人口オーナス社会と経済:吉田(下)
2014-01-27
人口オーナス社会と経済:吉田(上)からの続きです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
■5.世界の人口ボーナス期の転移
人口のボーナスの時期と、その後の人口オーナスへの転換期には、世界各国で、決まったものがあります。
以下は、33年前の1980年からの、10年毎の生産年齢人口の変化です。
▼各国の人口ボーナスの頂点年度とその後
各国で、生産年齢人口がもっとも多くなった人口ボーナスの頂点の年を*で示します。
人口ボーナスの頂点年を臨界点に、その国の経済の転換が起こっています。
経済成長がなくなるのが、人口ボーナス期の頂点のあと、つまり人口オーナス期です。
1980年 90年 2000年 10年 20年 30年 40年
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
日本 68% *70% 68% 64% 59% 57% 53%
米国 66% 66% *67% *67% 64% 61% 61%
中国 60% 66% 67% *73% *72% 69% 63%
スペイン 63% 66% *68% *67% 65% 63% 57%
アイルランド59% 62% *67% *66% 64% 64% 60%
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【人口ボーナスの頂点と、その後のバブル崩壊】
日本 1990年・・・土地・株の資産バブル経済の最終年
米国 2000年・・・ドットコム・バブル崩壊
2008年・・・サブプライムローン・バブル崩壊
中国 2010~2015年・・・2014~15年不動産バブル崩壊
スペイン2000年~2010年・・・ユーロ・バブルの発生と崩壊
アイルランド2000年~2010年・・・同上
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【原則】
人口ボーナスの頂点の年に向かう前の20年間くらいが、各国で実質GDPが4%くらい、物価が2~3%上昇する時期になります。
この時期は、高い経済成長になります。実質GDPで+3~4%、名目GDPで+5~7%の増加です。
被雇用者の賃金も、毎年5~6%は上がる。
貯蓄率も高く、金融資産も増加率が高い。(日本では1980年代初期まで)
ところが人口ボーナスの末期5年になると、生産年齢人口の増加率が低くなり、頂点の年から、マイナスに向かいます。
日本では、これが1990年でした。
■6.資産バブルは、人口ボーナスの末期5年に起こる
人口ボーナスの、頂点の前の約5年は、生産年齢人口の増加率が低下しほぼゼロに向かうため、企業の設備投資は、減ります。
将来の経済成長が低くなると予測されるからです。
他方で、この時期は、人口がもっとも多い中心世代が40歳台の後期になり、賃金も金融資産も大きくなる時期です。
生涯の賃金での最高額は、世界共通に49歳~50歳前後です。
この時期は、生涯最高に、預金が増える時期ででもあります。
銀行預金や生命保険として増えた金融資産(預金)は、何かで運用されねばならない。ここで、ほぼ必ず、
・不動産と株資産への、
・投機的な投資が起こります。
(注)資産とは、不動産、株、及び債券です。
投機的とは、売り抜けて値上げ益を得ることが目的の、投資を言います。投機で勝つには、相手を出し抜かねばならない。
この時期が、資産バブルの最後の時期です。
■7.生産年齢人口の頂点からの、ピークアウトする時期は、共通に資産バブルの崩壊
・日本では1990年から1992年、
・米国では2000年と2008年、
・スペインでは2000年から2010年、
・アイルランドで2000年から2010年でした。
これらはまさに、生産年齢人口がもっと多い、人口ボーナスの最終年です。
人口ボーナスがピークアウトに向かう時期に、資産バブルの崩壊が起こる。
これは経済の原理、変わらぬ原則、あるいは鉄則と断じていいことでしょう。
中国のことを言います。
不動産バブルの崩壊が、他国と同じように人口ボーナスが終わる2014年~2015年に、(確実に)来ます。
その後は、2013年は実質GDPで7%、名目GDPで10%成長の中国も一段、経済成長が、一段低くなる時期が来ます。実質GDPで4~5%でしょう。
その後、2020年から、中国もGDPの低成長期に入ります。中国の資産バブル崩壊からの転落は、一人っ子政策のつけで、激しくなります。
