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インフレ政策で貧しくなる勤労国民:中原

 牛丼290
 窮乏化が進む290円の昼飯だが、店員もさらに窮乏化。

   なぜ日本は「米国の失敗」をまねるのか
   インフレで米国の人々は貧しくなった   2/23  中原圭介  東洋経済オンライン

今回のコラムでは、日本銀行による大規模な金融緩和策が本当に正しいのかどうかを、アメリカや日本の経済を比較しながら改めて検証したいと思います。

日銀が大規模な量的緩和を行うのに賛成する経済識者、政治家、メディアなどは、「2%程度のインフレが好ましい。アメリカの経済金融政策を見習ったほうがいい」といった発言をよく主張していましたし、今でもそのように主張しています。

  インフレ政策で、アメリカの一般国民は貧しくなった

しかしながら、私は「経済金融政策は庶民のために行うべきである」と考えているので、彼らが賛美するアメリカの歴史をありのままに検証してみれば、そういった主張の類は明らかに間違っていることが浮き彫りになります。

なぜなら、アメリカのインフレ経済政策は、資源価格の高騰が始まった2000年以降も、住宅バブルが崩壊した2007年以降も、国民の実質賃金を引き下げてきたにとどまらず、格差が拡大していくのを助長してきたからです。

この連載でも過去に取り上げましたが、米労働省および米国勢調査局の統計をもとに、2000年を100とした場合のアメリカの名目賃金と消費者物価指数の推移を振り返ってみると、2013年のアメリカ国民の平均所得は97.9と下がっている一方で、消費者物価指数は135.3と上昇してしまっています。

米国所得物価実質賃金

これがどういうことを意味しているのか、ごく普通に考えれば、おわかりいただけるでしょう。

念のため、日本の厚生労働省が計算しているように、指数化した名目賃金を消費者物価指数で割り返して実質賃金を計算してみると、たった13年間で実質賃金は72.4まで下がってしまっているのです。

グラフを見ていただければ一目瞭然ですが、アメリカ国民の生活が一貫して悪化してきた主な理由は、決して住宅バブル崩壊やリーマンショックのせいだけではありません

アメリカが、「21世紀型インフレ」と「20世紀型インフレ」(この言葉についての説明は2月10日のコラム「なぜ21世紀型インフレは人を不幸にするのか」を参照)の区別が付かずに、インフレ目標政策に邁進してきた当然の帰結であるわけです。

その結果、2013年時点のアメリカでは、国民の名目の平均所得は1995年の水準に戻ってしまっていますが、実質の平均所得はさらに遡って1990年代前半の水準にまで落ち込んでしまっています。

  国民の生活水準は「実質賃金」で考える

私から言わせればどう考えても、アメリカの経済政策は長期トレンドとして実質賃金が落ち始めた1990年代前半から失敗していたと言っても過言ではないでしょう。

国民の生活水準を考える時に、大事なのは「名目賃金」ではなく「実質賃金」です。
このことを否定して、名目賃金のほうが大事であると言っている経済識者がいるとすれば、それは経済のことを語る以前に、物事の道理がまったくわかっていないと言えるでしょう。

それでは次に、厚生労働省の統計をもとに、「21世紀型インフレ」が始まった2000年以降の日本における名目賃金と実質賃金の推移を見てみましょう。

2000年1月の両方の賃金を100として指数化したグラフを見てみると、おそらく「インフレ万歳」と言っている識者たちが決して知らない事実がはっきりと浮かび上がってきます。

日本名目実質賃金

グラフを見ていただければ説明の必要はないかもしれませんが、日本における実質賃金はアメリカのそれとは異なり、アメリカの住宅バブル崩壊とリーマンショックの影響が色濃く出た時期までは、指数は100を起点にして多少上下するだけで、ほとんど下がっていなかったのです。

さらに注目すべきは、リーマンショック前後には指数は最大で4ポイント下がったわけですが、安倍政権誕生後の2年間では最大5ポイントも下がってしまっていたのです。

このうち2ポイントが消費税増税の影響であったとして、それを割り引いたとしても、アベノミクスの失敗理由を消費税増税のせいにすることは極めて難しいでしょう。

そもそも、物価上昇率に占める消費税増税分2%の根拠についても、私はかなり怪しいと考えています。
というのも、この2%の根拠は、物価指数の算出対象となるモノやサービスのうち課税対象となるものが約7割に相当するので、単純に消費税引き上げ分3%×0.7という計算に基づいておよそ2%になるというものだからです。

しかし現実には、中小零細規模の企業になればなるほど、客層が庶民になればなるほど、「3%の価格転嫁」を行っている企業は少なくなっているのです。
日本全体の平均としては、物価上昇分に占める増税分は、2%を大きく下回っているのではないでしょうか。

つまり、物価上昇分に占める2%という公に認められている試算は、過度に見積もられている数字であり、消費増税の悪影響を過大に計算してしまっているわけです。
それは裏を返せば、消費増税分の影響を除いたとしても、2013年~2014年の実質賃金の下落率は相当に深刻な状況にあったということを表しています。

  実質賃金の水準自体の回復が焦点に

これから2015年以降の実質賃金を見ていく場合には、前年の増減率ではなく、実質賃金の水準自体が戻っていくかどうかに注意しなければなりません。
原油価格の下落がアベノミクスの失敗を和らげるため、実質賃金が前年比である程度増えるのは当たり前であるからです。
その意味でも、実質賃金指数そのものが2012年末の水準にどれだけ近づいていくことができるのか、これが2015年~2016年の課題になっていくでしょう。

次回は、リフレ政策を支持する人々が強弁する「アベノミクスによって失業率が低下した」という見解が、いかに間違った見解であるのかを説明したいと思います。

リフレを支持する経済学者たちが、自説の誤りを覆い隠すために確信的にそう言っているだけなら別に構いません。
しかし、それを真に受けてしまう人々が意外に多いという現状に至っては、国の未来にとって由々しき事態となるからです。

最後に、念のため断わっておきますが、私は安倍政権のすべての政策を批判しているわけではありません。
過度な金融緩和は国民を苦しめるので、早くやめたほうがいい」と言っているだけなのです。
 (以下省略)
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