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もうすぐ北風が強くなる

小沢、堀茂樹対談:世界と日本(4)

 小沢堀3

 小沢、堀茂樹対談:世界と日本(3)からの続きです。
 ーーーーーーーーーーーーー
堀 茂樹
 これから日本の,経済も含めて,日本の文化もあると思うんですけど,最近,日本文化ってのはわりと,経済成長が止まったあたりから逆に,ヨーロッパ辺りでは日本の文化が尊敬され始めてるので,(尊敬され)始めてるどころじゃなく,大変尊敬されていると言ってもいいかも知れません。
 そういう状況もありますし,全般的にこれから 21世紀(は)まだ始まったばかりなので,歴史は動くと思うんですね。
 今何かこう,私なんかの立場だと,どうしても悲観しがちなんですが。
  しかし,まだまだ映画は終わってない,フィルムは終わってない。
 歴史は展開すると思うんで。そうすると21世紀の日本,世界の中でどういうふうに生きてったらいいと思いますか

小沢 一郎
 今の現状を見ると,ちょっと歴史に逆行するような動きになってますよね。 ロシアの今の姿,見ても。アメリカもそうですけど。

堀 茂樹
 はい。

小沢 一郎
 これは非常に,このまんまだと,またかつての歴史を繰り返す話しになっちゃうんで,やはり日本の役割ちゅうのは非常に大きいと思います。
 ただ,日本人は先ず自立しなきゃいけないですが。 自分で考え,自分で決断し,自分の責任で行動できる日本人に,日本に,なんなきゃならない
 それが大前提ですけど,僕はちょっと先生と,この点は意見が違うかも知れませんが,(堀氏・笑) 欧米のキリスト教的哲学を背景にした文明というのは,私は,かなり限界に近付いてると思ってるんですよ。

堀 茂樹
 ああ,はい。

小沢 一郎
 それに反して,東洋の考え方ってのは(より包容力がある)。
 要するに,例えば欧米の考え方,極端に言えば,人間が最高の存在であり,その他は人間の幸せのためにあるみたいな考え方。

堀 茂樹
 まあ...人間中心主義。

小沢 一郎
 人間中心でしょ。何でも利用する,活用する,だからそれを必ず征服する,という発想に繋がるんですよね。
 東洋の哲学,仏教哲学ですけど,それは人間の存在というのは自然の中の一つだと捉えてますね。

堀 茂樹
 はい。

小沢 一郎
 自然を征服しようなんていう気は,東洋哲学には無いですよね。

堀 茂樹
 はい。

小沢 一郎
 自然の中で,生きている一つの存在,と。悠久なる自然と,限りある生命という感じで。

堀 茂樹
 はい。

小沢 一郎
 だから,特にそういう中で,日本は,もう一つは,非常に融通無碍なんですね,日本人は。

堀 茂樹
 そういうところありますね。善きにつけ悪しきにつけ。

小沢 一郎
 そう。 善し悪しなんですけどもね。 (少し笑)いい加減といやあ,いい加減なんですよ。

堀 茂樹
 はい。

小沢 一郎
 宗教でもって凝り固まってる人ってのも,ほとんどいないでしょ。
 仏様拝んだり,神様拝んだりしたからって,別に熱烈な仏教徒,神道信者つうわけじゃないでしょ。
 宗教に対する偏見ないですね,ほとんど。何教であっても,「あいつ何教だからダメだ」とか,そういう偏見もないし。
 文化的にも,古来から中国から,朝鮮半島から,何だかんだって入れるし,西洋からも,どんどん,どんどん入れる。
 明治維新には,もう,どんどん,どんどん西洋文明を入れる。そういうことも全然抵抗ないでしょ。

堀 茂樹
 そうですね。あの...ちょっと注釈で言うと,面白いことに,日本語っていうのがそうですね。

小沢 一郎
 ああ,日本語。うん,うん。

堀 茂樹
 平仮名,片仮名。漢字がもちろん,最初,文字として来て。 平仮名,片仮名,アルファベット,何でもかんでも,胃袋のように,こう,採り込んでしまって。

小沢 一郎
 その点,僕は日本は,世界的にそういう思想をもっときちんと体系化して,そして自分のものにして,発信する,と。
 争っちゃ,いかんのだ,と。宗教で以って何で争うんだ,と。民族の違いで,何で争うんだ,と。
 まずは日本のあれを見ろ,と。ていうね,日本人の融通無碍,いい加減さっちゅうのは,良い意味で21世紀以降のこれからの世界を構築していく上において,とても良い性質というか,僕は思ってるんですよ,日本人のこの在り方。

