フランス、機動隊が抗議参加者を殺害
2014-11-26

「機動隊はフランス人を殺すな」: ダム建設反対デモとある青年の死/ルモンド紙&フランス国際放送(11月13日・14日) 11/16 「フランス猫のNewsWatching」から
2011年の福島原発事故以降、日本国内では市民による平和的デモが頻繁に組織されるようになりました。
フランスではデモによる意見の表明が民主主義の根幹をなす市民の権利として法律で保障されています。
しかし10月に起きた機動隊によるデモ参加者殺害事件は国内に大きな波紋を広げています。
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催涙りゅう弾 237発
瞬間炸裂催涙りゅう弾 38発
攻撃用手りゅう弾 23発
護身用の銃弾 41発
10月26日夜、環境保護を訴えシーベンにおけるダム建設に反対するデモに参加していた21歳の青年、レミ・フレッスが機動隊の発射した攻撃用手りゅう弾によって死亡した前後の3時間に機動隊が使用した弾薬の数だ。
フランス政府が公表した。
レミ・フレッスが死亡しているのが確認されてからの48時間、フランス政府と機動隊本部は「状況を確認中」と繰り返し沈黙を守り続けた。
レミ・フレッスの検死で死因が機動隊の手りゅう弾によるものと確定してからも、ベルナール・カゼヌーヴ内務大臣は機動隊の責任を否定し続けて来た。
しかしルモンド紙が11月12日、青年の死亡直後の機動隊員らによる大声での会話を録画したデモ参加者のビデオの内容を報道した直後、カゼヌーヴ内務大臣は機動隊による手榴弾の使用禁止を発表した。
ビデオには次の会話が録音されていた。
「死んじまったよ、こいつ。。。 おい、とんでもないことになったぞ。」
内務大臣はフレッス氏が死亡に至った状況について事件直後は知らされていなかったとして、自らの辞任を求める声には沈黙している。
フランス各地の高校生及び大学生による学生の自治組織は、機動隊による市民への暴力禁止を求める大規模な平和的デモを行った。
「機動隊はフランス人を殺すな」
「市民に武器を使うな」
このようなプラカードにまじって、次のようなメッセージもあった。
「レミ、僕らは君を忘れない」
中立を意識しこれまで口を閉ざしていたレミ・フレミスの両親は、いつまでも責任者を明らかにしようとしない政府に対し、裁判に踏み切った。
「手りゅう弾の使用を禁止するだけでは十分ではありません。」
「政府トップの誰が命令を出したのか。政府は真実を明らかにしてほしいと思います。」
切実な思いは、まだ届いていない。
(複数の記事から抜粋し一部編集しています)
●元の記事:「ベルナール・カゼヌーブ内相、機動隊による攻撃用手榴弾の使用を禁止」/ルモンド紙(11月13日)
http://www.lemonde.fr/planete/article/2014/11/13/mort-de-remi-fraisse-bernard-cazeneuve-annonce-l-interdiction-des-grenades-offensives_4523447_3244.html
●フランス24時間(フランス国際放送)11月13日・14日号
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市民のレジスタンス 10月30日付リベラシオン紙。 11/14 「Ovni nav」からi
フランス南西部タルヌ県の湿地帯、テスク渓谷で建設が進んでいたシヴァンス・ダム建設反対派の一人、植物学専攻のレミ・フレスさん(21)が10 月25日深夜、機動隊の手榴(りゅう)弾が背中に当たり即死。
翌日フレミさん追悼のデモが各地でくり広げられ11月1-2日、トゥールーズ、ナント、パリでも数百人の反対過激派が官憲と衝突、パリだけでも50人余を逮捕。
緑の党デュフロ前住居相などは、官憲による活動家の殺害と警備隊の行き過ぎに対しカズヌーヴ内相の辞任を要求。
20年前からタルヌ県議会が全面的に支持し押し進めてきたシヴァンス・ダム計画は、13ヘクタールにおよぶ150万m3規模のダム。
水を大量に必要とするトウモロコシ栽培者は約30軒にすぎず建設費用は840万ユーロ(国家50%、EUの30%、残りは地元の負担)にのぼる。
同建設に反対する環境保護グルーブZAD(Zone à Défendre : 反対派活動家は Zadistes)は、建設用地にやぐらを建て(成田空港建設反対場面を思わせる)テントを張り占拠する。
