イスラエルとの戦いが熾烈化している
2015-02-08

シオニストの象徴であるイスラエル国旗を燃やす超正統派ユダヤ教徒。
イスラエルとの闘いの熾烈化 2/7 田中宇 文中(※ )は北風の補足注釈。
米オバマ政権が「同盟国」だったはずのイスラエルを嫌う姿勢を強め、「敵視」の領域に入っている。
米政府は、イスラエルがパレスチナ国家を建国する中東和平を進めたがらないので、和平が達成された時に行う予定だった在エルサレム米領事館を、従来の「駐イスラエル」から「駐パレスチナ」の領事館へと転換している。
エルサレムの米領事館はこれまでイスラエル人(元軍人)だけを警備員として雇ってきたが、昨年から新たに35人のパレスチナ人を警備員として雇用した。
米国は、領事館の警備員としてイスラエル軍(IDF)の元兵士のみを雇うという協定をイスラエルと結んでいる。パレスチナ人雇用は協定違反だとイスラエルが怒っている。
米政府は、雇用したパレスチナ人に軍事訓練をほどこしているが、その中にはIDFに対する投石など敵対行為でイスラエルに逮捕投獄された経歴を持つ者もいる。
米国はイスラエルの「敵」を雇い、武装させて警備員にしている。これに抗議して3人のイスラエル警備員が辞任した。
国連が終戦直後に定めた中東和平の構想は、エルサレムを二分し、西エルサレムをイスラエルの首都に、東エルサレムをパレスチナ国家の首都にする計画だ。
中東和平が進まないため米国など世界各国は、駐イスラエル大使館を、イスラエルが首都と定めているエルサレムでなく、隣の大都市テルアビブに置いている。
親イスラエル色が強い米議会は、これまで何度か米大使館をエルサレムに移すことを決議したが、オバマ政権は逆に、エルサレムの領事館を駐イスラエルでなく駐パレスチナの領事館へと衣替えしようとしている。
エルサレム米領事館の最高顧問は、パレスチナ系の人物(Ibrahim Delalsh)だ。
1月1日、エルサレム北方にあるアデイアド(Adei Ad)のユダヤ人(不正)入植地の住民が、敵対行為として近くのパレスチナの村の果樹園のオリーブの木々を500本切り倒す事件が起こった。
翌日、米領事館の米国人要員が、武装警備員(米国人)と、近くの村のパレスチナ人たちをつれて、現場検証としてアデイアド入植地の境界近くの場所を事前通告なしに訪問した。
アデイアドはパレスチナ人の土地を奪って作られた不正入植地で、ユダヤ人入植者とパレスチナ人との鋭い対立が続いている。
現場検証した米領事員が、パレスチナ人たちをつれていたことは、米国がパレスチナに味方したことを意味したため、ユダヤ人入植者が領事官の一行に向けて投石を開始し、あやうく双方で銃撃戦が始まるところだった。
この事件も、米領事館が反イスラエル的になったことを示している。
オバマ政権は、以前からイスラエルに不正入植地を撤去するよう求めてきたが、このような直接対立は初めてだった。
米国は従来、中東和平を仲裁して表向き中立を装いつつ、実質的に完全にイスラエル寄りだった。米政界はイスラエルに牛耳られてきた。
しかしオバマは最近、イスラエルに支配される状況を打破しようとしている。
イスラエルが中東和平を進めたがらないため、エルサレム領事館の転換に象徴される、パレスチナに味方する傾向を強めているのがその一つだ。
また、イスラエルが自国の仇敵であるイランに対し、米政界を巻き込んで核兵器開発の濡れ衣をかけてきた「イラン核問題」でも、オバマはイランと交渉して濡れ衣を解こうとしている。
イランと米国など(米英仏独露中、P5+1)との核交渉は、12月の交渉期限に妥結しなかったが、その後も米イランは2国間交渉を続けている。
以前は、イランが1万台近く持っているウラン濃縮用の遠心分離器の大半を廃棄するよう米国が求め、イランが拒否して交渉が頓挫していた。
イランは、米国が遠心分離器の全台保有を認めてくれたら、作れるウランが少なくなるよう改造し、国際監視をつけてもらってかまわないと逆提案し、オバマはそれを了承する方向で交渉妥結を目指している。
