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小出氏インタビュー4/25集団疎開裁判の会

 小出

【ふくしま集団疎開裁判の会・特別企画】社団法人日本外国特派員協会にて収録  4/25  「kiikochan.blog」から

https://youtu.be/3N0AleLL6DU?t=34s

  被ばくの影響

質問者1:
まず、フクシマの原発事故なんですが、子供たち、特に健康面だけではなくて精神面にも、
たくさんの人に影響を及ぼしたと思うんですけれども、
中でも子供たちへの影響が多いと聞いていますが、どのような問題が考えられますか?

小出:
まずは、”子供”という生き物ですけれども、「放射線の感受性がとても高い」のです。
ごくごく平均的な、ま、たくさんの人々を、年寄りから子供まで集めてきて、
それぞれの放射線の危険度を平均化していって、
”平均的な危険度”というものをもし計算することができるとすると、
赤ん坊などは、その平均的な危険度の4倍も5倍も被曝の危険度が大きいという、そういう生き物なのです。

ですから、今福島原子力発電所の事故の後、
汚染地帯に子供も含めて捨てられてしまっているわけですけれども、
これから、被曝による影響というものが、様々な形で現れてくると思いますが、
その多くは子供達に現れてくるだろうと思います。

そして、そういう環境で人々が生活しているわけですから、
例えば、子供を持っている母親などは、
「自分の子供を被曝させないように」と、多分細心の注意を払っているだろうと思います。

そうなるとどうするか、というと、
「泥んこ遊びはしてはいけない」
「雑草に触れてはいけない」
「花が咲いていてもそれをとってはいけない」
というように、多分子供達を育てざるを得なくなっていると思います。
そうなれば、子供達からみれば、
単に被曝によって健康被害を受けるということだけではなくて、
子供らしく成長していくという、そのこと自身を奪われてしまうという、
今、「精神的な」とおっしゃったと思いますけれども、
そういうことも抱えながら、子供達が生きざるを得ないという状態になっていると思います。

質問者1:
「被曝」についてですが、福島の子供の甲状腺癌による病状が拡大しつつあるということを聞いたんですが、その現状について少し教えていただけますか?

小出:
人間が、放射線というものを発見したのは1895年です。
ドイツのレントゲンという物理学者が、実験中に不思議な光というものが出ていることに気がついて、
正体不明の光だということで「X線」という名前をつけた。
それが初めてだった、のです。

その頃は「放射線」というものが何だかもわからなかったわけで、
たくさんの学者や研究者が「その不思議な光、X線って一体なんなんだ?」ということで調べ始めるわけですし、
その他にも様々な放射線というものがあることにも気がつく訳です。

しかし、「放射線がどれだけ危険か」ということを彼らは知らなかった。
そのためにたくさん二歩と他人が死んでしまったり、
あるいは健康の被害を受けるという歴史をずーっと続けてきたのです。

そういうことを世界中の学者も研究者もだんだん気がついてきて、
放射線というものに被曝してしまうと、「様々な被害を受けるのだろう」ということがわかってきた。

そして、一番決定的な証拠というのは、
広島・長崎の原爆被爆者、の被害によって私たちの目の前に知らされたものなのです。

たくさん被曝をしてしまえば、もちろん死んでしまう訳ですし、
髪の毛も抜けてしまう、
火傷をする、吐き気をもよおす。
下痢をしてしまうというような、
被ばく直後からたくさんの被害が出るということが、すぐにわかりました。

では、そういうすぐに現れる被害だけで済むのか?ということで、
また研究が始まりました。

米国という国がABCCという研究所を広島と長崎に作りまして、
その研究所に、被爆者を、10万人近い被ばく者を集める訳です。
そして被ばくをしていなかった人たちも集めまして、
健康調査を1950年から始めました。
そして長い間、被ばく者と被ばくをしていない人たちの間にどんな健康被害の差が出るだろうか?
ということの調査を続けたのです。

その調査というのは、被ばく者、あるいは非被ばく者というのをABCCの研究所に呼び寄せて調査をするのですが、決して治療はしません。
治療をしてしまえば、データにならないのですね。
治療をしないでほったらかしにしておけばどうなるか?ということを彼らは知りたいのですから、
健康の診断はするのだけれども、治療は一切しないという調査をずーっと続けたのです。

