小沢氏3/9講演、奈良:すべてに民主主義の認識を
2014-03-14

小沢一郎 講演会 3/9 奈良県たけまるホール(旧生駒市中央公民館)大ホール 書き起こし「銅のはしご」氏から
動画
皆さん,こんにちは。
ただ今ご紹介いただきました小沢一郎でございます。
今日は私(わたくし)の最も親しい,そして信頼する中村てつじ君の主催する会合に,来賓の皆さん始め大勢の方々,ご参加いただきまして,本当に有り難うございます。
本人ともども私(わたくし)からも,皆さんのご支援に心から感謝を申し上げるものであります。
本当に皆さん,有り難うございました。(小沢氏・礼。会場・大きな拍手)
今日は,彼のほうから30~40分何かお前喋れ,と。その後2人でまた個別の問題について,皆のまえで意見を交わそう,と。こういうことでありました。
皆さんお気付きと思いますが,ちょっと風邪をこじらせまして寝込んでおったもんですから,お聞き取りにくいところや,或いはちょっと話 しの行ったり来たりするところがあるかも知れませんけれどもその点はご勘弁を願いたいと思います。
今日,皆さんに私(わたくし)から最初にお話ししたいことはですね,基本的なこんにちの日本の政治,議会制民主主義の状況とあり方について,申し上げたいと思っておりました。
そして後半は,個別の問題について中村君と意見を交換したい。そのように思っております。
そこで,まず第 1はですね,皆さんの質問の,色々なご意見もありましたけれども「政権交代というのは,何なのか。或いは,何だったのか」というご意見がありました。
特に最近ですね,民主党政権の失敗の結果,また自民党の政権ができたと。
そして,一強多弱とも呼ばれる強大な政界地図の中で,もうどうしようもないと。自民党でやるっきゃないのかというような類いの一種のあきらめと言いますか,何かそんなムードがですね,
マスコミ始め世間に漂っているように感じておりますけれども,私(わたくし)は,これは非常に危うい考え方,間違った考え方だと思いますし,日本人の,結論を急ぎ過ぎるせっかちの国民性の結果ではないかというふうに思っております。
民主主義は,近代国家になれば議会制,政党による代議政治ということになります。
この民主主義は,古くにはギリシャの○○の時代とか,向こうの人は言いますし,ドイツのほうではゲルマンの民族の中から出たとも言いますけれども,いずれにしても,近代民主主義は代議制を(採る)。
今でもスイスは直接民主主義を採ってまして。
此間,皆さん,ニュース聞いた方おられたかな。
外国人のスイスへの流入を禁止するという国民投票が行なわれまして,賛成多数でスイスは外国人排斥とは言いませんけれども,そういう規制する方向になりましたが,このスイスを除けば,ほとんど先進国では代議政治が採られておることはご承知の通りであります。
代議政治を採るということになりますと,当然,政党政治。
それぞれの考え方に基づいてグループを作り,政党政治ということになります。
そして選挙で以って多数を得た政党が内閣を構成するということになるわけですけれども,この民主主義の最大の機能と言いますか,もっとも大事なところは,政権を国民から負託された政党がきちんと国民の皆さんのために,国民の皆さんと選挙の時に約束したことをきちんと政権として実行するかどうか。
そのことが問われるわけでありますけれども,それが,選挙の時と違ってるじゃないかと。
さっぱり国民に目が向いてないじゃないか。国民のためにならないじゃないか。
そういう判断を国民がした時には,次の総選挙で対立する野党に政権を国民が渡す,と。そういう仕組みが民主主義でありまして,
したがって,政権をもらった政党も,国民の目を常に意識しながら,自分達が訴えた政策を実現し,そのために努力をする。
そういう切磋琢磨によって,良い政治が行なわれるであろう。
こういう中で民主主義というのは成長してきたわけであります。
我が国ではですね,戦後半世紀に亘りまして,ほとんど,自民党を中心にした政権が続いてましたですよね。
