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ピケティに聞く、不平等の歴史は政治の歴史、巨額な民間資産に累進課税を

ピケティ

   21世紀の資本論:ピケティに聞く“強権が必要になる金融資本主義”   朝日新聞デジタル  1/1  「世相を斬る あいば達也」から抜粋

“21世紀の資本論”
≪ 失われた平等を求めて 経済学者、トマ・ピケティ教授
自由と平等。民主主義の理念のうち、自由がグローバル時代の空気となる一方、平等はしばらく影を潜めていた。
 だがその間、貧富の差や社会の亀裂は拡大し、人々の不安が高まった。そこに登場したのが大著「21世紀の資本」。不平等の構造をあざやかに描いた著者のトマ・ピケティ教授は「私は悲観していない」という。

  ■競争がすべて?バカバカしい

 ――あなたは「21世紀の資本」の中で、あまりに富の集中が進んだ社会では、効果的な抑圧装置でもないかぎり革命が起きるだろう、と述べています。経済書でありながら不平等が社会にもたらす脅威、民主主義への危機感がにじんでいます。

 「その通りです。あらゆる社会は、とりわけ近代的な民主的社会は、不平等を正当化できる理由を必要としています。
 不平等の歴史は常に政治の歴史です。単に経済の歴史ではありません」

 「人は何らかの方法で不平等を正そう、それに影響を及ぼそうと多様な制度を導入してきました。
 本の冒頭で1789年の人権宣言の 第1条を掲げました。美しい宣言です。
 すべての人間は自由で、権利のうえで平等に生まれる、と絶対の原則を記した後にこうあります。
 『社会的な差別は、共同の利益に基づくものでなければ設けられない』。
 つまり不平等が受け入れられるのは、それが社会全体に利益をもたらすときに限られるとしているのです」

 ――しかし、その共同の利益が何かについて、意見はなかなか一致しません。

 「金持ちたちはこう言います。『これは貧しい人にもよいことだ。なぜなら成長につながるから』。
 近代社会ではだれでも不平等は共通の利益によって 制限されるべきだということは受け入れている。
 だが、エリートや指導層はしばしば欺瞞(ぎまん)的です。
 だから本では、政治論争や文学作品を紹介しながら社会が不平等をどうとらえてきたか、にも触れました」

 「結局、本で書いたのは、不平等についての経済の歴史というよりむしろ政治の歴史です。
 不平等の歴史は、純粋に経済的な決定論ではありません
 すべてが政治と選択される制度によるのです。
 それこそが、不平等を増す力と減らす力のどちらが勝つかを決める」

 ――最近は、減らす力が弱まっているのでしょうか。

 「20世紀には、不平等がいったん大きく後退しました。
 両大戦や大恐慌があって1950、60年代にかけて先進諸国では、不平等の度合いが19世紀と比べてかなり低下しました。
 しかし、その後再び上昇。今は不平等が進む一方、1世紀前よりは低いレベルです」

 「先進諸国には、かなり平等な社会を保障するための税制があるという印象があります。その通りです。
 このモデルは今も機能しています。しかし、それは私たちが想像しているよりもろい

 「自然の流れに任せていても、不平等の進行が止まり、一定のレベルで安定するということはありません
 適切な政策、税制をもたらせる公的な仕組みが必要です」

 ――その手段として資産への累進課税と社会的国家を提案していますね。社会的国家とは福祉国家のことですか。

 「福祉国家よりももう少し広い意味です。
 福祉国家というと、年金、健康保険、失業手当の制度を備えた国を意味するけれど、社会的国家は、教育にも積極的にかかわる国です」

 ――教育は不平等解消のためのカギとなる仕組みのはずです。

 「教育への投資で、国と国、国内の各階層間の収斂(しゅうれん)を促し不平等を減らすことができるというのはその通り。
 そのためには(出自によらない)能力主義はとても大事だとだれもが口では言いますが、実際はそうなっていません

 「米ハーバード大学で学ぶエリート学生の親の平均収入は、米国の最富裕層2%と一致します。
 フランスのパリ政治学院というエリート校では9%。米国だけでなく、もっと授業料の安い欧州や日本でも同じくらい不平等です」

