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異次元緩和とは何だったのか、その功罪(2):吉田

 異次元緩和とは何だったのか、その功罪(1)からの続きです。
 ーーーーーーーーーーーーーーーー
一般に、日銀が「世の中に出回るお金の量を2倍に増やす」と新聞でも言われていますが、それは誤りです。
国債を買って、日銀が増やすのはベース・マネー(発行紙幣+日銀当座預金:14年5月で222兆円)です。
世の中に出回るお金の量であるマネー・ストック(14年4月:1183兆円)ではない。
マネー・ストックは世帯と企業の預金(※ 口座にある金額のこと。)であり、これは、日銀は増やせません

(※ 口座にある金額は、預金、信用創造(貸付振込)などによる、帳簿上の金額のこと。流通通貨額であり、ベースマネーに対する信用乗数でもある。)

2013年4月に始まった異次元緩和は、債券の市場から、日銀が毎月6兆円から7兆円の国債を買い切って、その代金を、国債を売った銀行に振り込むものです。
世帯や企業ではなく、銀行に日銀からの現金供給が増えたと解釈して下さい。

日銀が異次元緩和を1年前にはじめたからと言って、その要因では、あなたの会社の預金と世帯の預金は増えません。
銀行が貸しつけないと、社の預金と世帯の預金は増えない。
(※ マネーストックとならない。つまり流通通貨の増加とならない。)

銀行(正確には、保険会社を含む金融機関)では、「売った国債が現金に変わる」ことになる。

【国債】同時に、日銀が国債を多く買うと、買い手が増えた国債の価格は上がり、金利は下がります。
1995年の、日本版の金融ビッグバンで、それまでは、日銀による規制下にあったわが国の金利は、自由化されています。

【金利】
自由化以降の金利は、[国債金利(もっとも低い)+リスクプレミアム]で決まります。
長期国債(10年物国債)の金利は、史上最低に低い0.6%付近(毎日変動)ですが、銀行の融資の平均金利は1.2%付近です(2014年4月)。

【銀行が、国内貸付と証券購入を増やせば・・・】
現金には、金利がつきません
金融機関にとって、近い決済用に必要な現金額以上をもつことは、損をします。
このため、国債を売った金融機関は、金利のつかない現金を、貸付や証券の購入として運用するだろうと考えるのです。
ここが、異次元緩和の狙い
です。

国債を売って現金が増えた金融機関からは、民間経済に、現金が流れる。
銀行から現金が流れるとは、260万社の企業が、お金を借りることです。
その借りたお金で、2000年代は減ってきた設備投資をする。
世帯は住宅ローンを借りて、住宅を買うことです。
これによって、「企業+世帯の預金」が増える。これが、マネー・ストックの増加です。

経済(GDP)は、企業の設備投資によって、働く人の生産性が上がるという要因のみによって成長します

短期的には、消費の増加によっても成長します。しかし、世帯の消費の増加が、今後は売上が増えるという期待をもつようになった企業による、
設備投資の増加と雇用者所得の上昇」になって行かないと、翌年や翌々年の、GDPの成長はないのです。
ここが、肝心な点です。

企業の設備投資が増えるようにならないと
異次元緩和は、単に、「2年後からは目立って物価を上げた。商品価格は、高くなった。しかし世帯所得は、増えない。このため、生活は苦しくなった」ということだけで、終わります

こうした、経済の成長目的をもった金融緩和を、従来とは異次元の金額で日銀が行う。直近のデータを見ます。

日銀が、どれくらい国債を買い切って、金融機関の現金を増やしたかというのは、10日毎に公表される「営業毎旬(じゅん)報告」で知ることができます。
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2014/ac140510.htm/

2014年5月19日の、日銀の営業毎旬報告(貸借対照表):わかりや
すくするため、項目をまとめています。

【2014年5月10日】
資産 負債および資本
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
国債保有 207兆円 1万円札の発行 86兆円
その他資産 41兆円 金融機関がもつ当座預金 136兆円
その他の負債 20兆円
日銀の資本 6兆円
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
資産 248兆円 負債および資本 248兆円

14年5月時点で、日銀は国債保有を207兆円に増やし、それを買った代金として、
(1)1万円札の紙幣を86兆円(86億枚)印刷して発行し、
(2)金融機関が日銀にもつ当座預金の残高を136兆円に増やし
ています。

この(1)紙幣の86兆円、(2)当座預金の136兆円、両方の合計で222兆円が、日銀によるマネー発行額です。

異次元緩和をはじめる前は、どんな貸借対照表(B/S)だったか?

