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安倍訪米とTPP(対米従属で権力保持、国を破綻させる官僚)

 黒船

   安倍訪米とTPP   4/8  田中宇

 日本の安倍首相が4月末に訪米し、日本の首相として初めて米議会の両院合同会議で演説する予定だ。
 米議会はこれまで「戦争責任」に否定的な日本の首相を議会で演説させることを拒否していた。
 下院の議場を使って行われる両院合同会議は、1941年の日本軍による真珠湾攻撃の翌日、ルーズベルト大統領が対日開戦の演説(Infamy Speech)を行った場であり、そんな神聖な場で「戦争犯罪」を認めない日本の首相に演説をさせるわけにいかないというのが、米議会の考え方だった。
 06年に訪米した小泉純一郎首相は、靖国神社を訪問したという理由で、米議会から演説を断られている

 安倍は、小泉と同様、靖国神社に参拝している。
 今の日本は小泉政権時代よりさらに「戦争責任」を否定する傾向が強く、安倍はその流れを煽り、自分の人気につなげている。
 米議会から見て、小泉がダメなら安倍はもっとダメなはずだ。
 在米韓国人団体も、安倍を議会で演説させるなと米議会に強く働きかけた。
 しかし、米議会は安倍を両院会議で演説させる方向で話を進めている。
 なぜなのか?


 そう思って調べていくと、それらしき理由が見えてきた。
 それは「TPP」である。日米など環太平洋の12カ国が交渉中の自由貿易協定であるTPPについて、米国では、民主党を中心に反対運動が起きている。
 多国籍企業が、政府の政策が不当(自社の儲けを阻害している)だとして特別法廷(非公開)で提訴でき、勝訴すると政策を無効にできる仕組み(ISDS)が、環境や食の安全などに関する政策を阻害しかねないとか、TPPから除外されている中国の製品が韓国などを経由して非関税で米国に入ってきかねないというのが反対運動の論点だ。

 TPPの交渉は完全非公開で行われ、交渉がまとまるとどんな貿易圏ができるか曖昧にしか公開されていない。
 米国では、大企業や業界団体が直接に大統領府の担当者を動かして交渉している。
 TPPは、米欧間の自由貿易体制であるTTIPと合わせ、大企業の権限が政府を凌駕する国権剥奪・民主主義破壊の「新世界秩序」を作る動きになっている。
 国権剥奪の新体制作りなので、国権機関である米議会に交渉の中身を知らせずに交渉が行われている
 米議会では、一部の議員が機密保持を誓約させられた上で、限定的な情報を開示されているにすぎない。

(日本は、官僚機構が政治家や企業より強い官僚独裁で、TPPの交渉役や運営役も官僚なので、権力構造の改変はない。
 TPP実施後の新体制下では、米国などの企業や業界団体が日本の官僚が決めた政策を転覆できるが、対米従属の観点から見ると日本の従属先が米政府から米企業に替わるだけで、大した体制転換でない)

 TPP加盟諸国の中で大企業が強いのは圧倒的に米国だ。
 米国の大企業が、日本など他の加盟国の政府の政策を踏み荒らすのがTPPでまず予測される構図だ。
 この構図だと、米国には不利益がないように見える。
 しかし米国の大企業は、米国自身の政策も変えたいはずだ(外国でなく自国の政策を最も変えたいだろう)。
 米国の大企業は、日本や豪州など他の諸国の同業他社をそそのかしてISDSに提訴させ、自社に不利益な米国の政策を変えられる。
 TPPは、米国自身(米国の国民と政府)にとっても不利益になる。

 オバマ大統領はTPP推進派だ。TPPの締結は、残り任期1年半のオバマ政権の経済面の最大目標とされている。
 政府の権限を剥奪して企業に譲渡してしまうTPPを米政府自身が強く推進していることは、常識からすると不可解で、裏読みしないと理解できない。
 TPPについて米議会に議論させると、多くの点で改定案を出されて収拾がつかなくなる。
 そのためオバマは米議会に対し、大統領府が他の諸国と交渉して決めたTPPの条文を、審議なしで丸ごと議会が可決するか否決するか(条文の一部改訂を認めない)の二者択一で票決する「ファストトラック」方式(大統領一任方式)で批准してくれと要求している。