 ――競争が本質のような資本主義と平等や民主主義は両立しにくいのでしょうか。

 「両立可能です。
 ただしその条件は、何でもかんでも競争だというイデオロギーから抜け出すこと
 欧州統合はモノやカネの自由な流通、完全な競争があれば、すべての問題は解決するという考えに基づいていた。バカバカしい

 「たとえばドイツの自動車メーカーでは労組が役員会で発言権を持っています。
 けれどもそれはよい車をつくるのを妨げてはいない
 権限の民主的な共有は経済的効率にもいいかもしれない。
 民主主義や平等は効率とも矛盾しないのです。危険なのは資本主義が制御不能になることです

  ■国境超え、税制上の公正を

 ――税制にしろ社会政策にしろ、国民国家という土台がしっかりしていてこそ機能します。国民国家が相対化されるグローバル時代にはますます難しいのでは。

 「今日、不平等を減らすために私たちが取り組むべき挑戦は、かつてより難しくなっています。
 グローバル化に合わせて、国境を超えたレベルで税制上の公正を達成しなければなりません
 世界経済に対して各国は徐々に小さな存在になっています。
 いっしょに意思決定をしなければならない」

 ――しかもそれを民主的に進める必要があります。

 「たやすいことではありません。
 民主主義の運営は、欧州全体という大きな規模の社会よりも、デンマークのような500万人くらいの国での方が容易です。
 今日の大きな課題は、いかにして国境を超える規模の政治共同体を組織するかという点にあります」

 ――可能でしょうか。

 「たとえば欧州連合(EU)。仏独が戦争をやめ、28カ国の5億人が共通の制度のもとで暮らす。
 そしてそのうちの3億人が通貨を共有する。ユートピア的です」

 ――しかし、あまりうまくいっているようには見えません。

 「ユーロ圏でいうと、18の異なった公的債務に、18の異なった金利と18の異なった税制。
 国家なき通貨は危なっかしいユートピアです。だから、それらも共通化しなければなりません

 ――しかし、グローバル化と裏腹に多くの国や社会がナショナリズムにこもる傾向が顕著です。

 「ただ、世界にはたくさんの協力体制があります。たとえば温室効果ガスの削減では、欧州諸国は20年前と比べるとかなり減らしました。
 たしかにまだ不十分。けれど同時に、協力の可能性も示してもいます」  

――あなたは楽観主義者ですね。

 「こんな本を書くのは楽観主義の行為でしょう。
 
私が試みたのは、経済的な知識の民主化。知識の共有、民主的な熟議、経済問題のコントロール、市民の民主的な主権、それらによってよりよい解決にたどり着けると考えます」

  ■民間資産への累進課税、日本こそ徹底しやすい

 ――先進国が抱える巨大な借金も再分配を難しくし、社会の不平等を進めかねません。

 「欧州でも日本でも忘れられがちなことがある。それは民間資産の巨大な蓄積です。
 日欧とも対国内総生産(GDP)比で増え続けている。
 私たちはかつてないほど裕福なのです。貧しいのは政府解決に必要なのは仕組みです」

 「国の借金がGDPの200%だとしても、日本の場合、それはそのまま民間の富に一致します。
 対外債務ではないのです。
 また日本の民間資本、民間資産は70年代にはGDPの2、3倍だったけれど、この数十年で6、7倍に増えています

 ――財政を健全化するための方法はあるということですね。

 「日本は欧州各国より大規模で経済的にはしっかりまとまっています。
 一つの税制、財政、社会、教育政策を持つことは欧州より簡単です。
 だから、日 本はもっと公正で累進的な税制、社会政策を持とうと決めることができます
 そのために世界政府ができるのを待つ必要もないし、完璧な国際協力を待つ必要もない。
 日本の政府は消費税を永遠に上げ続けるようにだれからも強制されていない。つまり、もっと累進的な税制にすることは可能なのです」

 ――ほかに解決方法は?

