勤労家計の実収入は7.1%減!
2014-06-08
デフレの縮小循環が何も解消しないまま、過剰な「異次元財政ファイナンス」による20%もの円安(輸入原材料の高騰)がつづいているところに、消費増税である。
これでインフレになったからデフレ脱却などと小学生でもだまされないような珍論を公然と言い出す御用評論家がいるらしい。
実体経済は何も好転どころはない。経済の足腰である中小企業と農業などが破壊されつつある。
一時的な株価と円安バブルであるが、実質はデフレのままである。
勤労所得が下がり続けて、消費需要が下がり、物価が遂に抑え用もなく上がり始めている。
私たちはおそらく、未曾有の「超」スタグフレーションに向かっているのを目撃するのだろう。
グローバル投機資本によって、いつ超インフレと超金利高騰に向かうかもしれない、最も危険なスタグフレーションが始まったばかりだ。
アベノミクスに対しての迎合的な発言が、ようやく消えてしまった田村氏から二題。
ーーーーーーーーーーーー
消費増税便乗値上げを「脱デフレ」と評価する御用学者たち 5/26 田村秀男

勤労者月収と物価
民主党政権時代の2011年6月、消費税増税案を作成した与謝野馨経済財政担当相(当時)に会って、拙論が「デフレ下での消費税増税は避けるべきではないか」と反対論をぶったとき、与謝野氏の脇にいた官僚氏が「消費増税すると物価が上がりますからね」とニタッと笑った。
そんな経済に無知な官僚が裏で増税でメディアを篭絡(ろうらく)し、政治家たちを懐柔する。
「無知」と言ったのは、物価上昇=脱デフレという短絡思考のことである。「雇用・利子および貨幣の一般理論」(1936年)を著したJ・Mケインズはデフレについて、「物価下落が続くという予想」と論じたばかりでなく、「(デフレは)労働と企業にとって貧困化を意味する。雇用にとっては災厄になる」と考察している。
つまり、デフレかどうかは物価と雇用の両面から判定するべきだと説いている。
学生時代の官僚を教えた経済学教授たちはケインズを読んでいないようだ。
最近、東大などの経済学教授2人が日本経済新聞の経済教室欄で相次いで、企業が消費増税の機会を利用して消費税増税分以上に値上げするケースが目立つのを評価し、「デフレ脱却の契機を与えているという解釈も可能かもしれない」とうそぶいている。
拙論は日本の慢性デフレというものを、「物価下落をはるかにしのぐ速度で勤労世代の給与が下がっている状態」とかなり前から定義してきた。
グラフはそれを裏付ける。1997年度の消費増税で消費者物価は上昇したあと、98年末からじわじわと下がり続けてきたのが、2007年にいったん下げ止まった。そして08年のリーマン・ショック以降、再び下落していたのが、「アベノミクス」が始まった13年に上昇に転じた。
(※ 北風:緩やかな拡大基調といった自然な経済では、物価も消費需要拡大につれて緩やかに上昇基調をとる。
ところが世界で唯一、日本は勤労所得の減少が16年にわたって続いた。
賃金の下方硬直性が適用されない特殊な例外の国だったわけである。
消費需要は拡大せずもちろん、翌年1999年から物価下落が続き、今に至るもデフレ縮小循環が続いている。
デフレからの脱却は勤労所得(厳密には勤労家計の可処分所得)の増加が不可欠である。
勤労家計が消費需要、そして設備投資復活の最重要な要であることは、御用エコノミストによって隠されてきた。
ところが、ほかならぬ安倍某が経団連に賃上げを要請という行動で公然化したのである。)
13年の物価水準は97年に比べて3%弱の下落幅にとどまる。
だが、これでも「デフレ」は続いている。勤労者月収は97年には48・7万円だったのに13年は14・6%減の41・6万円だ。
今年はよくなるのか。
物価上昇率を名目賃金から差し引いた実質賃金はこの1~3月期、前年同期比マイナス1・8%と下降が続く。