【2013年3月31日の日銀の貸借対照表】

資産 負債および資本
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
国債保有 125兆円 1万円札の発行 83兆円
その他資産 42兆円 金融機関がもつ当座預金 58兆円
その他の負債 17兆円
日銀の資本 6兆円
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
資産 164兆円 負債および資本 164兆円

13年の3月時点での日銀の国債保有は125兆円でした。直近の14年5月では国債保有が207兆円に増えています。
13ヶ月間で[207-125=82兆円]が増えていますから、1ヶ月平均で6.3兆円の国債を買い増してきたということです。

日銀がもつ国債の平均満期は、長短国債を合わせて7年です。満期なると財務省は、国債の額面金額を、保有者に振り込みます。

この1年の、日銀の国債保有高の平均は、[(125兆円+207兆円)/2=332/2=166兆円です。
[166兆円÷平均満期7年≒24兆円]です。
1年に24兆円以上の金額を買わないと、国債保有額は減ります。
日銀は13ヶ月で82兆円増やしていますから、[82+24=106兆円]も、債券市場から国債を買ったことになります。

政府の、新規債の1年分の発行は、まず、財政赤字分が約40兆円です。
返済満期が来たものの借り換えが、120兆円くらいです。

政府は、国債の返済は計上はしていますが、返済分(120兆円/年)の全額を借り換えています。
事実上返済はしていません。これをロールオーバーとかジャプと言います。

合計では160兆円の新規発行です。このうち106兆円(66%)を、日銀が買っています

なんと言っていいか、猛烈な国債購入です。
このため「異次元緩和」と言う。
異次元とは、あたかも宇宙からの買いのような巨額と
いう意味です。(前回も指摘しましたが、異次元緩和についての経済・金融論が極めて少ないのが不思議です。)
(※ もちろんインフレ期待で洗脳するためのマスコミ統制です。肝心な点に論及しないので、例えば「死ぬまで日経新聞を読んでも経済はわからない」ということになります。)

日銀による,異次元の国債購入によって増えたのは紙幣の発行ではなく、日銀に金融機関が預ける当座預金の金額です。
2013年3月末は58兆円でした。この当座預金が136兆円へと78兆円増えています。
(注)(※ 各金融機関が顧客への)支払い用の準備預金としての必要額は8兆円くらいですから、128兆円の現金性預金が、超過積み立てになっています。

日銀が増やした国債保有は、13ヶ月で82兆円です。
この分は、国債を日銀に売った金融機関が、日銀当座に預ける現金性の預金(当座預金)の78兆円の増加になっているだけです。

国債を売った金融機関では、所有していた国債を日銀に売った。
その売った分だけ、日銀当座預金に預ける残高を増やした、ということでしかない。
国民(企業+世帯)のマネー・ストックの増加ではない。金融機関の現金性預金が増えただけです。
金融機関が82兆円もの国債を売り払い、それを82兆円の現金に換えたからです。
(注)いつでも、即刻、引き出せる当座預金は現金と同じです。

つまり、13ヶ月間の異次元緩和によって進んだのは、「国債の、日銀による現金化」です。これを金融用語では、「国債のマネー化=マネタイゼーション」と言います。

(注)しかし政府と日銀は、「日銀が国債を現金に換えるマネタイゼーション」ではない。あくまで、金融緩和つまり企業がお金を借りやすくすることだと、言っています

日銀の異次元緩和の目的と意味は、人々が将来に対して抱く、物価と金利の予想が、今日の取引を決めるという「期待(Expect)の経済学」からしか解けません。そこで、前号ではこれを書きました。

本号は、「期待(Expect)の経済学」への日銀の働きかけが、実際に、インフレ期待を高め、経済取引を活発にしているのかどうか、ここを検討します。

ノーベル賞経済学者として世間に認められたクルーグマンが、「国際標準の学説」と言う「期待(Expect)の経済学」が、異次元緩和の実行によって、この1年働いたのかどうかということです。

