ウクライナ大統領選は内戦の泥沼か
2014-05-22

トゥルチノフ
近づくウクライナ大統領選挙と報道されない事実 5/22 闇株新聞
5月25日にウクライナ大統領選挙が行われます。
日本では「ウクライナ民主化のための大統領選挙が、ロシアの軍事圧力で東部を中心に混乱が続いている」というのが平均的な報道ですが、実態は「全く」違います。
ウクライナは1991年に旧ソ連から独立しました。旧ソ連では農業・鉱業・重工業の中心地域であり、地理的にロシアと欧州の間に位置する軍事上の要地でもあり、さらにロシア・欧州間のガス・パイプラインが数多く通過する、ロシアにとっても欧州にとっても(ロシアとの対抗上で米国にとっても)、味方につけておきたい国です。
それをいいことに独立後のウクライでは、一握りの政治家や財界人が利権を独占して私腹を肥やし、常に国家財産・国家予算の配分を巡って(要するに誰の懐に入るかで)対立し、そのたびに欧州・米国とロシアがそれぞれ対立するグループを支援する歴史でした。
また対立の構造がたびたび変化し(要するに裏切りが頻発し)、親ロシアか親欧州・米国でもコロコロと入れ替わっていました。
要するにウクライナ人民はそっちのけで国家財産・国家予算の「仁義なき分捕り合戦」が続き、当然に国家財政は破たんしています。
その構造は2004年大統領選挙のユシチェンコとヤヌコビッチの対立(オレンジ革命)、2010年の大統領選挙のヤヌコビッチとティモシェンコの対立、そして今回のヤヌコビッチ追放など、すべて全く同じ構造です。
現在のウクライナ暫定政府とは、大統領代行が元秘密警察長官のトゥルチノフ(もともとKGBですが、現在はCIAとMI6に近い)で、閣僚の大半がネオナチ政党のスボボダ(Svoboda)です。
スボボダを解説すると非常に長くなるので省略しますが、日本ではウクライナ人民にために「悪のロシア」と戦っていると信じられている暫定政権の正体は、秘密警察と極右(ネオナチ)政党なのです。
さらに元秘密警察長官のトゥルチノフ大統領代行は、東部で自国民(ロシア語を話すウクライナ人)をテロリストと決めつけて殺害命令を出しています。
つまり現在のウクライナの対立とは、暫定政権と東部のロシア語を話すウクライナ人の対立でしかなく、ロシアが介入しているわけではありません。
この状況はドイツも英国も理解しており、暫定政権とは距離を置き始めています。
感情的にロシアとプーチンが悪いと叫んでいるのはオバマ大統領だけです。
またこの機会に乗じて「政治的駆け引きに長けた」IMFは、早々と171億ドルもの「ウクライナ金融支援」を決定したのですが、増資を行わないと全く資金がありません。
IMFに対して唯一拒否権を有する米国は増資に応じるはずがなく、ドイツと英国は完全に「見て見ぬふり」で、IMFのターゲットは中国との出資枠逆転を恐れる(財務省の天下りポストの副専務理事が中国に奪われると恐れる)日本しかありません。
民主党政権時代に財務省はこのポストのためだけに「何の意味もない600億ドル」を気前よく拠出していました。
IMFの微妙な立場(米国と対立しており、かといって欧州でも信頼されているわけではない)は、しっかりと理解しておかなければなりません。
5月25日の大統領選挙に話を戻しますが、暫定政権の「表の顔」としての有力大統領候補は、財界人で経済相や外相を歴任したポロシェンコと、元首相のティモシェンコです。
菓子帝国ロシェンを率いる大富豪ポロシェンコは、もともと親ロシアでしたがプーチンに製品を輸入禁止にされたため親欧州・米国に鞍替えしたのですが、要するに常に政権側(つまり国家財産を分捕る側)についている48歳の凄腕です。
またティモシェンコは国家のガス利権を独占していたのですが、2011年に国家財産横領容疑で(もっと横領していた)ヤヌコビッチに逮捕され投獄されていました。
ポロシェンコが圧倒的に有利のようですが、いずれにしても国家財産を分捕る主体が変わるだけであり、スポンサーがロシアから欧州・米国に移るだけです。
もちろん秘密警察とスボボダは新政権の「裏」の重要な役割を果たすことになります。
それではロシアとプーチンはどうしているのでしょう?
クリミアはロシアにとって軍事上の要地であるだけではなく、クリミア住民の大半もロシア併合を望んでいました。
ところがウクライナ東部2州の住民は、ロシア語を話すものの同じウクライナ人でロシアとの併合を望んでいるわけではありません。
したがってロシア軍がウクライナ東部に軍事侵攻することもありません。
繰り返しですが大統領選挙を巡る混乱とは、新たに政権につく(新たに国家財産を分捕る)一握りのウクライナ人と、東部のロシア語を話す同じウクライナ人との対立構造でしかありません。
たぶん大規模な衝突あるいは戦闘が起こるはずです。
プーチンはこのウクライナ人同士の争いに首を突っ込んでしまうと、ロシア国内にも大勢いるウクライナ人に混乱が飛び火してしまうため、あくまでも傍観するだけです。
(※ 北風:民族はパスポートの自己申告なので実態は不明だが、ロシア国内の10%近くはウクライナ人、20から40%はウクライナに親戚がいるような、そうした実態である。
つまり内戦の泥沼となりそうだが、そこにロシアが軍事介入するとアフガン介入どころではない。即座にロシア国内に泥沼が波及することになる。
米国と軍産複合体はロシアの軍事介入を挑発し、親ロ派をテロリストとして排除しているが、ロシアはこの挑発には乗らないだろう。)
日本政府にとって最悪のシナリオは、ウクライナで米国と完全共同歩調を取った結果、ロシアが中国ともっと接近してしまうことです。
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