春闘によるベアも大企業ですら1%に満たないし、消費増税分を加えた物価上昇率は日銀政策委員会見通しで今年度3・3%に上る。
物価の大幅な上昇の半面で所得がわずかしか上がらない家計が消費に回せるカネは減る。
家計がそれを実感し出すと、企業は需要減に直面し、価格を下げるようになる。
値下げしてもいったん減った市場シェアを回復できず、利益減の割合は値下げ率をはるかに上回る。
企業はそこで賃金や雇用を減らすようになる。
これが、97年度の消費増税から1年以上経ったあとから始まった日本の慢性デフレの実相である。
需要が弱い環境下での値上げは官僚や教授たちが言うように、脱デフレの契機になりうるのではなく、その逆で、デフレを加速させるきっかけになりうるのである。
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家計は打撃でも株価上がるのか 勤労者家計の実収入が急減 6/6 田村秀男
消費税率が8%に引き上げられてもう2カ月経った。
「増税値上げを見越して予算を組んだはずなのに、月末で締めてみたら、財布には1円玉と硬貨ばかり。消費をもっと切り詰めなきゃ」と戸惑うサラリーマンや主婦は多いだろう。
一方で、日経新聞などは盛んに消費増税前の駆け込み消費からの反動減は「想定内」で、消費は夏場から回復すると書き立てるが、いったい、だれが消費を増やせるというのだろうか。
8%も給与が上がった国家・地方公務員だろうか。

総務省統計局が最近、発表した4月の「家計調査」結果はまさに、消費増税後の暗い先行きを指し示している。
家計消費支出は前年同期比で実質6・9%減となった。
家計消費は日本の国内総生産(GDP)の6割を支えている。
前月までの駆け込み需要の反動で、かなり落ち込むのは当然だが、1989年度の消費税導入時や97年度の税率引き上げ時よりも下落幅が大きい。
もっと恐るべきは、勤労者家計の実収入が前年比実質7・1%減と急減したことだ。
名目では同3・3%、月1万5980円減だが、消費税アップ分が加わった消費者物価上昇などが実質収入を大きく減らした。
もちろん、春闘を受けた賃上げが本格的に反映するのは5月分給与からであることを勘案しなければならないが、賃上げ率は1%未満という企業が一般的だ。公務員以外に7%以上も減った収入を回復できる人々はごくわずかにとどまるに違いない。
「雇用情勢が好転しているではないか」との指摘もあるだろう。確かに、4月の有効求人倍率は1・08だが、それは「季節調整」という統計手法を使った官僚による数字操作の産物だ。
調整前の実数でみると、求人数と求職者数はともに229万8000人台で、わずかながら求職者数が多いし、しかも求人数は減る傾向にある。
求人動向は国内需要の先行き見通しで決まり、需要は家計収入に左右される。
家計収入が縮小すれば、消費需要は萎縮するので、売り上げ減を見越した企業は雇用を増やすどころか、抑制し始める。
そのために雇用者の収入がさらに減り、消費者の心理は冷え込む。
すると、多少の値下げでも消費水準は回復せずに、停滞が続く。
その結果、企業は賃金をさらにカットする。
これが15年デフレの実相であり、消費者物価の値下がり幅は5%未満に対し、給与は15%も下がった。
ここでグラフを見よう。
家計の収入、消費動向と日経平均株価の推移である。
消費支出は昨年夏までは株高にも反応して増加した。
逆に、株価も下がり出した今年1月以降、消費支出は崖から転げ落ち出した。勤め先からの収入が細った状況のもとで、消費を刺激できそうな数少ない方法は株価の押し上げだ。
市場は6月には日銀による金融緩和の追加策や政府の「成長戦略」に注目するが、増税で家計を痛めつけたままで、株価は再浮上するのか。
ーーーーーーーーーーーー
※ 実体経済の回復を原因としない株高は所詮は単なる小バブル。
長くとも数年で内外のきっかけで崩壊する。
もちろん持続的な消費需要になどならない。