オバマはもう任期末まで選挙がないので、米国で気に入らない政治家を選挙で落とす技能が高いイスラエルに気兼ねする必要がなくなった。
任期最後の選挙だった昨年11月の中間選挙が終わった後、オバマはイスラエルに反抗し、イランと和解する傾向を強めた。
困ったイスラエルは、議会両院の多数派を握った共和党と結託を強め、民主党のオバマがイランと和解するのを阻止しようとしている。 (Congress Seeks Netanyahu's Direction)
イスラエルの依頼を受けた米議会の共和党は、イスラエルのネタニヤフ首相を3月3日に米議会に招待してイラン敵視の演説をしてもらうことにした。
イスラエルは3月17日に総選挙があり、ネタニヤフは苦戦している。
米議会で演説すれば、オバマに圧力をかけてイランとの和解を妨害できるだけでなく、イスラエルの有権者のネタニヤフ支持も増えそうで、一石二鳥と考えられた。
しかし、米議会共和党からの招待に対し、ネタニヤフが大統領府(ホワイトハウス)にも議会民主党にも通知せず、招待を受けて訪米を決めてしまったため、それまで超党派でイスラエルを支持していた米政界の構図が崩れ、大統領府だけでなく、外された民主党議員たちもネタニヤフの訪米に反対し始めた。
外国首脳が米議会で演説する場合、通常は大統領府から副大統領が出席するが、バイデン副大統領や民主党の議員たちは、ネタニヤフの演説を欠席することを検討している。
米議会では従来、イランに核の濡れ衣をかけて制裁するイスラエルに好都合な策に、2大政党の両方が賛成していた。オバマは最近まで、民主党の議員にもイランとの和解に賛成してもらえなかった。
しかし今、ネタニヤフが民主党を無視して共和党に肩入れしたため、議会民主党が反イスラエル・親オバマへと寝返り、イスラエルはこれまでの超党派の支持を自ら失うことになった。
イスラエルの外交官や諜報関係者の間で、ネタニヤフを批判する声が強まっている。
イスラエル右派系の有力な在米団体であるADL(名誉毀損防止協会)までが、ネタニヤフに訪米をやめるよう公式に求めた。
AIPACもこの件で内部論争がある。是が非でも選挙に勝ちたいネタニヤフは、今のところ訪米演説を強行しそうだが、それは米政界とイスラエルとの関係を大幅に悪化させ、イランに漁夫の利を与える可能性がある。
ネタニヤフは、反対を表明する自国の外交官たちを次々と罷免している。
欧州は、従来から米国以上にパレスチナ問題でイスラエルに批判的だ。
イスラエル政府は昨年末、欧州諸国と自国の関係が急速に悪化し、今年はさらに関係が悪化すると予測する報告書をまとめている。
世論調査によると、英国民の38%がイスラエルを嫌っている(最も嫌われているのは47%が嫌悪する北朝鮮)。
ギリシャのシリザ、スペインのポデモスなど、南欧諸国で極左政党が急速に人気を集めている。
シリザもポデモスも、パレスチナ問題でイスラエルを強く批判してきた。
EU諸国の従来の2大政党は、イスラエルを批判しつつも、米国に気兼ねしてあまり強い批判をしてこなかった。
しかし今後、極左政党がEUの政界で力を持つと、事態はイスラエルにぐんと不利(イランやヒズボラ、ハマスに有利)になる。
シリザやポデモスは、EUが(本当はウクライナの政権を転覆した米国が悪いのに)ロシアを経済制裁する半面、パレスチナ人を虐待殺害し続けるイスラエルを制裁せず許している二重基準を非難している。
非常に興味深いことに、シリザやポデモスの台頭と同時期の昨年10月、EUは新任の外相に、イタリアの極左(共産主義者)であるフェデリカ・モゲリニを選出している。
モゲリニは親露・親プーチンであると同時に親パレスチナ・反イスラエルだ。
モゲリニは昨年2月にイタリアの外相に抜擢されたばかりで、8カ月の外相経験しかないのにEU全体の外相に選ばれた。
EUの幹部人事には独仏の意志が反映されている。独仏は、わざわざ極左をEUの外相に据えた観がある。ドイツは表向き、米国主導の対露制裁に追随し、シリザなど極左政権の誕生に怒っている。
