金融政策を売り歩くいかさま師、身動きできなくなった黒田日銀
2015-05-02

「日銀は政治に支配され、動けなくなった」 5/2 森田長太郎 東洋経済オンライン
日本銀行の4月30日の金融政策決定会合は多くの市場関係者の予想通りの内容だった。
金融政策は現状維持で、展望レポート(「経済・物価情勢の展望」)では、実質GDP(国内総生産)、消費者物価指数(除く生鮮食品)の見通しがいずれも下方修正された。
消費者物価指数(除く生鮮食品)の見通しは2015年度プラス0.8%(1月時点の見通しはプラス1.0%)、2016年度はプラス2.0%(同プラス2.2%)、2017年度は予定されている消費増税の影響を除くケースでプラス1.9%と示された。
2016年度に前年比上昇率2.0%の物価目標達成の時期をずらしてきたのも、それまでの黒田東彦総裁の発言から予想されていた。
今後、日銀はどう動くのか。
SMBC日興証券のチーフ金利ストラテジスト森田長太郎氏に見通しと黒田日銀が置かれている苦しい状況をどう見るか、聞いた。
追加緩和の可能性は後退している
――黒田東彦総裁が就任し、量的質的緩和を開始してちょうど2年が経ちました。2年でインフレ率2.0%を達成するはずが、どんどん後ろにずれて、2016年度となっています。
これまでは「15年度を中心に」と表現するなど少しずつ「2年」の幅を広げてきたが、今回は総裁会見でも、「2年程度を目途に」という部分よりも「できるだけ早期に」という部分が強調されている印象だ。
一種の決着がついたのではないか。
――足元の物価は消費増税を除くベースでは0%強です。一部で観測されている今年10月の追加緩和はあるのでしょうか。
昨年の10月末には原油価格の下落を理由に追加緩和を行ったが、今年2月に入ってから、「原油価格の下落は経済にはプラス」「基調インフレはしっかりしている」と論理がすり替わっていた。
政府サイドはこれ以上の円安は望ましくないと思っているから、追加緩和は軽々にはできない。
原油価格が日銀の想定しているような1バレル当たり70ドルに速やかに戻ったとしたら、原油価格は年末近くには前年比でプラスに転じる。
まだ10月の「展望レポート」の段階では、「ここから物価が上昇する」という見通しを示して、同レポートの中間評価を行う2016年1月まで引っ張るのではないか。
さらに2016年4月の「展望レポート」まで何もしない可能性もある。
そこまでいっても、7月には参議院選挙があるので、それとの絡みで政治的な判断とならざるを得ない。
さらに円安を加速するからダメ、ということになるかもしれないし、あるいは株価が下がっていれば株価を持ち上げるために政治的圧力が強まる結果、やるかもしれない。
2%との乖離は少なくともまだ1~2年では埋まらない。
しかし、年間80兆円の国債の買い上げはオペレーション上も行き詰まってくる。もはや2%はシンボリックなものでしかなく、デフレに戻らず物価が緩やかに上昇していけばいい、ということになるのではないか。
リフレ派の主張は実現せず
――結局は政治の要請で決まるということですね。
日銀、FRB(米国連邦準備制度理事会)、ECB(欧州中央銀行)を比べて見たときに、日銀がもっとも政治に従属している、ということになってしまった。
FRBはファンダメンタルズと市場とのギャップを修正しようとしているが、日銀はそもそも2年で2%のインフレ目標の実現というファンダメンタルズからまったく乖離した目標を掲げてしまったから、修正どころじゃなくなっている。
――そもそも、安倍政権のもとで日銀が採用したいわゆるリフレ派の人たちの主張である「マネタリーベースを積み上げればインフレになる」という理論が間違っている?