これはね,世界中先進国で半世紀も政権が変わらないなんてのは,日本だけなんですよね。(日本だけ)だったんですね。
だからその意味において,日本は民主主義国家ではないというふうに言う方もありますし,そう言う世界の例もあります。
戦後のいわゆる高度成長と,東西対立という国際政治の舞台が,大きく変わったことによりまして,日本国内でも色んな(問題が表面化 してきた)右肩上がりの良き時代には何とかかんとか遣り繰りして誤魔化すことができたのが,高度成長が終わりまして,そして同時に少子高齢化という国内の状況になった。
その中でですね,皆さんの身近な年金の問題であれ医療の問題であれ,もちろん財政・税金の問題であれ,色んな問題が表面化してきたわけでして,それを何とかしなきゃいけない。
そのためには政権を変えてみるか,と。
こういう,日本国民にしては,まさに清水の舞台から降りるような,勇気を奮っての政権交代だったわけであります。
これは,細川政権の時と違いまして,自民党 ・与党と,民主党を中心とした野党との本格的な選挙戦によって政権が遷(うつ)ったという,まさに戦後半世紀以上を経て,初めての経験だったわけでございます。
したがいまして,これは今,負のほうの=マイナスのほうの批判ばっかり出されておりますし,メディア等もそういう論調ですので,国民皆さんもマイナス面ばっかりがインプットされがちでありますけれども,私(わたくし)は,これによって成立した民主党政権。
この次にその問題を申し上げますけれども,これが結果として失敗したからといって,政権交代の意味がなかったのかと言う類いの論調は,私(わたくし)は間違いだと思います。
今言ったように,民主主義は,1つの政権が,1つの或いは連立でももちろん良いんですが,政権与党が本当に国民の皆さんの期待通りの政治をしなかった。できなかった。或いはサボってた。
そういう時には,国民皆さんの,主権者の投票によって政権を変える,ということですから,ある意味において2009年の民主党政権の成立も,或いはその後の自民党政権のまた成立も,その原理に従っておりまして,その意味では当然の帰結のわけであります。
ですから,これによってですね,もう政権交代なんて意味ないねということを国民皆さんが思った時に,それは日本の民主主義は,そこで終わってしまいます。
議会制民主主義の最も先進国であるイギリスにおいてもそれこそ何十年何百年の歴史の中で,今のような,ある意味で完成された議会制民主主義が成立したわけであります。
日本はまだまだ特に戦後の(約69年間)。1回失敗したからって,それで民主主義を放棄するということになったらば,日本の将来はまさに暗澹たるものになってしまうだろうと,私(わたくし)はそのように思います。
戦前の政党政治・議会政治の状態は戦後とは違いますけれども,政党は駄目だと,政党は信用できない,そういう意識の中で結果としてご承知のように戦前の昭和史であの悲惨な戦争に突入しました。
私(わたくし)はそういう意味で,今このまんまだとすぐ戦争になるということを言ってるわけじゃありませんけれども,日本の国民の生活を守っていく上において或いは日本の国の将来を間違いのないものにするという意味において,非常に,政党不信すなわち民主主義不信という形になることだけは避けなければならないと思います。
議会制民主主義ちゅうのをしっかりと国民皆さんに理解してもらわなくてはならない。そしてこの日本に,本来の,本当の意味の,国民の皆さんのための民主主義が定着できるようにしなくてはならない。
私(わたくし)もその意味において,この世界でも馬齢を重ねて長い年月になりますが,ただ何としても,議会制民主主義の定着のその最初のレールだけはしっかりとこの日本に敷いていきたい。
そのように考えて今の自分に鞭打っているところでございます。
それから2つ目はですね,民主党政権がなぜ失敗したのかと。 こういうことを,しょっちゅう聞かれるんですけれども,ここで皆さんにも思い出していただきたいものは,民主党は 何を国民に訴えて政権を任されたのか。
