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もうすぐ北風が強くなる

県民の怒りは日本に広がる:目取真俊

 沖縄基地

   沖縄在住の作家・目取真俊氏 「県民の怒りは日本に広がる」  3/30  日刊ゲンダイ

  海保の排除手法はまるで「海の公安」

 沖縄県と安倍政権との対立はもはや、さながら戦争状態だ。
 基地移設反対の沖縄の民意を無視し、抗議する人々を排除し、翁長雄志知事が辺野古への移設関連作業の停止指示を出せば、その執行停止を申し立て、官房長官が「(翁長知事の指示は)違法だ」「無効だ」とわめきたてる。
 そこから見えるのは力による民主主義の否定と、沖縄蔑視だけではないか。
 沖縄で抗議活動を続ける芥川賞作家、目取真俊氏(54)に聞いた。

――沖縄の辺野古移設反対の民意は明確なのに、それを無視して政権が“悪いのは沖縄だ”と言わんばかりですね。

「沖縄防衛局は昨年9月以来、約半年ぶりに海底ボーリング調査を再開しています。
 この間、沖縄県知事選挙と衆議院選挙がありました。いずれも辺野古新基地建設反対を公約に掲げた候補者たちの圧勝でした。県知事選挙では翁長氏が仲井真氏に10万票近い大差をつけ、衆議院選挙では県内全選挙区で自民党候補は落選しました。
 生活の党、社民党、共産党、無所属の候補が選挙区で当選するというのは、ヤマトゥ(日本本土)では考えられないことだと思います。
 日本政府・防衛省の調査再開は、この沖縄の民意を踏みにじるものです。
 調査を中止して計画自体を再検討すべきであり、警察や海上保安庁の暴力を使って調査を強行するのは許されません

――目取真さんご自身、行動する作家として抗議活動に参加していますが、辺野古の現場では、どのようなことが行われているのでしょうか。

「昨年7月からキャンプ・シュワブのゲート前(陸)と海の両方で抗議行動に参加してきました。
 陸の方では県警機動隊を使った弾圧がエスカレートしています。
 昨年7月の最初の頃は抗議行動の参加者も数十人単位で、民間警備員も数人しかいませんでした。抗議行動が大きくなるにつれて、ゲートの警戒や弾圧体制も強化され、機動隊による市民の強制排除も頻繁に行われるようになりました。
 女性やお年寄りが機動隊に押し倒されてけがをしたり、基地のガードマンが現場のリーダーを拘束する事態も起こっています。
 暴力的弾圧により力で県民の運動を抑え込むという政府の意思がはっきりと見えます」

――それは海上でも?

「海上保安庁の保安官たちが、拘束のためにカヌーを転覆させたり、海に落ちたカヌーメンバーの顔を海に沈めて海水を飲ませる嫌がらせを行っています。
 抗議船にも乗り込んできて、船長や乗員はけがを負わされています。肉体的・精神的ダメージを与えて海に出られなくしようという意図が見えます。
 メディアが報じると一時的にやみますが、しばらくすると暴力を繰り返す。
 辺野古に来ている海上保安庁のメンバーは、人命救助を目的に来ているのではありません。海上での犯罪に対処する『海の公安警察』であり、テロ対策や外国の密輸・密漁船と同じ感覚で市民のカヌー、抗議船に対処すれば、けが人が出るのは当たり前です」

  暴力で心を抑圧することはできない

――安倍政権はなぜ、民意を無視し、事業を急ぐのでしょうか。

「既成事実をつくって埋め立ての本体工事に入れば、沖縄県民に諦めムードが広がり、抗議行動も停滞、縮小するという判断を政府は持っているのでしょう」

――最初から沖縄の民意なんて聞く気がない?

「ここで見なければいけないのは、現場の機動隊や海保に強硬な弾圧を指示している安倍首相、菅官房長官の沖縄県民に対する姿勢だと思います。
 沖縄県民がどれだけ反対しても無視し、力で抑え込もうという安倍政権の意思が現場での機動隊・海保の暴力として表れています。
 人間には自尊心もあれば誇りもあります
 暴力で抗議行動を抑えつけても、心まで抑圧することはできません
 暴力は人の心に怒りと憎しみを呼び起こします。翁長知事と対話することさえせず、暴力を使って『粛々』と作業を進める安倍政権のやり方は最悪の手法です。
 それは沖縄県民に政府への敵愾心と怒り、反ヤマトゥ感情を増幅させるだけです」

――菅義偉官房長官は「日本は法治国家だ。法令に基づいて粛々と進めていくのは当然」と言い放っている。一方、安倍政権は翁長知事といまだに面会すらしません。

「安倍首相や菅官房長官は、辺野古新基地建設が県民の大多数から拒否されているのを知っている
 自らに正当性がないのを自覚しているから、翁長知事と面会せず、法令という形式面を強調するのでしょう。
 しかし、機動隊や海保の暴力を使って工事を強引に進めれば、沖縄県民の心情はどんどん悪化し、政府だけでなく日本全体への反発、離反意識が強まるでしょう」

