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「人質救出作戦」は馬鹿の妄想

 ランボー

   「人質救出作戦」はバカ派の妄想 〜米軍ですら失敗〜  3/4  「語られる言葉の河へ」氏から

 (1)「イスラム国」が湯川、後藤の2氏を殺害したため、軍事知識に欠ける日本のタカ派の間では「自衛隊が人質を救出できるよう法の壁を取り払え」という声が出ている。
 安倍首相も、国会で「国民の命、安全を守ることは政府の責任、最高責任者は私だ」と答弁している。

 (2)だが、人質救出のためには、まずその正確な所在をリアルタイムで把握しなければならない
 米国は、解像力の高い偵察衛星5機、偵察機、無人の偵察・攻撃機800機を持つ。
 国家保全庁(NSA、職員3万人)は、数百万回線もの電話、無線、インターネット通信を同時に傍受し、ハッキングの達人や世界各地の出身者が盗聴、翻訳に当たり、紛争地域には地元出身の情報機関員が潜入して協力者を多数確保している。
 それでも、人質の居場所を知るのは困難だ。

 (3)米軍は、昨年3回救出作戦を行い、すべて失敗した。
  (a)7月、ラッカ(シリア)郊外の石油施設内に囚われている2人の米国人ジャーナリストを救出しようと特殊部隊をヘリで潜入させたが、人質はいなくて、2人は後に殺された。
  (b)11月、イエメンで人質となった米国人写真家の救出作戦を行ったが、人質は他の場所に移されていた。
  (c)12月、再び別の場所を急襲したが、警備兵に発見されて銃撃戦となり、写真家は死亡、すでに解放が決まっていた南アフリカ人の人質も死亡した。

 (4)オサマ・ビン・ラディンが潜むパキスタンの邸を知るには10年もかかったが、作戦自体は当人も護衛も殺してもよいから比較的簡単だった。
 人質救出では警備兵を制圧しつつ、人質は無事に連れ帰らねばならない。至難のワザだ。
  (a)1970年11月、北ベトナムで撃墜された米国の飛行士がいるはずのソンタイ捕虜収容所をヘリ6機、特殊部隊53人が襲った。しかし、まったくのカラだった。
  (b)1980年4月、米国は、テヘランの米国大使館で軟禁されていた館員ら53人を大型ヘリ8機、特殊部隊92人で救出しようとした。アラビア海の空母から1,300kmもの距離に、ヘリでは一気には行けない。
 そこで、途中の、使用されていない砂漠の飛行場に夜間着陸し、輸送機から給油した。給油中、ヘリが輸送機と地上で衝突。火災となって失敗した。

 (5)ハイジャックの場合、成功例が幾つかある。これは人質の所在が最初から明確だし、飛行場は接近が容易なので、(4)とは事情が違う。
  (a)1976年7月、イスラエル軍が行ったエンテベ空港(ウガンダ)における乗客救出。
  (b)1977年10月、西独逸の国境警備隊が行ったモガディシュ空港(ソマリア)における救出。

 (6)日本が人質救出作戦をやろうとするなら、
  (a)テロはどこで起こるか分からないから、まず各地の言語に熟達した人々を集める必要がある。
 アラビア語だけでも広い地域で使われるだけに、20以上の方言があり、テロリストなどが訛りの強い言葉で隠語を使って電話や無線で交信するのを盗聴するには、世界各地から優秀な移民を交代要員を含めて数百人を募らねばならない。
  (b)潜入する特殊部隊は槍の穂先にすぎない。大型のヘリ、有人・無人の偵察機を運ぶには空母が要る。
 潜入失敗で戦闘になる場合に備え、空挺部隊、戦闘・攻撃機なども空母に乗せて行かねばならない。空母1隻が常時出動できるためには、修理中、訓練中の空母を含めて3隻が必要だ。
 (※北風 空母を守る艦隊も必須。)
  (c)人質救出作戦を外国で行うには、その国の同意が必要だ。どの国の軍、警察にも面目があるから、同意を得るのは不可能に近い。
 ・・・・仮に日本で中国大使館員を人質に、ウイグル人の釈放を迫る事件が起き、中国の特殊部隊が日本で人質救出作戦を行うことに同意を求めれば、警察庁も防衛省も「情報交換だけをお願いする」と答えるだろう。

 (7)米国務省は、出国者に対し、「軍の援助は期待してはならない。ヘリコプターで救出され、軍の護衛付きで脱出、と期待するのはハリウッドの台本の影響」と警告する。
 法律さえ変えれば、自衛隊が映画か漫画のように人質を救出できると思う人は、現実的思考ができない「タカ派」ならぬ「バカ派」だ

□田岡俊次「「人質救出作戦」は「バカ派」の妄想 あの米軍ですらほとんどが失敗」(「週刊金曜日」2015年2月27日号)
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