円安破綻への道
2014-11-22

量的緩和の弊害 円安の弊害 前半 11/20 闇株新聞
安倍首相の解散発言から一夜明けた本日(11月19日)、日銀は金融政策決定会合で前回(10月31日)決定された追加緩和を維持すると決定しました。
前回では反対票を投じた金融界・産業界出身の4名の審議委員のうち、野村證券出身の木内委員だけは「追加緩和前の金融緩和が適当」として引き続き反対したものの、他の3名はあっさりと賛成に転じてしまい、結局は8:1の可決となりました。
黒田総裁は会合後の記者会見で「政府に持続可能な財政構造への取り組みを期待する」とだけ述べ、一応は「大人の対応」を示しました。
消費増税の実施が2017年4月まで延期されるので、今月(11月)から数えると2年半先となります。
常識的には消費増税が実施される前に量的緩和を縮小・終了させることは考えにくく、また日銀はこれから年間80兆円もの「長期国債」残高を増加させるので、ここから2年半で200兆円もの「長期国債」が増えてしまうことになります。
日銀のいう「長期国債」とは発行時に割引短期国債ではない利付国債のことで、償還までの残存年数が短くなった国債も含まれます。
もちろん日銀はその間に償還される「長期国債」も再投資して、さらに200兆円もの残高を積み上げるわけです。
ちなみに10月末の日銀の「長期国債」残高は187兆円なので(これ以外に割引短期国債が53兆円あります)、これが2017年4月には387兆円になり、割引短期国債の保有残高を加えると日銀は450兆円近い国債を保有することになるはずです。
その時点の日銀券発行残高(10月末は87兆円)は予測不能ですが仮に100兆円とすると、日銀にとって外部負債である当座預金残高(10月末は167兆円)は350兆円くらいになるはずです。
まさに「化け物のような巨大なヘッジファンド」となります。
一般的には国債利回りが急上昇すると日銀に巨額の評価損が発生すると心配されていますが、これだけ日本の潜在成長率が下がっているなかで長期金利(長期国債利回り)だけが上昇することはありません。
また「長期国債」の年間純増額は32兆円ほどで、2年半では80兆円ほど増加するだけです。
そこへ2年半で200兆円もの「長期国債」を買い入れれば、需給関係からも国債利回りは上昇しません。
つまり問題は利回りが上昇して日銀に巨額の含み損が出てしまうことではなく、全く逆に国債利回りが上昇しない(国債利回りが低いままである)ことなのです。
10月31日の追加緩和では、日銀が買い入れる「長期国債」の平均残存年数を従来の7年程度から7~10年に最大3年延長することにしました。
仮に最長の10年だとしても、日銀が保有する国債の平均利回りは0.5%程度ということになります。
それに日銀は当座預金に0.1%の利息をつけて残高を維持しているため、「化け物のような巨大なヘッジファンド」であるだけではなく「きわめて低収益で財務基盤が危なっかしいヘッジファンド」でもあります。
実体経済にとっても長期金利の水準が低いということは日本全体の投資収益や事業収益の水準が大変に低いことになり、海外から日本への投資資金の流入が増えるはずがなく、何よりも日本から巨額の資金が海外に流出してしまうことになります。
日銀当座預金とは銀行の余剰資金を日銀が吸い上げているだけなので、日本から資金がどんどん海外に流出してしまうと、その残高を維持することができなくなります。
そうなると日銀は保有国債を売却せざるを得ず、今度こそ国債利回りが急上昇することになります。
つまり日銀が国債をどんどん買い入れると国債利回りが低下し、それが日本の投資収益や事業収益の水準を引き下げて景気をさらに悪化させ、
ひいては資金がどんどん海外に流出してしまい1000兆円もの公的債務を支えられなくなります。
このような状態を「財政破綻」といいます。
要するに「日銀が異次元に国債を買い入れていると財政破綻が近づく」のです。
実は日銀の国債買入れで長期金利が低下することより、円安の方がもっともっと恐ろしいのですが、ここからは次回(後半)です。
後半
本日(11月20日)夕刻に円安が加速し、一時1ドル=118.96円、1ユーロ=149.14円となりました。
10月30日のNY終値が1ドル=109.21円、1ユーロ=137.74円だったので、やはり翌31日に突然発表された追加量的緩和の影響が大きいようです。
量的緩和についてはFRBが10月末に打ち切り、ECBは今も導入していない中で、日銀の積極緩和だけが際立っているからでもあります。