――安倍政権は改憲にも突き進んでいます。目取真さんは「憲法と日米安保条約はセット」と唱えていますね。

「憲法学者の古関彰一氏の著作から学んだことですが、日本国憲法1~8条の天皇条項と憲法9条、沖縄の軍事基地集中は三位一体のものとして成り立ったということです。
 第2次大戦後、米国は日本の占領統治を円滑に進めるために天皇制の維持を必要とした。
 しかし、それは日本に侵略されたアジア諸国に不安と反発を引き起こす。
 そのために憲法9条で日本を非武装化し、再び侵略国家とならない担保をつくった。
 同時に共産圏の拡大を狙うソ連に対抗するために沖縄に巨大な米軍基地を造ったという構図です。
 日本の戦後は、憲法9条と日米安保条約の間に横たわる矛盾を沖縄に米軍基地を集中させることで大多数の国民の目からそらし、国民の側もまた見ないふりをして米軍基地提供に伴う負担を回避してきたのではないでしょうか」

  中央のメディアのうぬぼれと沖縄差別

――沖縄地元紙の報道と異なり、在京メディアはほとんど問題を報じません。

「メディアが政府の代弁者となれば、それはジャーナリズムとしての死だと思います。
 政府の方針に何でも反対しろという短絡的な考えではありません。政府の方針を検証し、誤りや不当性があればきちんと批判していくことです。
 辺野古新基地建設を進める日本政府の沖縄に対する今の姿勢に疑問を抱かないとすれば、それは政府の立ち位置に同一化してジャーナリストとしての批判精神を失っているとしか思えません。
 また、そもそも関心がないなら、ジャーナリストとしての感度が鈍っているか、沖縄に基地を押しつけておいてかまわない、という差別意識があるからでしょう。
 東京に住む人たちは自分たちが日本の中心にいて、あらゆる情報が集まってくるので、もっとも多くの知識に恵まれ、広い視野で見ること、考えることができている、とうぬぼれているのかもしれません。
 しかし、沖縄のことは、どれだけ見えているでしょうか」

――メディアにも差別意識がある?

「日本と沖縄の間の断絶はこの10年でも拡大する一方です。
 沖縄の中では、もはや日本を見限った方がいい、日本は沖縄を利用することしか考えず、基地問題をどれだけ訴えても関心を持たない日本人に期待してもしょうがない、という意識が広がっていると思います。
 私はもうヤマトゥのメディアが報道しないことを嘆くこと自体バカバカしいと感じています

――今後について、どうみていますか?

「辺野古や高江に来て抗議行動に参加する人たちは、インターネットで情報を得たり、ドキュメンタリー映画の自主上映で現状を知った人たちがほとんどです。
 現場の状況をツイキャスする人も多く、日々の活動を知らせるツイッター、ブログ、フェイスブックがいくつもあります。
 大手メディアの情報発信力は巨大ですが、実際に行動する人たちは自力で情報を得る力を持っています。
 日本人全体が無関心でも、沖縄県民が本気で実力行動を起こせば、基地撤去は実現可能です。
 数千人単位で嘉手納基地の主要ゲートを封鎖し、基地機能を1週間停止させれば、日本政府が何をしようと、米政府は在沖米軍を撤退させるでしょう

▽めどるま・しゅん 1960年、沖縄県今帰仁村(なきじんそん)生まれ。琉球大法文学部卒。83年、「魚群記」で第11回琉球新報短編小説賞受賞。86年、「平和通りと名付けられた街を歩いて」で第12回新沖縄文学賞受賞。97年、「水滴」で第117回芥川賞受賞。
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コメント

同じ『基地の島』クリミアに学べ

『基地の島』としてはクリミアとパラレルな点がありますね。しかし地元の感情は180度、正反対なのはロシアと日本の近現代史の違い『米軍の圧政的占領』がポイントなのでしょうね。沖縄は独立へ仕向けられてるようです!

Re: 同じ『基地の島』クリミアに学べ

クリミアはロシアにとっては外洋への貴重な出口で、自国の玄関口防衛の要ですから、敵対国に押さえられることは決してあってはならないこと。住民は貴重な存在。
沖縄も本土も米国にとってははるか遠くのアジアを睨んだ前進攻撃基地ですから、住民は実質植民地人でかまわない、それなりの抑圧対象でかまわない。
米国はもちろん、かいらいである本土政府までが抑圧対象とするのですから、沖縄にとっては日米による差別と抑圧としか受け止められないのは当然です。
政府の対応は人権侵害の沖縄差別であることを、全国が知らなければならない。
大手マスコミの報道封殺が続くなら、沖縄はますます自ら遠くへと行かざるを得ないでしょう。

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