で、その結果何がわかってきたか?というと、
被ばくというものは直後に影響が現れなくても、いずれ白血病が出てくる、ということが始めにわかりました。

その次には白血病だけではなくて、その他のガンも増えている、ということがわかりました。
さらに長く調査を続けていけばいくだけ、爆心地から離れて、被ばく量が少なかった人たちの中にも癌や白血病が増えてきているということがわかってきたのです。

最近になっては、癌や白血病だけではない、循環器系の病気であるとか、様々な病気が、やはり被ばく者の中に多いということがわかってきているのです。
でも、まだまだ分からないことというのはたくさんあるのです。
これからまだまだ被ばく者という人の調査を続ける訳で、でも、何れにしても何十年か経てば、被爆者の方々も亡くなってしまって、結局調査もあるところで行き詰まってしまうということになるのですが、
私自身は、どんな病気も生じるだろうと思っています

私はもともと物理的なものを専門にしてきた人間ですけれども、
放射線が持っているエネルギーというのは、生き物が自分の体を維持するための化学結合。
ケミカルな結合を支えているエネルギーに比べれば、10万倍も100万倍も高いという、そういうエネルギーを持っていますので、
放射線に被ばくをするということは、生命体にとってありとあらゆる被害を受けるだろうと思っています。

現在福島県では、子供達の間に甲状腺癌というのが出ているわけで、
出て当然だろうと、私は思います。
ただ、因果関係というものを確定するまでには、まだまだ長い間の調査をしなければいけないと思います。
それに対しては国の方は「今出ている甲状腺癌は被ばくとの因果関係はない」というようなことを言っているわけですけれども、あまりにもサイエンスからかけ離れた主張強調文だと思います。
何よりも必要なのは、きちっとした調査をするということだと、私は思います。

質問者1:
原発事故後から今日まで被害を受けた方々の、特に子供達に対する調査もですけれど、
医療サポートだとか、その重要性とか必要性、あと問題点について少し教えてください。

小出:
まず、何よりも必要なことは、
本当であれば、子供達を汚染地帯から避難させる、移住させるということなのです。
「被ばくをしてしまえば、もちろん体に傷がつく」というのは今聞いていただいた通りなのであって、
本当であれば子供たち、せめて子供達は逃がさなければいけないということをやるべきだと、私は思います。

残念ながらこのデタラメな国はそれをやらないで、子供も含めて汚染地帯に捨ててしまっているわけです。
そうなれば、仕方がない。
やはり調査をして、子供たちにどんな被害が出るのか?そしてどうやればそれをサポートできるのか?
ということを考えるしかないと思います。

  1年間に20ミリシーベルトまでは帰還させる

質問者1:
事故直後から現在まで、放射能汚染はどれくらいひどいと思いますか?
私達も少し、わかりにくくて、そこがちょっとわからないんですけど。

小出:
日本というのは法治国家と言われてきたのですね。
国民が法律をもし破るようなことをすれば、国家が処罰すると言ってきた。
悪い奴がいれば刑務所に入れちゃうから、街には悪い奴はいない。
安全で安心な国なんだと、日本の国が私達にそういうふうに言い続けてきたわけです。

それならば法律を決めた国家が、自分の決めた法律を守るのは最低限の義務だ、と私は思います。
そして、日本の国家が作った法律、被ばくに関する法律はたくさんあったのです。
例えば、普通の皆さんは1年間に1mSv以上の被ばくをしてはいけないし、させてもいけないという法律がありました。

それから、私自身は先ほどもちょっと聞いていただきましたが、
京都大学原子炉実験所という特殊な職場で、原子炉や放射能を相手に仕事を続けてきた人間なのです。
放射線業務従事者という、法律的なレッテルを貼られた人間です。
その私が放射性物質、放射能を取り扱って仕事をする、実験をしようと思えば、こういう、例えば普通の場所ではできないのです。
私がそういう仕事をしようと思うときは、放射線管理区域という中に入って、その場所でしか仕事ができない、という場所なのです。
そういう場所には普通の皆さんはまず、入ることすらができない場所です。
私のような放射線業務従事者であっても、その場所に入ったら最後水すら飲んではいけない
食べ物も食べてはいけない。
トイレもありませんから排泄もできない
、という、そういう場所が放射線の管理区域なのです。