その根本はですね,さっき言ったように内外の政治・経済の情勢が大きく変わった。そして日本の高度成長が終わった日本の政治・経済・社会の色んな矛盾が表面化してきた。
しかし高度成長の中で特に力を一層増大させてきた官僚機構(の力)は,国民の生活の隅々にまで行き渡っております。
皆さんもね「私は,俺は,そんなの関係ないよ」というふうに思われている方もあるかと思いますけれども,商売していても,サラリーマンでも,何でもすべて何らかの形で,日本の行政庁と省庁と大きな関わりを持ってます。
そして,商売されてる方でもお分かりと思いますが,それこそ税務署始めですね,日本の役所とケンカして「俺は自分でやるんだ」という心意気は良いですけれども,本当に嫌がらせされましたらば,まともな商売もできなくなるようなくらいに,大きな影響力を,日本の行政は持っております。
その役所がですね,時代の変遷に応 じて,じゃあその行政のやり方,政治のやり方を変えることができるのかって言いますと,それは,できません。
政治の基本の方針を,行政の基本の方針を,決めるのは,政治でありまして,或いは国民を代表している政治家でありまして,官僚ではありません。
ですから,この変化にですね,官僚機構の中から行政機構の中から「今までとは違った方法でやらなくちゃダメだ」「今までとは違った原則を打ち立ててやろう」というようなことは出てこない。 そしてまた彼等の仕事ではないんですね,それは。 それこそ政治の仕事なんです。
ところがずうっと,半世紀以上に亘って,もっと遡れば明治以来ですけれども,行政官僚にあらゆる面で,政治の場さえもですね,歪めてしまっていた政治家或いは政治が,その大きな変化にこれまた対応する策を,原則を,打ち立てることができなかった。
結局,我々も,民主党政権目指して闘いました。
その時に何と言ったか。色んな個別の政策がありますけれども,最大の前提として,今の官僚主導の政治では,私(わたくし)今言ったように,色んな社会の矛盾は解決できない。
皆さんの生活を将来に亘って守っていくことはできない。
だから,政治を国民主導の,政治家主導の政治に変えるんだ。(力強く)そういう中で以って,大胆な政策を打ち出し,こう私(わたくし)達は訴えたわけです。
官僚主導をやめて政治家主導の政治にするんだ,と。その中から初めて,地方のことは地方にお任せしよう,と。
財源も権限も,何も,国の霞が関で全部持ってる必要がどこにあるんだ。そんな必要ない。そいう考え方。
ですから,役所がいちいち,50万100万の補助金まで,霞が関のお役人がみんな,ああでもない,こうでもないと決めてる。何でそんな必要があるんだと。地元の自治体に任せりゃいいじゃないか。
ということで我々は,財源も権限も,身の回りのことは地方でできるように,そうしようと訴えたわけでありますけれども,
これは官僚機構の強大な権力を削ぐことになります。
その意味で非常に抵抗が強くなるのは当然目に見えてるんですけれども,我々は,それを訴えて,地方の自治であるとか,或いは年金制度の一元化とか,最低保障年金の問題とか,医療の問題とか,或いは地方で言えば農林漁業のセィフティ・ネットの問題とか,或いは雇用で言えば,根本的に今,日本の雇用のシステムが変えられようとしていますけれども,この雇用におけるセィフティ・ネットも作っていこうと。
そういった色んなことを具体策として提案しました。
しかし,そのことは,もちろん一部,民主党政権の下で実行されたこともありますけれども,根本的な,官僚主導から政治主導へという政治の変革は実現できない。
結局,自民党政権と同じように官僚に任せて官僚の上に乗っかって政権を運営するという形になってしまったということですね。
だから「何だ,自民党と同じじゃないか。だったら慣れ親しんだ自民党のほうがいいや」ということになるのは理の当然でありまして,私(わたくし)はそういう意味で,何故そうなっちゃったのか?
