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偽薬の一時しのぎは終わった:野口

 偽薬
 偽薬効果

 2014年、アベノミクスの偽薬効果はついに化けの皮が剥がれつつある。
 「消費増税、ニセ薬効果の化けの皮が剥がれる:山田」。
 昨年後半からGDPは失速している。
 「昨年後半から完全失速していた日本経済」。
 消費増税を前に、実体経済は暗雲が立ち込めている。

 デフレ脱却のためには有効需要の「親」である勤労家計の可処分所得を増やさなければならない。
 増やす方法は最低賃金の底上げ、税制の下層優遇、正規と非正規の格差を解消する同一労働同一賃金制度、一般消費税の廃止などいくらでもある方策を複合的に実施すること。
 需要が伸びれば企業は設備投資できるし、資金需要も増大する。
 財源は金融取引税でも、高額所得税の底上げでも、これまたいくらでもある。

 しかし、政府のやっていることは反対だ。
 資金需要の無いところに莫大なベースマネーをブタ積みし、円安による輸入物価上昇で、消費需要は低迷、中小企業は原材料高騰で破綻の危機。
 談合組織となった国債市場で長期金利は抑えているものの、海外からは日に日に「財政ファイナンス」の見方が強まっている。
 
 株価、為替市場など偽薬の期待効果が、実体経済の低落で剥がれ始めている。
 以下は野口氏の分析。
 ーーーーーーーーーーーーーーーー
   GDP伸びは連続低下 一時しのぎは終わった  野口悠紀雄 週間ダイヤモンド

 GDP速報によれば、2013年10~12月期の実質GDP成長率は1.0%となった(季節調整済み年率、以下同様)。
 7~9月期の1.1%から0.1ポイントの低下だ。
 1~3月期が4.8%、4~6月期が3.9%だったから、安倍内閣が発足し、異次元金融緩和が導 入されて以降、成長率が低下し続けていることになる。

 10~12月期には、消費税増税前の駆け込み需要が成長率を高めると考えられていた。
 外需が伸び悩んでいることから見通しが引き下げられてきたが、それでも2%程度になると考えられていた。
 実際の値は、それをも裏切るものとなった。

 需要項目別で見ると、公的固定資本形成(公共投資)と民間住宅(住宅投資)が高い伸びを示し、成長を支えていることがわかる。
 この構造は13年最初からずっと変わらない

 ただし、公共投資の伸び率は、これまでよりは低下した。
 補正予算の執行が山を越したためだろう。
 後で述べるように、14年に向けて、公共投資は減る
 住宅投資も駆け込み需要なので、今後は減少する。
 つまり、現在の日本経済は、将来減ることが明らかな一時的需要に支えられている。

民間最終消費支出は、消費税増税前の駆け込み需要で、名目でも実質でも、7~9月期より伸び率が高まった。
 ただし、予想されていたほどは高まらなかった
 GDPの伸び率が予想を下回ったのは、このためだ。
 なお、名目の伸びが、実質の伸びよりかなり高くなっている。これは、物価上昇率が高まったからだ。

外需が伸びないのは、今回の速報の大きな特徴である。
 輸入の伸びが主因だが、輸出が対前期比年率1.7%増でしかないことが影響している。
 円安下で実質輸出が伸びないのは、現地通貨建て輸出価格が目立って低下していないからである。
 つまり、輸出企業は、現地価格を下げて輸出数量を伸ばす戦略を取っていない
 このため、円建て輸出額がほぼ円安率に比例して増加し、輸出企業の利益を増加させ、株価が上昇している。
 円安が株価を押し上げるだけで、輸出量、生産量、賃金などの実体経済指標に影響が及んでいないのは、こうしたメカニズムによる。

 (※ もうすぐ北風:円安で輸出が伸びるというのは輸出価格を安くできるからなので、安くできなければ輸出量は伸びない。
 なぜ輸出価格を下げられないのかは、日本の輸出企業は内外価格差を設定しているからである。
 つまり、元々国内価格を高く、輸出価格を安く設定しているので、あまり下げられないのである。
 このことは輸出大手による国内価格の談合を意味するので、エコノミストは触れたがらない。
 私は富士通総研の根津利三郎氏によって知りました。)

 実質民間企業設備(設備投資)は、5.3%と高い伸び率を示した。
 ただし、水準は依然として低い
 産業別の内訳は法人企業統計が出ないとわからないが、機械受注(船舶・電力を除く民需、季節調整値)が12月に前月比15.7%減と、過去最大の下落幅を記録したことを見ると、今後すべての産業で設備投資が増えるとは思えない
 少なくとも製造業全体では、停滞が続くだろう。

   「経済の好循環」は始まっているのか?