私は仕事柄仕方がないので、そういう場所で仕事をしてきました。
そして、放射線管理区域の中で仕事を終えて、外にもちろん出てくるわけですけれども、簡単には出られないのです。
放射線管理区域の入り口にあるドアはいつも閉まっています。
そのドアを開けるためには、まず私自身の体が汚れていないかどうかということを測定しない限り、ドアは開かないのです。
なぜなら、私の体が汚れていて、管理区域の外にでてしまえば、普通のみなさんが生活をしているわけで、普通の皆さんをまた被ばくさせてしまう。
そんなことはいけないことなので、体が汚れていないかをきちっと測定しない限りはドアは開かないということになっているのです。

では、その時の基準というのはどのくらいの汚れなのか?というと、
1平方メートルあたり4万ベクレル、というのが基準です。
ですから、私の実験着が1平方メートルあたり4万ベクレルを超えた放射能で汚れていれば、ドアが開かないのです。
ですから私はそこで実験着を脱いで、放射線管理区域の中で、放射能で汚れたゴミとして、私の実験着を捨てる以外ないと、そういう場所なのです。
持ち込んだ実験道具が汚れていれば、もちろんそれも捨てるしかないという。
それが放射線管理区域の基準だったし、日本の法律がそう定めていたのです。

しかし、福島第一発電所の事故以降、広大な地域が放射能で淀れてしまって、
放射線管理区域の基準以上に汚れている地域は、おそらく面積にして1万4000平方Kmあります。
福島を中心とした東北地方、あるいは関東地方の一部というような地域が、それだけ汚れてしまっているのです。

ところが日本の国は、もうどうしようもない。
1平方メートルあたり60万ベクレルというような、猛烈な汚染地帯はさすがに人々は住めないので、強制避難させるということにしたのですけれども、
それ以外のところは、現在は原子力緊急事態だ、ということで、もう人々をそこに捨てる。
「逃げたい奴は勝手に逃げろ」ということをやってしまった
わけです。

今は「一度逃げた人々も帰還しろ」と言っているわけですけれども、
その帰還の基準というのは、「1年間に20ミリシーベルトという被ばくまでは帰還しろ」と、日本の国が言っています。

その数字は一体なんなのか?というと、
私のような放射線業務従事者に対して、初めて許された被ばく量が1年間に20ミリシーベルトです。

それは、私のような特殊な人間が、仕事をすることによって給料をもらう。
それと引き換えに、「ここまでは我慢しろ」と言って決められた基準あのであって、
普通の人々にそんな基準を押しつけるというのは、到底許してはいけないことですし、
特に、被ばくに感受性の高い子供達にそんな基準を許すということは、私はありえないほどの暴挙だと思います。

  子供達をとにかく逃す

質問者1:
そんな中、福島の方々の避難の必要性とか重要性とか、少しお話しされましたけれども、
そういう中で生活している子供達の避難する権利だとか、生きる権利、人権についてはどう思われますか?

小出:
私、実は「人権」という言葉が嫌いなのですけれども、
でも、子供達を被ばくから守るということは、大人たちの最低限の義務だと私は思っています。
なぜかといえば、原子力の旗を振ってきた人、
電力会社であるとか、国であるとか、そういう人たちには猛烈に重たい責任があるわけで、
私は「彼らは犯罪者だ」、と呼んでいますし、「彼らを処罰したい」と思っています。
重大な責任のある人は、まず刑務所に入れなければいけない
と思っています。

そして私にしても長い間原子力の場で生きてきました。
原子力の旗は決して降りませんでしたけれども、原子力の場で生きてきた人間として、普通の皆さんに比べれば重たい責任があるだろうと思います。
でも、普通の皆さんは何のでき人もなかったのか?といえば、私はそうではないと思います。

原子力の暴走をここまで許してしまった。
世界一の地震国に58基もの原子力発電所を建てさせるまで、漫然とそれを許してきたということに対して、すべての日本人には責任があるだろうと、私には責任があるだろうと思っています。

しかし、子供に関する限りは、一切の責任もない。
原子力の暴走を許した責任もないし、
福島原子力発電所の事故を引き起こしたことに関しても、子供には責任はないわけです。
おまけに先ほどから聞いてきていただいたように、子供というのは放射線に大変敏感なわけです。
何としても子供達を被ばくから守るということを今、日本の大人たちはやらなければいけないと思っています。