 米国では、労組や消費者団体など民主党系の組織がTPPへの反対を強めているので、民主党議員の中には反対派がかなりいるが、共和党は伝統的に大企業寄りなので、共和党議員はほとんどTPPに賛成している。
 米議会は両院とも共和党が多数派なので、TPPをファストトラック方式で批准することを米議会が認めると、その時点でTPPが実現する可能性がぐんと上がる。
 米議会は5月中にTPPのファストトラック化を認めるかどうか決める見通しだ。
 それに先立ち、米国では3月からTPPに対する反対運動が強まり、たとえば民主党リベラル派の市民が多い西海岸のシアトルでは市議会や役所など市を挙げて反対運動を始めている。

 3月末、米国のバイデン副大統領が、自民党でTPPを担当する高村副総裁に電話してきて、安倍の訪米までに日米間でTPPに関する交渉を妥結できるよう、日本が自動車や農業の分野で譲歩してほしいと求めた。
 TPP全体の交渉は、日米以外の10カ国に関してほぼ完了しており、日米間の交渉が妥結するとTPPが実現できる。
 米国は安倍に、日米がTPPの交渉を妥結した直後に訪米してもらうつもりでいるようだ。

 安倍が訪米する4月末、米国ではちょうど米議会がTPPのファストトラック化を認める前後で、TPPの是非をめぐる議論が高まっていると予測される。
 そんな中で、TPP交渉の中で最後までもめていた日米間の交渉を妥結させた安倍が訪米し、米議会の両院合同会議で、日米と環太平洋の貿易と安保の「明るい」未来について演説する。
 TPP推進派の共和党議員や大統領府の高官たちは拍手喝采だ。
 日本がTPP交渉で米国の言いなりになったとあれば、民主党議員も反対色を弱めざるを得ない。
 安倍を米議会で演説させるのは、オバマ政権と議会共和党による、TPPをまとめるための演出だろう。

 日本にもTPPの反対運動があるが、昨年末の選挙で圧勝した安倍政権は、農業団体が自民党に死にものぐるいで圧力をかけても、簡単に無視できそうだ。
 米国の反対運動も、どれだけ盛り上がるか疑問だ。TPPは安倍の訪米までにまとまる可能性が高い。

 安倍首相と、安倍をあやつる官僚機構(日本外務省など)の国家戦略は、日本を米国と「一体化」していくことだ。
 FTよると(旧覇権国として覇権動向を見る目が鋭い)英国の閣僚は、米国の高官に「英国が覇権衰退した1960年代にインド洋や太平洋(アデン以東、スエズ以東)から撤退したように、米国もいずれ西太平洋(グアム以西、またはハワイ以西)から撤退せざるを得なくなる(西太平洋は中国の覇権下に移管される)」と語っている。
 米高官は、そんなことはないと否定しているが、米軍がグアム以西への(日本と韓国から)撤退を長期計画にしていることは事実だ(FTの記事は、米国覇権の衰退を予測する英国勢の分析を冷笑する米国勢の立場に立っているが、私の見立てでは英国勢の方が正しい)。

 対米従属を絶対の国是としている日本の独裁的な権力である官僚機構は、米国の西太平洋からの撤退を是が非でも防がねばならない。
 そうしないと日本が対米従属できなくなり、官僚機構は米国という権力の後ろ盾を失い、国会の政治家に権力を奪われて「民主化」されてしまう
 米国が日本を捨ててグアム以西に撤退することを防ぐため、日本の権力機構はできるだけ早く経済的・外交軍事的に米国と一心同体になることをめざしている。

 最近、米国の金融債券システムの崩壊が近い(早ければ今年中)と米国のヘッジファンドなどが騒いでいるが、金融危機の再燃は米国の覇権崩壊、西太平洋からの撤退、日本の対米従属の終わりになる。
 だから、安倍を操る官僚機構は、TPPや米軍基地の辺野古移転、日米安保ガイドライン改訂による日米軍の一体化、日銀のQE続行による債券金融システムのテコ入れなどを全力でやり、米国の覇権崩壊や日本からの撤退を何とか防ごうとしている。