しかしモゲリニの登場を見ると、実のところドイツは、シリザやポデモスが台頭し、対米従属を乗り越えられないドイツ自身を対米自立の方に押し流してくれるのを期待しているようにも見える。
ドイツは「(20世紀最大の濡れ衣かもしれない)ホロコースト問題」があるので、イスラエルを強く非難できない。
しかし極左勢力が台頭してEUを牛耳ってイスラエルを制裁する方向に押し流してくれれば、ドイツが主導しなくてもEUはイスラエルを制裁できる。
モゲリニは就任早々、イスラエルが中東和平を進めない場合、EUがイスラエルよりパレスチナと親密にすることを示唆している。
イスラエルは、欧州に対していくつかの政治的な武器を持っている。
その一つは、政界や財界をはじめとした欧州の有力者の中にユダヤ系が多いことだ。
彼ら自身がイスラエルの人権侵害を苦々しく思っていても、シオニストから「ユダヤ人のくせにイスラエルに味方しないのか」と恫喝されると弱い。
欧州の政財界にユダヤ系が多いのは昔からだ。
先日、セルビアの大統領が「ホロコースト記念日」に「ナチスがユダヤ人を迫害したのは、各界の有力者にユダヤ人が多すぎたからだ」と発言した。
偏見を助長する発言としてシオニストから糾弾されたが、私的な会話で同様のことを指摘する欧州の人は多い。
英国では、ユダヤ系が全人口の0・5%で、人口比と釣り合うユダヤ系の国会議員数は3人だが、実際には24人のユダヤ系国会議員がいる。
欧州に対するイスラエルのもう一つの強みは「ホロコースト」だ。
アウシュビッツ強制収容所の「ガス室」で110万人のユダヤ人が殺されたというのが「正史」だ。
以前は殺された人の数が「400万人」だったが、その後明確な理由なしに110万人に「改訂」された。
「正史」では、ナチスは「チクロンB」という毒物で大量殺害したことになっているが、研究者(Germer RudolfやJhon Clive Ballら)が、アウシュビッツの「ガス室」とされている部屋の壁を削って調べたところチクロンBの痕跡が見つからなかったと発表した。
すると、彼らの中の何人かが独刑法の民衆扇動罪で起訴された。
日本では、この件を指摘する記事を出した雑誌マルコポーロが廃刊に追い込まれた。ホロコーストの「正史」の事実性に疑問を持つことは、おおむね世界的に禁じられている。(「正史」「ガス室」などとかっこ書きしている時点で、すでに私は危険を冒している)
アウシュビッツで大量虐殺が行われたという話は、ドイツ政府も認める「正史」だが、具体的にどこでいつ何人殺されたか、犯罪捜査に不可欠な確定的な物的証拠がまったくない(証言しかない)。
ドイツの86歳の知的な女性ウルスラ・ハーバーベック(Ursula Haverbeck)は、そのように言っている。彼女は昨年、物的証拠があるのなら教えてほしいとドイツの政府や裁判所、ユダヤ人団体など関係各方面に問い合わせ、ウェブサイト( ursula-haverbeck.info )まで立ち上げたが、どこからも何の返事もなかった。
その結果をふまえて彼女は、証拠がない以上、ホロコーストはなかったと考えざるを得ないと述べている。
(※ ホロコーストについては欧米の非シオニストユダヤ人の間で「ホロコースト産業」を食い物にしているイスラエルへの批判が根強い。)
彼女の論理に沿って「もし」ホロコーストが壮大なでっち上げであったと仮定すると(そんな仮定をちらりとでも考えること自体が「犯罪」とされかねないが)このでっち上げに気づいた敏感で知的な、自立した思考ができる人々から順番に、犯罪者にされる構図を持つ。
犯罪者にならないようにする最大の防御は「マスコミを軽信すること」「なるべく考えないで生きること」「大方の考えに流されること」である。そのように生きる人が増えるほど、でっち上げ企画が永続する。
敏感で知的な、自立した思考ができる人々は、思った通りのことを叫んで「馬鹿」「空想屋」扱いされつつ監獄で暮らすか、沈黙して絶望しつつ生きていくしかない。
「幸い」なことに、今の日本はそんな「馬鹿」が少ない。思想犯にならないようにする「賢さ」の点で、最近の日本人は、かなり良い線を行っているので「安心」して良い。
