中国の挑戦、国際金融資本は当然のように中国を選んだ
2015-03-21

米国の同盟国を引き寄せる中国のマネー磁石
AIIBに英国などが参加表明、外交の失敗で孤立する米国 3/17 英フィナンシャル・タイムズ紙)
アジアインフラ投資銀行(AIIB)を巡る物語は、米国にとって外交的な大失敗と化しつつある。
中国との勢力争いをお膳立てしておきながら、その争いに負けることで、米国政府は21世紀の権力と影響力の漂流に関して意図せぬシグナルを送ってしまった。
2013年に中国がAIIBを創設する意図を明らかにするや否や、米国は同盟国に対し、新銀行をボイコットするよう求める説得工作に乗り出した。
米国は、中国政府の支援を受けた新銀行は、クリーンな政府や環境基準といった問題について、世界銀行ほど慎重ではない融資基準に従う恐れがあると主張した。
アジアにおける米中の勢力争い
だが、これが勢力争いであることもかなり明白だった。
世界銀行はワシントンに本部を置き、総裁は常に米国人だった。
潜在的な競合機関のAIIBは上海に本部を置く予定で、中国が最大の株主だ。
当初、日本、韓国、オーストラリアはAIIBへの参画を見送ることを決めた。欧州の大国も揃って不参加を決めた。
だが、ここへ来て、英国が創設メンバーとしてAIIBに参加することを決めたというニュースが反AIIB陣営に決定的な亀裂を生んだように見える。
筆者は先週、韓国を訪れていた。韓国の大半のアナリストは、韓国政府がAIIBへの参加を決めるのは時間の問題だと見ている。
オーストラリアはすでに自国の立場を再検討しており、他の大きな欧州連合(EU)諸国は英国の後を追う可能性が高い。
その時点で、AIIBに抵抗する唯一の主要国は日本と米国になる。
この状況は、米国にとって非常に体裁が悪い。欠陥のある構想に対する道義的な反対で友好国が結集するどころか、AIIBのエピソードによって、米国は孤立し、すねているように見える。
中国はこの2年ほど、アジアにおける権力と影響力を巡る米国との戦いで苦戦していただけに、AIIBの物語は中国にとって一段と甘いものになる。
中国は領有権を巡る近隣諸国との対立で攻撃的な態度を取ることで、図らずも米国の立場を強めることになった。
フィリピン、日本、オーストラリア、インドを含む多くの国が、外交、安全保障の両面で米国との関係強化に動いたからだ。
だが、中国はこの経験から学んだように見える。
中国はここ数カ月、近隣諸国に対し、露骨な対立姿勢を控えるようになり、代わりに経済的な絆を築く願望を強調するようになった。
その1つが、中央アジアを通る貿易とインフラの新シルクロードと、東南アジアの海域を通る「海上シルクロード」だ。
AIIBはこうした取り組みの資金を賄ううえで大きな役割を担うことができる。
中国が期待しているのは、アジア諸国を説得し、これらの国は中国の台頭の脅威に直面するのではなく、むしろ中国の高まる富から恩恵を受ける立場にあるということを納得してもらうことだ。
やはり中国の投資を呼び込むことを期待する英国だけでなく、中国の近隣諸国の大半は、このチャンスを逃すのは愚かだとの判断を下したようだ。
AIIBのエピソードは、アジアにおける影響力を巡る戦いで中国が持つ最強の切り札は同国の高まる経済力だということを浮き彫りにしている。
これに対して米国が持つ一番の切り札は、軍事力と安全保障条約のネットワークだ。
板挟みになる米国の同盟国
米中の板挟みになった国はジレンマに直面する。
日本、オーストラリア、フィリピン、韓国は皆、米国と安保条約を結んでいる。だが、すべての国で今や、対中貿易が対米貿易をかなり上回っているのだ。
例えば韓国は北朝鮮を牽制することについても、そして、いつの日か中国自体に対するヘッジとしても、米国の力に依存している。
だが、中国は現在、韓国の輸出の4分の1以上を受け入れている。これに対し、韓国の対米輸出は約12%にとどまる。
その結果、韓国は頻繁に2つの方向に引っ張られることになる。
AIIBがそうした例の1つだ。もう1つの例は、北朝鮮に対する防衛には役立つかもしれないが、中国が自国の安全保障に対する脅威と見なすミサイル迎撃システムの配備を求める米国の要請に応じるか否かに関し、韓国国内で繰り広げられている激しい議論だ。
AIIBのエピソードは、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の妥結を目指す米国と日本の動機を強める一方だ。
TPPは12カ国の太平洋諸国を1つにまとめるが、かなりあからさまに中国を含めない貿易協定だ。
