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噛むこと、口から食べることの大切さ

 口から食べられなければ栄養物を直接胃に入れよう、あるいは血管に入れようとの処置が多いようです。
 怪我などの短期間はともかく、術後後遺症や高齢誤嚥などの数か月にもなる「咀嚼の安静」は身体の生体水準を著しく低下させ、栄養失調状態での免疫力低下、感染症併発へと進みます。

 近年になって噛むこと、口から食べることが脳を通じて身体の様々な機能に関わっていることが見直されているようです。
 食べることが、身体の回復に重大な影響を及ぼすという所見です。

 週刊朝日から二つの症例を紹介します。
 ページが大きくなるので三つのうち症例1を省略しています。時間のある方はこちらも読まれると興味深いものがあります。
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    実例リポート 歯を治したら寝たきりから立ち上がった 認知症も気胸も改善  7/2 週刊朝日

いま歯科医療の現場で、歯の健康が全身の健康と関係していることが明らかになりつつある──。なかでも、かむ力の回復は食べることだけでなく、歯を通して脳に刺激が行き、記憶ややる気の回復にもつながるという。歯を治したり、入れ歯を変えたりすることで、寝たきりや認知症などが改善した事例を取材した。

 かむ力を回復させて、寝たきりや車いすの人が歩けるようになる──。そんな治療を成功させている歯科医師がいると聞き、大分県佐伯市で開業する河原英雄歯科医師を訪ねた。
 (※ 症例1を省略しています。)

 40年前にじん肺(粉塵やアスベストなどを吸い込むと起こる肺の病気)患者に認定された高橋忠さん(仮名・78歳)は、呼吸困難などが悪化し、07年には両肺が重症の気胸になった。
 気胸は肺に穴が開いて空気が漏れてしまう状態で、半年間入院して治療を受けたものの、退院後は24時間酸素吸入が必要。さらに歯がボロボロでかめないため、体重は38キロまで落ちていた。

「主治医に『食べられないままだともっと痩せちゃうから、すぐに歯医者に行きなさい』と言われてね」

 と高橋さん。河原歯科医師の診察を受けにきたときは、歩くのもやっと。酸素吸入器を手放せないため、10カ月かけて慎重に治療した。

 歯の治療が終わり、かめるようになると、妻が栄養のあるものをたくさん食べさせたこともありメキメキと回復。1年6カ月後の定期検診では体重が11キロも増えた。
 栄養状態を示す総たんぱくやアルブミンの値も基準値に達したという。
 スタスタと歩いて私たちの前に現れた高橋さんは、

「今は肉がおいしくてね。酸素吸入器なしで階段も上れるし、自分で車を運転してカラオケに行けるようになりました」

 と笑顔で話してくれた。河原歯科医師が「今の元気な姿からはとても想像ができないでしょう」と、初診当時の記録映像を見せてくれたほどだ。高橋さんは誇らしげに歯を見せながらこう言った。

「ほら、きれいでしょ。昔は歯みがきもいい加減だったけど、今は時間をかけてするようになりました。大事な歯だからね」

 なぜ、かめるようになると、からだまで元気になるのだろうか。

かんでのみ込む『咀嚼』を含めた、『食べる』という一連の動作は、さまざまな器官を使う高度な作業です。近年、脳にたくさんの刺激を与えることが明らかになってきました

 と、河原歯科医師は言う。

   保険診療でも合う入れ歯を

 人間はまず、食べ物を見て、においをかいで、過去の経験に照らし合わせて安全か否か、栄養価が高いかどうかを判断し、口に入れる。
 唇や舌は、それが何かを認識しようと働き始め、昔のおいしかった味を思い出す。ここまででも五感をフル活用する作業だ。

 さらに食べ物をかむために、頬の筋肉やあごの関節、唾液を分泌する唾液腺などたくさんの器官が働く
 かんだ刺激は歯の根にある歯根膜が感じ取り、三叉神経を通って脳へと伝わっていく
 その結果、脳の血流が活性化し、病気や老化で衰えていた運動機能や感覚、認知機能、そして意欲(やる気)などの回復が期待できるという。

 かむために「歯」は不可欠。年を取ってもいい状態で維持できれば理想的だが、加齢とともにむし歯や歯周病で状態が悪くなり歯を失う人も多いのが現実だ。
 失った歯を補う方法には、入れ歯やインプラントがあるが、河原歯科医師が扱うのは、入れ歯のみ。しかも完全保険診療で、自費診療はいっさいおこなっていない。

 実は河原歯科医師は、30年以上、福岡市の中心部で歯科医院を開業していた。自費診療も積極的におこない、保険外の入れ歯やインプラント、審美歯科のよさもよくわかっている。

「還暦を機に以前からの夢だった地域医療をするため、ここ佐伯市郊外で開業しました。小さなコミュニティーで、高齢になるほど住民同士の支え合いが必要になります。
 そんな場所で自費診療を導入したら、住民同士の軋轢(あつれき)を生んでしまう。それならば、保険で患者さんに満足してもらえる入れ歯を作ろうと思いました」(河原歯科医師)