(注)ただし、中国の中央政府の負債は、2013年でGDPの比23%と少ない。
省政府がこれと別に300兆円で、名目GDP($8.2兆:820兆円:日本の1.7倍:2012年)に対し37%、中央政府との合計でGDP比60%と少ない。
日本が、GDP比238%、ギリシア156%、イタリア126%、米国102%、フランス90%、英国88&%、スペイン56%です。
中国の政府負債の統計が正しい数値なら、中国政府は、バブル崩壊対策として、最大400兆円くらいをとれるため、不動産バブル崩壊は「崩壊年度を長くする緩和」ができるでしょう。
しかし、そうすると、今度は、政府対策が終わる時期に、また資産バブル崩壊が来ます。
中国の、大きな問題は、人民銀行の信用規模の大きさ、つまり人民元発行量の過大です。
2013年10月時点で、GDP(820兆円)比で70%の560兆円もあります。
比較すれば、日銀は224兆円でGDP(480兆円)比47%、米国FRBは$4.1兆(410兆円)でGDP($16兆:1600兆円)比で26%です。
人民銀行の、通貨(元)の発行の、異常な多さが目立ちます。中国は、「金融の近代化(=銀行振り込み決済)」が、まだまだであるため、買い物や仕入に、現ナマを積んで、多く使う社会とは言え、人民銀行の通貨発行額は、インフレを大きくするくらい多い。
この人民銀行の人民元発行も、国家の負債と見ることができます。
このため中国の政府部門の、実際的な負債のGDP比は、[中央政府23%+地方政府(省)37%+人民銀行70%]=GDP比130%と大きくなります。
これは、2010年に資産バブル崩壊と財政危機があった、イタリア並みの政府の負債率ですから、バブル崩壊期に必要になる、巨大な公共事業の余力は、日本よりはあっても、イタリア並みでしかない。
結論を言えば、2014年から15年の、中国の不動産バブル崩壊は、日本にとっては、08年、09年のリーマン危機の1/3くらいの、相当な経済ショックになります。
■8.生産年齢人口の長期推移と、人口オーナス:2010年→2040年
人口オーナス
2010年 2040年 減少ポイント GDP低下
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
日本 64% 53% 11ポイント 大
米国 67% 61% 6ポイント 中
中国 73% 63% 10ポイント 大
スペ イン 67% 57% 10ポイント 大
アイルランド 66% 60% 6ポイント 中
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(生産年齢人口15歳~65歳の人口構成比)
今後の、長期の経済成長で言えば、以下が言えます。
(1)日本は、世界で最初に、世界でいちばん大きな人口オーナス期にはいり、2014年、2015年からGDPの実質成長が、ほとんどなくなる。
マネー増発で物価は上がるが、実質的な経済成長はほとんどない。物価上昇を引いたあとの実質GDPで、間歇的には、1%、2%くらいの上昇がある。
これから10年の、平均経済成長(実質GDP)は、0%~0.5%程度でしかないだろう。
日銀が、2015年に、異次元の量的緩和(年間80兆円の円の増発)からの、出口政策に失敗すれば、2015年の円安($1=140~150円付近)からの、悪い物価上昇になる。
(2)米国は、日本に18年くらい遅れ、人口オーナス期に入っている。しかし、移民のため、生産年齢人口の減少幅は、日本の1/2である。
このため、実質GDPの低下、減少は、日本の半分程度である。
ただし、米国経済も、今後は実質で1~2%しか成長しなくなる。
(3)中国は、2014年~2015年が、人口ボーナスの頂点になる。従って、遅くとも2015年から、高くなっている不動産価格の大きな低下が起こって、中国不動産バブルは崩壊する。
その後、中国は、かつての一人っ子政策のつけがあらわれ、巨大な人口オーナス期にはいる。
2014年から2020年までは数%(+5~+6%)の実質GDPの成長はあるが、2020年以降、低成長時代(実質GDPで+2~+3%:現在の米国並)に向かうことが確実である。
(4)欧州は日本に近い。GDPの面では(米国+日本)/2が欧州。
実質GDPの増加=全要素生産性の増加×生産年齢人口の増減、です。
全要素生産性の増加は、高い年でも、一次産業、二次産業、三次産業の加重平均である国全体の産業では、1%~2%しかない。
