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QE(量的緩和)の限界で再びドル崩壊の予測:田中

ドル

   QEの限界で再出するドル崩壊予測  3/11  田中宇

 2006-08年に起きた、米国中心の国際債券金融システムのバブル崩壊(リーマン危機)以来、世界の金融システムは長い延命期が続いている。
 米政府は当初、バブルを生みやすい金融システムの改革(透明度の向上)を掲げ、米議会はドット・フランク条項を10年に立法したが、同法は、運営の詳細を決定する際、金融界によって骨抜きにされた。
 金融システムは、当局からの資金注入(QE)で何とか延命している状態で、本気で改革したら再崩壊や世界経済のさらなる悪化をもたらす。改革できる状況でない。 (Global Bankers' Coup: Bail-In and the Shadowy Financial Stability Board

 債券を中心とする国際金融システムは、改革どころか、延命策を維持するのも難しくなっている。
 延命策の主体はQE(量的緩和策)で、中央銀行が通貨を大増刷して債券を買い支え、債券需要の減退を形だけ防いで金利上昇を食い止める策だ。
 買い手がいない債券を中央銀行が通貨発行して買うQEは、市場原理から見て不健全だ。
 短期間なら「中央銀行が買い支えているのだから安心だ」と考える投資家がつられて債券を買うが、中央銀行がQEをやめたら債券の暴落が必至なので、投資家はしだいに債券を買わなくなり、QEの効果が落ちる
 需要のない債券を抱え込む中央銀行に対する信用も落ちる。
 QEは長く続けられない


 米国の中央銀行である米連銀(FRB)は08年からQEを断続的に行ったが、不良債券をこれ以上抱えられなくなり、昨年10月にいったんやめた
 同時期に米国から頼まれてQEを急拡大したのが日本銀行で、日銀のQEは、日本の株や債券を押し上げるだけでなく、為替市場を通じてドルに転換された資金が米国の債券や株の相場をつり上げた。
 しかし今年1月末から、日銀がQEをやっても日米の債券(国債)の価格が下がる(金利が上がる)現象がみられ、日銀のQEは早くも効果が薄れてきたのでないかと懸念されている。
 昨年から、日銀のQEは米連銀のQEより効果が薄いと指摘されていた。

 すべての債券の原点と考えられている10年もの米国債の金利が3%を上回る状態が続くと危険だとされている。
 国債金利の高騰が続くと政府は財政破綻する。
 社債の金利上昇は、発行企業の信用喪失を示す。
 10年もの米国債の金利は、昨年初めに3%超まで上がったが、その後米日のQE続行で1・6%台まで下がった。
 しかし2月から反騰して2・2%台まで上がっている。
 マスコミは米国債の金利上昇を、米国の景気回復を示すものと「解説」しているが、景気が米国より悪い日本や英国でも、米国と同様の国債金利の動きになっている。
 金利上昇の原因は、景気よりもQEの効力低下だろう。 (10年もの米国債利回り

 そもそも米国の景気回復は粉飾的だ。
 失業率が6%台から5・5%に下がってきたことが景気回復の根拠として示されているが、失業率の低下は統計上「失業者」の枠から外れる長期失業者が増えた結果でしかない。
 実際の米国の雇用市場は、原油安で採掘をやめる石油ガス田が増えたエネルギー業界で大量解雇が進み、小売店の閉店も相次いで、むしろ雇用減の傾向にある。
 米国で週30時間以上働ける仕事があるのは全成人の44%しかいない。 (Hallelujah! - Unemployment Plunges Due to 354,000 Americans Leaving the Workforce)(米雇用統計の粉飾) (揺らぐ経済指標の信頼性

 米国では、納税している企業の総数が毎年6万社ずつ減り、40年ぶりの少なさの160万社になった。
 企業総数は1986年から100万社減った。
 毎年の企業数の減少(赤字転落・廃業)数は、リーマン危機を境に、4万社から6万社に加速した。
 米経済は回復しておらず、長期の凋落傾向にある。
 リーマン危機前は、金融界の儲けが他の経済分野に波及していたが、危機後はそれもなくなった。
 金融界すら、リテール(庶民対応)を縮小してQEに依存して儲ける傾向なので、人員削減を続けている。 (Number of Corporations in U.S. Hit Lowest Level Seen in 40 Years

 金融界は米国の今年の経済成長率を3%と予測してきたが、最近、米連銀内から、現在の成長率は年率1・2%しかないとする分析が発表された。 (GDP Shocker: Atlanta Fed Calculates Q1 Growth Of Only 1.2%

 2月からの金利上昇を危険な兆候ととらえ、金融危機の再燃や、ドルの基軸性の喪失、米国覇権の崩壊、中国の台頭(人民元の国際化)など多極化を予測する指摘が最近増えた。
 予測は、有名な権威筋ほど示唆的な曖昧な言い方で、在野・無名の人ほど過激で露骨な言い方をするのが通常だ。
 有名筋どころでは、英国の投資家ロスチャイルド卿が、通貨の不安定、世界的な低成長に加えて、地政学的な危険さ(米露関係など)が第二次大戦以来の高さになっており、QEで株価が天井に達して資産価値の維持が難しくなっていると指摘している。 (Geopolitics most dangerous since WWII, Lord Rothschild warns investors