 保険であろうとなかろうと、大切なのは患者に合った入れ歯を作ること。入れ歯を咬合器にのせ、薄い咬合紙であたりをチェックしながら少しずつ削っていく様子は「職人」を彷彿とさせる。
 さらに患者に入れ歯を装着させて、不具合が見つかると外し、削って調整してはまた口の中に入れて確かめる、という根気のいる作業を繰り返す。
 診察室にはりんごやピーナツを常備。実際の食べ物をかんでもらって能力を確かめ、ようやく「かめる入れ歯」が完成する。

「入れ歯のメンテナンスも不可欠。人間は生き物だから、加齢や生活状況とともに口の中の状態も変わっていく。一度入れたら終わりではなく、不具合が生じれば調整が必要です。
 歯を失っても、合った入れ歯があればしっかりかんで、おいしく食べられますからね」(同)

 海が近いのどかな田園地帯に歯科医院を構えて12年。当初、近所の人からは「歩いて通える歯医者さんができて助かる」と喜ばれたが、周辺の地域では、徒歩で通える歯科医院がなく車の運転ができないため歯科治療を諦める高齢者もいる、と知った。
 一人でも多くの人に食べる喜び、生きる喜びを味わってほしいと、車で送迎する取り組みも始めているという。

「世の中にはさまざまな健康法がある。その中でいちばん安くて健康になる方法が口を清潔にしてかむことなんです」(同)
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    寝たきりが回復し海外旅行まで! 口から食べることの重要性〈週刊朝日〉 7/2

 家族の病気を通して「口から食べることの大切さ」を痛感し、多くの人に伝えようと活動をしている歯科医師がいる。

 2000年7月、当時福岡歯科大学病院に勤務していた塚本末廣歯科医師は、神戸市に住む妻の母、呉本秀子さん(当時68歳)が倒れ、市内の病院に救急搬送されたと知らせを受けた。

急性心筋梗塞および脳梗塞」と診断された秀子さんだが、いったんは回復。しかし9月になると血尿や発熱が続くようになり、だんだん弱っていった。

 11月に塚本歯科医師が見舞うとベッドに寝たきりで、熱が続いているせいか目もうつろ。

「さらに病院からは、腎がんの可能性、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に感染、敗血症を起こしている、といったネガティブな検査結果が次々伝えられていて、これはもう死ぬんじゃないかと感じました」と、塚本歯科医師は振り返る。

 歯科医師として何より気になったのは、入院以来ずっと栄養を流し込むIVH(中心静脈栄養)のカテーテル(管)が血管内に留置され、口からは何も食べていなかったことだ。食べられないからIVHを装着しているはずなのに、なぜか薬は口からのんでいる

食べさせていないだけで、本当は食べることができるんじゃないか

 そんな疑問が湧き上がった。とはいえ、何カ月も使っていない秀子さんの口の中はパリパリに乾燥し、口腔カンジダ症になっていた。免疫力が落ちたために、常在真菌のカンジダが異常に増殖した状態だ。

 しかし、塚本歯科医師は大学病院に障害者歯科を立ち上げた経験から、「口腔ケアをすれば食べられるようになる」と確信した。
 そこで12月初旬、秀子さんを福岡市内のリハビリテーション病院へ転院させた。自ら通って秀子さんのケアができると考えたからだ。

 転院してから秀子さんの容体は劇的に好転する。
 きっかけは、前の病院でずっと入れられていたIVHや尿を出すためのカテーテル、薬剤を投与する動脈内カテーテルをすべて抜いたこと。しつこく続いていた熱がスッと下がったのだ。

「抜いたカテーテルの先端、つまりからだの中に入っている部分にびっしりついていたバイオフィルム(細菌のかたまり)を検査してみたら、どれからもカンジダが検出されました。
 感染源のカテーテルを入れっぱなしにしていたら、発熱が続くのは当たり前です」(塚本歯科医師)

 熱が下がって楽になった秀子さんは、翌日からペースト食を食べられるようになった。
 同時に口の中をきれいにする口腔ケアや、合わなくなっていた部分入れ歯を調整し、かむためのリハビリもスタートした。
 ほどなく粗めの刻み食へステップアップ。
 「食べる」という喜びを得たことで秀子さんは、リハビリにも積極的に取り組んで、みるみる回復した。
 年が明けた1月末には、元気に歩いて退院
 その翌月には、海外旅行に行くまでになった。

 その経過を追った画像や写真を見せてもらった。
 回復ぶりもさることながら、かめるようになってからは別人のように明るい笑顔ばかりだった。
 秀子さんは、その後穏やかに生活し、退院の10年後に別の病気で亡くなったという。

IVHのように口や腸管を使わずに栄養補給する方法が長引けば、かむ、のみ込むといった口の機能が衰えるだけでなく、全身状態まで悪化させてしまいます。
 人間らしく、幸せに生きるためには口から食べることが基本だということを、心に留めておいてほしいと思います


※週刊朝日 2014年7月11日号より抜粋
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