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国家主権が踏みにじられている事実、乗り越えなければ未来はない:高島

 山王ホテル
 日米合同委員会会場は山王ホテルという名称だが、米軍施設である。米国は横田基地から入国審査なしでヘリで東京に入る。

   抑圧されたものの噴出、日本の場合 後編  5/1  高島康司

  ●従属国家日本の実態

 今回は前回の続きです。後編になります。
 前回は、日本の外交政策の基本が「安保法体系」と呼ばれるアメリカとの一連の条約や密約群によって決められ、これらが日本の憲法や国内法よりも優先順位が高い事実を見ました。
 主権国家の独立性の根拠は、最高法規である憲法によって統治されているという事実にあります。
 ところが日本の場合、「安保法体系」は憲法の上位にあり、憲法が最高法規としての役割を果たしていないのです。
 これでは、日本は独立した主権国家であると主張することはできません

 そして、国内法を超越する「安保法体系」を日本に適用している機関は、毎月2回行われている米軍高官との調整会議である「日米合同会議」でした。
 前回はこのような内容を解説しました。

  ●政府機関の「裏マニュアル」

 この実態こそ、まさに日本の対米従属構造を示しています。でも、さらにこれを越えた内容が明らかになっているのです。後編では、まずこれを少し詳しく見て見ましょう。
 それは、いくつかの省庁がもつ「裏マニュアル」の存在です。今回も『検証・法治国家崩壊』、『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』、そして『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』の3つの名著を参考にしながた見て行きましょう。

 前編でも書いたように、日米関係は基本的に「安保法体系」という一連の条約や密約によって規制され、憲法や国内法は適用されません
 この超法規的な処理の方法のルールブックにあたるものこそ、「裏マニュアル」と呼ばれている一連の文書です。

 いま入手できる「裏マニュアル」には次のようなものがあります。もちろんこうした文書に、「裏マニュアル」というあからさまな名前がついているわけではありません。

最高裁判所:
 「日米行政協定に伴う民事及び刑事特別法関係資料(部外秘資料)」

検察庁:
 「合衆国軍隊構成員等に対する刑事裁判権関係実務資料(実務資料)」

外務省:
 「日米地位協定の考え方」


 これらの文書が「裏マニュアル」と呼ばれている理由を、文書の名前から類推することは困難です。
 しかしこれらの文書は、アメリカ政府や米軍との関係で発生した問題を、憲法や日本の国内法を適用しないで処理する超法規的な方法が細かく規定されているのです。

  ●実務資料とは?

 たとえばこのよい例は、検察庁の「合衆国軍隊構成員等に対する刑事裁判権関係実務資料」、つまり「実務資料」と呼ばれる「裏マニュアル」です。

 これは、1953年、在日米軍の将兵が関与する刑事事件について、日本政府と米政府の間で交わされた密約です。
 この文書は正式には、「行政協定第一七条を改正する一九五三年九月二十九日の議定書[3]第三項・第五項に関連した、合同委員会裁判権分科委員会刑事部会日本側部会長の声明」という長い名称の文書です。
 密約のアメリカ側代表は軍法務官事務所のアラン・トッド中佐、日本の代表は津田實・法務省総務課長です。

 そして、なんとこの文書には、「重要な案件以外、また日本有事に際しては全面的に、日本側は裁判権を放棄する」と明記されているのです。
 つまり、米軍の将兵が日本国内で刑事事件を起こしても、日本の国内法は適用されないということです。
 ちなみに、その後5年間には約1万3000件の在日米軍関連事件が起きました。なんとその実に97%の事件で日本は裁判権を放棄し、米軍の将兵を日本の法律で裁くことはしなかったのです。
 実際に裁判が行われたのは約400件だけでした。
 これは、1953年という、日本がサンフランシスコ講和条約の調印後、主権を回復して間もない時期に交わされた密約です。
 いくらなんでもそれから60年以上たった現在、日本が裁判権を放棄しているとは考えられません。

 しかし、これを調査したジャーナリストの吉田敏浩氏によれば、比較的最近の2008年に発行された「法務省検察統計」を分析したところ、全国の一般の刑法犯に比べて、米将兵の刑法犯の起訴率の方が極めて低いことが明らかになりました。
 つまり、米将兵の刑法犯には日本の裁判権は適用しないとする密約は現在でも生きており、これを原則に刑事事件がいまでも処理されているのです。
 さらに吉田氏によると、法務省は各地の地方裁判所に、批判を受ける恐れのある裁判権の放棄ではなく、起訴猶予にするよう勧めてると言います。