ただ、残念ながらさっきも聞いていただきましたが、
この日本という国は、本当であれば、法律を守るのであれば、人々をそこに立ち入らせてはいけない。
私のような人間が入っても、水すら飲んではいけないという、そういう場所に子供も含めて捨ててしまっているのです。
そうなれば、なんとか子供達の被ばくを少なくさせなければいけないと、私は思いますので、
今日この会を開いてくださっている皆さん、疎開裁判をしてくださっている皆さんたちが求めているように、子供達をとにかく逃すと、どんな形であっても逃すというようなことを、大人の責任としてやるべきだと思います。

  ひとりひとりが自分の現場で差別に抵抗して戦う

質問者1:
それと少し関係しているんですが、事故後4年経って、このような状況の中で、私たち、学生も含めて大人だったりとかは、どのようにこの原発事故後の状況に対して向き合っていけばいいですか?

小出:とても難しいご質問だと思います。

質問者1:私たち学生にもできることがあったら、ということで。

小出:
そうですか。
もちろんあるだろうと思います。
福島第一原子力発電所の事故、そのことに責任のある人たちというのは、私は、日本の国家の中枢を支えてきた人たちだと思いますし、電力会社、原子力産業の人たちだと思います。
そういう人たちを、先ほども言いましたが、「処罰したい」と、私は心底思っていますが、
残念ながら彼らは、誰一人として責任を取っていないし、処罰もされていないのです。
「大変不思議なことだな」と、思いはしますけれども、
でも「この日本という国は、どうもそういう国なんだな」と、思うようになりました。

というのは、昔というか、何十年か前といったほうがいいのかもしれませんが、
日本というこの国は戦争をしていたのですね。
日本には現人神(あらひとがみ)である天皇陛下がいて、
「神の国だから決して戦争には負けない」と言って戦争を始めて

そして大本営というものを作って、マスコミも含めてみんなが戦争に突き進んでいった。
結局戦争に負けたわけですけれども、ほとんど誰も責任を取らない
で、戦後の歴史が始まっているわけです。

一般の人たちは「大本営発表に騙されたんだ」と。
悪かったのは軍部で、自分たちは騙されただけだ」ということで、
それまでは「鬼畜米兵」だと言っていたものが、いっぺんに「民主主義だ」と言い出して、コロリと変わってしまって、本当に何を自分たちがやったのか?という反省をしなかったと私は思います。

戦争中でも、確かに誰も戦争を止められなかったけれども、戦争に反対した人たちはいたのです。
そういう人たちは軍部につかまって、特高警察に捕まって殺されていったわけですし、
そうでない人というのは、ごく普通の日本人が「非国民」というレッテルを押して、一族郎党抹殺していったという、そういう歴史を辿ってきたわけです。

そういうごく普通の日本人達が、戦争が終わってしまったら「ただ騙されただけだ」と、「自分たちは悪くはなかった」と言って逃れてしまったんだと思います。

そして福島第一原子力発電所
今、こんな悲劇を起こした責任のある人たちは、誰も責任を取らない
そして一般の人たちも「なんか騙されたんだな」というぐらいに気がついている人たちはいるかもしれませんが、
それでも、本気で原子力を止めようとしている人たちが多いとは、私には見えないのです。

残念ながら日本で原子力発電を許してきた、というか、58基の原子力発電所の全てに認可を与えたのは、自由民主党という政権です。
そして今でも選挙をすれば自由民主党が、ま、選挙制度の問題もあるけれども、それでも政権の政党になってしまうということになっていて、一般の国民にもまだまだ福島第一原子力発電所に対しての責任の取り方がわかっていないと私は思います。

そして、「じゃあ何ができるのか」ということですけれども、人々というのは多様な存在ですね。
私自身は、ある時に原子力に夢を持ってしまって、この場に足を踏み込んだ人間ですので、
そういう場に足を踏み込んだ人間として、私にできること、私にしかできないこと、というのがあると思いますので、それを今までもやってきたつもりですし、これからもやりたいと思っています。

ただし、原子力の問題というのは、単に原子力の安全性、機械としての工学的な安全性という問題ではないのです。
先ほどから聞いていただいたように、責任がある人間が、責任を取らずに逃げ延びてしまうというような、そのような不当な行為をやはり許してはいけないということだと思いますし、
そういうことは、私は一言で言うと「差別」と呼んでいるんですけれども、
そういう問題というのは、原子力の場だけではなくて、どこにでも存在しています。

