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企業や家計にとって朗報の原油安を 円安で打ち消す日銀の奇怪:野口

   企業や家計にとって朗報の原油安を 円安で打ち消す日銀の愚策   野口悠紀雄  12/25  ダイヤモンド・オンライン

 円安が進み、他方で原油価格が下落している。

 日本銀行が掲げる2%インフレ目標にとって、円安は追い風だが、原油安は向かい風だ。

 シミュレーション分析を行なうと、1ドル140円程度の円安になっても、あるいは原油価格が1バーレル90ドル程度にまで回復しても、2015年度中の消費者物価上昇率の平均は2%に届かない。

原油価格の低下は、国民生活や産業活動にとって望ましいことである。
 しかし、日銀はそうした効果を円安で打ち消そうとしている。
 これほど愚かしい行動は考えられない


  原油価格下落の基本的原因は米金融緩和策の終了

 重油価格の長期推移を見ると、図表1のとおりだ。

1980年代の後半から99年後半まで、1バーレル20ドル程度でほとんど変化がなかった。この間に欧米経済は空前の繁栄を経験した。

 しかし、2005年頃から、供給減少を伴わない原油価格の高騰が始まった。
 05年に50ドルを超え、08年に100ドルを超えた。これは、「第3次オイルショック」と呼ばれることもある。
 中国など新興国の需要が増えたからと言われたのだが、長期的なトレンドから言えば、このときの上昇のほうが例外的だ。

 その後、リーマンショック後の08年9月下旬頃からわずか2ヵ月で、原油価格は半分程度にまで落ち込んだ。
 しかし、11年頃に再び100ドルの水準に復帰した。そして、14年秋からの大暴落だ。

 原油価格下落の原因として、供給過剰や、石油輸出への依存度が高いロシアの締め上げが目的だとする指摘もある。

 しかし、基本的な理由は、世界的な投機資金の動きが変わったためだろう。
 08年に原油価格が急上昇したのは、それまで証券化商品に投資されていた投機資金が、原油などのコモディティに移動してきたからだ。
 そして、今回の原油価格下落は、アメリカの金融緩和政策の終了によって、投機資金が原油から引き揚げられた結果だ。

 現在の水準は、02年頃からの上昇トレンド(これは、世界的な需要の増加によるものだろう)に乗っている。つまり、長期的なトレンドからすれば、決して低すぎるわけではない。
 そうだとすると、低位安定が続く可能性がある。

1原油長期

  日本経済にプラスになる事態を日銀が打ち消そうとする

 総務省が11月28日発表した10月の全国消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合指数(コア指数)で、上昇率が0.9%となり、増税後初めて1%割れとなった。
 なお、ここでは、消費税増税による物価の押し上げ要因(日銀の試算によると、4月は消費税転嫁が遅れるため1.7%ポイント、フル転嫁をした場合では2.0%ポイント)を除いている。

原油価格の下落は、企業や家計にとっては、いうまでもなく朗報だ。
 ガソリン、灯油、電気料金などの値下がりで、負担が軽減される
からだ。

 アメリカのガソリン価格(U.S. Gulf Coast Conventional)は、ガロンあたりドルで、11月に1.994ドルだったものが12月第2週で1.504ドルになったので、24.57%もの下落だ。13年12月には2.429ドルだったので38.08%もの下落だ。

 ただし、この変化はまだ消費者物価の統計には表れていない。

日本の10月の消費者物価指数でも、ガソリン価格は対前年比で4.1%の上昇だ(ただし、前月比は、マイナス1.6%)。

 日本でも、ガソリン価格は下がっている。14年12月15日のガソリン価格(レギュラー)が152.4円、13年12月16日が157.7円なので、3.36%の下落だ。
 消費税の影響2%を加えれば、5.3%の下落になる。
 アメリカほどの減少にならないのは、いうまでもなく、円安のためだ。

 なお、ガソリンは消費者物価指数でのウエイトは0.0229%なので、これによって0.1%ほど消費者物価が下がることになる

 なお、消費者物価指数での「エネルギー」のウエイトは1万分の772であり、10月は前月比0.8%の下落となった。

 一方、日銀は、13年4月の異次元緩和導入時に「2年程度の期間を念頭において消費者物価の前年比上昇率を2%にする」との目標を掲げているが、原油価格低下によって、この目標は遠のく。
 企業や家計にとって望ましい変化を日銀だけが喜べない事態となっている。
 日銀は、このため、追加緩和を行なった。
 日本経済にとってプラスになる事態を打ち消そうとするのは、誠にもって奇怪な事態だ。
 仮にそれによって消費者物価上昇率が2%を超えたところで、経済には何らプラスの影響はない