結論を言えば、1年目では、まだ働いていません

証拠が、マネー・ストックの増加の低さ(前年比+2.8%:2014年4月)と、実体経済の取引額を示す名目GDPにおける、民需の増加率の低さです。
雇用者賃金は、前年比で-0.2%と、減っています。
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/gaiyou/pdf/main_1.pdf

民間需要(=世帯と企業の消費+投資)が、前年比で5.2%も増えたように見えるのは、2014年3月の消費税増税前の、駆け込み需要があったからです。
2014年の3-6月期には、この増えた5.2%分が、そのままへこみます。
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/gaiyou/pdf/main_1.pdf
(※ 6月統計でまさしく、へこみました。加えて円安の原材料高騰によりさらにへこみました。)

   ■1.マネタリズムからの提言

(前号で示した)クルーグマンからの提言に対して、フリードマンが言った「デフレは貨幣現象である」を根拠に、
・エール大学の浜田宏一氏は、異次元緩和によるインフレ・ターゲットを政府に提唱し、
・岩田規久男氏は、日銀が、わが国の「マネー・ストック」が1年に7%以上増えるようにするための、マネー緩和策をとることを提言していました。

▼ベース・マネーは222兆円になり、昨年比で80兆円も増えたが・・・

日銀の紙幣の発行額86兆円と、日銀が金融機関から預かった当座預金136兆円、合計で222兆円(2014年5月10日)を、国の経済の基本になるマネーという意味を込めて、「ベース・マネー(基礎マネー)」または「マネタリー・ベース(お金の基盤)」と言っています。

【民間の経済取引に使われるマネー・ストックは、33兆円(2.8%)しか増えていない

一方、マネー・ストック(2014年4月で1183兆円:M3)は、世帯と企業と自治体がもつ、現金と預金です。

ベース・マネーが増えても、その増加がマネー・ストックの増加にならないと、「経済を流れるマネーが増えた」とは言えません。
この、マネー・ストックの増加は、政府と日銀の狙いとは違い、前年比で2.8%(2014年4月:33兆円)しか増えていません。
(注)マネー・ストックの増加の2年間の異次元緩和での政府目標は、7%(80兆円)です。

(※ 基本的には発行紙幣+当座預金=ベースマネーが金融機関の信用創造(超過貸出)によって流通通貨が増えて経済成長となるわけですが、賃金が減少し、消費需要が伸びないなかでは資本は設備投資できません(過剰設備)ので金融機関の貸出与信は停滞します。
 マネーストックはベースマネーの伸びを下回りますから、「信用乗数」はさらにマイナスとなります。)

▼1年目は、異次元緩和の目的に沿わない結果が、出ている

異次元緩和を実行した政府・日銀の狙いとしては、本当は、1年目では、マネー・ストックが4%~5%(47~59兆円)は増えねばならないのです。
2年目(2015年3月)が7~8%(80~90兆円)です。

国債を売った銀行には現金性のマネーは増えた(1年で78兆円の増加)。
しかし銀行の貸出しの増加からの、世帯と企業の預金(マネーストック:M3)は33兆円しか増えていない。

このため「異次元緩和が、経済取引を増やした」とは、1年目では言えない。
https://www.boj.or.jp/statistics/money/ms/ms1404.pdf

輸血はしたが血圧は上がらず、血流は増えていない
例えれば、輸血(マネーの注入)が必要と、大量の輸血をした。しかし、1年目は、血流量が増えて血圧が上がったとは言えない。

この輸血は、経済のマネー量増やさず、出血(海外に流出:米国債の購入)にしかなっていないのではないか?ということです。

(注)事実、異次元緩和の後、現金性の預金(日銀当預金)が80兆円増えた日本の金融機関は、増加分を、国内ではなく、金利が2.6%に上がった米国の国債買いと、対米融資の増加に振り向けています

大手金融機関(三菱東京UFJ銀行)のバランスシートを、1年前と比較すればわかることです。
政府・日銀の狙いとは異なる、マネーの流れになっています。

  ■2.マネー・ストックに原因を求める、マネタリスト

2013年4月から、日銀の副総裁に就任した岩田氏は、「日本は、マネー・ストックの増加が1年4%の時、消費者物価の上昇がゼロだった。ところが1994年以降は、この増加が、2%程度だった。マネー・ストックの増加率の低さが。デフレの原因である。」