堀 茂樹
 でも小沢さん,それも私もそう思うんですけどね。
 しかし,融通無碍の悪いところもありまして,何でもネゴシエィションできてしまうって言うかね...  
 例えば,憲法のような根本原則。 例えば基本的人権。これは,たとえ西欧から概念が生まれてきたとしても,世界普遍で,別に西欧の専売特許ではなくて共有できるもんじゃないかと。
 こういう原則についても,まあ,そこそこネゴシエィションの対象にする...そこは良くないんじゃないですか。

小沢 一郎
 だから,そこは,自立してないからですよ。

堀 茂樹
 ああ。

小沢 一郎
 僕の言うのは,まず自立が大事だってのは,そこなんですよ。

堀 茂樹
 ああ。

小沢 一郎
 基本的に人間として,あるいは社会として,日本として,それは護るべきものはあるし。
 それは自分自身できちんと判断し,自分自身のものはあって,それで相手のことも尊重する
 そういう自立した日本人と自立した国家というのを前提にしないと,何でも無原則には(良くない)。

堀 茂樹
 (何でも無原則には)良くないでしょ。
 小沢さん(は)よく「プリンシプルの人」って言われてるんですよ。
  principle プリンシプルが無いような面も,日本人の融通無碍には,しばしば観察されますよね。

小沢 一郎
 だから,自立してないからですよ。何でもいいと。
 寄らば大樹で。まあまあ皆な,どっちでもフワフワ,フワフワしちゃうでしょ。そこは悪い面なんですよ。
 良い面はさっき言ったように,そういう民族的偏見も宗教的偏見も,他の国にくらべりゃ遥かに少ないですよ,日本は。

堀 茂樹
 確かにね,ええ。

小沢 一郎
 ですから,基本の原則をきちんと持っていなきゃ,いけないですよ。 持っているけれども相手のものも認めると。

堀 茂樹
 そうです。

小沢 一郎
 その意味では,無原則じゃないんですよ。

堀 茂樹
 なるほど。そうであればね。

小沢 一郎
 相手のことを認めるという包容力,悪い言葉で言えば融通無碍なとこがあっていいんじゃないかと。

堀 茂樹
 なるほど。

小沢 一郎
 それがうまく発揮されりゃ,日本人の良いところだと,僕は思ってるんです。

堀 茂樹
 確かに。

小沢 一郎
 それを世界中に,そういうことを,きちっとした上で発信できる国家になったらいいなあと,僕は思うんです。
 まあ,自立しなきゃ,しょうがないんですけども。

堀 茂樹
 小沢さんの自立という...「自立と共生」その根本概念。その自立と仰るときの。ちょっと,こういうことも考えるときがあるんですね。
 小沢さんの仰っている自立というのは, independence インディペンデンスなのか,つまり独立ということなのか,あるいは autonomy(自律)オートノミー,律するほうですね (どちらなのか)。
 律するってことは,自己を統治する,自分で自分を制御して統治するということなので,小沢さんの自立ということは,まさに律するほうの自立とも言えるかなあと思ってるんですね。

小沢 一郎
 両方の意味でしょうね。

堀 茂樹
 両方ですか。

小沢 一郎
 うん。やっぱり,自分を律することによって自分で立てるんでしょうね。
 そこは,漢字は違うけれども,基本的に自立した人間というときは,その両方のあれを含んだものでしょうね。

堀 茂樹
 そうすると,よく,哲学のほうでも,これ国家についても言えるんですが,個人のレヴェルでも,個人の自律と,それからいわゆる独立=他に依存しないというのと,最近の考え方の一つですけれども,ちょっと識別することがあるんですね。

小沢 一郎
 はああ。

堀 茂樹
 そうするとね,個人でも,独立のほうは,一切他に依存しないということになります。
 もう,文字通りその意味にとると,その個というのは他人に対する窓を持っていない。閉じた個になっちゃうんですね。

小沢 一郎
 はああ。

堀 茂樹
 それに対して,自律 autonomy オートノミーってほうは,他にまったく依存しないのではない,お互い皆な,人は依存しあって暮らしている。
 だけど,自分のことは自分で,自分の領域は自分で決める,と。
 で,自分で統治すると。つまり自分のモットーを掲げて,そのモットーに自ら従う,というようなふうに分けることがあるんですね。

 そうすると,律するほうの autonomy オートノミーと,independence インディペンデンスと分けますと,ちょっとね,国家の,小沢さんの仰る「自ら立つ」自ら立ちながら国際協力をして,国連主義を用いてやっていくというのは,いわゆる旧来型の武装独立=他人には一切頼らない,オレの力で,オレは守るんだと。
 あるいは,仲間とだけは組んでいくんだ,というような,ちょっと古い19世紀20世紀の前半までぐらいのナショナリズムですね,そういうものを超えた,自ら律する,そして共生するということなので。
 私はまあ,考え方によっては,小沢さんの「自ら立つ」というのと,それから「共生」。 「自立と共生」これを合わせて,個人的自律,集団的自律,こんなふうに捉えて。
 そうすると,個というものと他者との共同生活の在り方,その観点から,個人のレヴェル,社会生活のレヴェルでも,それから国際社会のレヴェルでも,実は,深く掘り下げると,同じような精神的な在り方があるんじゃないかと。
 パラレルなんじゃないかと思っているんですね。