このため、その国で、人口ボーナスの頂点年で描いたように、生産年齢人口が減少に向かうとき、その国の実質GDPの成長(実質所得の増加)は、低下することが確実になります。
願うことは、安倍首相と同じように「高い経済成長率」です。しかし、それには「定量的な根拠」が必要です。
生産年齢人口が毎年1%減る中で、実質2%のGDP成長には、全要素生産性が、1年に3%上がる必要があります。
1960~70年 全要素生産性の上昇=3.3% (高度成長期)。
この1960年代です。1964年が東京オリンピックでした。50年前です。
この時期の、平均年齢の若さの、活力の時代に戻れるでしょうか。
東京オリンピックの前は、新幹線もなかった。TVも白黒で、パソコンはもちろんない。クーラーや自動車をもっている人も稀でした。
1960年代は、日本が、実質7%成長の時代で、10年で、実質で2倍の経済、所得でした。どんどん買う物が増えていた時代です。
その時代が、再来するかどうか。全要素生産性が1年に3%上がることができるかどうか、にかかっています。とても無理に思えます。
無理と思えるなら、今後のGDPの増加に対して、願望的な期待をすべきではない。
政府は、全要素生産性の2%~3%増加によって、再来させると言っていますが・・・どう考えても無理です。
政府(内閣府)から、理由の説明が聞きたい。
政府は、あからさまな嘘を言っています。
安倍首相は、過去と現在の全要素生産性を知っているのでしょうか?
(注)1年は、公共投資の増額により、3%成長も可能でしょ
う・・・しかし政府は、10年続けると言っています。
ーーーーーーーーーーーーーー
吉田繁治氏の関連ページ。
動乱の2012年(1)金融危機、通貨増刷:吉田
動乱の2012年(2)ホルムズ海峡、増刷で逃げる通貨:吉田
動乱の2012年(3)通貨と国債、デレバレッジ:吉田
アベノミクスの展開と帰結(1):吉田繁治
アベノミクスの展開と帰結(2):吉田繁治
アベノミクスの展開と帰結(3):吉田繁治
アベノミクスの展開と帰結(4):吉田繁治
これからの世代と経済:吉田(1)貧困化とデフレ
これからの世代と経済:吉田(2)7割が限界所得、高齢化単独世帯化
これからの世代と経済:吉田(3)成長無ければ社会危機
吉田繁治:金融・経済・仕事への質問回答集
今、世界経済の肝心なこと:吉田
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■5.世界の人口ボーナス期の転移
人口のボーナスの時期と、その後の人口オーナスへの転換期には、世界各国で、決まったものがあります。
以下は、33年前の1980年からの、10年毎の生産年齢人口の変化です。
▼各国の人口ボーナスの頂点年度とその後
各国で、生産年齢人口がもっとも多くなった人口ボーナスの頂点の年を*で示します。
人口ボーナスの頂点年を臨界点に、その国の経済の転換が起こっています。
経済成長がなくなるのが、人口ボーナス期の頂点のあと、つまり人口オーナス期です。
1980年 90年 2000年 10年 20年 30年 40年
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日本 68% *70% 68% 64% 59% 57% 53%
米国 66% 66% *67% *67% 64% 61% 61%
中国 60% 66% 67% *73% *72% 69% 63%
スペイン 63% 66% *68% *67% 65% 63% 57%
アイルランド59% 62% *67% *66% 64% 64% 60%
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【人口ボーナスの頂点と、その後のバブル崩壊】
日本 1990年・・・土地・株の資産バブル経済の最終年
米国 2000年・・・ドットコム・バブル崩壊
2008年・・・サブプライムローン・バブル崩壊
中国 2010~2015年・・・2014~15年不動産バブル崩壊
スペイン2000年~2010年・・・ユーロ・バブルの発生と崩壊
アイルランド2000年~2010年・・・同上
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【原則】
人口ボーナスの頂点の年に向かう前の20年間くらいが、各国で実質GDPが4%くらい、物価が2~3%上昇する時期になります。
この時期は、高い経済成長になります。実質GDPで+3~4%、名目GDPで+5~7%の増加です。
被雇用者の賃金も、毎年5~6%は上がる。