ここでも米国は、これは反中ブロックを構築する努力などではなく、経済の開放性の基準を維持するという問題だと主張している。
だが、米国の一部同盟国でさえ、この主張を完全には受け入れず、アジア太平洋地域で最大の貿易国である中国を除外する新たな貿易協定を築くのは少々奇妙だとこぼす人もいる。
米国の軍事力か中国の経済力か
米国政府と中国政府が繰り広げる、このアジア腕相撲大会における大きな疑問は、米国の軍事力が究極的に中国の経済力よりも重要な意味を持つかどうか、だ。
個々の問題によって、答えは変わってくる。だが、全般的には、ある国が中国に脅かされていると強く感じるほど、米国の方へ傾く可能性が高い。
日本がアジアでAIIBに抵抗する最後の大国となりそうなのは、このためだ。
対照的に、もし中国があまり頻繁に拳を振りかざさないだけの分別を持てば、米国の緊密な同盟国に対しても、中国の経済力が次第に政治的、外交的な影響力に発展する可能性が十分にある。
強大な米ドルの前に世界が屈服したと言われた時代があった。
だが、AIIBの物語は、最近では米国の最も緊密な同盟国の多くでさえ、人民元というマネーに目の色を変えていることを示唆している。
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米国の顔色をうかがい中国主導のアジアインフラ投資銀参加に揺れる韓国、日本は消極的 3/21 レコードチャイナ
2015年3月20日、中国が主導して設立するアジアインフラ投資銀行(AIIB)について、日本が参加に消極的な一方、中国と「蜜月関係」ある韓国は米国の顔色をうかがい、揺れている。
米国が韓国への配備を検討している迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」をめぐり、中国の動向に気を遣うのとは正反対だ。
AIIBの設立に関しては昨年10月、中国をはじめとする21カ国がこれに参加することで調印。
その後、インドネシア、ニュージーランドなどが続いた。
創設当初の参加国となるためには今月末までに意思表示をすることが求められており、欧州の主要国からも英国は今月12日、フランス、イタリア、ドイツは同17日に参加を表明するなど期限目前の動きが目立っている。
AIIBへの参加について、菅義偉内閣官房長官は17日の記者会見で「日本は慎重な態度を取る。今のところ参加は考えていない」と述べ、「公正なガバナンスの確立ができるのか」とも疑問を呈した。
麻生太郎財務相もAIIBへの参加は難しいとの立場を示した。
日本は米国とともにアジア開発銀行(ADB)を主導しており、中国の専門家は「ADBが片隅に追いやられ、中国がAIIB支援など金融面での手段を用いて、アジア地域の金融の主導権を握るとともに、AIIBをはじめとする金融機関をよりどころとして、アジア・太平洋地域における影響力を拡大することを懸念」とみている。
AIIB参加は韓国企業にとってもアジア市場への進出に有利とみられているが、韓民族新聞は15日付の記事で「AIIBは『国際機構の設立』という意味合いを超え、中国と米国の戦いの場になった」と指摘。
韓国政府はAIIBに参加するメリットを認識しているとしても、米国の顔色をうかがっていると述べた。
台湾メディアは「韓国は米国の顔色をうかがうのに時間を費やし、加入するチャンスを逃した」と伝えた。
韓国・聯合ニュースによると、AIIB参加について、韓国政府は月末までに態度を決める方針。
中国側も月末をめどとした決定を求めており、韓国政府は初期メンバーとなることでAIIBにおける地位や影響力を強めたい考えだが、米国が英国のAIIB参加に不満を示したことを考慮し、慎重な態度を取っている。
周辺国の動向を参考にしつつ、最終的な結論を下す意向で、韓国の専門家の多くは「韓国政府が加入を決めるのも時間の問題」とも分析している。
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※ 3/20現在スイスとルクセンブルグが参加申請をした。
英独仏伊と欧州の主要な金融資本の立地国が網羅されてしまった。
日米以外の世界の資金が中国に集まることになる。
AIIB債券は奪いあいになりかねないだろう。
「強大な米ドルの前に世界が屈服したと言われた時代」の終わりが始まった。
米国は軍事力のみ突出した奇怪なソ連型国家に変わってゆくのだろう。
国際金融資本が、米国よりもを中国を選んだのだから。
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