 しかも、次項で見るように、2%目標の達成自体がほぼ不可能と考えられるのである。

  輸入物価不変なら、来年度の平均消費者物価上昇率は0.88%

 以下では、今後の消費者物価指数伸び率の予測を行なおう。

 為替レートの円安率、輸入物価指数伸び率と消費者物価伸び率の推移は、図表2に示すとおりだ。これらの間には、強い相関がある。

 為替レートと輸入物価指数は、東日本大震災で急激な火力発電シフトが起きて発電用燃料の輸入が急増した2011年を除けば、極めて強く相関している。

 輸入物価指数と消費者物価指数の間にも相関がある。
 ただし、11年頃にはやはり発電用燃料の輸入に関連して相関が崩れている。
 また、輸入物価指数の変化が消費者物価指数に及ぶには、6ヵ月程度の時間遅れがある。これは、転嫁に時間がかかるからだろう。

円安輸入物価消費者物価

図表3には、13年1月以降の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合。消費税の影響を除いたもの)と、6ヵ月前の輸入物価上昇率の10分の1を対照して示す(例えば、14年10月のところには、同年4月の輸入物価上昇率の10分の1が示してある)。

 6ヵ月前の輸入物価上昇率の10分の1は、現実の消費者物価上昇率をかなりうまく説明している。
 すなわち、13年春にプラスに転じ、秋には1%を超え、14年の前半にピークに達したこと。
 しかし、14年の秋頃から上昇率が低下したこと、などを説明している。

 そこで、以下では、「6ヵ月前の輸入物価上昇率の10分の1」によって消費者物価上昇率を予測することにする(なお、ドルベースのガソリン価格の変化は、ほぼ時間遅れなしに国内消費者物価に影響する。ただし、そのウエイトは1万分の229とさほど大きくないので、ここでは無視することとした)。

 原油価格や為替レートが分かっているので、12月の輸入物価指数は推定できる。結果は、127.8となる。

 6ヵ月のタイムラグがあるので、15年5月までの消費者物価上昇率は、輸入物価指数の実際のデータと12月の推計値を用いてかなり正確に予測できる(図表3参照)。

6月前輸入物価消費者物価

 それによれば、15年4月の対前年比消費者物価上昇率は0.41%だ。
 すなわち、13年4月に行なった「今後2年間で消費者物価上昇率を2%にする」という目標は達成できない可能性が高い。

 その後の消費者物価がどうなるかは、今後の為替レートと原油価格の推移による。

 最初に、基準ケースとして、輸入物価指数が14年12月の値から不変である場合を考えよう。この場合の結果は、図表4のようになる。

 15年5月頃までは対前年比0.5%近い値が続くが、6月頃から下落し、マイナスになる月もある。

 15年度中に2%を超えることはない。15年度中の平均伸び率は、0.88%に留まる。

 これが変わるのは、円安がさらに進むか、原油価格が上昇する場合だ。

輸入物価不変の消費者物価

  140円まで円安が進んでも、2%伸びは達成できず

 そこで、代替シミュレーションを行なおう。

 まず、円安が進む場合を考えよう。
 現実の円ドルレートは、2014年9月初めの1ドル105円程度から12月初めの120円まで3ヵ月で15円円安になった。
 将来もこのペースでの円安が進み、15年4月の円レートが1ドル140円まで円安になる場合を考える。
 なお、原油価格は、14年12月中旬の1バーレル67.18ドルのままであるとする。

 輸入物価指数の対前年同月比は、14年12月には-0.96%にまで落ち込んだが、その後上昇し、15年3月以降は二桁の伸びとなる。これは、13年5月から14年1月までと似た状況だ。

 消費者物価上昇率の推移は、図表5に示すとおりだ。

 15年7月から上昇し始め、10月以降は1.5%を超える。しかし、2%には至らない。15年度の平均上昇率は1.13%である。

ドル140円の消費者物価

 もう1つの代替シミュレーションとして、原油価格が上昇する場合を考えよう。具体的には、原油価格が12月中旬の1バーレル67.18ドルから、15年4月に90ドルになる場合を考えよう。

 このとき、輸入物価指数は、15年4月には、14年12月の1.10倍になる。12月の輸入物価は127.8なので、4月は141.0だ。輸入物価が4月以降は二桁の伸びとなる。

 消費者物価上昇率は、図表6のとおりだ。

 7月から上昇し始め、10月以降は1%を超える。しかし、2%には至らない。
 年度の平均上昇率は0.74%に留まる。

原油90ドルの消費者物価
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