貯蓄率も高く、金融資産も増加率が高い。(日本では1980年代初期まで)
ところが人口ボーナスの末期5年になると、生産年齢人口の増加率が低くなり、頂点の年から、マイナスに向かいます。
日本では、これが1990年でした。
■6.資産バブルは、人口ボーナスの末期5年に起こる
人口ボーナスの、頂点の前の約5年は、生産年齢人口の増加率が低下しほぼゼロに向かうため、企業の設備投資は、減ります。
将来の経済成長が低くなると予測されるからです。
他方で、この時期は、人口がもっとも多い中心世代が40歳台の後期になり、賃金も金融資産も大きくなる時期です。
生涯の賃金での最高額は、世界共通に49歳~50歳前後です。
この時期は、生涯最高に、預金が増える時期ででもあります。
銀行預金や生命保険として増えた金融資産(預金)は、何かで運用されねばならない。ここで、ほぼ必ず、
・不動産と株資産への、
・投機的な投資が起こります。
(注)資産とは、不動産、株、及び債券です。
投機的とは、売り抜けて値上げ益を得ることが目的の、投資を言います。投機で勝つには、相手を出し抜かねばならない。
この時期が、資産バブルの最後の時期です。
■7.生産年齢人口の頂点からの、ピークアウトする時期は、共通に資産バブルの崩壊
・日本では1990年から1992年、
・米国では2000年と2008年、
・スペインでは2000年から2010年、
・アイルランドで2000年から2010年でした。
これらはまさに、生産年齢人口がもっと多い、人口ボーナスの最終年です。
人口ボーナスがピークアウトに向かう時期に、資産バブルの崩壊が起こる。
これは経済の原理、変わらぬ原則、あるいは鉄則と断じていいことでしょう。
中国のことを言います。
不動産バブルの崩壊が、他国と同じように人口ボーナスが終わる2014年~2015年に、(確実に)来ます。
その後は、2013年は実質GDPで7%、名目GDPで10%成長の中国も一段、経済成長が、一段低くなる時期が来ます。実質GDPで4~5%でしょう。
その後、2020年から、中国もGDPの低成長期に入ります。中国の資産バブル崩壊からの転落は、一人っ子政策のつけで、激しくなります。
(注)ただし、中国の中央政府の負債は、2013年でGDPの比23%と少ない。
省政府がこれと別に300兆円で、名目GDP($8.2兆:820兆円:日本の1.7倍:2012年)に対し37%、中央政府との合計でGDP比60%と少ない。
日本が、GDP比238%、ギリシア156%、イタリア126%、米国102%、フランス90%、英国88&%、スペイン56%です。
中国の政府負債の統計が正しい数値なら、中国政府は、バブル崩壊対策として、最大400兆円くらいをとれるため、不動産バブル崩壊は「崩壊年度を長くする緩和」ができるでしょう。
しかし、そうすると、今度は、政府対策が終わる時期に、また資産バブル崩壊が来ます。
中国の、大きな問題は、人民銀行の信用規模の大きさ、つまり人民元発行量の過大です。
2013年10月時点で、GDP(820兆円)比で70%の560兆円もあります。
比較すれば、日銀は224兆円でGDP(480兆円)比47%、米国FRBは$4.1兆(410兆円)でGDP($16兆:1600兆円)比で26%です。
人民銀行の、通貨(元)の発行の、異常な多さが目立ちます。中国は、「金融の近代化(=銀行振り込み決済)」が、まだまだであるため、買い物や仕入に、現ナマを積んで、多く使う社会とは言え、人民銀行の通貨発行額は、インフレを大きくするくらい多い。
この人民銀行の人民元発行も、国家の負債と見ることができます。
このため中国の政府部門の、実際的な負債のGDP比は、[中央政府23%+地方政府(省)37%+人民銀行70%]=GDP比130%と大きくなります。
これは、2010年に資産バブル崩壊と財政危機があった、イタリア並みの政府の負債率ですから、バブル崩壊期に必要になる、巨大な公共事業の余力は、日本よりはあっても、イタリア並みでしかない。
結論を言えば、2014年から15年の、中国の不動産バブル崩壊は、日本にとっては、08年、09年のリーマン危機の1/3くらいの、相当な経済ショックになります。
■8.生産年齢人口の長期推移と、人口オーナス:2010年→2040年
人口オーナス
2010年 2040年 減少ポイント GDP低下
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
日本 64% 53% 11ポイント 大
米国 67% 61% 6ポイント 中
