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家計調査:急激な生活水準の低下が始まった

 総理府の指定統計である家計調査はサンプル8千、調査世帯は家計簿を記入してもらわなければならないという制約がある。
 従って共働き世帯、男性単身世帯、貧困、富裕世帯などはどうしても落ちやすい、かなり限定的に受け止めるべき調査ではある。
 だが、これほど克明な調査は他に無く、民間リサーチなどに比べるなら雲泥の正確さを評価できるものである。

 本年4月の消費増税後に、円安による原材料高騰と併せて物価上昇が激しくなっており、極めて厳しい消費需要の減退が起きていることは明らかである。
 家計調査はある程度の限界はあるものの、最も中心的な世帯が消費支出の減少によって、恐ろしいほどの生活水準の低下が始まっていることを示している。

 マネタリストたる高橋洋一氏の解説であるが、紹介します。
 ーーーーーーーーーーーーーーーーー
   過去33年でワースト2!消費税増税がもたらした急激な消費落ち込み 高橋洋一 6/30 現代ビジネス

総務省が27日に発表した5月の家計調査で、ちょっとびっくりするような数字が出た。

マスコミ報道では、「1世帯当たりの消費支出(2人以上世帯)は27万1411円で、物価変動を除いた実質で前年同月比8.0%減った。減少幅は4月の4.6%から拡大した」「家計調査の実質消費は、東日本大震災があった2011年3月(8.2%減)以来の落ち込みだった」と書かれている。

ちょっと長めのデータを見てみよう。それには、家計調査にある「消費水準指数」がいい。
これは、1世帯当たりの実質消費と似ているが、消費支出から世帯規模(人員)、1か月の日数及び物価水準の変動の影響を取り除いて計算した指数で、家計消費の面から世帯の生活水準をより的確に把握することができるものだ。

5月の消費水準指数の対前年同月比は▲7.8%と、たしかに東日本大震災があった2011年3月の▲8.1%以来の落ち込みなのだが、下図からわかるように、最近33年間における最悪が2011年3月なので、なんと2番目に悪い数字なのだ。

消費水準前年比推移

駆け込み需要の反動減が出るのはわかっていたので、4月の▲4.5%には驚かなかった。
しかし、5月が4月よりこれほど悪くなるとは、驚いたわけだ。

まあ、3月が7.4%と過去33年間で最も高かったから、その反動減で悪くなったと説明できればいいのだが、以下に述べるように、そうは問屋が卸さない。

  過去2回と比べても異常に大きい下振れ

思い返すと1年ほど前、消費税を増税しても景気は大丈夫という人が多かった。

筆者は、金融政策の大転換で、景気は良くなるものの、消費税増税の影響は、景気が本格的に回復する前なので、楽観は危険だと言い続けてきた。
2013年8月12日付け本コラム(→こちら)では、財政政策なしの前提で、2014年度はマイナス成長もあり得ると言った。

さすがに、財務省が予算を大盤振る舞いしたので、マイナス成長になる公算は低くなったが、それでも1%にもならない可能性が高いだろう。

政府は、この数字でもまだ楽観的だ。

甘利明経済財政・再生相は27日の閣議後の記者会見で「基調としては消費も回復に向かっていると判断していい」と発言している。
事務方は、もう少し数字をきちんと説明したほうがいい。
総務省も「想定の範囲内の動き」というが、何を想定していたのか、前に明らかにしていないので、なんとでも言える。
このような言い方の時は危ないと思ったほうがいい。

まず、消費税増税の影響であるのは間違いないので、前の増税時と比べてみよう。
以下の図は、筆者が講演などで消費税の影響を説明するときに使うものだ。
増税は過去2回、1989年増税(創設時、つまり0%→3%の増税)、1997年増税(3%→5%)なので、その前後1年で経済指標の推移を書いたものだ。
数字はGDPや消費などの前年同期比を取っているが、本コラムでは消費水準指数の前年同月比とする。

増税前後

1989年と1997年を見ると、それぞれ4月の増税後6か月ぐらいは似たような景気動向で、消費税増税の影響はあまり現れていない。
しかし、6か月を過ぎるあたりから両者の景気動向に差がつき始める。1年後になると、89年増税時と97年増税時では大きな差がついた。

この理由はまず、89年は景気が良かったこと、97年はそれほどでもなかったことだ。
消費税以外の税では、89年は減税もあったこと、97年ではならしてみると、増税減税ニュートラルだったことなどで、89年は消費税増税の影響は97年より少なかった。

それが今回は、図からわかるように、増税後の2か月で89年と97年を大きく下回っているのだ。2か月だけみると、今回の下げは異常に大きい

家計調査は調べる項目が多く、サンプル数が約8000と少ないのがネックになって振れが大きいこともあるが、それにしても今回の下振れは大きすぎはしないか。

それぞれについて、増税前1年間平均と増税後2か月平均の差(増税後2か月平均マイナス増税前1年間平均)をとってみると、89年では▲4.6%ポイント、97年は▲2.4%ポイントに対し、今回は▲7.1%ポイントと大きいのが際立っている

  10%への再引き上げはスキップすべき

これがいかに異常な数字なのかを、過去33年間のデータで見てみよう。
前1年間平均と後2か月平均の差は、下図のような頻度になっている。当然ながら、ゼロ付近のことが多い。
今回の▲7.1%ポイントは、370回に1回起こるかどうかの最悪の数字だ。