色々そういったマニフェストの主張自体が無理だったんだということを仰る方もいるようですけれども,また,だから今の行政の機構を,官僚の機構を抜本的に変えるなんてことは不可能だ,と。そんなことできっこない,と。実際はそう思っていたのかも知れません。
或いはまた,我々自身が主張した国民主導の政治が何なのかということを良く理解せず,しないままに,政権に就いちゃったということだったかも知れません。
いずれにしても,この政権では自民党の政権の亜流みたいな話 しだと。選挙の時の民主党の主張は何処行ったんだと。
国民皆さんの期待がまったく外れてしまったというところに(ひとつの原因が)あったんだと思っております。
私(わたくし)はいつも議会制民主主義を言う時には,イギリスの制度を,政治制度を例に出すんですけれども,イギリスでは 総選挙の前に必ず 党大会を開き,基本の方針と同時に,かなり具体的な政策を掲げまして,我 が党が政権を獲ったらこのように実行しますということを国民の皆さんの前に,いわゆるマニフェストですけれども,マニフェスト以上にかなり具体的なことを提示しながら選挙戦に臨むということでありますし,
また,議会の中では...今でも私(わたくし)が自民党との連立を,まあ彼等が我々の主張を皆呑んでくれたんで,一時(いっとき)やったんですが,そんな時に,国会までが全部,官僚に支配されていると。
これでは何も官庁の意に反したものは,できない。
その意に沿うものしか政治は政策は実行できないじゃないかということから,まずは,国会を国民のもの,政治家のものにしようということでですね,官僚が国会で委員会で答弁することをやめよう,ということにしたんです。
これはイギリスでは,そうです。イギリスでは国会議員同士の議論しか国会では為 されません。
もちろん色んな具体的な資料やら何やらっちゅうのは官僚が知ってますから,それを情報を得ながら,やってんですけれども。そういうこともやりました。
これも一例ですけれども,国民主導の政治を実現するためということでしたけれども,今はまた元の黙阿弥で,ほとんどが官僚が答弁をしております。
昔ね,自民党政権時代ですが 面白い出来事がありましてね。
或る閣僚がね,野党から鋭い追及を受けまして 答弁できなくなって「その点は非常に重要な問題ですので,局長から答弁させます」 こう言ったんですね。(会場・笑)
重要な問題だから大臣が答弁するんだろ。重要な問題だから局長に答弁させる。じゃあ,大臣は何答弁するんだっちゅうことになっちゃいまして(会場・笑)結局その大臣はクビになりましたけれども,そんなのが実態になってしまっている。
そういうことを,やはり基本的に変えていかないと日本の議会制民主主義はいつまで経っても変わりない。
そしてそのまま民主主義と政党の不信に繋がっていく惧れがある。私(わたくし)は,そう思っております。
先般の東京都知事選挙で,田母神さんという空幕長=空軍の幕僚長,航空自衛隊幕僚長が60数万票を取りました。 田母神さんの悪口を言うんじゃないですよ。
田母神さんは,彼は彼の意見でそれでいいんですけれども,非常に極端な右寄りの議論をしておる人なんですけれども,その人が60数万。 しかも若い人の4分の1以上がその田母神さんに投票したと言われております。
これはですね,非常に危険な社会の兆候であります。
欧米でも社会が不安定になりますと,必ず,左右の極端な議論が力を得ます。
ヨーロッパでも極右の政党が非常に大きな勢いで支持を増やしております。
アメリカでもティー・パーティーなどと呼ばれておりますけれども,これは非常にライト=右の団体でありまして,それが特に共和党に大きな力を持っております。
ですから,考え方そのものがいけないと言うんじゃないですけれども,やはり根本的 な民主主義そのものを否定するような,そういう考えに走るということだけは,何としても食い止めなくてはいけない。
私(わたくし)はそう思っておりまして,今日(こんにち)の安倍政権に感じることは,安倍さん自身の個人的に何を考えてるかは別といたしまして,そういった傾向を助長する政治姿勢にあることが,非常に私(わたくし)は不安に思っております。
したがいまして,飽くまでもですね,やはりどんな意見でも主張するのは良いんですけれども,民主主義という,その土俵の中での我々の議論と政治の運営にしなくてはならない。
そう思っておりまして,この認識が国民皆さんにも,また政治家にも欠けている。
それが結局,政権交代が失敗してしまった最大の理由ではないかと私(わたくし)は思っております。
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