中国 73% 63% 10ポイント 大
スペ イン 67% 57% 10ポイント 大
アイルランド 66% 60% 6ポイント 中
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(生産年齢人口15歳~65歳の人口構成比)
今後の、長期の経済成長で言えば、以下が言えます。
(1)日本は、世界で最初に、世界でいちばん大きな人口オーナス期にはいり、2014年、2015年からGDPの実質成長が、ほとんどなくなる。
マネー増発で物価は上がるが、実質的な経済成長はほとんどない。物価上昇を引いたあとの実質GDPで、間歇的には、1%、2%くらいの上昇がある。
これから10年の、平均経済成長(実質GDP)は、0%~0.5%程度でしかないだろう。
日銀が、2015年に、異次元の量的緩和(年間80兆円の円の増発)からの、出口政策に失敗すれば、2015年の円安($1=140~150円付近)からの、悪い物価上昇になる。
(2)米国は、日本に18年くらい遅れ、人口オーナス期に入っている。しかし、移民のため、生産年齢人口の減少幅は、日本の1/2である。
このため、実質GDPの低下、減少は、日本の半分程度である。
ただし、米国経済も、今後は実質で1~2%しか成長しなくなる。
(3)中国は、2014年~2015年が、人口ボーナスの頂点になる。従って、遅くとも2015年から、高くなっている不動産価格の大きな低下が起こって、中国不動産バブルは崩壊する。
その後、中国は、かつての一人っ子政策のつけがあらわれ、巨大な人口オーナス期にはいる。
2014年から2020年までは数%(+5~+6%)の実質GDPの成長はあるが、2020年以降、低成長時代(実質GDPで+2~+3%:現在の米国並)に向かうことが確実である。
(4)欧州は日本に近い。GDPの面では(米国+日本)/2が欧州。
実質GDPの増加=全要素生産性の増加×生産年齢人口の増減、です。
全要素生産性の増加は、高い年でも、一次産業、二次産業、三次産業の加重平均である国全体の産業では、1%~2%しかない。
このため、その国で、人口ボーナスの頂点年で描いたように、生産年齢人口が減少に向かうとき、その国の実質GDPの成長(実質所得の増加)は、低下することが確実になります。
願うことは、安倍首相と同じように「高い経済成長率」です。しかし、それには「定量的な根拠」が必要です。
生産年齢人口が毎年1%減る中で、実質2%のGDP成長には、全要素生産性が、1年に3%上がる必要があります。
1960~70年 全要素生産性の上昇=3.3% (高度成長期)。
この1960年代です。1964年が東京オリンピックでした。50年前です。
この時期の、平均年齢の若さの、活力の時代に戻れるでしょうか。
東京オリンピックの前は、新幹線もなかった。TVも白黒で、パソコンはもちろんない。クーラーや自動車をもっている人も稀でした。
1960年代は、日本が、実質7%成長の時代で、10年で、実質で2倍の経済、所得でした。どんどん買う物が増えていた時代です。
その時代が、再来するかどうか。全要素生産性が1年に3%上がることができるかどうか、にかかっています。とても無理に思えます。
無理と思えるなら、今後のGDPの増加に対して、願望的な期待をすべきではない。
政府は、全要素生産性の2%~3%増加によって、再来させると言っていますが・・・どう考えても無理です。
政府(内閣府)から、理由の説明が聞きたい。
政府は、あからさまな嘘を言っています。
安倍首相は、過去と現在の全要素生産性を知っているのでしょうか?
(注)1年は、公共投資の増額により、3%成長も可能でしょ
う・・・しかし政府は、10年続けると言っています。
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吉田繁治氏の関連ページ。
動乱の2012年(1)金融危機、通貨増刷:吉田
動乱の2012年(2)ホルムズ海峡、増刷で逃げる通貨:吉田
動乱の2012年(3)通貨と国債、デレバレッジ:吉田
アベノミクスの展開と帰結(1):吉田繁治
アベノミクスの展開と帰結(2):吉田繁治
アベノミクスの展開と帰結(3):吉田繁治
アベノミクスの展開と帰結(4):吉田繁治
これからの世代と経済:吉田(1)貧困化とデフレ
これからの世代と経済:吉田(2)7割が限界所得、高齢化単独世帯化
これからの世代と経済:吉田(3)成長無ければ社会危機
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