33年間

全体の数字も悪いが、中身を見ていると、すべての項目で悪い
下の図は、全体の数字の他に、各内訳項目ごとに、増税前1年間平均と増税後2か月平均の差をとって、89年、97年、今回を比較したものだ。

指数の変化

これだけ悪い数字になると、手を打っておくほうがいい。もし本当に97年のようになったら、どうしたらいいだろうか。
金融緩和には本格的な効果が出るまでには2年程度のラグがあるので、もう間に合わない。となると、財政政策になる。

ただし、公共事業はすでに供給制約の壁にぶち当たっている。
このため、予算の執行状況について、執行時期や規模の具体的な数値目標を定める方針だ。
ただ、目先の供給制約はいかんともしがたく、目標を定めたところで、どうにもならない。むしろ、目標あわせの小細工を誘発しかねず、建設資材価格の急騰すら招きかねない。

となると、財政政策の対応は、従来のような公共事業の積み増しでは対応できない。
減税・給付金のような「バラマキ」によって有効需要創出に制約のないものにしなければいけない。
(中略)
はたして、これらの用意が今の政権内にあるのだろうか
 ーーーーーーーーーーーー
※ はっきり言ってしまえば、消費需要の減少で実体経済はデフレ循環のままでインフレ、すなわち悪質なスタグフレーションが始まっている。
 そして、対策としては減税・給付金のような「バラマキ」しかない。もちろん出来るわけもない。
 高橋洋一氏は「今の政権にはできない」と言うが、たとえ出来ても既に効果はないのだ。

 勤労家計の所得減少は17年に及び、今、物価上昇と生活水準の低下が始まっているなかで、そして年金、社会保障などの先行きがくらいなかで、多少のバラマキくらいで消費需要は増えるわけがない。せっせと貯蓄にまわるだけである。
 唯一、最低の生活消費に追われて貯蓄が全くない、消費性向100%の階層を重点的にバラマクこと。つまり法定最低賃金を二倍くらいに強行すれば少しは効果があるだろう。

 何のための金融緩和、何のための円安、何のための消費増税だったのかということだ。

 アリバイ作りに等しい法人減税、少子化対策、残業代ゼロなどが「成長戦略」だというのだから、すべてはまともな話ではないのだ。
 ふつうの経済政策であるかのように国民を騙したマスコミが重罪だが、そんな馬鹿な話に騙される国民もかなり小学生なみだ。
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コメント

アメリカ、あるいは戦前の日本は主義主張ではなく生活苦のために軍隊志願は珍しくありません。私の祖父もその一人でした。
集団自衛権の行使を足がかりに民主主義は崩壊し徴兵制を設ける、いえ超格差社会のため生活苦で日本の若者も志願せざるを得ない時代が。
デモに参加できなかった私も無関心な人と同罪ですが。。。

連投すみません

デモに参加できなかった私も無関心な人と同罪ですが。。。
、は撤回します。
政治も放射能問題もできることをしていきます。デモ参加だけが全てではありませんから。

窮乏化が自衛隊志願者を増やすのでは

> デモ参加だけが全てではありませんから。
選挙、裁判、デモなども国民の主権の行使ですが、関連する多くの行動、発言で流れを作ってゆくことも主権の行使と思っています。
多くの人が嘘と捏造で洗脳されている現状、浪花節的な感情論で実際の事実が報道されていないことを有耶無耶にしてしまう国民性。
大手マスコミが最も悪質だと思うのも、そこから来ています。
話は変わりますが、戦前の日本は国民の7割位が農業で、極めて貧しい小作農でした。
不景気になると地主に収奪されて、タコ部屋も女工哀史も人身売買も普通の世界でした。
その環境で徴兵制が成立していたようにも思うのです。
今は国民の9割が雇用されているサラリーマンの勤労者ですが、さらに非正規雇用が増えて生活水準が低下し、インフレと不況で勤労者の窮乏化が進むと、若年者は自衛隊を志願する者がずいぶんと増加すると思うのです。
集団的自衛権を発動されれば命を失う危険が現実になるのですが、若気の至りで考えないでしょう。
最低賃金の時給で月10万くらいで、死ぬほどこき使われるくらいなら、命令に従うロボットとはいえ正規雇用で三食付き、被服支給、技能習得、一般公務員の1.5倍近い給料がもらえる自衛隊に向かうでしょう。
勤労者の窮乏化は自衛隊志願者を急増させる。
政策的にすごく辻褄が合っているように思います。

仰るとおりだと思います。税金は増える、収入は減る。
 アメリカでは学生ローンの自己破産が認められず、厳しい取立ての中やむを得ず軍隊志願。それどころかスリーストライク法だったと思いますが3度逮捕されると終身刑で外にでられず、民間化された刑務所ビジネスが重宝されているとか。
 既に奴隷です。アメリカの後を追う日本もこの先どうなることでしょうか。警鐘鳴らす方は何人もいますが多くの国民は洗脳機器、TV,大手新聞が情報源ですからぬるま湯に浸かった蛙、といったところでしょうか。

仰るとおり米国が先例でしたね。
貧困な若者が軍に志願し、アフガンとイラクだけでも7千人も死んでいますが、支配層にとってはゴミ。
少しでも油断していると、いつの間にか貧乏人は奴隷扱い。
テレビは背広姿ばかりで作業服姿はほとんど登場しない。
未だに一億総中流の妄想をまき散らしてるつもりのマスコミ。
ゆでガエルから脱出しなければ。

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