もうすぐ北風が強くなる

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

永続敗戦論、白井氏インタビュー(2):カナロコ、毎日

 白井

時代を読む~若手論客に聞く(1)社会思想・政治学者=白井聡さん「平和と繁栄の終わり」 カナロコ(神奈川新聞)

敗戦を直視せず、米国に従属し、戦後日本は平和と繁栄を享受してきた。その時代が本当に終わりつつある。これまでの物語にしがみついて生きるのか。
それともまだ見ぬ世界に踏み出すのか。社会思想・政治学者の白井聡さん(36)は、私たちの覚悟を問うている。

 ■「終戦」の意味

 戦後、日本人は敗戦を実感せずに生きてきた。
 もちろん1945年8月の段階では、そこら中が焼け野原で、負けは誰の目にも明らかでしたが、復興し、経済成長を遂げた。V字回復です。

 70年代以降、戦勝国であるソ連や中国と比べて生活水準にはっきりと差が出て、どちらが敗戦国か分からなくなった。
 むしろ「負けてよかった」という意識を日本人は持ち続けてきたのではないでしょうか。

 そのとき、日本の支配層が引いておいた「伏線」が見事に生きてきた。

 8月15日は「敗戦の日」ではなく「終戦の日」です。
 なぜこの日か
 連合国に対してポツダム宣言を受け入れると通知した14日でも、ミズーリ号の上で降伏文書にサインした9月2日でもよかったのに。

 終戦の日は用意周到に誘導されたのです。
 8月15日は、死者が帰ってくるお盆に当たる。
 普通の死者と戦争の死者を一緒にして、戦争が天災のようなものになった
 開戦の判断や降伏のタイミングなど、もっと合理的な政治判断があれば避けられた犠牲があいまいにされた。

 玉音放送だってそう。「降伏」とか「敗戦」といった言葉が出てこない。
 玉音放送で国家による「敗戦のごまかしプロジェクト」は始まり、経済成長によって完成した。

 では、なぜ敗戦を否認してきたか。
 戦前の指導者層の権力を戦後も温存するためです。

 普通に考えれば、「なんでまたあいつらが偉そうな顔をしているんだ」という話。
 でも、そもそも負けていないなら誰も責任を取る必要はない

 敗戦の否認を可能にしたのは冷戦構造です。
 米国としては、日本が社会主義陣営に走らないよう、豊かになってもらわなければならなかった。

 米国にべったりと従属して冷戦の最前線を台湾や朝鮮半島に押しつけ、日本は平和と繁栄を享受してきた。この戦後のレジーム(体制)を僕は「永続敗戦」と呼んでいます

 ■歴史認識映す

 冷戦が終わってこのレジームは崩れたはずでした。でもしがみついてきた。

 平和と繁栄の時代が本当に終わったと社会が実感したのは東日本大震災のときです。あの光景を見れば納得できる。

 特に原発事故は大きい。日本のエリート層に対する社会の信頼が揺らいだ。
 優秀と思われてきた官僚機構が実は相当にスカスカだった。
 素人向けについた「安全神話」といううそに、彼ら自身がだまされていた
 ここまでずさんで、うかつな人たちだったなんて、それこそ「想定外」です。

 それでも敗戦の否認は今も続いています。在日コリアンの排斥を主張するヘイトスピーチ(差別的憎悪表現)にも、明瞭に表れている。

 大日本帝国においては朝鮮人は二級市民扱いされ、半ば公然と差別していい対象だった。敗戦の結果、同等の基本的人権を持つ存在として尊重することになった。

 それを、現実に差別的発言をすることで「本当は負けてない」という気分になれる。
 敗戦を認めずに済む。


 怖いのは、現に声高に叫ぶ彼らは少数者だが、実はマジョリティーということ。
 だって戦後の日本人は敗戦を否認してきたじゃないですか。その歴史意識を非常に極端に煮詰めた、僕たちの自画像なんです。

 ■成長神話崩壊

 アジアとの関係がうまくいかないのは、米国の後ろ盾を前提に付き合おうとするからです。
 つまり「ドラえもん」でいうところのスネ夫。米国というジャイアンの陰に隠れて、「のび太のくせに」ならぬ「アジアのくせに」と指をさす
 アイデンティティーは「家が金持ち」ということ。

 経済成長が止まって、近ごろスネ夫のアイデンティティーは崩壊しつつある。
 だから安倍政権は経済成長を取り戻そうと死に物狂いです。

 それにしか価値を見いだせないのは、経済成長を実現する限りにおいて戦後の保守政治は支持され、戦争責任が免罪されてきたから。
 その系譜を継ぐ安倍政権が経済成長を続けられなければ、その正当性は消滅してしまいます。

 けれども親分であるはずの米国は丸々と太った子豚を放ってはおかない。
 TPP(環太平洋連携協定)のように強い収奪の姿勢をみせてきている。傀儡(かいらい)保守政権がこれに抵抗できないのは当然。
 これこそ永続敗戦の帰結です。