日本人は非常に優秀だ。そんな中、イスラエルは旧ドイツ領の各所で、(※ 今さらながら「証拠」を見つけ、あるいは「証拠」を「作ろう」と)新たな「ガス室」を発掘することに力を注いでいる(まずハーバーベックの問いに答えた方が良いと思うが)。
スウェーデンの与党は、パレスチナ問題でイスラエルを非難しているが、同時にホロコーストをめぐる「新事実」を発掘した文筆者らに奨励金を出す基金を設立し(その前にハーバーベックの問いに答えた方が良いと思うが)、イスラエルから高く評価されている。
スウェーデンは「ホロコースト」と「パレスチナ問題」を全く分離し、前者でユダヤ系組織から非難されない「優等生」になりつつ、後者でイスラエルを非難する巧妙な姿勢をとっている。 (Sweden's premier party planner creates Holocaust legacy)
もし今後イスラエル(在欧シオニスト)の国際政治力が低下すると、ホロコーストに対して「健全な疑問を持つ」という基本的人権が許されるようになるかもしれない。
だがこの場合、難しい点は、アウシュビッツで大量虐殺があったと最初に言い出したのがソ連だったことだ。
イスラエルの国際政治力が低下すると、それはたぶん米国覇権の衰退と同時に起きるから、反比例的にロシアや中国の国際政治力が増大する。
ソ連の後継国であるロシアが、ホロコーストを「正史」として扱っている限り、事態は変わらない。
しかし逆に、もしイスラエルが米議会に同調してロシア(プーチン)を敵視する姿勢をとったら、プーチンは報復としてホロコーストの事実性を再調査する事業を開始すると宣言するかもしれない。
だから、いくら米国がロシアを敵視しても、イスラエルはロシアを敵視したがらず、ロシア出身のリーバーマン外相らがロシアにすり寄る担当をしてきた(リーバーマンの親露政党は3月の選挙で惨敗しそうで、その後のイスラエルの対露関係が懸念される)。
イスラエルは最近、EUから経済制裁されそうなことを受け、中国やロシアに、新たなイスラエル企業専用の工業団地を作る話を進めている。
ホロコーストと並ぶナチスの「犯罪」とされていた事件として1940年にポーランド軍の将校が大量殺害された「カチンの森虐殺事件」があるが、ロシアは冷戦終結時、カチンの森虐殺がドイツ軍でなくスターリンが命じたソ連軍の作戦(犯行)だったことを認めている。
これはソ連が崩壊してロシアが弱体化し、ポーランドがソ連傘下から脱して反露的な国になる転換の中で、ポーランドを有利に、ロシアを不利にする動きとして、ロシアが認めさせられたことだった。
カチンの史実転換の背景は、露イスラエル関係に依拠しそうなホロコーストをめぐる状況と違っているが「正史」が崩れうるものだという点が注目される。
イスラエルが欧州に対して持っているもう一つの強みは「イスラムテロ」だ。
先日のパリの週刊シェルリとユダヤ人向けスーパーの襲撃事件と関係ある。
(※ ISISを育成支援したのが米英軍産複合体とイスラエル、サウジなどであることは次第に明らかになってきている。
シオニスト系の週刊シェルリの実態は、風刺と言うよりイスラムへの誹謗と侮蔑である。
ここに過激派のテロ攻撃、というのは、あまりにうまくハマりすぎなのである。
この事件が欧州の世論を「私はシャルリ」に転換させた。
物証に乏しく、非常に不自然で不審な事件であるが、マスコミの煽動で乗り切った。
なお、西欧のマスコミは20世紀の始めころから、ユダヤ系であり、戦後は欧米マスコミがオールユダヤ系である。シオニストに掌握されている点では弱いものである。
この事件がシオニストの利益となり、「テロとの戦い」派の利益となったのは明らかである。)
この話もまた、ホロコーストの話と同様、マスコ`ミや「正史」の見方に異議をはさむと攻撃される状況が続いてきたので書くのが疲れる。
次回に書くことにする。
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