中村修二氏の苦労が報われたことを喜びたい
2014-10-09

青色LEDの発明で三人がノーベル賞を受けた。
だが、私のひが目かもしれないが、他の二人に対して中村修二氏の報道がいかにも少ない。
赤崎、天野両氏は国立大学の研究員として、少なくとも安定した研究を続けられた。
だが、中村氏の研究は平坦ではなかった。
会社による研究への「無用の長物」発言、識者を招いて「可能性を否定させるなど誹謗中傷と妨害が続いた。
中村氏はそれへの怒りを研究へのエネルギーに転化して開発を続けた。
青色発光ダイオードの実用化に大成功した中村氏に、会社は発明の対価として「2万円」をよこしたのである。
これが当時日本の企業内研究者の現実であったかも知れない。
だが、そんなことではいけない。そんなことでは自分も、研究者たちも、学生たちへも「挫けろ」ということだ。
中村氏は発明の対価として200億円請求の訴訟を起こした。
東京地裁は600億を超える発明対価を認定した。
会社は争い、控訴した。
あきれ果てた中村氏は6億で和解したのである。
中村氏はあまりにも研究者が報われない日本に見切りをつけざるを得なかった。
そんな中村氏の多大な労苦に敬意を表したい。
そして、その苦労がいま報われたことを喜びたい。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
中村修二教授「開発が偉大でも市場で勝てない」 10/8 読売
【グルノーブル(仏南東部)=石黒穣、サンタバーバラ(米カリフォルニア州)=中島達雄】ノーベル物理学賞の受賞が決まった名古屋大学の天野浩教授(54)、米カリフォルニア大学サンタバーバラ校の中村修二教授(60)の記者会見は以下の通り。
◆中村氏◆
――(冒頭発言)
私はこれまでの人生で多くの方々に助けられてきて、とても幸運だ。最初のきっかけは、日亜化学工業の社長だった小川信雄氏が、青色LED開発という私のギャンブルを支持してくれたことだ。カリフォルニア大サンタバーバラ校のヘンリー・ヤン学長の支援にも感謝している。
1993年に高輝度青色LEDの実用化に成功した後、研究活動が爆発的に進展した。多くの研究者がLEDの分野に参入し、携帯電話やテレビ、照明などあらゆる応用に取り組んだ。
――受賞の知らせを受けた時は、何をしていたか。
眠っていた。少し神経質になっていたので、30%は寝ていたが、70%は神経が高ぶっていた。
――照明がないような発展途上国で、LEDの技術はどう使われているか。
アフリカの一部のように電力がない国々では、太陽電池を充電し、夜間、LEDで照明を使うことができる。このため、発展途上国で非常に人気が高い。
――LEDの研究を始めた当時、今のような状況を想像したか。
まったく想像しなかった。勤めていた会社で10年間にわたって赤色LEDを開発したが、既に大手の会社が製造していたので、販売成績は悪かった。
会社が私にキレて、私もキレた。そこで私は社長室に行き、青色LEDを開発したいと直談判した。すると、社長はこう言った。「オーケー。やっていい」。
それまで会社は研究開発費を出してくれなかったが、社長に500万ドル必要だと言うと、彼はそれもオーケーだと言った。
当時、私は海外に出たことがなかったので、海外に行きたかった。そこで、社長に青色LEDを開発するには、フロリダ大学で学ぶ必要があると言った。
1年間留学し、帰国して青色LEDの開発に取り組んだ。
――日本の多くの教授が海外での研究を目指し、頭脳流出ではないのか。
米国は研究者にとって、多くの自由がある。
必死で努力すれば、誰でもアメリカンドリームを手にするチャンスがある。
日本ではそのチャンスはない。
年齢による差別、セクハラ、健康問題での差別があり、米国のような本物の自由がない。
日本では大企業のサラリーマンになるしかない。
企業が大きな事業をやっていても、社員は平均的なサラリーマンだ。米国では、何でも好きにやれる。
――今回の受賞が日本にとって持つ意味は。
3人のノーベル賞受賞者が出るというのは、日本にとって躍進だと思う。
ただ、日本で開発が行われても、日本企業はグローバル化で問題を抱えている。