 日米同盟基軸論者は米国が日本を守ってくれることを前提にしているが、日米安全保障条約だって、日本を守ることが米国の国益になる限りにおいて日本を守るかもしれないというだけです。
 その意味で自主防衛以外に道はない。
 ただし、自己保身のために戦争を続けた末に多くの国民を死なせた人たちの継承者に国防を語る資格はありません。

 ■語られぬ政治

 新年だから明るい話題? 
 そうですね、唯一の希望は沖縄独立の動きでしょうか。
 元外務省主任分析官で作家の佐藤優さんは「絵空事ではない。沖縄の政治エリートたちがその気になれば、短期間で独立できる」と長年強調しています。

 そういう動きは本土に大きな刺激を与える。「そういうことをしていいんだ」って。

 先日も三浦市で米軍ヘリの不時着事故があった。
 艦載機の飛行ルートを米軍に問い合わせても教えてもらえない。日米地位協定があるからです。
 沖縄や神奈川だけでなく、日本中どこも同じ。「それでいいのか」という声が、大きくならなければいけない。

 「仕方ない」とやり過ごす国民に問題がある。主権者という意識がない
 憲法に書いてあったって、主権者たろうと努力しない限り主権者たりえない。

 こういう話は必ず波風が立つ。
 日本政治の専門家が論じるべきだけど、空気を読んでいるのか、誰も言わないから僕が言いました。
 若者が政治に興味を持たないと言うけれど、当たり前。
 生臭い政治問題を語る教育者や学者が少ないからです。

 何が起きたらこの国民は正気に返るんでしょう。
 原発事故で殺されかけたのに。
 首都圏で今こうやって生活できるのはたまたまだと、なぜ気付かないのか。
 政府が演出するクールジャパンとか絆じゃなくて、本当に守るべきものを僕らは持っているのでしょうか。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーー
   特集ワイド:東京、そして/中 社会思想家・白井聡さん  毎日
 <この国はどこへ行こうとしているのか>

 ◇「現実の否認」を絶て--白井聡さん(36)

 白いストライプが入った鮮やかな青のスーツに、黒の山高帽。まるで映画のスクリーンから飛び出たようなしゃれたいでたちだ。
 「服飾系の学部に個性的な服の学生が多いから、合わせてるんです」。
 社会思想家で、文化学園大助教の白井聡さん(36)は、そう言って照れくさそうにほほ笑んだ。それにしても、この人はこんな格好でデモに通っていたのだろうか。

 官邸前などでの脱原発のデモにたびたび参加し、数万人に上った群衆に交じって白井さんは「原発反対!」と叫んできた。
 そして、ふと気付いた。「東京にも放射能は降り注ぎ、危険にさらされたのに、なぜこんなに参加者が少ないのだろう。首都圏人口が3000万人だから何十、何百万人が来てもおかしくないはずだ

 昨年中国・上海で開かれた政治思想関係の国際学会では、韓国人学者にこう聞かれた。
 「日本のデモはなんであんなに小規模なんだ? もし韓国で同じ事故があったら、何十万人規模のデモになる。そうすれば政権なんて吹っ飛んでしまうよ」。
 「その通りだ」としか言えなかった。

 怒りの声を上げる国民が少ないのはなぜか。
 「私は『現実の否認』という日本人のメンタリティーが根底にあると考えています。
 しかもこれは今に始まったわけではない。戦時中も戦後もそうでした」

 「現実の否認」って、何なんだ?

 政治思想を研究してきた白井さんは、昨年3月「永続敗戦論 戦後日本の核心」(太田出版)を出した。
 「戦後日本は敗戦を終戦と呼び替えることで敗北の事実をなかったこと、つまり否認した。さらに東西冷戦下で米国の保護下にあり、経済大国化に成功したため、敗戦の責任を考えずに済んだ」。
 この構造を「永続敗戦」と名付けた。同著は論壇で大きな反響を呼んだ。

 執筆の動機は福島第1原発事故だ。
 事故発生後「この国の政府は、国民の生命と安全を守ることに関心がない」と感じた。
 緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)のデータを米軍に流しておきながら、国民には当初公開しなかった。
 線量が高い地域に多くの人々が避難し、被ばくした。
 100億円以上を費やした装備がこんな使われ方をされたのに誰も責任を取っていない

 「人命軽視は戦時中の日本と全く同じです。戦争末期は国体の護持(つまり天皇制の維持)にこだわり過ぎて、早期の戦争終結に動かず犠牲者を増やした」。
 1945年7月のポツダム宣言をすぐに受け入れず、原爆が投下され、膨大な人命が失われた。

 戦中戦後の政府と原発事故収束に手をこまねく現代の政府は、「敗戦」や「原発事故」という重大な現実を全力でごまかし、否認する点で全く同じだった。
 そう気づいて「はらわたが煮えくり返るくらい」の怒りがこみ上げた。