「このマネー・ストックを、日銀が『1年に7%(=80兆円)増える』ように金融を大緩和すれば、日本は、物価が上がらないデフレから脱却できる」としていたのです。(『デフレの経済学』:2001
年)

▼マネー・ストックと物価上昇、およびGDPの成長

マネー・ストックとは、企業・世帯・自治体の預金です。
M3とも言い、従来、マネー・サプライと言われてきたものです。
https://www.boj.or.jp/statistics/money/ms/ms1404.pdf

2012年はM3が2.2%増、2013年は2.9%増であり、2014年4月は前年比で2.8%増の1183兆円です。
この1183兆円が、世帯、企業、自治体のもつ現金と預金です。

中央政府の預金と、金融機関の預金はマネー・ストックにはいりません。マネー・ストックの持ち手は、個人、法人、自治体です。
https://www.boj.or.jp/statistics/outline/exp/exms.htm/

  ■3.マネタリストの主張

【MV=PT】
マネー・ストックと、実質GDPおよび消費者物価上昇率には、マネタリスト(岩田規久男氏を含む)は、以下の関係があるとします。

M(マネー・ストックの金額)×V(流通速度)=P(物価水準)×T(実質GDP)

日本経済は、この中の流通速度が、1年にほぼ4%低下する傾向をもっていた。このため、マネー・ストック(2014年3月で1174兆円)が、毎年7%(82兆円/年)増えないと、物価の水準は上がらず、経済成長もないとします。

(注1)流通速度が4%下がって行く傾向がある理由は、預金の増加率が、所得の増加率より高いからです。これは日本だけではなく、世界の共通傾向です。
(※ 逆にいえば、所得の増加が預金の増加に追い付いていないということ。)

(注2)2000年代の日本の、マネー・ストックの増加は、14年間、ほぼ2%以下でした。

一方、米国(M2)のマネー・ストックは毎年、6%から8%の増加です。ユーロでは4%~12%の増加でした。英国は6%から12%、韓国も3%から25%、中国は12%~25%と大きな増加でした。

日本のみが、金融危機の後の、日銀による1997年から2006年までの(前元日銀総裁時代の通常の)量的緩和にもかかわらず、マネー・ストックの増加が1%~3.3%と低かったのです。
http://rh-guide.com/tokusyu/syohizei_infre1.html

  ■4.インフレ目標2%のためマネー・ストックを7%増やす

日本も、マネー・ストックが毎年7%(約80兆円)増えるようになれば、物価は、2%は上がり、実質GDPは1%は増える。
名目経済成長率は3%になるというのが、岩田氏
でした。

ただし、ここで付言しておかねばならないのは、
・マネー・サプライとインフレは「並行現象」なのか、
・あるいは「原因現象」なのかということです。


並行現象とは、インフレになるとマネー・サプライも同時に増えるということです。
この並行現象なら、マネー・サプライを増やしても、インフレにはならない

他方、原因現象なら、岩田氏が言うようにマネー・サプライを、日本では7%/年で増やせば、2%のインフレになって行くでしょう

【重要】
マネー・サプライとインフレが「並行現象」か「原因現象」かは、決着はついていません。
シカゴ大学のフリードマンが発祥のマネタリスト学派は、原因現象としています。

デフレは貨幣現象というのがこれです。
安倍首相は国会でも、浜田宏一氏から聞いた通りに、「デフレは貨幣増加の少なさがもたらす現象」と答え、異次元緩和の政策を正当化する根拠にしています。

経済学は、学派によって理論が異なるイデオロギー(思想)です。
その点が、科学とは異なります。科学のような、おなじ条件での実験ができないからです。。

例えば、大きなことで言うと、GDPの何倍までの政府債務が限界かも、わかってはいない。このため思想的な思索の学になっています。
科学は、事実を検証する。経済学は「こうなるかも知れない」という仮説です。

2013年4月からの日本経済において、
・日銀が国債を買うことによる現金の大量の輸血によって、
・国民経済がインフレになり、実質経済成長も果たし得るか、
実験されている
と言ってもいい。