この湿地帯にせい息する生物は90種余あり、大企業による産業化などでフランスは年間約6万ヘクタールの自然地帯を削減、1960〜90年の工業化や都市化により全国で50%を喪失。
政府は、ダム建設を地方分権化の一貫として地域圏・県議会に一任し、あまり関知してこなかったよう。
ロワイヤル環境相が2人の専門家に依頼した同計画の評定によると、ダムの規模が35 %も過剰とし、数カ所に共同で利用できる貯水池(個別の貯水池は185カ所に現存)の建設を提案。
11月4日、環境相は県会議員や農業組合、環境保護団体代表との会議で、この計画は撤回しないが工事を一時中止し、代替策を暮れまでに決めると表明。
だが工事を進めてきた建設会社や農業関係者らへの損害賠償問題なども残る。
もう一つ、住民とエコロジー派が反対し長年闘っているものに、ナント郊外のノートルダム・デランド空港の建設計画がある。
構想は1968年に発し、建設が実現すれば2017年に開港の予定だった。
すでにあるナント・アトランティック空港の飽和状態を緩和するためだったが、反対派は現存する空港の拡大・改造を考えるべきだと主張する。
一方、地域圏・県議会議員は、新しい空港建設による地元の活性化を期待する。
20年以来続くダム建設計画やノートルダム・デランド空港建設への反対運動が激化するなかで、参加する若者たちは、彼らの行動を市民レジスタンスとみなす。
ダムや空港、TGV網の建設計画を県・地域圏議会が多数決で「公益のため」として決定し、住民が知らぬ間に工事が進み、住民や自然保護団体が立ち上がった時には、官憲の催涙弾が立ちはだかる。
政府が賛同する公益が建前の地方議員の独断と民意の隔離が浮き彫りに。
生産性促進のためテクノロジーを優先し、自然を踏みにじる国権によるレミ・フレスさんの死を、哲学者エドガール・モランは「文明との闘いのシンボル」とみなす(Le Monde 11/5) 。エコロジーというイデオロギーをこえて、国策に対する市民レジスタンスといえよう。
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※ 北風:レジスタンスという位置づけが重要なのは、もちろん第二次大戦のナチスドイツ支配に武装して抵抗した行動、そうした行動者をこそ、正義、愛国者とするからである。
フランス、ロシア、ギリシャ、イタリア、チェコ、ポーランド、オランダ、ノルウェーなど多くの国で「レジスタンス」の言葉は英雄、正義、勇気、犠牲的行為などの意味で生きている言葉である。
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コメント
強い社会を
恐怖支配とその下での抵抗運動(レジスタンス)を経験した社会では、異議を唱えること、抗議行動、抵抗することなどは民主制度に不可欠の基調な要素として考えられています。
ネオナチなどの極右派以外は、右派も左派も主権在民たるその主権の行使として尊重されているのですが、日本では社会にその自覚が薄いのが困ったことです。
秘密保護法なるものですが、自覚の薄いおまかせ国民と、まるで意識の薄い官僚支配では、なんですかね?
気持ちの悪いグロテスクな運用というか、恣意的で腐った社会づくりになるのでしょう。
強権政治などというものは、そんなことを、国民利害に反する行為などは許さないという、強い社会があれば実行できないのですが。
沖縄の住民社会に学び、権力に対して強い国民社会を作らねば、と思います。
個人個人に分解されてバラバラに状態のままでなく、郷土愛でも、勤労階級意識でも良いのですが、権力に対抗する、つながりと連帯の社会性を強めなければと思います、
ネオナチなどの極右派以外は、右派も左派も主権在民たるその主権の行使として尊重されているのですが、日本では社会にその自覚が薄いのが困ったことです。
秘密保護法なるものですが、自覚の薄いおまかせ国民と、まるで意識の薄い官僚支配では、なんですかね?
気持ちの悪いグロテスクな運用というか、恣意的で腐った社会づくりになるのでしょう。
強権政治などというものは、そんなことを、国民利害に反する行為などは許さないという、強い社会があれば実行できないのですが。
沖縄の住民社会に学び、権力に対して強い国民社会を作らねば、と思います。
個人個人に分解されてバラバラに状態のままでなく、郷土愛でも、勤労階級意識でも良いのですが、権力に対抗する、つながりと連帯の社会性を強めなければと思います、
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そして来月施行の特定秘密保護法案で、現場でネットで合法的に取り締まれるということでしょうか。