  ●外務省の裏マニュアル、「日米地位協定の考え方」

 これはまさに、犯罪を行っても犯人が米軍の将兵であれば、日本人と同じ刑法は適用されないというとんでもない実態を現しています。
 これでは日本が、「主権国家」であると言うことはできないでしょう。まさにアメリカの属国なのです。
 さらに、このような従属的な状態は、外務省の「裏マニュアル」である「日米地位協定の考え方」を見ると一層明らかになります。
 この文書は、外務省が1973年4月に作成したものです。この長い文書には、対米従属の具体的な状況を生々しく示す箇所が多くあります。
 ちなみに、かなり長い引用になりますが、「第二条」の「施設・区域の提供、返還及び共同使用」の箇所を見て見ましょう。読み安くするために、段落に分けました。

「一 施設・区域の提供」
 1 第二条1項(a)は、米側は、安保条約第六条に基づき日本国内の施設・区域の使用を許されること及び個々の施設・区域に関する協定は、合同委員会を通じて日米両政府が締結しなければならないことを定めている(第一文及び第二文)が、このことは、次の二つのことを意味している。

 第一に、米側は、わが国の施政下にある領域内であればどこにでも施設・区域の提供を求める権利が認められていることである。

 第二に、施設・区域の提供は、一件ごとにわが国の同意によることとされており、従って、わが国は施設・区域の提供に関する米側の個々の要求のすべてに応ずる義務を有してはいないことである。

 地位協定が個々の施設・区域の提供をわが国の個別の同意によらしめていることは、安保条約第六条の施設・区域の提供目的に合致した米側の提供要求をわが国が合理的な理由なしに拒否しうることを意味するものではない。
 特定の施設・区域の要否は、本来は、安保条約の目的、その時の国際情勢及び当該施設・区域の機能を綜合して判断されるべきものであろうが、かかる判断を個々の施設・区域について行なうことは実際問題として困難である。むしろ、安保条約は、かかる判断については、日米間に基本的な意見の一致があることを前提として成り立っていると理解すべきである。(注10)

 (注10)かかる判断について、常に日米間に意見の不一致がありうるとすれば、単に施設・区域の円滑な提供は不可能であるばかりでなく、わが国が自国の安全保障を米国に依存することの妥当性自体が否定されることとなろう。

 以上にも拘らず個々の施設・区域の提供につき米側がわが国の同意を必要とするのは、場合によっては、関係地域の地方的特殊事情等(例えば、適当な土地の欠除、環境保全のための特別な要請の存在、その他施設・区域の提供が当該地域に与える社会・経済的影響、日本側の財政負担との関係等)により、現実に提供が困難なことがありうるからであって、かかる事情が存在しない場合にもわが国が米側の提供要求に同意しないことは安保条約において予想されていないと考えるべきである。」

 以上です。

 この密約は法律用語も多くすごく読みにくいのですが、言っていることは明白です。つまり、「米軍はいついかなるときでも、必要があれば日本国内のあらゆる施設を日本政府の事前の同意なしに使うことができる」ということです。

  ●日本が脱原発できない理由、「日米原子力協定」

 これが現在の日本の状況です。
 つまり、米軍将兵の刑法犯には日本は裁判権を放棄し、そして日本政府の事前の同意なしに、外国の軍隊である米軍が日本国内の領域や施設を自由に使用する権利を与えているのです。
 これこそ、米軍やアメリカには、日本の主権の前提である憲法、ならびに国内法の適用を停止し、密約が定める超法規的な方法で日米関係を処理している実態なのです。

 このような状態の国家を「主権国家」と呼ぶことは極めて難しいのではないでしょうか?

