家計貯蓄率のマイナスが続く、円の暴落と家計崩壊の危険
2015-02-17


高齢者の増加もあるものの、非正規雇用など貧困の増大によって貯蓄率がついにマイナスとなっている。
これは、平均的に生活の余裕がまったく無い、のみならず生活できないということである。
先進国では類をみない事態である。
もちろん貧困が解消されていかない限り、生活の余裕は生まれてこないし、貯蓄率はマイナスがさらに悪化するだろう。
このままでは消費需要の増大など、できるわけがない。
絵空事ではないのだ。
貧困の解消を再優先に取り組むべきなのである。
狂気のアベノミクス、異様な黒田日銀の量的緩和が金持ちが喜ぶだけの株高のみで、勤労家計を窮乏に落としこんでいる。
円の暴落、家計の崩壊の危機が高まっている。
ーーーーーーーーーーーーーー
日本の家計貯蓄率 2/16 「耕助のブログ」(ビル・トッテン)氏から
昨年末に内閣府が発表した国民経済計算確報によると、日本の家計貯蓄率が2013年度、統計を取り始めた1955年以来初めてのマイナスになったという。
家計貯蓄率とは、所得のうち貯蓄に回された率のことで、ピークの1975年には日本は23%と世界でも高い貯蓄率を誇っていた。
98年に1.1%、2004年には2.7%と低下傾向にあったが、今ではアメリカよりも低いマイナス1.3%となった。国民全体では貯金を取り崩して消費に回したということだ。
理由の一つには高齢化がある。現役を引退した高齢者は年金と貯蓄を取り崩すことで暮らしており、1970年には7%だった65歳以上の割合は2013年には25%にも達している。
しかしマイナス貯蓄率の理由はそれだけではなく、所得の減少が大きい。
1989年にはパートや派遣社員などの非正規雇用者は労働者全体の19%だったが、2014年は37%にも増加した。
正規雇用のサラリーマンの平均年収は468万円、非正規は168万円と300万円もの開きがあり、年金や退職金、社会保障もカバーされない。
パートやアルバイトは学生や主婦が多数を占めると思われるだろうが、非正規雇用で働く25歳から34歳の男性は1989年にはわずか4%だったのが、2014年には17%にも増加しているのだ。
保障もなく、不況になれば真っ先にクビになる非正規雇用では、なおさら将来を考えて貯蓄をしたいと思うだろう。
しかし正社員と比べて大幅に低い賃金ではそれも難しい。
さらに所得減少に加えて消費税の増税、年金支給額の減額、社会保険料の引き上げなどで負担が増えれば今後貯蓄率が上がることは不可能に等しいといえる。
日本が高貯蓄率を誇っていた時代は、終身雇用、年功序列賃金であり、国民の大部分が「中流階層」を自負していた。
しかし規制緩和で労働者を保護する規制が取り払われる中で、企業は正社員を減らし派遣社員に置き換えて利益を増やしてきた。
その一方で非正規雇用の増加で貧困層を増やし、貯蓄率がマイナスになっても個人消費は落ち込み続ける、という悪循環がもたらされたのだ。
特に2013年の貯蓄率がここまで落ち込んだのは、2014年の消費税増税前の駆け込み需要で消費に回ったと見ることもできるが、円安による物価上昇と8%の消費税で今年も貯蓄率低下傾向が続くことは間違いない。
円安に関連してもう一つ暗い統計がある。
昨年内閣府が同時に発表した2013年の1人当たり国内総生産(GDP)は3万8644ドルで、経済協力開発機構(OECD)加盟国では19位と、前年の13位からさらに後退した。
円安進行に伴いドルベースでの金額が縮小したのだから当然である。
いくら原油価格が急落しても、円が安くなればメリットはなく、原油を買う円の価値が下がっているために物価も下がらない。
日銀が追加で量的金融緩和を行えば円安に歯止めがきかなくなり、それによって困窮するのは国民の生活だけではなく、すでにGDPの200%もの政府債務を抱える日本が危機に直面する可能性はさらに高まるだろう。
ーーーーーーーーーーーーー
※ 家計の窮乏化と経済循環などの関連ページ。
「勤労者の窮乏化は恐慌への道づくり」
「逆進課税とデフレ恐慌」
「安倍某の経済政策?恐怖のシナリオか?」
「安倍の過激刺激策は過去のミスの繰り返し」
「黒田日銀は己の失敗を願うべき:リチャード・クー」
「これからの世代と経済:吉田」
「家計の貯蓄率が初めてマイナスとなった」
「生活必需品が世界最高税率の国」
「報道しないマスコミ「日本人の家計貯蓄率が初マイナス」の衝撃「夢の経済ゲーム:ひょう吉の疑問」
「終わりに向かう日本経済、家計貯蓄率マイナスからの近未来」
(参考) 日本の場合は、低い資本収益率をデフレ以降は非正規雇用の増加により労働分配率を下げることで収益率を高めてきている。まさに露骨な労働搾取率の過剰強化である。

- 関連記事
-
- アベノミクスで、失業率は低下していない:中原 (2015/03/03)
- 16か月連続実収入減少、10か月連続実消費減少でも「持ち直している」との発表 (2015/02/28)
- インフレ政策で貧しくなる勤労国民:中原 (2015/02/24)
- 物価目標失敗によって成長率がプラスになった皮肉:野口 (2015/02/23)
- 17年間縮み続ける日本経済、物価が上がるだけの量的緩和 (2015/02/19)
- 家計貯蓄率のマイナスが続く、円の暴落と家計崩壊の危険 (2015/02/17)
- インフレで実質賃金が大きく下がるなら、デフレのほうが大いにマシだ:中原 (2015/02/16)
- 弱肉強食政策のオンパレードと「ベイル・イン」 (2015/02/10)
- 21世紀インフレは勤労者を不幸にする:中原 (2015/02/10)
- 脱法行為の国債買い入れで窮乏化、インフレ、日本売りへ進む日銀:野口 (2015/02/09)
- 中原圭介インタビュー「これから日本で起こること」 (2015/02/04)
コメント
アベノミクスはまだマシ
狂気のアベノミクスと異様な黒田日銀の緩和とはいっているけれど、歴代自民党政権下や民主党政権下でも経済がマイナス成長で、貧困率は上がっていた。アベノミクスになって経済が少しマシになっただけでもまだマシな様な気がします。
コメントの投稿
トラックバック
この記事へのトラックバックURL
http://bator.blog14.fc2.com/tb.php/2688-394e7229