガンとは真逆の政策(一層の対米隷従と東アジアでの孤立)をなりふり構わず追求している。
アベノミクスから2020年東京オリンピックに至るまでことごとく見え透いた茶番が繰り広げられ、原発再稼働から集団的自衛権行使容認に至るまで醜い政治的狂態が演じられているにもかかわらず、社会の小さからぬ部分がそれらを直視せず、泥沼のような無関心のなかに眠り続けようとしている。
主要なメディアと御用学者たちは、手練れの催眠術師の妙技によってそうした国民の反応を引き出す。
その間にも、毎日新たに生み出されるロクでもないニュース(辺野古沖新基地建設強行もその一つだ)は、この国が戦後の価値観、すなわち「平和主義と民主主義」を――たとえ建前であったとしても――尊重しようという姿勢をかなぐり捨てようとしていることを告げている。
なるほど、確かに「戦後レジームからの脱却」は実行されているに違いない。
ただしそれは、戦後を曲がりなりにも支えてきたものを押し潰しながら、戦後がその始まりから持ち越してきてしまった腐った部分を全面的に押し出すことによってである。
このような気の滅入る光景が展開されるなかで、沖縄県知事選の結果という報せは、私にとって本当に数少ない、好き報せ=福音であった。
なぜ私が、それほどまでに翁長氏勝利という結果を歓迎するのか。それは、今回の県知事選においてこそ、日本全体で成立している本当の政治的対立の構図が「正しいかたちで」現れたからである。
私の見るところ、沖縄米軍基地問題に現れる日米関係の在り方は、日米関係の真の姿であると同時に、本土の人間がその真実を見なくても済むようにさせる装置にほかならない。
日本の保守支配層は、戦後の日米関係を世界でも類を見ない安定した友好的なものとして自賛するが、それが本当ならば、なぜ在日米軍の占領軍的性格が今日に至るまで持続している(その象徴が日米地位協定である)のか、彼らは絶対に説明できない。
本気でこれを説明しようとすれば、彼らは、日本を統治することを米国によって(日本国民の民主的に表明された意思に基づいてではなく)許された傀儡にほかならないことを自ら告白することになるからである。
普天間基地に関するエピソードこそ、彼らの正体を最も雄弁に語るものであろう。
その危険性を最初に指摘した権力者は、日本政府関係者の誰でもなく、ラムズフェルド国防長官(2003年当時)だった。
戦闘的ネオコンとして知られる人物でさえもが即座に認めた明白な危険性を、本土の保守支配層の誰も、「畏れ多くて」指摘できなかったのだった。
この極限的な卑屈さは度し難いものであるが、現在の保守支配層は、第二次大戦におけるあの出鱈目な戦争指導の責任を米国によって誤魔化してもらった連中の末裔なのだから、それは当然の行動様式でもあるのだ。
私は、このようなものとしての保守支配層による戦後日本の統治体制を「永続敗戦レジーム」と呼んでいる。
敗戦にもかかわらず維持された権力は、勝者に媚びへつらう、つまり負け続ける一方、一般国民に対しては敗戦の意味を曖昧化し最小限化することで自らを支えてきた。
そして、平和・民主主義といった戦後の価値観(すなわち、敗戦によって導入された価値観)を後景に退けつつ歴史修正主義(敗戦の否認)に耽溺する安倍晋三の政治は、「戦後レジームからの脱却」どころか永続敗戦レジームとしての戦後レジームを純粋化したものにほかならない。
しかし、このような体制は、もう限界に達している。
TPP問題や集団的自衛権行使の問題といった日本の今後に関わる死活的問題をめぐる保守支配層の行動様式の買弁的性格は、もはや隠す術もない。
彼らには、自己保身のためにこの国の有形無形の富をその最後の一片に至るまで売り渡し犠牲にする用意があるとしても、私は少しも驚かない。
彼らがかつて第二次大戦時沖縄に対してしたことは、まさにそれだったのだから。
したがって、いま日本全土で現出している政治的対立の決定的焦点とは、このような統治構造をこれ以上許容するのか、それとも拒絶するのか、という問いとして提起されなければならないのである。
そして、沖縄の政治情勢こそ、この対立構造に全国のどこよりも早く到達した。
すなわち、永続敗戦レジームの代理勢力(仲井眞陣営)と、従来の保革対立を越えて「オール沖縄」としてこのレジームを拒絶する勢力(翁長陣営)との戦いというかたちで、知事の座は争われたからである。
戦後の事実上の割譲、そして占領軍の際限なき駐留というかたちで永続敗戦レジームの矛盾を集中的に引き受けさせられた沖縄が、戦後日本の統治構造が抱え続けてきた欺瞞の核心に逸早く行き当たり、それに対する根本的な異議申し立てを始めたのは、至極当然のことであるように私には見える。
翁長氏の勝利の意義を私なりに一言でまとめるなら、それは「永続敗戦レジームに対する最初の勝利」にほかならない。
勝利の弁において、翁長氏は辺野古の問題に関して「日本の民主主義国家としての品格が問われている」と述べたが、まさに核心を衝いている。
日本政府と国民とは、薄汚い傀儡政権とそのおこぼれを漁り回るだけの存在にすぎないのか、という問いが鋭く発せられたのである。
もはや後戻りはあり得ない。
第二、第三、もっと多くの沖縄を。
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