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円安とは賃金の自動引き下げ:野口

NY原油

NYドル円
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   円安の賃金引き下げ効果 原油価格下落で明らかに  野口悠紀雄  週刊ダイヤモンド1月31日号

 原油価格は、2014年夏には1バレル100ドル程度だったが、15年1月中旬には40ドル台にまで下がった。数カ月で半分以下になったわけだ。

 1年程度の期間で見れば、異常なことのように思われる。しかし、長期的趨勢を見れば、「下がっている」というより、ここ数年上がり過ぎていたのが元に戻ったのだということがすぐに分かる。

 米金融緩和政策の終了で投機マネーが原油から逃げ出したためだ。投機の時代が終わり、ノーマルな傾向に回帰しているのである。だから、現在の水準は一時的なものではない。

 日本の原油輸入額は、現在年間14兆円程度である。仮に為替レートが一定なら、7兆円超の輸入減になる。これだけで貿易赤字は半減する。
 所得の海外流出がそれだけ減るわけだ。日本は世界第3位の原油輸入国なので、原油値下がりによって世界で最も恩恵を受ける国の一つだ。

 年間7兆円というのは、消費税率3%の税収にも匹敵するほどの大きさである。また、発電用燃料であるLNG(液化天然ガス)の輸入額ともほぼ同じである。
 LNGの輸入額は発電の火力シフトによって年間3兆円程度増加したが、その増加分を優に吹き飛ばす。つまり、原発再稼働は必要なくなったわけだ。本来なら、原油値下がりを契機として、経済全体が活気を取り戻すはずである。これこそが経済の好循環だ。

 しかし、いま日本の消費者は、それほど大きな変化が起こっていると実感しにくい。なぜなら、ガソリン価格がさほど低下していないからだ。
 昨年夏に1リットル159円程度であったガソリン価格は、130円程度と、約8割の水準になった。アメリカのガソリン価格が、昨年夏の3.7ドル程度から最近の2.2ドルまで約6割の水準に下がったのと対照的だ。

 日本のガソリン価格があまり低下しない一つの理由は、税の比率が高いことだ(ガソリン税と石油税、消費税で、1リットル70円程度の税がかかる。アメリカではガソリン税の比率は本体の2%未満の州が多い)。
 それだけでなく、為替レートが円安になり、原油価格下落を打ち消している効果も大きい。そのため、円ベースの貿易収支も右に述べたほどは縮小しない

  日本人の賃金は ドルベースで下落している

 「アメリカではガソリン価格が約6割に下がったが、日本ではそれほど下がっていない」と言った。

 しかし、見方によっては、日本でもアメリカと同じようにガソリン価格は下がっているのだ。

 日本のガソリンスタンドが、価格をガソリン本体と税に分けて表示し、本体についてはドル価格も表示しているとしよう。
 昨年8月、為替レートは1ドル100円で、ガソリン価格は1リットル150円だったとする。それが、今年1月には、為替レートは1ドル120円で、ガソリン価格は130円になったとする(数値は現実に近いが、分かりやすいように単純化してある。また、以下の計算も、税について若干の簡略化をしている)。

 昨年夏には、1リットルの価格を次のように表示していたはずだ。
 本体80円(0.8ドル)、税70円。
 それが今年1月には、次のようになる。本体60円(0.5ドル)、税70円。
 このように、本体価格は0.8ドルから0.5ドルへと約6割の水準に低下している。これは、アメリカ国内の場合とほぼ同じ低下率である。

 日本で生活していても、アメリカの会社からドルベースで給料をもらっている人なら、ガソリン本体価格がアメリカ並みに低下しているのを享受することができる(この他に税を支払う必要があるが、これは住んでいる国の事情で決まるので、やむを得ない)。

 「日本人がそうした利益を享受できないのは、給料が下がっているからだ」と解釈することができる。次の数値例を考えると、これが理解できるだろう。

 給料は、1時間当たりアメリカで16ドル、日本で1600円であるとしよう。
 昨年夏には、ガソリン本体10リットルの価格が、日本で800円、アメリカで8ドルだったとすれば、それを買うために、日本でもアメリカでも、30分働く必要があった。
 今年1月には、アメリカ人は約20分働けばよい。しかし、日本人は約23分働く必要がある。昨年より良くはなったが、アメリカ人ほどではない。

 その理由は、日本人の給料がドルベースで見ると、1時間16ドルから約13ドルへと、8割ほどの水準に引き下げられたからだ。
 つまり、円安とは、日本人の給与を引き下げることなのである