さて昨日付け「同題記事 前半」では、主に量的緩和の直接的弊害について書きましたが、本日はその結果引き起こされる円安の弊害についてです。
日銀を含む旧大蔵省の基本的な考え方は、「異次元」量的緩和で円安・株高・長期金利低下を演出すれば経済回復効果があるはずで、消費増税を強行しても問題がないということです。
また財政状況の改善には「まず増税ありき」で、「経済を回復させて税収が増加するまで待つ」との発想はほとんどありません。
しかし現在の日本では、何をさておいても「1000兆円の公的債務残高の安定的ファイナンス」を最優先に考えなければなりません。
たかだか年間数兆円の消費増税のために(株高はともかくとしても)円安と長期金利低下を演出して、その結果1000兆円もの公的債務全体の安定的なファイナンスを危うくしているとは全く考えていないようです。
つまり「現在の」日本は、経済・金融政策の優先順位を完全に間違っていることになります。
「現在の」とした理由は、ここ1~2年は潜在成長率の趨勢的な低下、それに合わせてインフレ率と長期金利の低下、さらにその結果としての株高が世界的傾向だからです。
つまり「現在は」直接的に経済活動を刺激する経済・金融政策ではなく、世界中から投資資金を自国に呼び込み、同時に自国から資金が海外に流出してしまわないような経済・金融政策が必要なはずです。
そう考えると現在の日本は、「異次元」からさらに追加した量的緩和で日銀が「巨大で脆弱なヘッジファンド」になり、その日銀が発行する「円の劣化」が最近の円安加速の本質的な理由のような気がします。
そして長期金利(長期国債利回り)の低下は、日本の投資収益・事業収益全体の水準を押し下げ、それがさらなる景気低迷と長期金利低下を招き、完全に負のスパイラルに入っています。
(※ デフレ縮小循環のこと。)
つまりデフレから脱却するための量的緩和が、実はデフレ・スパイラルを引き起こしているのです。
その中でも円安が最大の弊害となります。
値下がりを続ける「円資産」に積極的に投資する外国人投資家は少なくなり、何よりも日本の個人金融資産が海外に流出してしまい、あっという間に1000兆円の公的負債を安定的にファイナンスできなくなってしまいます。
つまり円安は財政破綻への近道なのです。
もはや一刻の猶予もなく即刻この円安を止めるだけはでなく、緩やかな円高トレンドに戻す必要があります。
幸か不幸か最近の円安加速で、多少円高になってもまだまだ「大変な円安」です。
具体的には、「2%の物価上昇目標」を下ろし、「行き過ぎた量的緩和」を大幅に減額し、代わりに「毎年2%の円高目標」を掲げます。
こうすると0.4%台の10年国債利回りが、米国10年国債利回りよりも高い2.4%台となり、少なくとも国内から海外への急激な資金流出が止まります。
弊害もたくさんありますが、日本があっという間に財政破たんしてしまうリスクは回避できるはずです。
そんな無茶な?と考えられると思いますが大真面目です。
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※ 基軸通貨ではなく、ユーロのような広域決済通貨でさえ無い日本円を過剰供給して国債を通貨に転換する。
政府と中央銀行が自らの通貨を減価、信認毀損するという暴挙が行われている。
その分は急速にドル圏に流出し、米国の金融緩和終了の引き継ぎとしている仕掛けだ。
ユーロでさえしないことを黒田日銀は始めてしまったわけだ。
通貨の過剰供給は、一応世界に無限に近い需要のあるドルでさえ、減価を恐れて6年あまりで終了せざるを得なく、属国日本に通貨の過剰供給を指示したわけだ。
為替市場は円売りが始まっている。
円通貨の崩壊までは、もうじきだろう。来春には恐ろしい円安地獄になっていることだろう。
来春以降は窮乏と倒産、社会不安が充満するわけだ。
米国は、そのために日本を無理矢理の年内解散、選挙に持ち込んだ。
「消費増税の延期」が焦点であるかのような報道が為されているが、これはマスコミを使った「焦点そらし」である。
もとより、さらなる消費増税は日本の輸出企業が有利になるので、米国が婉曲ながらも反対していた代物。
とんでもない大問題なのは、2%、数兆円の消費増税ではない。
40〜50%もの円の減価が予想される、「円安地獄」の問題である。
多少の暴落が怖くて縮小できないどころか、追加が既に限界となってしまった国債の通貨化と通貨の超過剰供給の政策である。
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