誰かさんが学生であれば、学生であるという、その存在している場にも不当な差別というのはたくさんあると思いますので、ひとりひとりの方が自分の現場で差別に抵抗して戦うということをやってくださるのであれば、私が今戦っている原子力の問題と必ず繋がってくるだろうと思います。

ひとりひとりの人間がそうしながら、きちっと自分の責任を果たすのだという社会ができれば、原子力なんて簡単に止まるはずだと私は思いますし、子供達の被曝を防ぐことだって、簡単にできるだろうと思います。

  定年退職

質問者1:
その中で小出先生が今までされてきた活動と、あとこれからどんな活動をする予定があるのか教えてください。

小出:
私は京都大学原子炉実験所というところにいて、原子力のことを研究するというのは私の仕事だったわけですから、私はひたすらその研究を今日までしてきました。
ただし私は原子力を進めるための研究はしなかったつもりです。
原子力なんていうものをやってしまうと、どんな被害が出てくるのか?
どんな危険を人間が抱えなければいけないか?

ということに関して、私が原子力の現場でできる研究というのをこれまでやってきたのです。

それは、原子力発電所が今枠的にどんな危険を抱えていて、もし事故になればこんなことになるだろうということを調べることも、私の研究のテーマでしたし、
そのためには原子炉実験所という特殊な職場にある様々な測定器を駆使して、その仕事に当たるということをやってきました。
ただし、先ほど聞いていただいたように、私は3月末で京都大学を退職しましたので、それまで使えた膨大な研究機器というものをもう使うことができない、という立場になっています。
それに私は定年退職となったわけです。
ま、定年退職というのは、単に雇用関係が切れるというだけのことであって、社会的な制度ですから、
私という個性を持った生き物にとっては、たいして大きな意味はもちろんないのです、定年退職ということに関しては。

ただいま聞いていただいたように、それまで使っていた膨大な機器が使えなくなったということは、一つありますし、
もう一つは、生き物として私も必ず年老いていく。
そしていつか死ぬというのは避けられないことなのであって、定年ということを機に、私も生き物としての自覚を新ためて持たなければいけないと思っていますので、
これまでも私は、自分しかやらない、自分にしかできないという仕事だけに自分の力を傾けてきたつもりなのですが、
これを機に、自分にしかできないという仕事を、より厳選しながら、生き物としていずれ死ぬということを自覚しながら、少しずつ退いていこうと思っています。

  甲状腺癌と被ばくとの因果関係

質問者2:
今までおっしゃったことについて、質問を3点あります。
まずは、わからなかったことなんですが、
さっき先生が、「被ばくでどんな病気が出てもおかしくない」っておっしゃったとおもいますが、
それだと結構長い時間にわたって病気が出て、そこにどうやって甲状腺に関係しているかわかるんですか?その病気が。

小出:甲状腺癌が被ばくとの因果関係があるかないか、ということがどうやったらわかるか?ということですか?

質問者2:そうです。

小出:
まずは原爆被爆者で白血病や癌が増えている。
あるいは循環器系の病気が増えているということがわかってきた、ということは、
疫学という学問の調査結果なのです。
それはどうやって調べるかというと、
被ばくをした人と、被ばくをしなかった人たちというのを、同じような年齢集団で作って、
それを長い間調べていくことで、こちらの集団とこちらの集団で健康被害に差があるかないかということを調べて、ようやくにしてわかる
という、そういう学問の世界なのですが、
福島の甲状腺癌に関しても、被ばくした子供たちを被ばくの度合いによって、分類をしていく。
そして一方に被ばくをしなかった子供たちというのをまた調査集団として作って、
それを長い間調査していって、「被ばくをしている子供達の方に甲状腺癌が多い」ということを見つけるというやり方が疫学というやり方です。
それは私はやらなければいけないと思っていますが、大変時間のかかる調査ですし、私たちが交絡因子(こうらくいんし)と呼んでいる、非常に人間という生き物はいろんな危険にさらされているわけで、放射線の被ばくだけではないわけですね。
そういう他の危険をどうやって切り落としていって、被ばくの影響だけ見つけ出すのかというのがなかなか難しい分野でして、これから長い年月たくさんの子供たちを調査しない限りは、因果関係の立証は難しいだろうと、私は思います。

そして国の方は、それをやりたくない。のです。
国の方は自分たちの責任ということを認めたくないわけですから、なるべくならごまかしてしまおうと思っているわけで、調査自身をやりたくないと思っているだろうと思います。
なんとか調査をきちっとやらせるような方向でいきたいと思っています。