 これらの要素の多く(中央銀行間でやり取りしている日銀QE以外)は、すべて4月末の安倍訪米時の日米の議論の中に入っている。
 安倍が沖縄の強い民意を無視して辺野古の基地の工事を強硬に進めようとしているのは、訪米時に米国側に工事の進捗を報告してほめられたいからだ。
 辺野古に基地を作っても、沖縄の海兵隊をいずれグアムに撤退する米軍の計画は変わらないが、何年か海兵隊を日本に引き留めておける。
 安倍訪米時には、日米の軍事的な一体化を進める防衛協力ガイドラインの18年ぶりの改訂も予定されている。
 日本はすでに軍需産業の米国との一体化も進めている。
 日本は軍産複合体の一部になりつつあり、安倍の訪米でそれが一気に進む。

 TPPも、経済の問題から外交安保の問題に急いで塗り替えられようとしている。
 カーター米国防長官は4月6日、訪日を前にした演説で、新たな空母を建造するよりTPPを締結することの方が重要だと述べ、中国を除外して締結されるTPPが経済面の中国包囲網として効果があると示唆した。 (

 オバマ自身、TPPを締結する最大の意味は、米国主導の貿易圏を作ることによって、アジア太平洋地域における中国の経済覇権の拡大を防ぐことにあると考えていると報じられている。
 中国は東南アジア10カ国と日韓豪印NZを誘い、米国をのぞく16カ国で貿易協定(東アジアFTA、RCEP)を結ぼうと提唱している。
 米国がファストトラック方式で急いでTPPを締結しないと、東アジアの経済覇権を中国に奪われるぞ、というのがオバマ政権の言い分だ。 (China is Obama's trump card in push for Pacific Rim trade pact)

 オバマ政権のこのような言い方は、日本政府にとっても好都合だ。
 経済だけの話として進めようとすると、経済的に損をする日本の農民や消費者団体などが反対を強めるが、日本にとって「最大の脅威」と喧伝される中国の台頭を阻止するためにTPPが必要だとなると、反対派は「非国民」のレッテルを貼られかねないので黙らざるを得ない。
 事態は「戦時中そっくり」だ。安倍は以前から「TPPは安保(中国包囲網)の問題でもある」と言っている。 (中国の台頭を誘発する包囲網)

 安倍が訪米し、日本の首相として初めて米議会両院合同会議で演説すると、日本における安倍の権威が大いに高まる。
 戦後の日本人は右翼だけでなく左翼も対米従属根性が染みついているので、米議会の超党派から拍手喝采される栄誉を得た安倍を批判しにくくなる。
 議会演説は、米国(軍産複合体)がやりたいことを実現し続ける安倍への箔つけであり、ご褒美である。

 とはいえ、これまでの態度から見て、オバマは安倍が嫌いなはずだ。
 最近の米政界は、軍産複合体(米覇権主義)とオバマ(隠れ多極主義)との対立が強まっている。
 オバマは、軍産複合体に迎合するふりをして好戦的な策を過剰にやって失敗させ、ドイツや英国、豪州などの同盟諸国が米国から距離を置く(その分中国やロシアに接近する)よう仕向け、中露やイランをこっそり強化することで、軍産複合体を弱体化し、米国覇権をいったん破綻(リセット)させようとしている。
 近年の日本は、対米従属というより対軍産複合体従属の傾向を強めており、オバマから見ると安倍政権は敵である。

 こうしたオバマの姿勢と、TPPの推進、安倍に対する歓迎は、矛盾しているように見える。
 しかしTPPや安倍歓迎をオバマの隠れ多極主義の一環としてみると、矛盾が消える。
 日米がTPPを結成して貿易が動き出すと、対抗して中国も東アジアFTAの自由貿易圏の結成を急ぐようになる。
 隠れ多極主義のオバマは、TPPの創設を、中国の台頭を扇動する道具にしようとしている。

 TPPと東アジアFTAを比較すると、どちらがアジア諸国を引きつけるだろうか。中国についての悪い印象を持たせようとしている日本のメディアだけに触れている日本の人々の多くは「TPPに決まっている」と思うかもしれない。
 しかし、最近まで「中国が国際金融機関を上手に運営できるはずがない。日本が主導するADB(アジア開発銀行)にかなうわけがない」と日本で報じられていたAIIB(アジアインフラ投資銀行)に、日米以外のすべての関係諸国が加盟し、IMFや世銀が中国主導のAIIBを賞賛する事態になっている。
 中国は、この10年ほどの間に、国際機関や貿易体制をうまく運営する技能を身につけている。
 それを認めたくない日本の政府やマスコミなどのプロパガンダを、日本人の多くが軽信している。