 しかし、1000歩譲って「日本はアメリカに守ってもらっているのだからしょうがない」との諦めの論理もなんとか成り立つかもしれません。
 しかしこれと同じような状況が、日本の原子力政策にも適用されており、アメリカとの協定の存在が理由で原発を廃止できない構造になっていたとしたらどうでしょうか? 
 もしそうなら、日本国内の状況ではなく、日本はアメリカの定めた基本方針に優先的にしたがう文字通りの「属国」であることになってしまいます。

  ●日米原子力協定

 ちなみに「日米原子力協定」とは、日本の原子力発電を促進するため、アメリカが日本に濃縮ウランを貸与する目的から調印された協定です。
 1955年の調印以来、1968年、1973年と部分的に改正され、現在は1988年に改定された協定が適用されています。
 この協定も法律の専門用語がとても多く、なにを意味しているのか容易に解釈ができないような表現になっています。
 でもざっと読んで見ると、以下の5つを骨子とした協定であることが分かります。

 1)「核不拡散条約」に加盟する日本は核兵器の開発は行わない。

 2)日本は核兵器の開発を断念した証として、原子力の平和利用に努めなければならない。

 3)そのため、核燃料となる日本のプルトニウムはアメリカが管理する。

 4)MOX燃料を使用するプルサーマル発電は積極的に推進すること。

 5)日本政府、米政府、日本の原子力企業、アメリカの原子力企業は相互にビジネスができる。


 こうした5つの骨子です。これを一言で要約すると、日本は核兵器の不拡散を徹底し、兵器としての核は放棄するものの、原子力の平和利用は推進する。
 一方アメリカは、日本の原子力推進に全面的に協力し、アメリカの原子力産業に日本でビジネスを展開させる

 このような内容です。つまり、「日米原子力協定」は、日本がアメリカの協力のもとで積極的に原発を推進することを規定した協定なのです。
 そうすることで、言うまでもありませんが、日本はアメリカの原子力産業が自由にビジネスを展開できる市場となるのです。
 したがって、このような協定が存在する限り、福島第一原発の放射能漏れのような未曾有の大事故があっても、原発を容易にやめることができない状況に現在の日本はあるのです。

  ●放射能汚染による被害は存在しない

 このように「日米原子力協定」は、日本が原発を積極的に推進する方針を規定しています。
 こうした原発推進の方向性にとって最大の脅威となるのが、放射能汚染による被害の存在です。
 これが国内で明らかになってしまうと、国民の反発は高まり、原発の推進も容易に行うことはできなくなってしまうことでしょう。
 ということでは、放射能汚染による被害が出てきた場合、これを全面的に否認することができるような状況が必要になってきます。

  ●放射能汚染の対策はしない

 矢部宏治著、『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』では、日本の法律が放射能汚染とその被害を否認できるような構造になっていることを詳しく解説しています。
 日本には危険物資による汚染を防止するためのさまざまな法律が存在します。それらは、「大気汚染防止法」「土壌汚染対策法」「水質汚濁防止法」です。

 これらの法律で大気汚染の防止を目的にしたものが「大気汚染防止法」です。
 その「第二七条一項」では、「放射性物質による大気の汚染およびその防止については適用しない」とし、放射性物資を汚染物質から除外しているのです。
 さらに、「土壌汚染対策法」では、その「第二条一項」において「この法律において「特定有害物質」とは、鉛、ヒ素、トリクロロエチレンその他の物質(放射性物質を除く)であって」とあり、やはり放射性物資を除外しています。

 また「水質汚濁防止法」の「第二三条一項」でも、「この法律の規定は、放射性物質による水質の汚濁およびその防止については適用しない」としており、他の法律同様の規定が存在するのです。

 一方、これらの法律を統括する上位法の「環境基本法」では、その「第一三条」のなかで、そうした放射性物質による各種汚染の防止については「原子力基本法その他の関係法律で定める」としています。

 にもかかわらず、「原子力基本法」などの法律には放射性物資による汚染の規定はまったく存在しないのです。
 これはつまり、環境汚染を防止するためのあらゆる法律から、「放射性物資」は「汚染物質」として排除されながらも、汚染の防止を規定しているはずの法律では、「汚染物質」として「放射性物資」を規定する箇所が存在しないということなのです。