すでにかつての翁・岩田論争(注)で決着している。
マネタリーベースとインフレは関係ない。
銀行が持っている国債と日銀の当座預金を交換する取引でしかないからだ。
市中に出回っている広義のマネーとインフレとの関係ですら曖昧だ。
円安はマクロ的に見れば日本経済にはプラスであり、インフレの要因にはなる。だが円安自体も金融緩和がきっかけではなく、欧州の債務危機がおさまったことで、2012年秋には100円に戻っていた。あとはアナウンスメント効果だけだ。
(注)翁・岩田論争は、当時の翁邦雄・日本銀行調査統計局企画調査課長(現・京都大学教授)と岩田規久男・上智大学教授(現・日本銀行副総裁)によって1992年9月から『週刊東洋経済』誌上で展開されたマネタリーベースとマネーサプライの関係、その効果をめぐる論争。1993年3月まで続いた。
国民にイリュージョン(幻想)を売る
――なぜ、エコノミストの一部は金融緩和に過度な期待を寄せるのか。
もともと米国の経済学者は一種の既得権益グループをつくっている。
フリードマンやケインズでもそう。自然科学であれば仮説がいずれは検証されるが、そもそも自然科学ではない経済学は、検証されない。
言いっ放しになってしまうことが、経済学の最大の問題だ。
そうした中で、経済学者という職業を守ろうとすれば、政策への反映を図っていこうということになる。
政策の役に立ちますよ、といえば、錬金術的になる。商売としての経済学だ。
なぜ多くの経済学者が財政政策でなく、金融政策を主張するかといえば、財政政策は選挙で選ばれた政治家の仕事だからだ。
だから、金融政策にがっちりしがみついて、中央銀行に乗り込もうと考える。
そういうグループが米国の経済学者のコミュニティを形成している。
まさに政策を売り歩くいかさま師達が流派を形成している。
――それに倣って日本でも日銀批判が始められたわけですね。
日本では長らく金融政策も含めたマクロ経済政策を官僚が統括していたので、まったく入り込む余地がなかった。
最近になって、妙な野心を持った人たちが日銀への攻撃を始めた。
リフレ派と呼ばれる人たちの「日銀官僚の手から金融政策を取り上げる」という主張は「自分たちの商売にする」ということだ。
だが、乗っ取ったからには結果に責任を持つべきだ。
米国ではリーマンショックが起きたことで、経済学者の地位が大きく低下して死活問題になった。
だから今、米国の経済学者らは何とか理論と現実を調整する努力を始めている。
日本の一部のリフレ派のように古典的な貨幣数量説にしがみつく人はいなくなっている。
結局、「成長の限界」というものが見えてくると、1930年代と同じことで、国民にイリュージョンを売って歩く政治になる。
それにリフレ派の主張が合致した。
1930年代には、軍部や一部の政治家が、満州国は日本の政治的、経済的な拡大路線の「生命線」だと主張し、国民の熱狂を誘導していった。そして、その権益を維持するために日本は破滅的な方向に向かっていった。
現在は軍事的な事態とは全く関係はないが、「成長の限界」に対してイリュージョンを拡散して国民の目をそらすような経済政策になっていやしないか。
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※ アベノミクスの量的緩和は「インフレ期待」を作り出すことというのが名目だった。
マスコミを動員した手品に一般国民はかなり騙されているだろう。
しかし、カネの勝負が仕事のマーケットはなかなか騙されなかった。
というところだろう。
しかし、危機はこの後にある。
出口戦略が無いからだ。
ベースマネーの吸い上げには、膨大な国債などを市場売却しなければならないが、米国債ではあるまいし買う者などはおらん。
金利高騰、財政窮乏、インフレ窮乏化はいつなるかという時間の問題だ。
株価?勝手に暴落しろ。
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コメント
副総裁は辞任しない?
『アベノミクスはイランでは成功した』
『アベノミクス』は国内でエネルギーと農産物が自給できるイランやロシアの金融制裁下の成長路線としては成功しても自給の低い日本では自滅政策になる。
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それは『物価目標が2年以内に2%上昇しなかったら、日銀副総裁を辞職する』と言った岩田日銀総裁の発言です。
りフレ派とか消費増税分をのぞくとか、理解が追いつかずよく分からないのですが、私の記憶に間違いなければ、岩田教授の発言は間違いないと思います。
もし間違いないとすれば、「切れ目なく」嘘をつく首相は別にして、お友達にも「嘘」をつく方がいらっしゃるのですね。潔く散ってほしいものです。