小沢 一郎
 うん。

堀 茂樹
 だから,私は小沢さんに興味持ったのは,実はそんなに昔からじゃないですけど,小沢さんの本を読ましてもらって「自立と共生」ってのに非常に感銘したのは,そこなんですね。
 だから,今日の伺ったお話しも,国際社会での世界での日本の生き方ってのも,なんかそういうものが,まさに具体的な形で語っていただいたような気がするんですね。

小沢 一郎
 日本人は論理的なあれが苦手ですから,そんならばやっぱり,現実世界,現実社会の中で,日本の国として,行動はあまり得手ではないけれども,具体的に国連の活動には積極的に参加すると。
 例えばね。国連のことで言えば。そういうことで一つひとつ,積み重ねていけば,だいたい日本人の頭ではイメージが出来てくんじゃないでしょうかね。

堀 茂樹
 1つ,念のために伺ってよろしいですか。国連に非常に積極的に,すすんで参加していこうということなんですが...これは私がどこかで読んだ覚えでは,だからと言って必ずしも国連で決まったことを,必ず日本が踏襲するとは限らないんじゃないですか。
 限るんですか。

小沢 一郎
 いいえ(限らない)。

堀 茂樹
 限らないでしょ。

小沢 一郎
 国連で決めたから,何が何でも従わなきゃならないっていうほどではない

堀 茂樹
 ないんですね。

小沢 一郎
 うん。そのときの,それぞれの国の事情ありますから。いや,このことは,ちょっとウチのほうじゃ出来ないというのは,いいですけど。
 まあ,旧来の日本のように,ちょっとヤバッチイことはイヤよという話しでは,通らないんじゃないですか。

堀 茂樹
 なるほど。じゃあ,主権を預けてしまうってことではないですね。

小沢 一郎
 (頷く)

堀 茂樹
 主権は,主権だと。

小沢 一郎
 ただ例えば,国連軍ができれば,国連に部隊を出せば,その時点において国連の...

堀 茂樹
 指揮下に入る。

小沢 一郎
 指揮下に入るということですね。

堀 茂樹
 なるほど。そういうふうになれば 本当に日本も,日本の矜持を保ちながら,堅持しながら,国際社会の本当に名誉ある地位を占めるという憲法の前文に適うようになるんではないかという気もしますね。

小沢 一郎
 少なくとも日本人は,そう言って胸を張れるでしょうね。
 だからと言って,今起きているウクライナが解決する,なんとかいうことではないけれども,日本人がやっぱり,そこまでの意志と行動を示せば,私は世界の中で,別に核武装なんかしなくたって,大きな地位を占められると思いますね。

堀 茂樹
 なるほど。私としては,小沢さんにそれを国連総会で言ってもらいたいですね。

小沢 一郎
 はははは(笑)

堀 茂樹
 まず,そのためには(小沢さんが)首相にならなきゃいけない。一回,聞きたいですね。

小沢 一郎
 本当にそういうことを,日本がやっぱり率先してやらないとね,これからの日本はなかなか,世界の中でね,生きていくのは難しいと思いますね。

堀 茂樹
 アメリカとの問題,韓国との問題,中国との問題でも本当に大変ですし。何て言うんですかね,もうちょっと しぶとさ も必要なんじゃないですか。

小沢 一郎
 そうですね。日本人はその点まだ初心(うぶ)ですから。
 他の国と交渉したことないわけですから。島国でずうっと何千年来てますからね。それは,しょうがないんです,ある程度は。
 大陸で育った民族の人達はね,常に争ってますからね。
 そこが日本人が苦手なのは,しょうがないですけど,やっぱり世界の人と付き合っていかないと,この平和と豊かさを維持できないとするならば,ある意味日本人もそれをきちんと身に付けないといけない。

堀 茂樹
 なるほど。そういう開かれた精神の積極性をもって世界に入って行くべきだと,日本は。 ということですね。

小沢 一郎
 はい。

堀 茂樹
 それを,今日の結論にさせていただいて。

小沢 一郎
 はい。

堀 茂樹
 今日は,どうも有り難うございました,4回目の(対談)。

小沢 一郎
 (笑顔で礼)

司会 大木
 堀先生,小沢代表,どうもお疲れさまでした。有り難うございます。

堀 茂樹
 有り難うございました。またよろしくお願いします。(小沢代表,堀教授立ち上がって握手。小沢代表,「どうも」と挨拶しながら会場中央を通って退場)
 (了)
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