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TPP、国民皆保険制度が米国に食いつぶされる:孫崎

 保険証

TPP加盟で健康保険制度が崩壊する危険性を孫崎亨氏が指摘  2/12 NEWS ポストセブン

 TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への加盟は国益をはっきり左右する大問題だ。国民の生活を脅かしかねない懸念について、元外務省国際情報局長の孫崎享氏が指摘する。
 * * *
「関税の聖域は守る!」と宣言してTPP交渉に臨んだ安倍政権だが、TPPの最大の問題は、関税の撤廃ではない
TPPに加盟すれば、非関税障壁の撤廃も迫られることになる。もっとも危惧されるのは、日本が世界に誇る健康保険制度が崩壊する危険があることだ。

 アメリカの医療系企業が日本で病院を建て、超高額な医療サービスを始めたとしよう。
 現在、日本では、効果が未実証の最先端医療に対しては公的な健康保険が適用されず、全額自己負担の自由診療になっているが、もしアメリカの事業者が「我々の提供する最先端医療に保険を適用させないのは、非関税障壁だ」と訴えたらどうなるのか。

 現在、TPP交渉において「ISDS(またはISD)条項」という投資家を保護する条項の導入が検討されている。
 これは、投資家が投資先の国の法律などにより不利益を被ったと認識した場合に、仲裁機関である国際投資紛争解決センター(ICSID)に提訴し、受けた損害について投資先国政府に対し賠償を求めることができる制度である。
 ICSIDの採決には強制力があり、公共の利益は考慮されず、「投資家がどれほど被害を被ったか」という観点だけで審議される

 実際にICSIDに提訴された案件としては、こんな事例がある。
 メキシコに進出したアメリカの産廃処理業者が、産廃の埋め立て地を建設したが、有害物質が流出したため、地方自治体が建設許可を取り消した。
 それを不服として事業者が提訴し、訴えが認められ、メキシコ政府は多額の賠償金を支払わされた。

 他にもこんな事例がある。アメリカの製薬会社がカナダで新薬の特許を申請したところ、臨床試験が不十分として特許を与えなかった
 米製薬会社はカナダの裁判所に持ち込んだが却下されたので、ICSIDに提訴。カナダ政府に対する1億ドルもの賠償請求が認められたのである。

 これが何を意味するのかというと、国家主権の喪失に他ならない。
 その国の法律よりも、ICSIDの判決が優先されるのだから、主権が失われたも同然である。

 もし米企業が提供する超高額医療まで健康保険を適用させることになれば、ただでさえ赤字の日本の健康保険制度は、早晩、破綻する
 しかし、保険適用を拒否すれば、ICSIDに提訴され、巨額の賠償金を支払わされる可能性がある。
 これを避けるために、日本政府としては法律を改正して、「混合診療」を解禁することになろう。

 混合診療とは、患者の意思に応じて、保険が適用される通常の保険診療に、保険外診療(自由診療)を併用する制度である。
 これの何が問題なのかというと、今まで患者が全額負担していた高額な自由診療にも部分的に健康保険が適用されるようになるので、公的負担が増大する。

 さらに、病院や製薬会社は、より儲けの大きい保険外診療に力を入れるようになり、従来なら保険適用されていた新しい治療法や新薬が、保険外のまま据え置かれ、公的な健康保険制度が形骸化しかねない。
 要するに、アメリカのような医療制度になるのだ。

 そうなれば、国民は高額な医療費を支払うために、民間の医療保険に加入するしかなくなる。
 アメリカの保険会社が押し寄せてくるのだ。
 つまり、これこそがアメリカの真の狙いである。
 TPPによって、日本の皆保険制度がアメリカに食いつぶされることになろう。
 ーーーーーーーーーーーーーーー
※  現在、日本ではすべて公的保険制度でカバーしており、民間保険はその追加的な付加給付のみを扱って保険料を集め、保険金を払っている。
 公的保険制度は充実しており、現状の民間保険は「有ってもなくても良い」存在でしか無い。
 そのために「健康保険」に民間が参入ということが、なかなか具体的なイメージとして浮かんでこないと思うのですが、読者のコメントでわかりやすい例があったので、一部抜粋で紹介します。

 ドイツに三十数年在住との方です。
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ドイツとて、健康保険制度に大きな問題を抱える様になってしまいました。 それは、80年代に民間医療保険の自由化と言う馬鹿な事を許してしまったからです。 

公的健康保険は、当然の事ながら、世帯主を中心にして家族ごとに加入し、保険料は家族の人員数ではなく、世帯主の収入で決まりますが、
民間医療保険は、個人ごとに加入し、保険料は年齢と病歴で決まるのです。 
という事で、金持ちや若い人達は公的健康保険機関に加入するより民間の健康保険機関に加入した方が安あがりなので、そちらの方に鞍替えしてしまったのです。

当然の帰結として、高齢者、病人、大家族を被保険者として抱える公的健康保険が経済的に行き詰まり、民間医療保険機関がボロ儲けとなり、
医療自体にも「贅沢医療と通常医療」の格差が生まれました。

前述の出典先として“Verband der Privaten Krankenversicherung"(民間医療保険者連盟)のパンフレットを挙げましたが、
実は、この連中はハレンチにもこのパンフレットの中で『みろ、俺たちは、国からの援助なしで運営してるのに、あの連中は国からの援助無しではやっていけない』とのたまっているのです。

と言う訳で、ドイツでは、馬鹿な改革でおかしな「医療格差問題」が生まれてしまいました。
 ーーーーーーーーーーーーーーー引用終わり
 そういうわけで
 公的な制度は世帯収入に累進課税で保険料をかけるので、所得の多い階層と健康な階層が、病弱な低所得層の面倒をみるという制度的な公正配分の機能を発揮しています。
 ここに参入する保険資本は当然そんな制度ではありません。
 民間保険資本は世帯ではなく個人加入で、所得とは無関係に年齢と病歴で保険料が決まります。

 当然の流れとしては、金持ちと健康な人、若い人は保険料負担が少なくなるので民間保険に移行してしまう。
 残った公的制度の方は病歴の人、低所得層、老人となってしまい、保険制度の存続のために莫大な国庫支出金が必要になってしまう。

 民間保険は金持ちと金持ち医療機関の高額医療で大いに利益を上げる。
 公的制度の方は保険料を上げて、医療給付を下げて、しかも質素な貧乏医療を進めざるを得なくなる。
 そのため医療機関は経営が苦しくなり、公的保険医を返上してゆくだろうし、民間保険が医療機関を支配してゆくだろう。

 成り行きは米国と同じく非常に高い医療単価となり、貧乏人は「貧乏医療」しか受けられないか、「無保険」となってしまう
 まったく、とんでもないことが進められようとしているのです。
TPPの「非関税障壁」公的医療制度の崩壊
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コメント

貧乏人は病院に来なくてもいいと言うのであろうか。
憲法のもと今まで築き上げてきた社会保障は間もなくてはいけないが、国民はいま何が起きようとしているか問う言うことから目をそらさせられている。

どうなるのでしょう。

北風さんこんにちわご無沙汰しています。
長いことブログから離れておりましたが
変わらぬ北風さんの素晴らしい記事、
また少しずつ読ませて下さいネ。
勝手ながら紹介させて下さい。

Re: タイトルなし

コメントをありがとうございます。
久しぶりですね。
マスコミはやたらとわけの分からない言葉をふりまいて、分からない気分にさせていると思います。
ので、ひとつずつ明解にして正してゆくつもりです。
とはいえ、浅学非才のへぼブログゆえなかなか進みませんが。
これからもよろしくお願いいたします。

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