これでインフレになったからデフレ脱却などと小学生でもだまされないような珍論を公然と言い出す御用評論家がいるらしい。
実体経済は何も好転どころはない。経済の足腰である中小企業と農業などが破壊されつつある。
一時的な株価と円安バブルであるが、実質はデフレのままである。
勤労所得が下がり続けて、消費需要が下がり、物価が遂に抑え用もなく上がり始めている。
私たちはおそらく、未曾有の「超」スタグフレーションに向かっているのを目撃するのだろう。
グローバル投機資本によって、いつ超インフレと超金利高騰に向かうかもしれない、最も危険なスタグフレーションが始まったばかりだ。
アベノミクスに対しての迎合的な発言が、ようやく消えてしまった田村氏から二題。
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消費増税便乗値上げを「脱デフレ」と評価する御用学者たち 5/26 田村秀男

勤労者月収と物価
民主党政権時代の2011年6月、消費税増税案を作成した与謝野馨経済財政担当相(当時)に会って、拙論が「デフレ下での消費税増税は避けるべきではないか」と反対論をぶったとき、与謝野氏の脇にいた官僚氏が「消費増税すると物価が上がりますからね」とニタッと笑った。
そんな経済に無知な官僚が裏で増税でメディアを篭絡(ろうらく)し、政治家たちを懐柔する。
「無知」と言ったのは、物価上昇=脱デフレという短絡思考のことである。「雇用・利子および貨幣の一般理論」(1936年)を著したJ・Mケインズはデフレについて、「物価下落が続くという予想」と論じたばかりでなく、「(デフレは)労働と企業にとって貧困化を意味する。雇用にとっては災厄になる」と考察している。
つまり、デフレかどうかは物価と雇用の両面から判定するべきだと説いている。
学生時代の官僚を教えた経済学教授たちはケインズを読んでいないようだ。
最近、東大などの経済学教授2人が日本経済新聞の経済教室欄で相次いで、企業が消費増税の機会を利用して消費税増税分以上に値上げするケースが目立つのを評価し、「デフレ脱却の契機を与えているという解釈も可能かもしれない」とうそぶいている。
拙論は日本の慢性デフレというものを、「物価下落をはるかにしのぐ速度で勤労世代の給与が下がっている状態」とかなり前から定義してきた。
グラフはそれを裏付ける。1997年度の消費増税で消費者物価は上昇したあと、98年末からじわじわと下がり続けてきたのが、2007年にいったん下げ止まった。そして08年のリーマン・ショック以降、再び下落していたのが、「アベノミクス」が始まった13年に上昇に転じた。
(※ 北風:緩やかな拡大基調といった自然な経済では、物価も消費需要拡大につれて緩やかに上昇基調をとる。
ところが世界で唯一、日本は勤労所得の減少が16年にわたって続いた。
賃金の下方硬直性が適用されない特殊な例外の国だったわけである。
消費需要は拡大せずもちろん、翌年1999年から物価下落が続き、今に至るもデフレ縮小循環が続いている。
デフレからの脱却は勤労所得(厳密には勤労家計の可処分所得)の増加が不可欠である。
勤労家計が消費需要、そして設備投資復活の最重要な要であることは、御用エコノミストによって隠されてきた。
ところが、ほかならぬ安倍某が経団連に賃上げを要請という行動で公然化したのである。)
13年の物価水準は97年に比べて3%弱の下落幅にとどまる。
だが、これでも「デフレ」は続いている。勤労者月収は97年には48・7万円だったのに13年は14・6%減の41・6万円だ。
今年はよくなるのか。
物価上昇率を名目賃金から差し引いた実質賃金はこの1~3月期、前年同期比マイナス1・8%と下降が続く。
春闘によるベアも大企業ですら1%に満たないし、消費増税分を加えた物価上昇率は日銀政策委員会見通しで今年度3・3%に上る。
物価の大幅な上昇の半面で所得がわずかしか上がらない家計が消費に回せるカネは減る。