 「仏独は第2次大戦が終わったとき、GDPの200%ほどの借金を抱えていました。
 けれども、それが1950年にはほとんど消えた。その間に何が起きたか。当然、ちゃんと返したわけではない。債権放棄とインフレです

 「インフレは公的債務を早く減らします。
 しかしそれは少しばかり野蛮なやりかたです。つつましい暮らしをしている人たちに打撃をもたらすからです」

 ――デフレに苦しむ日本はインフレを起こそうとしています。

 「グローバル経済の中でできるかどうか。
 円やユーロをどんどん刷って、不動産や株の値をつり上げてバブルをつくる。それはよい方向とは思えません。
 特定のグループを大もうけさせることにはなっても、それが必ずしもよいグループではないからです。
 インフレ率を上昇させる唯一のやり方は、給料とくに公務員の給料を5%上げることでしょう」

 ――それは政策としては難しそうです。

 「私は、もっとよい方法は日本でも欧州でも民間資産への累進課税だと思います。
 それは実際にはインフレと同じ効果を発揮しますが、いわばインフレの文明化された形なのです。
 負担をもっとうまく再分配できますから。
 たとえば、50万ユーロ(約7千万円)までの資産に対しては0・1%、50万から100 万ユーロまでなら1%という具合。
 資産は集中していて20万ユーロ以下(※ 2000万円弱以下)の人たちは大した資産を持っていない。だから、何も失うことがない。ほとんど丸ごと守られます

 「インフレもその文明化された形である累進税制も拒むならば大してできることはありません」
 
    ◇  
Thomas Piketty 1971年フランス生まれ。パリ経済学校教授。米マサチューセッツ工科大学助教授などを経て現職。不平等の拡大を歴史データを分析して示した「21世紀の資本」(邦訳、みすず書房)は世界的な話題に。同書より前に著した論文は、金融資本主義に異議を申し立てた米ウォール街でのオキュパイ運動の支えになったともいわれる。

■取材を終えて 論説主幹・大野博人
 「格差」の問題を語るとき、英語やフランス語ではたいてい「不平等」という言葉を使う。ピケティ氏もインタビューでは「in●(eに鋭アクセント付き)galit●(eに鋭アクセント付き)=(不平等)」を繰り返していた。
 同じ状態を指すにしても、「不平等」は、民主主義の基本的な理念である「平等」を否定する言葉でもある。これがはらんでいる問題の広さや深刻さを連想せずにはおれない。

 「不平等」の歴史をたどり、その正体を読み解いて見せた「21世紀の資本」が、経済書という役割にとどまらず、著者自身が述べているように政治や 社会について語る書となっていったのは当然かもしれない。
 また、読者も自分たちの社会が直面する問題の本質をつく説明がそこにあると感じたのではないか。
 同氏は資本主義もグローバル化も成長も肯定する。平等についても、結果の平等を求めているわけではない。
 ただ、不平等が進みすぎると、公正な社会の土台を脅かす、と警告する。

 そして、平等を確保するうえで必要なのは、政治であり民主主義だと強調する。政治家や市民が意識して取り組まなければ解決しない、というわけだ。
 たとえばインタビューで、フランスが所得税の導入で他国より遅れ、不平等な社会が続いたことを例にあげ、「革命をしただけで十分」と考えて放置してきたからだ、と指摘していた。

 この考えは、財政赤字の解決策としてインフレと累進税制を比較したときにもうかがえた。
 インフレ期待は、いわば市場任せ。それに対して累進税制も民間の資金を取り込むという点では同じ。
 だが、だれがどう払うのが公正か、自分たちで議論して考えるという点で、「文明化された」インフレだ
という。

 つまり、自分たちの社会の行方は、市場や時代の流れではなく自分たちで決める。「文明化」とはそういうことも指すのだろう。

 「不平等」という言葉の含意をあらためて考えながら、日本語の文章での「格差」を「不平等」に置き換えてみる。
 「男女の格差」を「男女の不平等」に、「一票の価値の格差」を「一票の価値の不平等」に……。
 それらが民主的な社会の土台への脅威であること、そして、その解決を担うのは政治であり民主的な社会でしかないことがいっそう鮮明になる。
 ≫
 ーーーーーーーーーーーーーー
   仏経済学者、国家勲章受章を拒否 著書が世界的ベストセラー  1/2  琉球新報