開発が偉大でも、市場では勝てない。携帯電話技術や太陽電池で、日本の製品は当初、非常に優れていた。
しかし、グローバル化に失敗した。
LEDも同じだ。日本で開発されたが、すべての市場を失っている。
――現在、何に取り組んでいるのか。
LEDの効率を高めることに取り組んでいる。
ーーーーーーーーーーーーーー
ノーベル賞のニュースに狂喜する報道に感じる違和感 長谷川豊 10/8 BLOGOS
今年のノーベル物理学賞を「日本人の研究者」3人が受賞した、と報じている。
テレビや新聞では相変わらずの
「日本人が!」
「日本人としての受賞が!!」
と、長々と嬉々とした番組編成が行われている。
もちろん喜ばしいことだし、素晴らしいニュース。
この放送で良いと思うし、全て悪いとも思わないのだが、以前、錦織圭選手のアメリカでの快挙の時に書いたブログと同じ内容をもう一度ここで書きたいと思う(「錦織選手報道に感じる違和感」)。
3人の受賞者のうちの一人。中村修二博士。
彼は日本のメディアが「日本人としての受賞で!」と騒ぎ立てている中、平然と一人、アメリカはカリフォルニアで淡々とインタビューに答えている。もちろん、英語で。
中村裁判。
青色発光ダイオード裁判。
2001年、日本でも当時少し話題になった裁判だ。本当に大きく話題になったのは2002年9月の事であり、このニュースが伝えられた時、多くの日本人はまだ
「中村は変わり者だ」
「日本の企業には日本の企業の倫理とルールがある!」
「実は勤務態度も悪かったらしいぞ!」
と寝ぼけたことをぬかすコメンテーターも少なくなかった。
2001年。中村修二氏は所属していた企業に対し訴訟を行った。いわゆる「中村裁判」だ。
青色発光ダイオードの発明は「100年に一度くらいしかないレベルの発明」と主張。あまりに巨額の利益がもたらされたにもかかわらず、中村氏が所属していた会社は、中村氏に対して…
2万円
の特別ボーナスしか出さなかった。後にノーベル賞を取る、この研究成果について、だ。この青色発光ダイオードの発明は、特許出願中にその市場がなんと1兆円規模にまで膨らむあまりにも大きな発明だった。にもかかわらず、
2万円
だった。あまりにもひどすぎる!と訴える中村氏に対して、会社側は
「研究費用をねん出したのは会社である」
「会社の中で行われた研究の発明で得た成果は、会社に権利が帰属されるという契約がある!」
と主張。一般論ではわからなくはない話だが、中村氏の発明は「時代を動かすレベル」の発明だった。2001年当時、少しだけ報じられたそのニュースは、2002年9月、大きく報じられることとなる。
東京地裁が下した判決は「中村氏の貢献は604億円の価値がある!」という驚きの判決。
そもそも中村氏はお金のために裁判をしていたのではなかった。後々の研究者のために、礎になれれば、という思いから、嫌われ役を買って出ていた部分が大きかった。なので、中村氏は
「200億円しか」請求していなかった。
200億しか請求していないにもかかわらず、判決は
「いえいえ、あなたの価値は604億円ですよ」
と言ってのけた。これはとても大きなニュースになった。未来の研究者たちの大きな光になる、と中村氏も喜んだ。
しかし、だ。
会社は不服だった。裁判所の判決にも一切納得せずに、控訴。会社は徹底的に争う姿勢を見せ、裁判は泥沼の様相を呈し始める。
中村氏は
諦めた。
何に諦めたのか?会社か?それはもちろんそうだろう。でも、それだけじゃなかった。当時はテレビもマスコミも、会社側が流すネガティブ情報をそのままコメントするキャスターやコメンテーターも少なくなかった。
中村氏は
日本に呆れてしまった。
中村氏は、わずか6億円という、地裁が認めた600億円から100分の一というあまりにも小さすぎる値段での和解に合意(実際には延滞損害金が発生しているので支払われたのは8億円)。そして…この天才科学者は日本から去っていった。
錦織選手の時にも同じことを書いたが、それが全部悪いとは言わない。悪いとは言わないし、それでもいいのだが…
なんで、マスコミは、中村博士のニュースと共に
「日本人が!」
「ニホンジンの快挙が!!!」
と喜べるんだ?