  いまこそ円安の意味を理解すべきだ

 日本人が給与下落に気付かないのは、日本国内の物価もドルベースで同じように下がっているからだ(ただし、正確に言うと、物価は給料ほどは下がらない。従って、少しは貧しくなる。これが、「実質賃金が下落している」ということだ。しかし、この変化は大きなものではないので、気付きにくい)。

 このプロセスで得をしているのは、輸出業者である。
 なぜなら、第1に、輸出品の販売価格をドルベースで変えていないからだ(原理的には下げることも可能だが、その戦略を取っていない)。
 第2に、国内で購入する原材料の価格がドルベースで下落している。特に賃金が下落している。だから利益が増えるのである

 以上で述べたことは、実は当たり前のことである。それを分かりにくく説明しているだけと思われるかもしれない。しかし、次の2点は、こうした説明をしないと気付かないだろう。

 第1は、「企業が努力したから利益が増えたのではない」ということだ。
 賃金が自動的に安くなってくれたから、利益が増えたのだ


 だから、労働者としては、ドルベースでの給与が一定になるように賃上げを求めてもよい。
 つまり、2割の引き上げを求めてもよい。数パーセントの賃上げでごまかされてはならない。
 なお、これが実現した場合には、他の物価も2割上がる
だろう。

 第2は、輸出と外国人旅行者の違いである。輸出量は伸びないが、外国人旅行者は顕著に増加している。
 これは、外国人から見て、日本の輸出品の価格は変わらないが、日本のホテル代や食事代は2割ほど低下したからだ。
 つまり、日本のホテルやレストランは(※ 大部分が日本人のため)、安売りして客数を伸ばしているのだ。
 ドルベースで見た売上高が増えているかどうかは、分からない。利益増加率が高いのは、輸出の方である。

 以上のことは、落下するエレベーターの中に閉じ込められた鳥に喩えることができる。外界を基準にすれば鳥も落ちているのだが、エレベーターの外が見えないので、それに気付かない

日本人も、海外旅行をしないと、自分が貧しくなっていることに気付かない。昔のドイツ人は強いマルクを歓迎した。南欧に行って王侯貴族の旅行を楽しめたからだ。
 いまユーロという巨大エレベーターの中に閉じ込められて、ドイツ人からこうした感覚は失われているかもしれない。

 日本の革新勢力は、「円安とは賃金の自動引き下げ」ということを、まったく理解していない。民主党も円安を求めた。

 原油価格急落のように大きな出来事が起こると、「なぜガソリン価格が下がらないのだろう?」と多くの人が考え、エレベーターの外の様子を見ようという気持ちを起こすだろう。
 いまは、円安の意味について考える絶好の機会である。
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コメント

そうなんですけど・・・

はじめまして。
いつもお勉強させて頂いております。

ドルベースで円が下落して・・・っていうのは
物の値段からして、ひしひしと感じている主婦なのですが
でも、ドルも崩壊するのではないか?というのも
世間ではよく目にするようになりました。
で、経済音痴な私は、じゃあ一体どうすれば???となってしまうのですが・・・
ドルが崩壊するより円の崩壊の方が早いってことなんでしょうか?
防衛する方法ってあるのでしょうか?

Re: そうなんですけど・・・

ドルが基軸通貨としての使用量(世界的な流通量)が急落したら米国はどん底に堕ちることになります。
その危険を避けるために量的緩和のゆっくりとした終了を始めたのですが、代わりに日本に強要し、次いでユーロに強要しました。
だからドルより先に円が崩壊するのは確実です。
現実を左右しているのは力の関係です。
私も危機感を持っていますが、庶民には防衛する手立てはありません。
ただ、物は売れなければ生産もできないので、窮乏化した消費者にある程度は無理矢理価格が合わせて均衡します。
生産者、小売も苦しいわけですが。
日本は小売りの寡占化が激しい方なので、生産調整、小売在庫調整が効き目を持つように思います。
つまり、店頭から商品が消えるときが、インフレの合図と思います。
売らなければ利益が出ないので、いずれ店頭に商品が戻りますが、そのときはもうかなり上がった価格ということ。これが本当のインフレですが、通貨価値の下落ですから、庶民の家計で事前の買いだめなどはインフレを煽るだけかとも思っています。

なるほど~!

なるほど~!
とても分かりやすい説明をありがとうございます。
私は、ニュースを見ても、肝心な事は全然知らされていないことに気づいてから、毎日北風さんのブログを読んで現実を理解しようとしています。

基軸通貨のドルが円より先に崩壊することはないのですね
でもいつか崩壊することが分かっている?のに、庶民には防衛手段が無いのは辛いですね・・・
情けないですが、店頭から商品が無くなる日が来ない事を祈ります。

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