  ■5.1年目の80兆円の輸血では、マネタリストの言う、デマンドプル型の物価上昇と、経済成長は起こっていない

異次元緩和の1年目の、事実と評価は、以下です。

▼事実

(1)日銀は、80兆円の長期国債を買い切って、銀行が日銀にもつ当座預金の現金を、80兆円増やした。
これからも、1年に70兆円から80兆円のペースで国債を買い切って、マネー供給を増やすことは、日銀の政策として確定している。

(2)ところが異次元緩和の1年目では、金融機関に増えた80兆円の現金が、国内の企業への融資の増加と世帯への貸付の、めざましい増加(80兆円)にはなっていない

このためマネー・ストック(企業と世帯の預金:M3)は、1183兆円と、前年比では2.8%(33兆円)しか増えていない。

(3)物価は2014年3月の消費者物価の上昇は、生鮮商品を含む総合で1.6%と、上昇に転じた。
生鮮食品を除いても1.3%上がっている。
しかし、この物価の上昇は、異次元緩和によって民需が増え、増えた需要が物価を上げる「デマンド・プル型」ではない。

20%から25%の円安で、輸入資源とエネルギーが20%上がったことによる「コストプッシュ型」のインフレである。
「コストプッシュ型」のインフレは、企業の収益を増やすものではない

電気料を上げた電力会社のように、円安の輸入で価格が上がったエネルギー費用となって、海外に、日本の所得が流出する、悪いインフレである。

政府が、異次元緩和の目的にした、「金融の異次元緩和→マネー・ストック増加→民間需要の増加→物価の上昇→商品を売る企業の収益の増加→働く人の平均賃金の上昇→需要の増加」という、好循環の経済サイクルではない。

金融の異次元緩和→円売り→円マネーの海外流出(相手は米国)→円安→輸入の資源・エネルギー・商品価格上昇→物価上昇→世帯の負担の増加」という所得流出という、悪いサイクルです。

(注)消費税の3%増税は、物価上上昇1.5%(14年3月)に追加で、4月から+2%(合計で3.5%)くらいの物価上昇を招きます。しかし、増税による物価上昇の2%分は、インフレ・ターゲットには含まれないものです。

▼評価

政府による自画自賛と、安倍内閣とともに、政府の広報紙風の記事が急に増えたマスコミの言うこととは違い、異次元緩和は、まだ政府・日銀が狙った、「2%のインフレ+1~2%の実質成長=名目GDPの成長3~4%」をもたらしてはいません
その気配も、認めることができません

(※ 一見2%のインフレだけがもたらされているように見えているかも知れないが、それは違う、円安による原材料とエネルギー高騰によるコストインフレである。
 国内勤労賃金上昇によるコストインフレは消費需要の伸びにつながるが、円安による原材料とエネルギー高騰によるコストインフレは国内の生産流通を冷え込ませ、資本の海外流出を増やすばかりである。
 結局、何も達成されていない。デフレ循環構造のままで物価上昇を招いているだけである。)

では、どうなるのか、これを、次号で追求します。
マネタリストが言うマネー・ストックの増加が物価を上げるというのは、高齢化した日本の、現代経済には合わないものかも知れないと感じています。

▼学説は常に、過去の経済のもの

世帯の預金(マネー・ストック)が増えても、商品需要は増えないのかも知れません。

企業もその預金(マネー・ストック)が増えても、将来の経済の低い成長を予測しているため、生産力の増加と販売力の上昇のための設備投資は行わないのかも知れない。
こういった「新しい現象」が、世界のどこの国も未踏の、日本経済で起こっているのかも知れません。

企業の預金が増えても、設備投資を増やさないというのは、経済学説にはない新しい現象です。マネタリズムは、この新しい経済の国(日本)には、適合しないのかもしれない。
学説は、新しい経済的な事実によって、修正されねばならないのです。

マネタリストではなく、「期待の経済学」を言うクルーグマンの「国際的な主流派」の経済理論にも、反することです。

【後記】
経済は過去の経済を研究して、そこから、理論化します。
このため、過去の経済とは違った要素が生じた現代経済には合わないという事態は、経済学説の歴史ではよく起こることです。
 (了)
奇抜な例えですが、チンパンジーに効いた医薬が、人間には効かないということはあり得ます。
病気の種類に、違いがあるからです
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