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ヨーロッパの本心:ルキヤノフ

欧州

ヨーロッパの本心
2014年12月22日 フョードル・ルキヤノフ, 外交・防衛政策会議議長  ロシアNOW

12月はその1年をふり返る月であるが、2014年の総括は難しい。
ウクライナ情勢、中東の「イスラム国」、原油安を招いた石油輸出国機構(OPEC)の思惑のいずれも現在進行形であり、依然として先行き不透明である。
同時に、一つの時代が四半世紀を迎えている。

 25年前の1989年12月18日、「ヨーロッパにおける社会主義陣営の終わり」という時代劇の最終エピソードが始まった。
 ルーマニアでは、22年間国を支配していたニコラエ・チャウシェスクに対する、大規模な反対デモが勃発。ポーランド、ハンガリー、東ドイツ、チェコスロバキア、ブルガリアなど、東側全体ですでに、平和的な変革が起こっていた。
 ルーマニアは悲劇的な例外であった。国家元首であるチャウシェスクと夫人は、「革命時代の法則に従い」、射殺された。

  社会主義陣営の終わりから25年

 あれから25年が経過し、これらのできごとが、「アラブの春」やウクライナの独立広場と比較されながら、ひんぱんに想起されている。
 2011~2014年に起きていることの性質を考えると、ビロード革命とは呼べないものの、ルーマニアにはある程度近いと言える。
 ルーマニアはその社会的、政治的な条件において、他の国ほど民主的変革への準備ができていなかったが、北大西洋条約機構(NATO)、欧州連合(EU)という欧米組織の拡大の波に飲み込まれた
 それらの組織に加盟すると、現代的な民主主義規範に従って社会および国家を変えることを余儀なくされる。
 ルーマニアの変革は成功したとは言えないが、規範に従うことで、過去の嫌な政治現象に戻ることが抑えられる。

 それでもすべてがスムーズとはいかない。
 最近退任したばかりのトラヤン・バセスク元大統領は民族主義的なポピュリストの代表格であったし、隣国のハンガリーではヴィクトル・オルバン首相が、ほぼすべての分野でEUの公式な方針に反するような路線をとっている。
 もっとも、欧州大西洋組織という抑止力がなければ、民族主義的ムードや報復主義的ムードははるかに強かったであろうが。

 中東、ウクライナに対しては、その抑止組織が仲間意識を持っていない
 ヨーロッパもアメリカも、中東やウクライナの情勢を世界の民主化の波の一部と見なしながら同情したが、「自由の勝利」国として西側社会へ加えるような話は出さなかった

 中東や北アフリカの場合、それは理解可能である。違いが明白だからだ。
 もっともEUがそれらの国を近隣プログラムに含め、パトロンの役を買って出ることを、これらの地域が妨げるようなことはなかったが。
 重大な危機が発生してみると、ヨーロッパにはほとんどツールが存在しないことが判明した。

  EUがウクライナを仲間に入れない理由とは

 ウクライナについては不可解である。
 それは統合が提案されるはずの国家圏に、ウクライナが明らかに収まっているためだ。
 連合協定のようなEU側の義務が発生しない中間形式ではなく、1990年代、2000年代に中央ヨーロッパおよび東ヨーロッパであったような通常プロセスの話、また条件がそろった場合(受け入れ側の裁量で範囲が広がることは明白だが)に自動的に加盟できる、候補国の地位獲得の話である。

 EUが(依然として)ウクライナを仲間に入れない理由とは何なのだろうか。
 ウクライナはまだ準備ができていないといった主張に説得力はない。アルバニアはEU加盟候補国になっているのだから。
 ヨーロッパ人は「ロシアを刺激したくなかった」と言うのが好きだが、それは本音ではない。
 本当にどこかの国の加盟を望んでいるのであれば、ロシアの意見など取るに足らぬものであろう。

 ヨーロッパは昔からあることを認識していた。
 それはウクライナが非常に問題の多い国であり、加盟の基準に到達するためには、並々ならぬ努力を要することを。(※ 端的に言い切ればそのすさまじいほどの汚職、利権の政治体質と途方も無い闇経済。)
 だが懐疑的な態度は何よりも、ウクライナがヨーロッパ領域の自然かつ不可欠な一部であるというはっきりとした感覚が、ヨーロッパにないことと関係している。

  敵の敵は味方か

 EUの積極的な政策とは、ウクライナを仲間に入れたいというヨーロッパ諸国の気持ちからきているものではなく、ロシアに対する反感からきているものであり、それがウクライナのドラマなのである。
 連合は裏目に出た。ロシアとEUの対立の結果、ウクライナは以前よりもEU加盟から遠のいている。
 ヨーロッパは起こっていることに呆然とし、この危機によって生じる自分たちのコストをいかにして最小限に抑えるかについてばかり考えている。

 2014年の主なポイントとは、おそらく、これまでの四半世紀と同様、可能性の限界が見えたということではないだろうか。
 EUが自分たちへのダメージなしにこれ以上拡大することは無理であり、非加盟国にかかるコストは、EUのふところに合わない。
 ロシアは自国の国境に沿って非友好的な統合体が広がるのを妨げることもできる。
 だが本腰を入れるほどのことではない


 ウクライナや「中間」国にとって、これは悪いニュースである。
 そしてある結論に達するべきである。
 それは対立をあおるのではなく、むしろ協力に寄与するということ。
 今のところ、起こっていることは逆である。
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