 「東京五輪招致は『現実の否認』の象徴です」。
 昨年9月、国際オリンピック委員会(IOC)総会で、安倍晋三首相は「汚染水の影響は福島第1原発の港湾内で完全にブロックされている」「状況はコントロールされている」と堂々と宣言した。
 しかし汚染水の流出は止まっておらず、制御されているとは言い難い。「権力側は原発事故の現実から今も目をそらしているとしか思えない」と言い切る。

 しかし、この人の指摘は、政府と権力者による「現実の否認」にとどまらない。

 「五輪招致は、都合の悪い現実を否認したいという国民の欲望が、政策として結晶されたものだと思います。
 原発事故の状態を冷静に考えれば、五輪招致にかまけている場合ではない、という結論に至るのではないでしょうか」

 「原発事故は収束した」「被害はたいしたことない」「事故はもう起こらない」……。そんな希望的観測に私たちは逃げていないか。

 白井さんと会った文化学園大は都庁からほど近いオフィス街にある。20階にあるギャラリーの窓からは、そびえ立つ双頭の都庁ビルが見えた。
 知事選は中盤に入り、この新宿でも候補者たちが日々主張を訴えている。

 今回の都知事選では複数の候補者が脱原発を争点に掲げる。
 「原発政策は国政マターだ」と争点化をけん制する声が少なくないが、白井さんは「原発事故以降の国政選挙で主な争点にされなかったから、今回議論されるのは自然なことです」と言ってのける。
 2012年の衆院総選挙では民主党政権の是非が問われた。昨年の参院選では安倍内閣への信任の有無が焦点で「自民党は原発を再稼働したいとの意思が透けて見えたし、民主党も完全に脱原発を掲げていなかった」と解説する。

 「『原発推進か脱原発かの二項対立は意味がない』との主張がありますが、私に言わせればこんな主張をする人は大ばか野郎です。
 二項対立でしか答えのでないケースもある。それがまさに原発。
 推進か止めるかの二者択一しかない
 都政に多くの課題があるのに原発のワンイシューに絞っていいのかという意見もあるが、原発問題を他と同列に扱うほうがおかしい
 原発は国民生活に直結するだけではなく、核兵器への転用の可能性がある。
 まさに国家の中核にかかわる大問題で、すべてのイシューに関連している

 言葉に力をこめた。

 「このままでは『恥ずかしい国』へまっしぐらですよ」。
 冷戦は終わったのに、安倍政権は、安全保障面で米国依存を強めている。
 しかし現実は、靖国神社参拝で米国に突き放され、領土問題を抱える中韓とは摩擦が拡大している。

 「安倍首相がダボス会議で『英独は大きな経済関係にあったが、第一次世界大戦に至った』と発言し、騒ぎになったでしょう。
 政府は『誤訳だ』と釈明したけれど、欧州メディアは『日本は軍事衝突の準備をしている』と受け止めた。
 ならば、中国が同じ『誤解』をしても仕方がない。
 今後、偶発的に日中が軍事衝突する可能性は十分ある」と、深いため息をつく。

 白井さんは都民ではなく、都知事選の投票権はない。
 しかし、その言葉はますます熱くなっていった。
 「原発を推進してきた世代を『今さら脱原発なんて無責任過ぎる』と批判したくなる気持ちはよくわかります。
 でも私たちは将来を担う世代だから、『現実の否認』を絶たねばなりません
 それには、福島の原発事故について、私たち個人に刑法で問われるような責任はないけれど、他ならぬ自分たちが起こしたんだ、という当事者意識を持つべきなんです」

 この人の怒りは、未来への責任感からきている。取材後、「大ばか野郎だ」の一言が、頭の中で何度も響いていた。【江畑佳明】
関連記事

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://bator.blog14.fc2.com/tb.php/2161-26d1de14

 | HOME | 

 

プロフィール

もうすぐ北風

Author:もうすぐ北風
こんにちは。
いろんな旅を続けています。
ゆきさきを決めてないなら、しばらく一緒に歩きましょうか。

最新記事(引用転載フリー)

カテゴリ

経済一般 (118)
経済一般~2012冬まで (161)
日本の経済 (224)
通貨戦争 (70)
ショック・ドクトリン (12)
震災関係 (23)
原発事故発生 (112)
事故と放射能2011 (165)
放射能汚染2012 (192)
汚染列島2013-14 (146)
汚染列島2015-16 (13)
福島の声 (127)
チェリノブイリからの声 (27)
政治 (413)
沖縄 (93)
社会 (316)
小沢一郎と「生活の党」 (232)
健康と食 (88)
環境と地球の歴史 (28)
未分類 (174)
脳卒中と入院 (7)

カウンター

最新コメント

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

リンク

このブログをリンクに追加する

カレンダー

05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

最新トラックバック

月別アーカイブ

RSSリンクの表示

FC2Ad

Template by たけやん

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。