 ドルの発行者である米連銀は、日欧の中央銀行を巻き込んでQEを続け、ドルと米国債の価値を維持しようとしている。
 「ドル高は米経済の強さを表している。ドルや米経済が崩壊するはずがない」という、よくある見方は、ドル高がQEという持続困難な策によって不健全に維持されていることを忘れている。
 QEをやらなければ、すでにドルや米国債は世界経済を巻き込んで崩壊していた可能性が高い。
 QEは、長くて数年程度の延命策でしかなく、QEが効かなくなった後の金融崩壊はQE前よりひどいものになる
 リーマン危機直後の初めてのG20サミットで語られた「ブレトンウッズ体制の終わり」が、また議題になるだろう。
「ブレトンウッズ2」の新世界秩序

 権威筋なのに、過激で露骨な言い方を最近繰り返しているのは、米国のグリーンスパン元連銀議長だ。
 彼は昨年末、ドルを「幽霊通貨」と呼んでQEを批判し、金地金相場の上昇を予測した。
 最近では、米国の景気が粉飾されていることを示唆して「株価は明らかに高すぎる」と述べ、金利が上がり出すとバブル崩壊の可能性が高くなると言って、債券金融バブルの大きな崩壊と超インフレが近いと予測している。
 すでに述べたように、米英日の国債金利は1カ月前から上昇傾向にある。グリーンスパンの言うとおりなら、いつバブル崩壊が起きても不思議でない。 (Alan Greenspan Warns of Explosive Inflation: "Tinderbox Looking For a Spark")

 今週からEUの中央銀行(ECB)がQEを開始(拡大)した。
 とたんにドルと米欧の株価が高くなり、金相場が急落するという、QEの典型的な反応が出た。
 日銀のQEの効果が下がるのにあわせてECBがQEに参戦したことにより、QEは全体的に再び効果のある政策として蘇生した感じだ。
 QEが効いている以上、ドルや債券システムの崩壊は先延ばしされている
 グリーンスパンやロスチャイルド卿(両者は昔から親しい)の予測は「外れ」だと考えることもできる。

 しかし、日銀のQEの効果が薄れた1月末以降、国債金利が上昇して危機感が強まり、その後EUがQEを始めたら相場の危機感が低下するというこの間の動きは、金融システムの安定がQEに依存しており、QEがなければバブル崩壊が起きることを示している。
 米国の圧力を受けていやいやながら開始されたEUのQEは、日銀のQEより効果が薄いだろうから、今年中にまた金融システムが不安定になりそうだ。
 米日欧という世界の3大経済圏のすべてがQEをやってしまっており、これ以上新たなQEの広がりはない
 次回のシステム不安定化は、前回より大きいものになる。バブル崩壊が近づいているというグリーンスパンの見方は正しい。

 ドルと米国債を頂点とする既存の国際金融システムが崩壊した場合、その後も機能しうる国際決済システムの一つは「金地金」「金本位制」だ。
 ドルから金地金へのきたるべき転換を見越してか、欧州やBRICS(中露印伯南ア)の諸国の中央銀行は最近、金地金を買いあさっている
 ドル基軸制が崩壊した後でも機能しうる、もう一つの通貨システムは、中国やロシアが拡充している、ドルに頼らず相互の通貨を使うBRICSの新たな決済システムだ。
 BRICSは、IMFや世界銀行というドル基軸制(ブレトンウッズ体制)のための国際機関に代わりうるライバル組織として、BRICS開発銀行などをすでに設立している。 (習近平の覇権戦略) (覇権体制になるBRICS

 ここ数年、米国が中露を敵視するほど、中露はBRICSを率いてドル依存を低下し、ドルが崩壊しても使い続けられる国際決済機構を構築してきた。
 従来、銀行間の資金決済に不可欠な世界的なシステムとして、欧州に本部があるSWIFT(どの口座にいくら送金するか銀行間で情報を送受信するシステム)があり、米国はSWIFTをロシアに使わせない制裁を科そうとしている。
 これに対抗してロシアは中国に接近し、中露の国内の銀行間決済システムをつなげて国際化する計画を進めている。
 中国は、人民元の国際化政策と連動し、早ければ今年9月から、元の銀行間決済システムの国際化を行う。
 これらの動きは、中露やBRICSがドル決済やSWIFTに依存する度合いを減らし、きたるべきドル崩壊への対策になっている。

 従来のドル基軸制を守る組織であるIMFや世銀にとって、中露などBRICSが独自の体制を作ってドル離れを画策していることは敵視すべき脅威なはずだ。
 しかし実のところ、IMFはむしろBRICSのドル離れを「良いこと」と評価している。
 米国CNBCの報道によると、IMFのシノハラ副専務理事(日本の財務省出身の篠原尚之)は「ドルに依存しすぎると世界の経済システムが不安定になるので、アジアの新興諸国がドル以外による決済を増やすことは、むしろ奨励すべきだ」と述べ、中国やBRICSのドル離れを歓迎している。 (Is the dollar losing its clout among EMs?

 IMFは、ドル崩壊が垣間見えたリーマン危機の後、ドルの代わりにIMFの資金決済単位であるSDR(主要な通貨を加重平均した価値の単位)を使うことや、基軸通貨体制の多極化など、国際決済の非ドル化を模索していた。
 米連銀がQEによってドルの延命を模索した最近の数年間、IMFはSDRや通貨多極化の話をしなくなっているが、今後QEの限界が露呈するほど、再びSDRや通貨多極化、金本位制復活などの話が復活し、ドル崩壊後の世界体制の模索が再開されそうだ
ドル崩壊とBRIC) (きたるべきドル崩壊とG20) (しだいに多極化する世界
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