家計がそれを実感し出すと、企業は需要減に直面し、価格を下げるようになる。
値下げしてもいったん減った市場シェアを回復できず、利益減の割合は値下げ率をはるかに上回る。
企業はそこで賃金や雇用を減らすようになる。
これが、97年度の消費増税から1年以上経ったあとから始まった日本の慢性デフレの実相である。
需要が弱い環境下での値上げは官僚や教授たちが言うように、脱デフレの契機になりうるのではなく、その逆で、デフレを加速させるきっかけになりうるのである。
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家計は打撃でも株価上がるのか 勤労者家計の実収入が急減 6/6 田村秀男
消費税率が8%に引き上げられてもう2カ月経った。
「増税値上げを見越して予算を組んだはずなのに、月末で締めてみたら、財布には1円玉と硬貨ばかり。消費をもっと切り詰めなきゃ」と戸惑うサラリーマンや主婦は多いだろう。
一方で、日経新聞などは盛んに消費増税前の駆け込み消費からの反動減は「想定内」で、消費は夏場から回復すると書き立てるが、いったい、だれが消費を増やせるというのだろうか。
8%も給与が上がった国家・地方公務員だろうか。

総務省統計局が最近、発表した4月の「家計調査」結果はまさに、消費増税後の暗い先行きを指し示している。
家計消費支出は前年同期比で実質6・9%減となった。
家計消費は日本の国内総生産(GDP)の6割を支えている。
前月までの駆け込み需要の反動で、かなり落ち込むのは当然だが、1989年度の消費税導入時や97年度の税率引き上げ時よりも下落幅が大きい。
もっと恐るべきは、勤労者家計の実収入が前年比実質7・1%減と急減したことだ。
名目では同3・3%、月1万5980円減だが、消費税アップ分が加わった消費者物価上昇などが実質収入を大きく減らした。
もちろん、春闘を受けた賃上げが本格的に反映するのは5月分給与からであることを勘案しなければならないが、賃上げ率は1%未満という企業が一般的だ。公務員以外に7%以上も減った収入を回復できる人々はごくわずかにとどまるに違いない。
「雇用情勢が好転しているではないか」との指摘もあるだろう。確かに、4月の有効求人倍率は1・08だが、それは「季節調整」という統計手法を使った官僚による数字操作の産物だ。
調整前の実数でみると、求人数と求職者数はともに229万8000人台で、わずかながら求職者数が多いし、しかも求人数は減る傾向にある。
求人動向は国内需要の先行き見通しで決まり、需要は家計収入に左右される。
家計収入が縮小すれば、消費需要は萎縮するので、売り上げ減を見越した企業は雇用を増やすどころか、抑制し始める。
そのために雇用者の収入がさらに減り、消費者の心理は冷え込む。
すると、多少の値下げでも消費水準は回復せずに、停滞が続く。
その結果、企業は賃金をさらにカットする。
これが15年デフレの実相であり、消費者物価の値下がり幅は5%未満に対し、給与は15%も下がった。
ここでグラフを見よう。
家計の収入、消費動向と日経平均株価の推移である。
消費支出は昨年夏までは株高にも反応して増加した。
逆に、株価も下がり出した今年1月以降、消費支出は崖から転げ落ち出した。勤め先からの収入が細った状況のもとで、消費を刺激できそうな数少ない方法は株価の押し上げだ。
市場は6月には日銀による金融緩和の追加策や政府の「成長戦略」に注目するが、増税で家計を痛めつけたままで、株価は再浮上するのか。
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※ 実体経済の回復を原因としない株高は所詮は単なる小バブル。
長くとも数年で内外のきっかけで崩壊する。
もちろん持続的な消費需要になどならない。
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