  ●311後も続く状況

 これはとんでもない状況です。
 これは、実質的に国内法が放射性物資による汚染の可能性を否認していることを意味します。

 でもこれは311以前の状況で、311以後の2012年には上位法の「環境基本法」が改正され、放射性物資もほかの汚染物質と同じく、「政府が基準を定め(16条)」「国が防止のために必要な措置をとる(21条)」ことで規制されると明記されるようになったとも言われています。
 しかしながら、「放射性物資の政府基準」は一向に定められておらず、危険性の根拠となる明確な基準はいまだに存在しません
 環境省令は、ほかの汚染物質の規制基準を細かく規定しています。たとえば、「カドミウム1リットル当たり0.1ミリグラム以下」とか、「アルキル水銀化合物は検出されないこと」などというように明確に決まっています。

 ところが、こと放射性物質に関しては、そうした基準がまったく決められていないのです。
 ということは、たとえ政府が「100ミリシーベルト」を越える汚染地域を「安全」としたならば、政府はこの地域の汚染に対処する必要はまったくなくなるということなのです。
 すると、もし住民になにかの健康被害が出てきた場合、これは「放射能汚染」ではなく、「ストレス障害」など他の原因のせいにされ、「放射能汚染」は健康被害の原因から完全に除外されてしまうことを意味します。

  ●属国の悲哀

 さて、どうでしょうか? 
 これが現在の日本という国の実態なのです。
「安保法体系」などの日米の条約や密約によって、主権国家の前提である憲法と国内法の米軍への適用が停止され、さらに「日米原子力協定」によって、日本国民の意思にはまったく関係なく、アメリカの意向で原発が推進され、放射能汚染とその被害が否認されてしまうという状況がいまの日本なのです。

 これは主権が国民にある状況ではありません。
 残念ながらこれは、日本はアメリカの属国であるといって差し支えない状況です。
 これまで権力によって隠蔽され続けていたこうした日本の真実の姿が、「抑圧されたものの噴出」という歴史的な過程で現れているというのが、いまの日本の状況なのです。

 このような現実は、「日本は神の国だ」「日本は偉大な大和の国だ」「日本は神に選ばれた世界の中心だ」とスピリチュアルな思想にはまり込む前に、日本人全員が認識しなければならない厳しい現実です。
 この現実を直視し、自ら主体的に乗り越えない限り、日本の発展は難しいでしょう。
 これが現実です。
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放射能汚染による被害は存在しないというウソ

 そもそも、低レベル放射能の場合、どれだけの量をどれだけの期間曝露されたら有害かが科学的に証明されていない。原爆実験による放射能性障害も原爆実験が禁止されてからだいぶたって現れており、今後何世代にわたって影響があるのかも不明。
 つまり放射能の影響がどんなものかわかりもしないのに、無理やり日米政府は原発を推進してきた。
 「安全神話」は福島の事故で完全に崩れた。壊れた原子炉内部の状況もわからず、高レベルの放射能汚染がおきている可能性があるというのに、安部は世界中にウソをついてオリンピックを招致した。
 だから「原発は絶対安全」などという根拠は最初からなかった。日米政府は国民をずっと欺き続けている。

日米密約が日本の憲法や国内法よりも優先順位が高い理由

 陰に隠れてこそこそ決めた密約などが憲法より優先するなんて信じられない話だが、残念ながらこれは日本がアメリカの政治的・経済的従属国である証である。集団的自衛権行使の法的根拠を「砂川判決」に求めるなんてのがいい例である。あの判決は最高裁判事にアメリカが圧力をかけて出させた、歴史的にも稀な「他国による司法の介入」であった。
 歴史的にもヤルタ秘密協定のように、当該国の頭越しに大国の権益を決めてしまう例があるが、それすら必ずしも大国の思惑通りにはいっていないし、アメリカの海外軍事基地は、フィリピン、タイ、プエルトリコなどで退去させてきているのに、首都圏に外国軍の基地を駐留させているのは日本だけ。国土防衛に何の役にも立たない海兵隊も大規模な駐留をしているのは日本だけである。
 ここまで徹底してアメリカの思う壺になっているのは、歴代の保守政治家がアメリカに完全に従属しているからである。戦争犯罪の免責が、これほどまでも保守勢力を腐った売国奴にするものかと思うと唖然とする。保守勢力=愛国者では決してないことの証でもある。
 それを覆い隠すために「国民にもっと愛国心を」だの「日本を取り戻す」だのと自分たちがやってきたこととは真逆な事を言うのだろう。
 岸信介や孫の安部信三らはアメリカの薄汚い売国奴隷に過ぎない。

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