 【ブリュッセル共同】フランス公共ラジオは1日、著書「21世紀の資本」が世界的なベストセラーとなった同国の経済学者トマ・ピケティ氏が、フランス政府によるレジオン・ドヌール勲章の受章を拒否する考えを示したと報じた。
 ピケティ氏は「誰が名誉に値するか決めることは政府の役目とは思わない。政府は経済成長を回復させることに専心すべきだ」と述べたという。
 フランス政府は1日の官報で、ピケティ氏に対し同勲章の5等、シュバリエ章を授与することを発表。今回はほかに、昨年のノーベル経済学賞を受賞した同国の経済学者ジャン・ティロール氏らが勲章授与の対象となっている。
 ーーーーーーーーーーーーーー
※ トマ・ピケティに関するページ。

保守派が脅える「21世紀の資本論」クルーグマン
例えば「過剰所得没収課税など:クルーグマン
資本主義と民主主義:エドソール
ピケティ、拡大の一途を辿る格差:NYタイムス
金持ちは税金を、労働者は公正な賃金を:クルーグマン
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コメント

理想主義的すぎる。
経済をグローバル化するなら、税制も労働運動もグローバル化させなければ成らない。
しかしそれは現実として不可能に見える。

従って超過利潤はタックスヘイブンや税制の抜け道へと逃げて行くでしょう。
国自体が不正の蓄財に関与して居ると暴露される中(ルクセンブルク)、上手く行くとは思えない。

もっと簡素で実現可能な方法を考えなければと思います。

本は未読ですが。

こんにちは。
私はピケティの本は未読ですので軽率な感想になるかもしれませんが,ご容赦ください。
日本でピケティを紹介している人たちが説明不足なのでしょうか。政府や税制のあり方を見直せば,ほんとうに社会が平等・公正に近づき,国がうるおうのか,私としてはいくぶん懐疑的ではあります。
この朝日の記事も,フランスでは高級官僚以外の公務員の給料は,日本の半分にも満たないわけで,あまりに雑な紹介だと思っています。
それでは,本年もどうぞよろしくお願いいたします。

Re: 本は未読ですが。

「21世紀の資本論」は私もまだ読んでいません。
日本では、とても経済学者とは考えられない評論家がブームに乗ろうと紹介しています。
このブログで紹介した中ではNYタイムスの記事が良いと思っています。
市場経済が拡大成長を続けると不平等が階級的に固定されて、経済成長以上に大資本家階級の利益率が上がり続けることは19世紀末ころから、循環恐慌論として指摘されてきました。
ところが第二次大戦後は、経済成長に伴って格差は、つまり分配は平均均衡に収れんして収まるといった考えが西側世界の主流となっており、「先富論」や「トリクルダウン論」もその派生です。
ピケティの成果は、これを300年近い税務データから「実証的に」覆してみせたことにあると思います。
「主張」ではなく「実証」してみせたことに意義があると思うのです。
ではどうするのか。
民主制度は一握りの巨万の富者と、圧倒的な貧困者では勝負になりません。
民主制度を崩壊に導きつつある「不平等」をなくさなければ、せめて緩めなくては民主制度が機能しなくなってしまうのは明らかです。
国際的な巨大民間資産への累進課税といっても、EU、ユーロの世界ではなかなか困難です。
社会主義的な資本規制の可能な単独主権国家にはまだ展望があるでしょう。
ピケティのいうとおり、EUなどに比べれば日本は地政的には大いに可能性があります。
10年以上くらいの長期で強力な政権が大胆に遂行すればですが、そのためには2つの条件があるでしょう。
ひとつは権力者が強力なだけでなく、多方面の見識を備えた「心のまともな人格」であること。
ふたつめには宗主国アメリカの妨害、恫喝に屈しない独立権力であること。
日本の政治家共の「暴言」「無能」「米国屈従」を考慮するなら、可能性はあまり無いと思います。
しかし、世界では経済政策としての所得と資産の強制再分配は、小はアイスランドから大はBRICSまで、可能性があると思います。

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