あの時のブログにも、くだらない僕への批判や悪口を懸命に書いて来た人たちは少なくなかったが、もう一度全く同じことを書きたい。あの時、「素直に喜べ」と書いてきた全ての人にもう一度問う。
わずか13歳で、日本を離れた錦織選手。彼は日本を離れたからあの実力を手に入れた、と僕は指摘した。もちろん「一般の人は喜んでいい」と思う。国籍は日本だし。でも「マスコミはバカ騒ぎしてればいい」のか?サッカーのワールドカップの時と同じように、単に騒げば気が済むのか?その裏側にあるものを全部無視して気持ちいい放送だけをしていていいのか?
中村博士も同じだ。喜んでりゃそれでいいのか?中継繋いで「今のお気持ちは?」でいいのか?
なんで、彼らが日本を捨てたんだ?
日本のシステムが…
日本の教育環境が…
日本的な会社の仕組みが…
天才の力を失わせ、天才の芽を摘み、天才たちのやる気を失わせる仕組みだから…
彼らは日本から出ていったんじゃないのだろうか?
一部の「老害ジジィ」や学校の「先輩」という「単なる年上なだけの人間」たちが、「年功序列」という完全に狂いまくったシステムをかさに、くだらないことを言い続けてくるから、本当に才能のある人間は、出ていくしかないんじゃないだろうか。
会社のシステムもそう。なんで韓国のサムスンやLGがあれだけ急な勢いで勢力を伸ばせたのか…日本の優秀な技術者を引き抜きまくったからだ。裏を返せば、日本の会社は才能があろうがなかろうが、「部下の功績を一部の上司が全部ひとり占めする」システムがありすぎるので、本当に才能のある人間は「自分を正当に認めてくれる国へ」出ていくんじゃないだろうか。
なんでそれを報じないのだろう。マスメディアはもっと日本の会社の「闇」を報じるべきなんじゃないかと、切に思う。
もちろん素晴らしいニュースだ。素晴らしいニュースだから、まずは喜んでもいいとは思う。が、僕は今回のブログでも、喜ぶのと同時に、僕たち日本人は本来は反省すべき点もあるんじゃないか、ともう一度訴える。
何が悪いのか?
何がおかしいのか?
ちなみに多くのアホマスコミが「日本人3人が受賞!」という大バカ報道を繰り返しているが、完全な間違いである、という事をここで指摘しておきたい。
中村博士はすでに「アメリカ国籍を取得」している。正式に日本国籍を放棄はしていないが、しっかりしろよ、大マスコミ、と言いたい。
中村博士がどんな思いとともに、日本を捨てたのか、もっと酌んであげるべきだ。
今回のニュースは
「日本人2人と、日本国籍も持つアメリカ人1人」の計3人が受賞したニュース
だと報じるべきだと、少なくとも僕は思っている。
- 関連記事
-
- 新年あけまして おめでとうございます (2015/01/01)
- 皆様 良いお年を! (2014/12/31)
- 最近のプルシェンコ、インタビュー (2014/12/24)
- この世は詐欺師のための世界 (2014/11/18)
- 中村氏が見限った日本の国と社会 (2014/10/10)
- 中村修二氏の苦労が報われたことを喜びたい (2014/10/09)
- 十日ほどお休みします (2014/09/17)
- ウクライナ首相に防寒器具を贈りたい:ジリノフスキー (2014/09/15)
- 棚上げされていた15年前の教訓、広島土砂災害 (2014/08/24)
- 「観測史上初」「経験したことのない」など、「想定外」の異常気象にして責任逃れのためか (2014/08/23)
- ようやくSIMロック解除か (2014/06/29)
コメント
コメントの投稿
トラックバック
この記事へのトラックバックURL
http://bator.blog14.fc2.com/tb.php/2477-57dc176f