それから、他にも多分手段はあるだろうと思っているのですが、
ま、今は私にはよくわかりません。
癌というものも、ある種の遺伝子が関係しているということがわかっていて、放射線によって遺伝子が傷ついて、それによって癌が発症するということも、少しずつはわかってきているわけですし、
これからは、甲状腺癌というものが、被ばくによって生じる甲状腺癌と、そうではない甲状腺癌というものを遺伝子の分析によって区別することができるというようなことが、これからの学問の進歩でできるようになるかもしれません。

そうなれば、今福島の子供達、たくさんの子供たちが甲状腺癌になっているわけですけれども、
その因果関係をもっと明確に言えるようになるだろうと期待しています。

  因果関係を確定するためにも調査は必要

質問者2:
二つ目の質問は、先生が今おっしゃったことに関連していると思いますが、
こういうリサーチとか研究以外に、国にはどういう政策が必要だと思いますか?
福祉でも医療サポートでも、どういう、被ばく関連の政策が必要だと思いますか?

小出:政策ですか?
一番いいのは先ほどから何度も聞いていただいているように、被ばくさせないことです。
まずは。
逃がさなければいけないのです。
被ばくをさせてしまった後は、きちっと調査をするということ。
それは因果関係を確定するためにも調査というのは必要ですし、私の場合にはさきほどABCCの例をひいて、
「ABCCは疫学的な因果関係を証明しようとして治療は一切しなかった」
ということを聞いていただいたわけですけれども、
私はそんなことは到底許せないと思いますので、「調査をしながら確実に治療もする」ということをやらなければいけないと思います。

それによって疫学的な研究の信頼性というのが失われるかもしれませんけれども、そんなことを言っている場合ではないと思いますので、きっちりと調査をしながら治療もして、なおかつ疫学的なデータを得られるようにするべきだと思いますし、そのための組織、そのための資金というものをきちんと国家の方で手当てをするべきだと思います。

  謝罪

質問者:
最後なんですけど、質問より、先生から原発事故で被ばくを受けた子供たちとか被ばく者とかにも、みんなに向けてメッセージを送って欲しいんですが。

小出:
すみません。
そういうふうにみなさんにメッセージを送れるような立場に私はないと自分で思っています。
先ほども聞いていただきましたように、私は原子力の旗は決して振りませんでしたけれども、
それでも原子力の場にずーっといた人間として、今回の事故についても重たい責任を持っている一人だと思いますので、私から被害を一方的に押し付けられている子供達、あるいは今汚染地帯で苦しんでいる大人の人々に対して、そういう立場の私から何かメッセージを届けるという立場には私はないと思います。

もし届けるメッセージがあるとすれば、「大変申し訳ないことになってしまった」ということで謝罪をしたいと思います。

  日本ではサイエンスに携わっている人は権力に弱い

質問者1:
世界的な観点からということで、海外の科学的な、サイエンスの研究としてのアプローチと、日本のアプローチ。
放射能に対してですが、それが違うのか?という質問が一つと、
二つ目は、日本で今起きていることが、日本はちゃんと世界に伝えられているのかどうか?

小出:
はい。
1番目のことですけれども、
サイエンスという手法は世界共通です。
日本であろうと外国であろうと一緒であって、とにかく真実を知りたい。
今までわからなかったことに対して真実を知りたいというのがサイエンスの目的ですし、
そのための手法は一律であるべきだと思います。
ただ残念ながら、この日本という国では、サイエンスに携わっている人間が、権力に弱いです。
ですから、国家が原子力を進めようとしているときに、その国家が進める原子力に抵抗しようというサイエンティスト、学者がほとんどいないという、そういう状態になってしまっているという。
それが多分外国との違いだろうと思います。

二つ目の日本での出来事が外国に対してきちんと発信されているか?といわれれば、もちろんされています。
私がこの場に来た、外国特派員協会に来た理由もその一つだろうと思います。
先ほども聞いていただきましたけれども、かつての戦争の時、日本では大本営発表という発表しか無かった無かったのです。
日本は絶対に戦争に勝てると言ってきたわけですし、教育の現場でも教室に天皇陛下の御真影を飾って、校庭には奉安殿というのがあって、ま…、戦争にみんなを駆り立てた。