 すでに書いたように、TPPは加盟国の国権を剥奪する。
 企業が国家を提訴できるISDSの制度は加盟国にとって脅威だ。
 東アジアFTAには、このような条項がない(中国による隠然とした支配はあるだろうが、TPPも米国による隠然とした支配体制だ)。
 米経済はほとんど成長していない(統計によって成長を粉飾している)。米国は金融バブルも崩壊しそうだ。
 中国は今後もしばらく高成長を続け、国内消費が拡大する(米国の金融崩壊が起きるとリーマンショックをしのぐ世界不況になり、中国も被害を受けるが、日米の被害の方がはるかに大きくなる)。
 それらの要件を考えると、TPPと東アジアFTAの縄張り争いは、短期的に互角、長期的には東アジアFTAの方が優勢になる。

 日本がADBを通じてアジアの経済開発に寄与してきたことは、中国を含む世界中が高く評価している。
 AIIB創設に成功した中国に、日本が負けたくなければ「日本は(AIIBよりも)ADBでアジアに貢献し続けます」と安倍首相が高らかに宣言すれば良い。
 しかし、安倍(や閣僚)はこうした表明をせず、AIIBに関して沈黙している。
 その理由は、もし「日本はADBでがんばる」と表明すると、中国など米国以外の国々から「それはすばらしい。ぜひADBのノウハウをAIIBに教えてやってくれ」と言われ、日本がAIIBの方に引っぱり込まれるからだ。
 日本の権力機構(官僚)は、日本の台頭や世界から賞賛されることよりも、日米だけがAIIBに非加盟で、中国敵視策によって日米同盟が強化されることの方を望んでいる。
 TPPも同様
だ。

 米同盟国だった英国や独仏豪、そしてイスラエルまでが、米国の反対を無視してAIIBに加盟した。
 この件は、米国の覇権低下(中国の覇権拡大)を意味している。
 米国が弱くなって対米従属する利益が低下し、今後金融破綻などでさらに米国が弱くなることを予測して各国が米国から離れていく中で、日本だけが不利益の増大を無視して対米従属一本槍を貫いている。

 金融破綻や好戦策への拘泥など、対米従属は今後、不利益や害悪がますます大きくなる。
 それなのに日本は、米国(ドル延命)のために、自国の通貨や金融を破壊するQE拡大を続けている
 日本は、対米従属を続けるために、自国の農業や消費者の安全を破壊するTPPに加盟する。
 日本は、対米従属を続けるために、沖縄の人々をひどい目に遭わせる米軍基地運用を続けている。
 日本は、縮小が確実な米国に従属し続けるために、拡大が確実な中国を嫌悪し続けている。
 日本の対米従属は、官僚機構が独裁的な(選挙で誰が勝とうが官僚が政策を決める)権力を保持し続けるための仕掛けだ。
 対米従属が日本の弱体化(財政破綻、貧困化)の元凶なのに、ほとんどの日本人がそれに気づいていない。

「米国より中国の方が危ないから対米従属で良いんだ」と言う人は、プロパガンダを軽信している。
 中国は、米国よりずっと危なくない。
 昨年来、中国は領土紛争での好戦性を低下する一方、米国は世界的に好戦性を増している。

 米雑誌フォーブスの駐日記者(「しぼむ日本」と題するブログを書いているStephen Harner)は、3月末に中国の習近平が行った「冷戦型の思考を捨て、平和的な対話で紛争解決する」という演説と、日本の安倍首相の冷戦型の中国敵視策や好戦策を対比し「歴史の正しい側」にいるのは(70年前と同様に)中国の方だと指摘する記事を出している。
 「習近平のボアオ演説は、アジアが必要とする未来を描いている」「日本の国会議員のほとんどはアジアのことを何も知らず、安倍に付和雷同している」「中国を敵視する安倍の策は、無駄で、破壊的で、悲劇的で馬鹿馬鹿しい」とも書いている。これらの指摘は全く正しい。
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