 13年を全体として見ると、実質成長率は1.6%となった。
 12年の1.4%よりは高くなったが、あまり大きな違いではない。
 この数字が示すのは、異次元金融緩和も含め、安倍内閣の経済政策が経済成長率を高めていないという事実だ。

政府・日本銀行は、「経済の好循環」が始まっていると言う
 本当にそうなっているかどうかは、どの需要項目が伸びているかを見れば、判断できる。

 好循環が始まっているのであれば、民間消費や設備投資が増えていなければならない。
 特に、設備投資は、GDP成長率をかなり上回る率で増加しなければならない

 ところが、年ベースの数字で見れば、そうなっていない。
 設備投資の伸び率は、11年の4.1%、12年の3.7%から、13年には▲1.4%と大きく低下した。
 これは、好循環が始まっていないことの何よりの証拠だ。
 円安によって企業の利益は増加したが、それは、前述のように、円建ての輸出額が上昇したことによるものだ。
 経済全体の所得が高まったために売り上げが増加し、生産が増加して利益が増加したためではない。
 したがって、企業は、生産力増強のための設備投資を行わない


 民間最終消費支出の伸び率は、12年に比べてほぼ不変にとどまっている。
 しかし、四半期別に見ると、13年1~3月期の4.2%から10~12月期の2.0%に低下している。
 これは、物価上昇によって、実質消費の伸びが抑えられてきたからだ。
 (※インチキ偽薬の)「デフレ脱却」は実質消費の成長率を押し下げているのである。

 中期的に見ても、13年の経済パフォーマンスはよくない。
 13年の実質成長率1.6%は、10年の4.7%にはるかに及ばない。10年は円高期であったし、デフレ期でもあった(国内需要デフレーターの伸びは▲1.4%)。
 円安や物価上昇は、実質成長率を高めないことが、これからもわかる。

   4~6月期の落ち込みを補正予算で防げるか?

 日本経済の成長率は、今後、1~3月期に駆け込み需要で高まった後、4~6月期に反動で落ち込むと考えられている
 景気ウオッチャー調査での先行きも、悪化している。

 まず、住宅投資が落ち込む
 13年の実質住宅投資は約14.5兆円だが、これは09~11年の平均値12.7兆円に比べると1.8兆円多い。その水準に戻るとすれば、住宅建設は1.8兆円ほど落ち込むわけだ。
 これは、13年の住宅投資の(※ ▲の)12.4%に当たる。
 先食い効果を考えれば、需要はさらに落ち込むだろう。
 政府経済見通しでは、14年度の実質住宅投資の伸び率を▲3.2%と見積もっているが、この程度で済むかは疑問だ

 実質公共投資は、13年は22.7兆円だが、これは09~12年の平均値20.8兆円より1.9兆円多い。
 政府経済見通しでは、14年度の実質公共投資の伸び率は▲2.3%だ。
 これは、14年度の実質公共投資が13年度から5200億円ほど減少することを意味する。
 したがって、(暦年と年度の差を無視して)住宅投資と合わせれば、需要減は約2.3兆円になる。

 これに加え、消費の伸びが落ち込む
 政府経済見通しでは、実質伸び率が13年度の2.5%から、14年度には0.4%になる。
 これは、消費税増税の影響だ。また、前述のように消費者物価の上昇は、実質消費の伸び率を抑制する。

 以上のような経済の落ち込みを抑えるために、総額5.5兆円の補正予算が編成された。
 政府は、これが実質GDPをおおむね1%程度押し上げるとしている(「好循環実現のための経済対策」13年12月)。
 本当にこれだけの効果が期待できるだろうか?

 まず注意すべきは、今回の補正では、新規国債の発行を行っていないことだ。
 したがって、「均衡予算定理」が示すように、財政支出と同額の需要増大効果しかない(乗数が1である)はずである。
 仮に5.5兆円のすべてが有効需要であったとしても、GDP押し上げ効果は1%程度しかない。
 実際の内容を見ると、新規有効需要の創出となっているのは、全体の一部でしかない。
 公共事業は、全体の半分以下と考えられる。
 そうであれば、GDP押し上げ効果は0.5%程度ということになるだろう。

 今後、補正予算等で公共事業を増やしたとしても、一時しのぎを続けるだけであって本当の成長ではない。

ましてや、効果のない金融政策の追加は論外だ
 「金融緩和」という偽薬で期待を膨らませ、ごまかし続けられる時期は終わった
 短期的変動にとらわれず、長期的な成長の基礎をつくることが必要だ。
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