誰も本当のことを言えなかったという、そういう時代がずっとあったわけですし、
福島原子力発電所の事故以降もすーっとそうです。
きちっとした事故の状況、情報を日本の国家は報道しませんでした。

学者に対しても箝口令を敷きました。
個人的に考えていること。
集めたデータを発表してはいけないということで、
私のいる京都大学原子炉実験所でもそういう指示がきましたし、
全国の大学にもみんな行った
と思いますし、
大学どころか、他の研究機関にはもう、初めから発表する機会すらがないという、そういう状態できたと思います。

私はたまたま京都大学という、日本の中では、多分1番2番を争うほど自由な校風の大学にいましたし、
そのうちの原子炉実験所という、遠隔地と呼ばれている、統制のきかない職場にいた、ということもあって、
私自身は国からの指示を、ま、受けずに。
受けてもはねのけることができるという立場で発言を続けてきましたが、
その私にしても貴重な発言の場であった”たねまきジャーナル”というラジオ報道の番組を番組ごと潰されてしまうというようなことにもなりました。

そういう意味では、日本というこの国は、きちっとした情報は国内に対しても、また国外に対しても、発信されていなかったし、これからもされないと私は思います。

  国際的なサイエンスの連帯

質問者3:
これからの、例えば日本の政府とかジャーナリズムであるとか、そういうのがきちんと機能していないと。
外国に正しいことを伝えていない。
それから日本の市民運動が、外国の、例えば国際社会とか、一般の市民の方になかなか知られていないとか、
そういうことが多分あって出てくると思うんですけれども、
あと、海外の科学者の方との連携。
それを市民が中心になって日本の科学者の方と外国の科学者を連携させて、
とにかく国際社会の連携を市民を中心にやっていくのが重要かなと僕は思うのですが、
そのアイディアというか可能性というか、そういうのはどう思われますか?
たとえば、小出先生が外国の科学者の方と連携を。
この放射能の被曝のことを科学的に共同で何かをやっていくという、
それを市民が一緒に協力して、日本の市民と外国の市民が一緒に協力してそれをオーガナイズ(organize:計画する)していくというやり方がすごく好きなんです。
やりたいな、っていうふうに思うんですが、それについては?

小出:
多分やり方は色々だろうと思います。
たとえばいまおっしゃった活動というのは、たとえば日本では市民科学者国際会議という国際会議をずっと続けてきていて、私自身もその国際会議で話をしてきましたし、
他の市民グループの人たちも、たとえば世界の被ばく者問題を、核被ばく者問題を取り扱おうという人たちが、ずっと活動を続けているし、
その人たちも今年の10月11月に大きな、国際的な科学者の集まりを市民レベルで実現させようとしています。
この間私はそのプレ企画で話に行きましたし、貴重なやり方だろうと思います。
でも日本というこの国では、なかなかそういう活動って育ってこなかったし、
私自身も、実はそうですけれども、外国語というのが実はものすごい苦手で、
そういうつながりというものを自分で作っていこうという余力が今のところは無かった。
私に関しては無かったのです。
でも今、若い人たちが、外国語が堪能な若い人たちがたくさん育ってきてくださっているのですから、
そういう人たちが中心になって、いわゆるサイエンスの国際的な連帯のサポートをするという活動は、大切なことだろうと思います。

  日本のマスメディア

質問者4:
40年ぐらい活動をされてきたわけですけど、日本のマスコミ、マスメディア。
あるいはジャーナリズムというものの、核に対する取り組みっていうものには変化があったんでしょうか?
それともすっと変わらずに来ているんでしょうか?

小出:全然変わりません

質問者4:全然変わらない。

小出:はい。

質問者4:
で、今のマスコミの現状というのは、そういう意味ではどういうふうにご覧になっていますか?

小出:
マスコミ総体としては全くダメですね、日本のマスコミは。
でもマスコミの中にも、もちろんどの、
NHKにしても、中にはやっぱりきちんとものを考える人たちがもちろんいるわけですし、
多分読売新聞だって、産経新聞だって、その中にはきちっとものを考えてくれる人はいるだろうと思います。
ただ全体としてはどんどんどんどん悪い方向に、今マスコミ全体が落ちていっていると思いますし、
それはまぁ、安倍さんを筆頭とする自民党が情報をどんどん統制していくということをやっているわけですから、
これからますます悪くなっていくんだろうな」と私は思っています。
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